課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、グローバルニッチトップの複合体を成す、すなわち国内外の小規模市場を一体的に捉えたグローバル市場において高いシェアと確固たる地位を築く、という成長シナリオに主眼を置き、次の指針に沿った事業活動を展開しております。

① 経営ビジョン

産業社会の発展に貢献すべく、グローバルニッチ市場において、オンリーワンに相応しい使命を果たし、唯一無二の存在となる。

② 中期経営基本方針

ⅰ. 基盤事業(リード端子)の収益力強化を実現する。

ⅱ. 成長事業(光デバイス)のシェア拡大と新製品開発を実現する。

ⅲ. コア技術を活用した次世代事業を育成する。

ⅳ. 経営管理体制を強化し、強固な利益体質を構築する。

また、基本方針に沿ったグループ中期経営計画に基づき、経営課題の解決に全力で取り組みつつ、企業価値の最大化に努めております。

 

(2) 事業戦略

各事業セグメントにおいては、次のような方針にて事業の進展を図ってまいります。

① リード端子事業

ⅰ. 車載向け、産業機器向け等の高付加価値・高信頼性リード端子の営業戦略

(イ) 自動車関連市場

環境対応、自動運転に向けた「CASE」(Connected、Autonomous、Shared、Electric)等の新技術により、自動車業界は100年に1度の変革期にあるといわれています。電気自動車・ハイブリッド車等の環境対応自動車の普及や、自動運転や先進運転支援システムの実用化等を背景とした自動車全体の電装化が進み、小型アルミ電解コンデンサに対する小型化、耐振性、低漏れ電流等の要求水準が高くなっていることを受け、その主要部品であるリード端子のノーバリ品(*1)、丸目品(*2)、化成品(低漏れ電流)(*3)等の技術開発品等の機能強化と溶接・プレス形状の品質向上を推進してまいります。近年では、低ESR・低漏れ電流・高リプル電流許容に優れているハイブリッドタイプ(電解質が液体と固体の複層)アルミ電解コンデンサ向けリード端子(*4)の増強拡大として、技術開発の深化・拡大の強化等、さらなる高付加価値製品の実現を図るべく、継続した製品開発の推進を進めております。アルミ電解コンデンサメーカー各社と技術会議を開催し、市場要求に対応した製品の開発と量産化を推進し、付加価値向上を進めていく予定であります。

以上を総合し、アルミ電解コンデンサ・ハイブリッドタイプ向けリード端子、電気二重層キャパシタ(EDLC)、リチウムイオンキャパシタ用(いずれも車載向け)リード端子の技術開発・品質高度化への対応を進めます。

同時に、既に認証取得しております車載向け品質規格IATF 16949での品質管理をグローバルで強化し、一層の車載品質の構築を展開して参ります。

(ロ) 通信基地局等ICT市場、産業機器(FA・ロボット、計測機器)市場

全世界でコンピュータ、スマートフォンの急増と、それに伴う高速大容量通信化の進展により、次世代通信規格5G(第5世代移動通信システム)の急速な普及、拡大が見込まれます。そのため5G対応基地局向けとして、導電性高分子(固体)タイプ(*5)のコンデンサが主に用いられ、銅線タイプのリード端子が使用されます。また、拡大するFA/計測機器には小型大容量コンデンサが主となるほか、大サイズタイプのリード端子が使用されます。ゲーム機器向けのチップタイプ(*6)、リード端子のノーバリ品が使用される小サイズタイプ等、市場の要求仕様に対応したリード端子の開発を進めていく予定をしております。

 

(ハ) ボリュームゾーンを対象とした営業戦略(生活家電市場向け戦略)

日系コンデンサメーカーの生活家電市場向けアルミ電解コンデンサに対応し、低コスト化については中国工場を中心に推進することで受注増量を目指しております。

同時に、中国系、台湾系メーカーが生活家電市場向けにボリュームゾーンとして大量生産しているアルミ電解コンデンサに対応するため、競合他社製品との比較(材料仕様等)による材料コストの見直し、新設備の導入による生産性向上を目指しております。

(ニ) 課題と対応

世界的な人件費高騰への対応として生産性の大幅な向上と歩留まり・品質の向上をプロセスイノベーションとして、製造工程、製造方法、製造装置を抜本的に革新し、装置の自動化、タクトアップ(*7)等を進めると共に、製造工程のIoT化で設備状態と生産状況を管理し、生産性向上(可動率90%以上)・品質の向上による収益性を底上げし、資源の効率使用を進めてまいります。

重点戦略として、装置のタクトを1.7倍にする1分あたり500個の超高速溶接・プレス機の開発を進め、洗浄・化成工程と検査工程では自動化やAI化による省人化を進めております。

カントリーリスク等のリスク管理対応とサプライチェーンの強靭化を推進する為、マレーシア子会社の生産基盤を強化し、海外3子会社の平準化を進めると共に、原材料においても韓国、中国、マレーシア等から安定的な調達を確保して参ります。これらのサプライチェーンの強靭化を進めASEANで生産強化される日系顧客からの受注に対応してまいります。

② 光部品・デバイス事業

ⅰ. 市場別重点施策

(イ) 海底ケーブル市場

クラウドコンピューティング、ソーシャルメディア等の新たなアプリケーションが世界的なブロードバンドトラフィックレベル(*8)を増加させ、従来の大手通信事業者と共に、Meta社(旧 Facebook社)やGoogle社等に代表されるインターネットを通じて音声、メッセージ、音楽、および動画等を提供する事業者が、ビジネス展開の複層化等を目的として、新たな海底ケーブル網整備のための投資を急拡大しております。これらの新たな海底ケーブルでは高速大容量化のために多値化(*9)、波長多重化、空間多重化等の技術が高度化され、特に海底ケーブルの空間多重化(例えば、2020年以降の16芯[8ファイバペア]から32芯[16ファイバペア]の多芯化(*10))により、高い信頼性の光デバイスの需要が大きく伸びています。

これらの市場や技術の動向に対して、当社での素子づくり能力の強化(設備更新)及びスリランカ拠点での高い信頼性の光デバイス(YD製品)の精密組立能力の強化(設備投資)を継続すると共に、主材料のマルチソース化(*11)やサプライヤと連携した材料開発等でサプライチェーンの強靭化をさらに推進してまいります。また海底ケーブルの空間多重化(32芯以上[16ファイバペア])に対応した高密度光デバイス(*12)の実装を実現する小型光デバイスや複合光デバイス等の新製品を開発し、製品ラインアップの充実も推進してまいります。

(ロ) データセンタ市場

データセンタ市場においては、SNS、IoTおよび4K・8K画像の伝送等、データ処理量の飛躍的な増加が見込まれます。また、クラウドコンピューティングやネットワークとデジタルテクノロジを活用したDXが世界的にデータセンタ構築を増加させ、新たなデータセンタへの投資が拡大しています。これらの新たなデータセンタでは、高速大容量の情報を処理するために、データセンタ内およびデータセンタ間の光通信の需要が急速に増大しています。それを実現するために当社は超高速光モジュール(*13)や光と電気融合したシリコンフォトニクスに用いる小型及び多芯の光ファイバアセンブリ品(*14)をラインナップ化してまいります。そこでは当社コア技術のスラリーキャスト法(高純度石英ガラスの製造技術)(*15)を適用した差別化製品を充実させてまいります。また、国内外の展示会出展や潜在顧客アクセス等のマーケティング活動により、新規市場・顧客の開拓を進めてまいります。

(ハ) ファラデーローテータ(磁気光学材料)市場

光アイソレータに使われるファラデーローテータは、海底ケーブルから移動体通信基地局にいたる幅広い光通信分野で用いられるものの、市場参加者が少ないニッチ分野であります。当社の強みである素子づくり(海底ケーブル用光デバイス製造技術(*16)等)を活かし、光ファイバ通信分野や産業機器分野のニッチ製品として製品ラインナップを展開してまいります。

 

 

ⅱ.研究開発

(イ) 次世代光デバイスの研究開発

情報通信のさらなる増加を実現する海底ケーブルの新たな技術プラットフォーム(例えばマルチコアファイバ(*17))の革新に対応した光デバイスの研究開発を強力に推進してまいります。また大学等の研究機関との共同により新たな製品の開発や技術の創造に取組んでまいります。

(ロ) 素材技術の研究開発

当社コア技術であるスラリーキャスト法は、「不純物が極めて少ない」「紫外線領域において透過特性が優れる」「自由度の高い形状が実現できる」といった複数の特性があります。

これらの特性を活かし、半導体産業分野、医療・分析機器分野、レーザー加工分野など、新しい分野への進出を目指してまいります。

 

(用語解説)

項番

用語

意味・内容

ノーバリ品

アルミプレス部にバリ無し加工を施したリード端子。

丸目品

リード線切断部にバリ無し及び円形加工を施したリード端子。

化成品(低漏れ電流)

酸化アルミニウムをアルミプレス部表面に形成させ、電流の漏れを低減させたリード端子。

低ESR・低漏れ電流・高リプル電流許容に優れているハイブリッドタイプ(電解質が液体と固体の複層)アルミ電解コンデンサ向けリード端子

低漏れ電流化に寄与する化成方式(1個吊り化成)を施したリード端子。

導電性高分子(固体)タイプ

コンデンサを構成する電解質に導電性高分子のみを使用したコンデンサ。

チップタイプ

基板の表面実装形のコンデンサ。

タクトアップ

製品の生産工程を均等化・短縮化することにより、作業効率や生産性を向上させること。

ブロードバンドトラフィックレベル

高速で大容量の通信ネットワークの通信量。

多値化

情報量の単位であるビット数を1ビットから2ビット、2ビットから4ビットと増やし、通信量を増やすこと。

10

多芯化

信号を伝達する単位である光ファイバを1本から2本、2本から4本と増やし、通信量を増やすこと。空間多重化を実現する手段の1つ。

11

主材料のマルチソース化

光アイソレータや光フィルタの原材料の調達先の複数化。

12

高密度光デバイス

海底光中継器の限られた空間に従来より多くの個数及び機能を内蔵可能とした光デバイス。

13

超高速光モジュール

従来と比べて高速な光通信(光送信・光受信)する光部品。 

14

光と電気融合したシリコンフォトニクスに用いる小型及び多芯の光ファイバアセンブリ品

シリコンフォトニクス(シリコン基盤上に光と電子の集積回路を製作する技術)に用いる、シリコン基盤と光ファイバとを接続固定する製品。

15

スラリーキャスト法(高純度石英ガラスの製造技術)

切削加工等では実現の難しい形状の石英ガラスを製造する当社コア技術。

16

海底ケーブル用光デバイス製造技術等

当社の国内とスリランカとの拠点間の垂直分業(磁気光学材料づくりと精密組立との分業)で構築している故障率が極めて低い光デバイスを安定生産する方法。

17

マルチコアファイバ

光の通り道を1つから2つ、2つから4つと増やした特殊な光ファイバ。

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

100年に一度の変革期になると言われる自動車業界では、環境対応車(電気自動車、ハイブリッド車)の登場や、自動運転に向けた先進運転支援システム等を背景とした自動車全体の電子化が進行しております。また、クラウドコンピューティング、ソーシャルメディア等の新たなアプリケーションが世界的な高速大容量通信を増加させ、データセンタにおいてデータ処理量の飛躍的な増加が見込まれております。

これらの社会変革に伴い増加する顧客のニーズに対し、当社は生産技術と工程の革新にて応え、より安定した製品供給を行うことが課題であると考え、上記「(1) 経営方針」に基づき対処方針を定め、次のとおり取り組んでおります。

 

① 研究開発の推進

当社グループの強みは、アルミ電解コンデンサの主要部品であるリード端子や、海底ケーブル、データセンタに使用される光デバイス製品等、世界的に競争できる製品を製造し、供給していることであります。

リード端子においては、全ての生産工程を自社開発・自社設計の装置にて行っており、高い品質と生産性を推進しております。鉄・銅・スズ・ビスマス・アルミといった異金属を高速で溶接・プレスし、アルミ電解コンデンサの特性向上に寄与するコア技術を凝縮し、量産技術を誇っております。

光部品・デバイスにおいては、光アイソレータは原料の素子づくりから精密組立等を一貫して行うこと等により、極めて高い信頼性が要求される海底ケーブルにおいて、継続的に採用されております。こうした製品を創り出すための技術力は、長い実績に蓄積された経験や試行錯誤の末に得られるデータが基になっております。当社グループでは、顧客、ひいては社会の要請に応える製品を供給できるよう、研究開発を重要課題に据えております。

 

② 製品の安定供給

当社グループのリード端子事業及び光部品・デバイス事業の主要な生産拠点は、顧客への安定的な製品供給のため、国内のみならず海外にも展開しております。一方で、海外に拠点を展開することにより、政治、経済、社会環境、インフラ、公衆衛生、材料輸送及び製品輸送等の、新たに発生するリスクへの対応が求められてまいります。

当社グループは、これらのリスクに対し短期的・中期的に対応することが重要であると考えており、これらのリスクを最小化しつつ、各工場の役割の最適化を行うことにより、製品の安定供給を推進してまいります。

 

③ 優秀な人材の確保と育成

当社グループの経営理念は、「豊かな個性を尊重する全員参加型の経営を実践し、新しい価値の創造を通じて、オンリーワン企業を目指す」であります。経営目標の実現を目指して、社員個々人の持ち味を活かした人材育成を行い、それぞれの役割意識を高め、個性が発揮できる場を創り出してまいります。

当社グループは、研究開発型企業として確かな技術に裏付けられた製品を生み出し、新たな価値を創造・付加し続けるために、人材の確保と育成が重要であると考えております。これらを実現するため、働く喜びを実感できる働きやすい職場環境の整備や、スキル向上のための研修機会の提供に努めております。

 

④ ガバナンス体制等

当社グループは、様々なステークホルダーの皆様のお力添えにより、2021年12月21日をもちまして東京証券取引所市場第二部上場を果たし、新たなスタートを切るところとなりました。ご高承の通り、上場後いまだ一年も経過していない立ち位置に鑑み、引き続きガバナンス体制の充実化等、内部管理体制の強化に懸命に取り組んでまいる所存でございます。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、投資余力と利益還元のバランスに重点を置き、また持続的な成長の源泉として事業利益が重要であると考えていることから、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)として、事業別営業利益を評価軸に掲げております。

 

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