(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
1) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ129億9千万円増加し、1,040億5千5百万円となりました。流動資産は84億9百万円、固定資産は45億8千1百万円増加しております。これは主に、流動資産は棚卸資産の増加、固定資産は中国における工場新設や移転に伴う投資を中心とした有形固定資産の増加によります。
当連結会計年度の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ109億1千2百万円増加し、538億3千3百万円となりました。これは主に、借入金の増加によります。
有利子負債合計(短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・短期リース債務・長期借入金及び長期リース債務の合計額)は86億6千5百万円増加し、311億8千5百万円となりました。
当連結会計年度の純資産は、前連結会計年度末に比べ20億7千8百万円増加し、502億2千1百万円となりました。これは主に、為替換算調整勘定が26億9千3百万円増加したことによります。この結果、自己資本比率は47.99%となりました。
(自己資本比率は、純資産より新株予約権・非支配株主持分を控除して計算した比率を用いております。)
2) 経営成績
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が継続するものの、国や地域により制限と緩和を繰り返しながら、概ね回復基調で推移いたしました。当社グループが関わるエレクトロニクス市場においても、経済活動の回復とともに産業機械や家電関連では高水準の需要が続きましたが、自動車関連では、半導体をはじめとする部材調達の遅れによる生産調整で減産となりました。また、電子機器の製造で使用される銅や鉄、接合材の原材料となる錫などの素材価格の高騰により、事業活動には難しい局面が続くとともに、ロシアのウクライナ侵攻、中国における新型コロナウイルス感染症の再拡大、世界的なインフレーションの進行など、先行きの不透明感が増しています。
こうした経営環境のもと、当社グループでは新型コロナウイルス感染防止対策を徹底しながら、「車載」・「パワーエレクトロニクス」・「IoT・次世代通信」という3つのターゲット市場に向けた開発・生産・販売活動を推進いたしました。産業機械や家電関連を中心に売上は伸長した一方、素材価格の高騰は当社の主力事業である電子部品関連事業と電子化学実装関連事業の両方に及び、相場連動による価格改定活動は売上高を押し上げた効果はあったものの利益率の改善まで至らず、前期に対して採算が悪化する結果となりました。但し、第4四半期には相場連動による価格改定の効果などにより利益率が復調しております。
その結果、当社グループの当連結会計年度の状況といたしまして、売上高は883億2千8百万円(前期比19.5%増)と伸長いたしましたが、営業利益は15億6千4百万円(同20.5%減)、経常利益は20億1百万円(同16.1%減)と減益となりました。
なお、親会社株主に帰属する当期純損失は8千4百万円(前期は5億4千2百万円の当期純利益)と大きな減益となりました。これは、当社の連結子会社であるオプシード・バングラデシュ・リミテッドにおいて、主力とする自動販売機向け商品選択ボタンの生産が減少し、所有する固定資産に対する将来の回収可能性を検討した結果、2022年3月期第4四半期において、減損損失5億3百万円を特別損失として計上したことが主な要因であります。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
なお、売上高はセグメント間の内部売上高を含めており、セグメント利益はセグメント間取引消去及び本社部門負担の未来開発研究費用控除前の営業利益と調整を行っております。
(電子部品関連事業)
電動工具向けチャージャ、エアコン向けリアクタ、産業機械向けトランス・リアクタなどの売上が年間を通じて堅調に推移いたしました。一方、自動車関連の顧客では、半導体不足や新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生産調整の影響を受け、納品制限のため売上が見込より減少しました。自動販売機向けLED製品は、市場環境が厳しく、期待した売上を確保できませんでした。利益面では、当年度前半は銅・鉄などの素材価格の高騰の影響を大きく受けましたが、同後半には相場連動による価格改定の効果が追い付いてまいりました。
その結果、売上高は592億5千8百万円(前期比24.1%増)、セグメント利益は5億6千2百万円(同240.5%増)と、増収増益となりました。
(電子化学実装関連事業)
エレクトロニクス市場における生産活動の回復により、ソルダーペースト、ソルダーレジストなどの電子化学材料の販売が堅調に推移いたしました。また、リフロー装置を中心とした実装装置も、主要顧客である日系車載メーカー向けを中心に回復基調で推移いたしました。その一方で、ソルダーペーストの主要な原材料である錫の価格の高騰が年間を通じて継続し、相場連動による価格改定制度の導入や個別価格改定交渉を進めてまいりましたが、価格是正が追い付かず減益となりました。
その結果、売上高は271億3千1百万円(前期比19.3%増)、セグメント利益は20億9千8百万円(同2.3%減)と、増収減益となりました。
(情報機器関連事業)
主力製品である放送機器に関して、ネットワーク化をはじめとする将来の技術変化を見据えた新製品の開発を進め、第4四半期に顧客へ納品することで利益の確保を予定しておりました。しかしながら、半導体をはじめとする部材の調達難により納品が先送りとなり、当期の売上が大幅に減少いたしました。
その結果、売上高は20億7千9百万円(前期比40.2%減)、セグメント損失は6億3千8百万円(前期は2億7千9百万円のセグメント利益)と、減収及び赤字となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)につきましては、前連結会計年度末に比べ43億円減少し、128億8千7百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費が33億6千1百万円、税金等調整前当期純利益が12億1千万円となりましたが、棚卸資産の増加が66億6千5百万円、売上債権の増加が25億4千4百万円となったことなどにより、49億4千9百万円の資金支出となりました。また、前連結会計年度と比べ、営業活動によるキャッシュ・フローは、99億9千8百万円減少しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、中国における工場の新設や移転を中心とした有形固定資産の取得による支出が32億9千4百万円となったことなどにより、46億2千2百万円の資金支出となりました。また、前連結会計年度と比べ、投資活動によるキャッシュ・フローは、15億7千万円減少しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金を8億1千7百万円支払いましたが、短期運転資金及び中国設備投資資金などを用途とした短期並びに長期借入金の純増加額が61億8千4百万円となったことなどにより、45億3千6百万円の資金収入となりました。また、前連結会計年度と比べ、財務活動によるキャッシュ・フローは、53億3百万円増加しました。
③ 生産、受注及び販売の実績
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
電子部品関連事業 |
61,527 |
129.1 |
電子化学実装関連事業 |
27,669 |
122.3 |
情報機器関連事業 |
2,101 |
65.1 |
報告セグメント計 |
91,298 |
124.2 |
合計 |
91,298 |
124.2 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 金額は、販売価格によっております。
2) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
電子部品関連事業 |
91,683 |
180.1 |
57,057 |
231.7 |
電子化学実装関連事業 |
27,516 |
137.9 |
9,037 |
105.3 |
情報機器関連事業 |
4,219 |
146.4 |
3,168 |
329.7 |
報告セグメント計 |
123,418 |
167.4 |
69,264 |
202.7 |
合計 |
123,418 |
167.4 |
69,264 |
202.7 |
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
電子部品関連事業 |
59,255 |
124.1 |
電子化学実装関連事業 |
27,061 |
119.1 |
情報機器関連事業 |
2,011 |
58.5 |
報告セグメント計 |
88,328 |
119.5 |
合計 |
88,328 |
119.5 |
(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月 1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月 1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
牧田(昆山)有限公司 |
4,500 |
6.1 |
7,429 |
8.4 |
株式会社マキタ |
1,346 |
1.8 |
1,998 |
2.3 |
マキタ EU S.R.L. |
1,475 |
2.0 |
1,930 |
2.2 |
合計 |
7,322 |
9.9 |
11,358 |
12.9 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は883億2千8百万円と前期比で19.5%増加したのに対して、営業利益は15億6千4百万円と前期比で20.5%減少いたしました。営業利益率は、2021年度を最終年度とする第12次中期経営計画で目標とした8%に遠く及ばない1.8%という結果に終わり、低収益性が当社グループの課題と認識させられる結果となりました。
足元の減益の主要因は、素材価格の高騰に対して、価格是正が追い付かなかったことにあります。状況を的確に把握し、トップから担当者まで社内一丸となって迅速に価格交渉にあたるなど、コスト対応力を強化することが喫緊の課題と認識しております。
また、当社グループはグローバルに共通のERPシステムを導入し、受注時点で個別原価の把握を可能にするなどコスト管理体制は既に構築しております。また、第12次中期経営計画では、中国エリアの工場再編と自動化推進による原価低減の取組みも進めてまいりました。こうした活動の成果を確実に刈り取るとともに、2022年度から開始する新中期経営計画では、成長戦略を通じた高付加製品の拡大を加えて、更なる収益性向上を目指してまいります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(電子部品関連事業)
当連結会計年度の経営成績は、前年度に対して増収増益となり、当年度後半では相場連動による価格改定の効果も充分ではないものの反映されております。しかしながら、営業利益率は0.9%で依然低水準であります。当事業については、価格転嫁の徹底によるコスト回収、生産体制の再構築や工程改善による収益性改善、そして製品そのものの高付加価値化の3つの取組みが必要と考えております。
生産体制については、第12次中期経営計画において、素材から完成品までを一貫生産することができる車載工場の建設、深圳と恵州にある電子部品の二大工場のスマートファクトリー化、チャージャの専門工場を、重要顧客に隣接する華東エリアに新設し、物流や倉庫費用の削減を図るなどの大規模な再構築を進めました。新中期経営計画期間は、その成果の確実な刈り取りを図ってまいります。
また、製品の高付加価値化については、電子化学事業の素材技術と連携した磁性部品の開発などを進めております。カーボンニュートラルに貢献するエネルギー変換技術で、新製品・新市場領域の拡大を目指します。
(電子化学実装関連事業)
当社グループの中では収益性が高く利益を牽引している事業でありますが、当連結会計年度の経営成績は前年度に対して減収減益、錫価格の上昇による影響などにより、営業利益率は7.7%と苦戦する結果となりました。まずは価格改定の徹底により早期に収益の回復を図るとともに、当事業においても中長期的成長のためには新製品・新市場への展開による売上・利益の拡大が必須と考えております。新製品としては、カーボンニュートラルへの対応で市場拡大が見込まれるパワー半導体向けの高耐熱接合材の開発、新市場としては、日系車載向けでは定評のあるリフロー装置をグローバル仕様に見直して非日系メーカーに拡販する取組みなどを足元で進めております。このような活動をいくつも積み上げていくことが、新中期経営計画の達成のためには必要と考えております。
(情報機器関連事業)
当連結会計年度の経営成績は、放送機器のネットワーク化対応をはじめとする新製品開発を推進した一方で、半導体などの部材調達難により、予定していた新製品の納品が延期となり営業赤字となりました。主力取引先である放送業界を取り巻く市場環境は依然厳しいものの、新中期経営計画の第2年度以降にはキー局の更新需要も予定されており、部材を確保し確実に製品納入を行うことが必須と認識しております。また、この事業の更なる発展のためには、ネットワーク化などの技術変化に対して、周辺製品・サービスとの連携なども検討することが必要と考えております。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としております。しかし成長投資や一時的な運転資金の充足のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からも調達できるよう多様化を図っており、現時点においては銀行からの借入を実施しております。
前連結会計年度は、新型コロナウイルスの感染拡大による不測の事態に備え、機動的な短期運転資金としてコミットメントライン契約を総額50億円に増枠し、手許流動性を高められるよう対応しております。
新中期経営計画では、第12次中期計画のような大規模投資を予定しておりませんが、引き続き生産設備の増強や更新を進めてまいります。自己資本の他、ファイナンス・リースや銀行借入の利用を予定しております。
③ 重要な会計上の見積り方針及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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