研究開発活動

5【研究開発活動】

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」に加え、デジタル技術により、人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創することを目指しています。そのための経営基盤強化の取り組みのひとつとして研究開発活動を位置づけ、イノベーションを実現するための基盤技術、コア技術、製品技術の進化を推し進めています。なかでも今後は材料、AI、デジタル技術を特に強化していくこととし、成長領域や新領域を中心に、ものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。技術開発においては「共創」を重要なファクターとし、開発の初期段階となる試行錯誤のプロセスから多くの知見ある方々の参画により、検証をしっかり行いながら開発を進めていくという「開発のフロントローディング化」を進めていきます。これにより、課題を解決するサイクルを早く回して開発の質を高めることで、商品化・事業化までのスピードアップを図っていきます。

当連結会計年度の研究開発費総額は460億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が183億円、ビジュアルコミュニケーション事業が55億円、マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業が59億円、その他および全社が161億円です。

各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

商業・産業プリンティング事業においては、SureColorシリーズ初の6色機として、ポスター出力に適した大判インクジェットプリンター2機種を発売しました。「SC-T7750D」は鮮やかな赤を含むPOPポスターに適したレッドインク搭載B0プラス対応モデル、「SC-P8550D」は人肌など階調性重視の高品位ポスターに適したグレーインク搭載B0プラス対応モデルです。新エンジン搭載のPSユニット(※1)標準搭載で、透明・特色レイヤー、オーバープリント処理など特殊な加工を持つPDFファイル印刷に対しての印刷処理を速く正確に実現しました。両機種の本体は、奥行き50センチの薄い箱型形状で、設置面積を従来機から約25%削減(※2)しました。

捺染市場向けには、インクジェットデジタル捺染機Monna Lisa(モナリザ)シリーズの新商品として、「ML-64000」を発売しました。アパレルやファッション業界では環境負荷を考慮したサステナブルなファッションへの取り組みが急速に拡がっています。捺染市場においても、持続可能な社会の実現に向けて、環境負荷を軽減する生産工程の実現と作業負担の低減に貢献するデジタル捺染へのシフトが進んでいます。「ML-64000」は、最新のPrecisionCoreプリントヘッドを64個搭載し、標準モードで毎時774平方メートル(600x600dpi–2Pass)の高速印刷で、高い生産性を実現しました。各プリントヘッドチップの波形を個別に制御する「Dynamic Alignment Stabilizer(DAS)」技術により、高精度かつ高密度のドット配置を行い安定した印捺品質を提供します。

プリントヘッドでは、高画質・高速印刷をより簡単に実装できるサイネージ向けプリントヘッド「T3200」発売しました。ひとつのプリントヘッドでCMYK4色インクによる高速・高画質印刷の実現が可能です。さらにプリントヘッドにヒーターを内蔵することで、さまざまな粘度のUVインクに対応し、特にサイネージや商品パッケージの印刷に対して最適なデジタル印刷環境を提供することができます。

また、広くデザインに関わる業務において色合わせの課題解決を目指す商品として、分光測色方式の測色器「SD-10」を発売しました。同商品は、環状に並んだ9つの光源を使って、早く正確に色を測定します。メディア表面の凹凸の形を拾わず、一度で正確な数値が出せるため、色合わせにかかる時間を削減できます。これまで正確に色合わせを行う作業は、経験や勘など、特定オペレーターに依存するケースが多く見られました。測色器を使うことで、誰でも簡単に専門的な知識がなくても色を測り数値化できるため、業務を標準化することができます。

※1 Adobe® PostScript®対応。PSユニットとSSDの両方装着できます。PSユニット単体の場合、本体での再印刷

はできません

※2 「SC-P8050」との比較において

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジネスプロジェクターでは、高コントラストな映像投写を実現するレーザー光源搭載の6機種8モデルを発売しました。企業や学校の中~大会議室・講堂など広い空間の後ろからでも見やすく、明るく鮮やかな大画面投写が可能です。スタンダードモデルは、上下(50%)左右(20%)のレンズシフト機能搭載で、設置場所の自由度が広がります。高輝モデルは、1画素を斜めに0.5画素シフトさせる「4Kエンハンスメントテクノロジー」により、4K相当のスクリーン解像度を実現しました。大空間にふさわしい高精細な高画質映像を投写します。

ホームプロジェクターでは、3LCD方式のホームプロジェクター「dreamio(ドリーミオ)シリーズ」の新商品2機種を発売しました。「EH-LS12000」は、4K対応(※3)で、圧倒的な高画質映像を大画面で楽しめます。2,700lmの明るい映像と、レーザー光源による高コントラストを実現しました。また新たに、コントラストを自動で調整し、映像の一部分を鮮やかでメリハリのある映像にする「自動コントラスト強調」や、シーンに応じて階調表現を最適化し、メリハリのある映像を実現する「シーン適応ガンマ補正」を搭載しました。「EH-TW5825」は、気軽に動画配信サービスなどを大画面でお楽しみいただきたい方をターゲットにした、明るさ2,700lm・Full HDの映像投写が可能なモデルです。

※3 2軸シフトテクノロジーを採用したスクリーン上の解像度

 

(マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント)

マニュファクチャリングソリューションズ事業においては、汎用材料が使用できる新しい産業用3Dプリンターを開発しました。エプソンの小型射出成形機に搭載されているフラットスクリュ(※4)による独自の材料押出方式を採用したことで、一般的に価格が安く入手しやすいペレット材(樹脂・金属)、環境に配慮したバイオマスペレット材、高い耐熱性を実現できるPEEK材など、さまざまな汎用的な材料を使用できることが特長です。さらにヘッド内の圧力制御や造形速度と連動したバルブ調整により、材料の射出量を精密に制御するとともに、部品の強度を出す際に課題となる造形面の温度制御も独自機構により繊細に管理することで、造形部品の精度と強度の両立を実現しました。汎用材料で造形物の精度と強度を両立したことで、最終製品向けの工業部品への展開が実現しやすい仕様となり、お客様の個々のニーズに合わせた多品種部品をより高品質・短納期・低コストで生産するマスカスタマイゼーションの推進に貢献します。

マイクロデバイス他においては、高性能な6軸センサーを搭載した慣性計測ユニット(IMU)(※5)「M-G370PDS0」を開発しました。近年、空中・海中など無人機による映像撮影・測量など利活用分野が広がり、より正確な位置・姿勢制御のニーズが増大しています。それにともないIMUには姿勢制御において重要とされる精度、特にノイズ性能への要求が高まっています。同製品は、機器やシステムに発生するわずかな姿勢変化をセンサーノイズに埋もれさせることなく、より正確に検知することが可能となります。さらに、小型・軽量・低消費電力の特長により、お客様製品の小型化、軽量化にも貢献します。

※4 インラインスクリュをフラット化した技術

※5 IMU:Inertial Measurement Unit 3軸の角速度センサーと3軸の加速度センサーからなる慣性運動量を検

出する装置

 

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