業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境を顧みますと、世界経済は多くの国でロックダウン解除による需要回復が進むなか、前年マイナス成長からの反動で高水準の経済成長となりました。但し、世界経済がコロナ禍から立ち直りつつある中、半導体を中心とした部品不足、物流遅延による世界的なサプライチェーンの混乱は継続・長期化しています。さらに、中国でのゼロコロナ政策(ロックダウン)やロシアのウクライナ侵攻により、今後もサプライチェーンの混乱は拡大・長期化するリスクが高まっている状況にあります。また、インフレ圧力の拡大・長期化により、多くの国で金融政策を引き締めに転じる等、世界経済の回復は減速となる見通しにありますので、今後の動向をさらに注視していきます。

当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ112.37円および130.55円と前期に比べ、米ドルは6%の円安、ユーロは6%の円安に推移しました。また、中国や南米など新興国の通貨については円安に推移しました。

 

こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。

(億円)

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減金額

増減率

主な増減理由

売上収益

9,959

11,289

1,329

13.4%

[売上収益]

プリンティングソリューションズ事業セグメント +887

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント +175

マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント +265

[事業利益]

プリンティングソリューションズ事業セグメント +2

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント +140

マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント +177

売上原価

△6,435

△7,104

△668

売上総利益

3,523

4,184

660

18.8%

販売費及び

一般管理費

△2,907

△3,288

△380

事業利益(※)

616

896

279

45.4%

その他の営業収益・

その他の営業費用

△139

48

188

為替差益等の増加

営業利益

476

944

468

98.3%

 

金融収益・金融費用

△28

25

53

為替差益等の増加

税引前利益

449

971

522

116.2%

 

法人所得税費用

△139

△48

90

繰延税金資産の積み増し等により費用減少

当期利益

309

923

613

197.8%

 

親会社の所有者に

帰属する当期利益

309

922

613

198.4%

 

※事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

報告セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。なお、当連結会計年度より、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」(2021年3月策定)に基づき報告セグメントの区分を変更し、「プリンティングソリューションズ事業」、「ビジュアルコミュニケーション事業」および「マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業」の3つを報告セグメントとしております。各報告セグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

オフィス・ホームプリンティング事業の売上収益は増加となりました。大容量インクタンクモデルおよびインクカートリッジモデル本体は、在宅勤務・在宅学習需要が昨年度からは落ち着きつつあるものの、当年度も継続しており、物流遅延や部品調達難に伴う製品供給不足による影響は受けつつも、北米等で大容量インクタンクモデル本体の販売数量を伸ばし、また値上げによる価格対応も継続していることから、大幅な売上増となりました。なお、消耗品売上につきましては、在宅印刷特需により大幅な売上増となった前期に対し、減少となりました。

商業・産業プリンティング事業の売上収益は大幅な増加となりました。大判インクジェットプリンター本体は、製品供給不足に加え、中国では景気減速によるサイン市場の減速があったものの、欧米を中心に需要の回復と新製品投入効果により売上増となりました。消耗品は、欧米や中国を中心に売上増となりました。小型プリンターは、部品調達難による製品供給不足の影響を大きく受けましたが、欧米や中国を中心に小売店や飲食店向けの需要増に対応し、売上増となりました。また、プリントヘッド外販ビジネスは、中国向けを中心に好調な販売を継続し、売上増となりました。

プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、インクカートリッジモデル消耗品売上の減少、輸送費・部品価格の高騰等による採算悪化があったものの、大容量インクタンクモデルおよび大判インクジェットプリンター・小型プリンターでの増収、需給バランスに応じた価格対応、広告販促費を中心とした固定費抑制の継続、さらに為替のプラス影響があり、前期並みとなりました。

以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,799億円(前期比12.8%増)、セグメント利益は1,064億円(同0.2%増)となりました。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、製品供給不足により、旺盛な需要に対応しきれない状況となりましたが、価格対応およびモデルミックスの良化などにより、増加となりました。

ビジュアルコミュニケーション事業のセグメント利益は、増収影響に加えて、事業構造改革に伴う費用抑制の継続および為替のプラス影響などにより、大幅な増加となりました。

以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,590億円(前期比12.4%増)、セグメント利益は153億円(同1,038.4%増)となりました。

 

(マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)

マニュファクチャリングソリューションズ事業の売上収益は、ICテストハンドラー事業の事業譲渡に伴う売上減があるものの、中国でのリチウムイオン電池関連顧客向け等の売上増や欧州での自動車関連向けの需要回復、米州での医療向け需要等の獲得もあり、増加となりました。

ウエアラブル機器事業の売上収益は、好調な高級品の販売に加え、ムーブメントは回復した需要を取り込み、増加となりました。

マイクロデバイス事業の売上収益のうち、水晶デバイスは、車載向け、および幅広い用途向けでの需要増が継続しており、大幅な売上増となりました。また、半導体も旺盛な需要で売上増となり、事業全体で大幅な増加となりました。

マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントのセグメント利益は、増収影響に加え、ウエアラブル機器事業では事業構造改革に伴う費用抑制を進め、大幅な増加となりました。

以上の結果、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメントの売上収益は1,919億円(前期比16.0%増)、セグメント利益は230億円(同336.0%増)となりました。

 

(調整額)

報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る収益、費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△552億円(前期の調整額は△512億円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは1,108億円の収入(前期は1,332億円の収入)となりました。これは当期利益が923億円であったのに対し、棚卸資産の増加282億円、法人所得税の支払額224億円などによる減少要因があった一方で、減価償却費及び償却費の計上645億円などの増加要因があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出438億円などがあったことにより、440億円の支出(前期は574億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い214億円、社債の償還による支出200億円などがあったことにより、517億円の支出(前期は231億円の収入)となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、3,352億円(前期は3,040億円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

808,200

110.1

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

160,687

112.1

マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業(百万円)

184,338

118.3

報告セグメント計(百万円)

1,153,227

111.6

その他(百万円)

合計(百万円)

1,153,227

111.6

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。

 

b.受注実績

 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

779,920

112.8

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

159,034

112.4

マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業(百万円)

182,586

116.2

報告セグメント計(百万円)

1,121,540

113.3

その他(百万円)

7,373

120.6

合計(百万円)

1,128,914

113.4

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

①経営成績等

(財政状態)

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して1,051億円増加し、1兆2,664億円となりました。これは主に、棚卸資産の増加520億円、現金及び現金同等物の増加312億円、繰延税金資産の増加109億円があったことなどによるものです。

 負債合計は、前連結会計年度末に対して76億円減少し、6,006億円となりました。これは主に、仕入債務及びその他の債務が120億円増加した一方で、社債、借入金及びリース負債が227億円減少したことなどによるものです。

 なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して1,147億円増加し、6,656億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益922億円の計上、および在外営業活動体の換算差額を主因としたその他の包括利益439億円の計上があった一方で、配当金の支払い214億円があったことなどによるものです。

 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して683億円増加し、5,024億円となりました。

 

(経営成績)

 経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(キャッシュ・フローの状況)

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

②資金の源泉および流動性

 当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は710億円であり、所要資金につきましては、内部資金によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。

 エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。

 有利子負債の当連結会計年度末残高は、社債の償還などにより前連結会計年度と比較して227億円減少し、2,431億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して312億円増加し、3,352億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。

 また、コロナ禍による先行きが不透明な中、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結しました。なお、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。

 なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。

 エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※ 原油、金属などの枯渇性資源

 なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 エプソンの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。

 

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