業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 2019年度~2021年度中期経営計画「Challenge 25」に関する認識および分析・検討内容

 経営指標の進捗につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 目標とする経営指標」に記載しております。

 

(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析

① 概況

当期における当社グループの経営環境は、コロナ禍からの正常化がグローバルに進み、製造業全般において生産の高度化・自動化を目的とした設備投資が積極的に行われました。特に半導体・電子部品市場では需要が拡大を続け、自動車市場においてはEV(電気自動車)化やリチウムイオン電池関連などの設備投資が加速しました。また、中国では5Gや新エネルギーなどのニューインフラ投資が継続するなど、需要は期を通じてグローバルに高い水準で推移しました。

このような環境において当社グループの業績は、半導体など長期化する部品の供給不足によって、モーションコントロールセグメントを中心に生産制約の影響を受けたものの、年間を通じて旺盛な需要を的確に捉え、前年同期に対し大幅な増収となりました。この結果、売上収益は年度業績として過去最高を更新しました。利益面については、原材料費や物流費の高騰影響を受けた一方、売上増加に伴う改善や経費管理の徹底などにより、営業利益は前年同期に対し大きく増加しました。

 

なお、当期における当社グループの地域別の経営環境は以下のとおりです。

日 本:    半導体・電子部品市場をはじめ自動車市場などで設備投資は底堅く推移し、リチウムイオン電池関連の需要も拡大しました。

米 国:    自動車・半導体関連の需要が高水準で継続しました。また、労働力不足などを懸念した自動化投資が積極的に行われたほか、オイル・ガス関連需要が期末にかけて回復に転じるなど、総じて拡大基調となりました。

欧 州:    経済の正常化にともなう市況回復が続き、自動車や工作機械などを中心に市場全体で需要は伸長しました。

中 国:    EV化の加速による自動車関連や5G・リチウムイオン電池などのニューインフラ関連の需要が好調に推移するなど、期を通じて活発な設備投資が継続しました。

中国除くアジア:韓国や台湾において半導体・電子部品関連の需要が高水準で推移したことに加え、韓国ではリチウムイオン電池関連の設備投資が伸長しました。

 

この結果、当期の経営成績は以下のとおりです。

 

2021年2月期

2022年2月期

前年同期比

売上収益

3,897億12百万円

4,790億82百万円

+22.9%

営業利益

271億80百万円

528億60百万円

+94.5%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

189億27百万円

383億54百万円

+102.6%

米ドル平均レート

105.99円

111.49円

+5.50円

ユーロ平均レート

122.82円

130.44円

+7.62円

中国人民元平均レート

15.55円

17.33円

+1.78円

韓国ウォン平均レート

0.091円

0.096円

+0.005円

 

② セグメント別の状況

当社グループでは、事業内容を4つのセグメントに分けています。

当期の各セグメントの経営成績は以下のとおりです。

モーションコントロール

売上収益   2,272億60百万円   (前年同期比  +29.1% )

営業損益     381億61百万円   (前年同期比  +55.3% )

モーションコントロールセグメントは、ACサーボモータ・コントローラ事業とインバータ事業で構成されています。

グローバルな設備投資が積極的に行われたことからセグメント全体の販売は好調に推移し、大幅な増収となりました。利益面においては原材料費や物流費の高騰影響や、半導体などの部品の供給不足による生産制約の影響を受けたものの、売上の増加やインバータの新製品切り替え効果などにより増益となりました。

〔ACサーボモータ・コントローラ事業〕

日米・韓国などで半導体・電子部品需要が高い水準で継続しました。また、中国では新エネルギー分野でのリチウムイオン電池に関する需要が加速し、スマートフォンや基地局向けなどの5G関連需要が増加するなど、積極的な設備投資が期を通じて行われたことから、販売は総じて好調に推移しました。

〔インバータ事業〕

グローバルな市況回復により設備投資が活発化し、大型空調(HVAC)・クレーン・繊維向けを中心に販売は好調に推移しました。また、中国では省エネ政策にともなう需要が拡大するなど、事業全体の売上収益は増加しました。

ロボット

売上収益   1,786億70百万円   (前年同期比  +28.1% )

営業損益     172億48百万円   (前年同期比 +149.7% )

ロボットセグメントの主要市場である自動車においては、EV化がグローバルで加速し新たな生産設備の投資を拡大する動きが継続しました。また、一般産業分野においてもグローバルで労働力不足への対応や生産の高度化・自動化を目的とした投資が行われました。

加えて、半導体・電子部品市場の需要拡大を背景に半導体ロボットの販売も好調に推移したことから、売上収益は大きく伸長し、営業利益は売上の増加や操業度の改善などにより大幅に増加しました。

システムエンジニアリング

売上収益     522億65百万円   (前年同期比   +3.0% )

営業損益      21億26百万円   (前年同期比  31億57百万円改善)

システムエンジニアリングセグメントは、産業用オートメーションドライブ事業と環境・社会システム事業とで構成されています。

売上収益は環境・社会システム事業を中心に前年同期比で増加しました。営業利益は採算管理の徹底や経費抑制の継続に加え、前年度に発生した一時的な製品改修コストがなくなったことなどにより増加しました。

〔産業用オートメーションドライブ事業〕

アジアなどの港湾クレーン向けやリチウムイオン電池の生産設備向けの需要が堅調であった一方、国内における鉄鋼プラント関連の売上は低調に推移しました。

〔環境・社会システム事業〕

コロナ禍からの正常化により、国内の上下水道用電気システム関連および欧州の大型風力発電用電機品の販売は好調に推移しました。

その他

売上収益     208億86百万円   (前年同期比  △10.9% )

営業損益       3億84百万円   (前年同期比  +27.6% )

その他セグメントは、物流サービス事業などで構成されています。

売上収益は国内を中心に前年同期から減少した一方、営業利益は製品構成の改善などにより増加しました。

 

(3) 経営者による財政状態およびキャッシュ・フローの状況の分析

① 資本の財源および資金の流動性にかかる情報

(a) 資産、負債および資本(B/S)構造に関する基本的な考え方

(ア) 流動資産(手元現預金など)

当社グループは、キャッシュがグローバルで分散し余剰にならないようにコントロールするとともに、手元現預金を月商1~2ヵ月程度の水準にキープすることを基本としています。

ただし、現下の経済情勢を考慮し、有事に備えてコミットメントラインを100億円確保するとともに、手元現金の水準を高めにしておくことで、安全性をより意識した運用を行います。

(イ) 非流動資産(成長投資、M&Aなど)

将来の成長と生産性向上に寄与するような投資は積極的に実施します。現中期経営計画「Challenge 25 Plus」の期間においては、売上収益の6~7%を設備投資およびM&Aに充当する方針です。M&Aについては、価値創造能力の強化に向けた技術補完を主目的とします。

(ウ) 資本構成

前中期経営計画「Dash 25」では、親会社所有帰属持分比率(日本基準においては自己資本比率)を向上させ有利子負債を圧縮してきましたが、これにより資本構成の改善に目途がついたこともあり、現中期経営計画ではネットDEレシオを一定水準にコントロールし、信用格付けを維持できる範囲でレバレッジを活用しながら企業価値の最大化を図ります。

 

(b) キャッシュアロケーションに関する基本的な考え方

当社は、営業活動により生み出したキャッシュを①成長投資、②株主還元、③従業員配分の3方向に効果的に投入することで、持続的な成長を実現することを基本方針としています。

(ア) 成長投資

当社グループの中長期の成長実現に向け、売上収益の4~5%を研究開発に投資します。

また、設備とM&Aに合わせて売上収益の6~7%を投資する方針です。近年は新型コロナウイルス感染症拡大が世界景気に与える影響を注視しながらも、グローバルで拡大する需要に対応すべく、国内外における生産能力の強化を図るための投資を行っていきます。また、この中には、2025年度までのデジタル経営基盤構築に向けた投資も含まれています。

(イ) 株主還元

当期利益に対し30%+αの配当性向を想定した経営を実践しています。計画に対し利益が増減した場合は、その期に生み出したキャッシュの状況に鑑み配当額を調整します。利益が減少した場合でも、キャッシュが確保できる限りにおいては安定配当を基本とし、可能な限り計画に沿って還元する方針です。利益が上振れてキャッシュが想定以上に創出された場合は、追加の還元策も検討します。

(ウ) 従業員配分

事業遂行の一番の要となる従業員に対しては適正な配分を行っていく考えです。

監査等委員でない取締役および執行役員の役員報酬は元より、管理職の賞与についても業績連動性を高めています。管理職賞与は営業利益率10%を基準値として算定し、上限・下限の限度額を設定せず、利益還元を図っています。また、役員報酬および管理職賞与の算定においては、ベンチマーク他社比での業績改善度合いの優劣を考慮することとしており、他社より高い利益成長を実現していくためのインセンティブを高めています。

一般従業員の賞与については、利益が減少した際の下限は設定しながら、営業利益率が10%を超えた場合は上限を設定しない方針を2020年度から実施しています。これにより、全社的な利益率への意識向上を図っています。

また、新しい寮の整備など、従業員のための福利厚生に対する投資も充実を図っています。

 

② 資産、負債および資本(B/S)の状況

(a) 資産  5,590億38百万円(前期末比 716億10百万円増加)

現金及び現金同等物や営業債権、たな卸資産等の増加により、流動資産が前期末に比べ589億38百万円増加しました。また、有形固定資産やその他の金融資産等が増加し、非流動資産が前期末に比べ126億71百万円増加しました。

 

(b) 負債  2,609億37百万円(前期末比 230億70百万円増加)

短期借入金やその他の金融負債は減少したものの、営業債務や未払法人所得税、その他の流動負債等の増加により、流動負債が前期末に比べ207億30百万円増加しました。また、繰延税金負債の増加等により、非流動負債が前期末に比べ23億40百万円増加しました。

 

(c) 資本  2,981億円(前期末比 485億39百万円増加)

利益剰余金やその他の資本の構成要素等が増加しました。

 

③ キャッシュ・フロー(C/F)の状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は551億51百万円(前期末比で41億98百万円増)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(a) 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業債権やたな卸資産の増加および法人所得税の支払等により支出が増加したものの、税引前当期利益や減価償却費の計上および営業債務の増加等による収入により、492億33百万円の収入(前年同期比 96億31百万円の収入増)となりました。

 

(b) 投資活動によるキャッシュ・フロー

有形固定資産及び無形資産の取得による支出等により、241億65百万円の支出(前年同期比 145億64百万円の支出増)となりました。

 

(c) 財務活動によるキャッシュ・フロー

短期借入金や長期借入金の返済による支出および配当金の支払等が社債の発行による収入等を上回り、224億75百万円の支出(前年同期比 21億90百万円の支出増)となりました。

 

※営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは250億67百万円の収入となりました。

 

(4) 生産、受注および販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲にわたりかつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため、生産および受注の実績については、「(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析」におけるセグメントの経営成績に関連づけて記載しております。

また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析」におけるセグメントの経営成績に関連づけて、連結の数字を示しております。

 

(5) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 IFRSに準拠した連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針の要約 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。

 

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