研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、創業以来、漁業及び海運業の安全安心の向上に寄与すべく、舶用電子機器の研究開発を継続して行ってまいりました。

舶用電子機器の「漁業用の魚群探知機」に使用する超音波技術、同じく「漁業用の無線機」に使用する電波通信技術、「舶用レーダー」に使用するマイクロ波技術、「舶用位置測定装置」に使用する電波航法技術等を中心に始まったフルノの研究開発の分野は、現在では機器のデジタル化に伴う情報処理技術、画像処理技術及びメカトロニクス技術へと広がっております。

事業分野の視点では、舶用電子機器市場に止まらず、この技術を他市場に応用することを目指して、陸上産業機器、医療機器、無線LAN機器及び防衛装備品機器へと展開を広げてきました。これらの研究開発業務は、各要素研究を技術研究所、各事業分野の製品開発を各事業部開発部門にて行っております。

組織横断的な視点から各研究開発部門を統括し、効率向上と活性化を図ることを目的としてR&D統括センターを設けております。また、グループの研究開発活動にかかわる知的財産権の拡充を図り、適切に管理・活用する専門の組織として知的財産部を設けております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は5,458百万円であり、売上高に対する比率は6.4%であります。

セグメント別の主な研究開発活動及び今後の展開は次のとおりであります。

 

(1) 舶用事業

商船・漁業・プレジャーボート市場向け分野

当社グループの中核事業部門として、技術研究所の成果物を、しっかりとした品質と信頼性を確保しつつ、統一的なデザインをもって商品化することで、フルノブランドを確立してまいりました。

近年、航海の安全性向上及び船員の労務負担軽減を目的に、自動運航に向けた研究開発を進めています。「船舶のデジタルトランスフォーメーション」をテーマに、AR(拡張現実)技術を用いて航行に必要な情報を重畳表示する「AR ナビゲージョンシステム」、VR(仮想現実)技術を用いて見張り業務を支援する「3D Bird View」、LiDARとカメラ等のセンサーを用いて船体と岸壁との距離・角度を高精度に計測して安全な離着岸を支援する「離着岸支援システム」等、自動運航を実現するための各種システムを開発しています。

今後も、激化する市場競争に打ち勝つための基盤強化及びさらなる開発効率の向上に継続して取り組んでまいります。

具体的には、

・ 安全安心・快適、人と環境に優しい航海の実現に寄与する自律航行システムの研究開発の推進
 ・ 資源管理型漁業、漁業経営の効率化に寄与するスマート漁業に向けた研究開発の推進

・ 製造原価低減及び、ソフトウェア開発プロセスの改善と自動検査拡大による開発効率の改善

等に取り組んでまいります。
 

インフラ維持管理・気象観測システム分野

舶用機器の技術を応用した沿岸モニタリングシステム、舶用レーダー技術を応用した気象観測システム、衛星測位技術を応用した地盤変位観測システム等、社会インフラへのソリューション開発を進めてまいりました。今後も、これら基本システム提供をもとに、顧客が必要とするシステムやアプリケーションのパッケージ化を進めることで、販売の促進に取り組んでまいります。

 

 当連結会計年度における研究開発費の金額は4,071百万円であります。
 

 

(2) 産業用事業

PNT事業

社会インフラのOEM供給に始まったPNT事業は、無線通信技術を応用したETC車載器、衛星測位システム技術を基にした車載用GNSS受信機等の位置情報機器及びこれを応用したタイミング機器(衛星測位システムは測位原理により、位置だけでなく正確な時刻(タイミング)も知ることができ、この機能は日々進化する高速情報通信インフラに欠かせないものとなっています)等を加えることで事業拡大を進めてきました。新たにETC車載器での無線通信による車両認識と、ナンバープレート読取装置での画像による車両認識を組み合わせた車両入退管理サービスであるFLOWVIS(フロービス)の展開をスタートしました。また衛星測位システム技術では、中国の測位衛星(北斗)にも対応した、補正データなしで位置情報精度50㎝を実現する車載用多周波GNSS受信チップを新たに開発いたしました。今後も、無線技術と衛星測位システム技術を活用した製品開発を進めると同時に、これら技術を融合させた新たな価値創造に資する技術開発にも取り組んでまいります。

 

ヘルスケア事業

フルノの持つ超音波技術の医療機器分野への展開から始まったヘルスケア事業の研究開発は、生化学自動分析装置、超音波骨密度測定装置の機能向上を進めてまいりました。また、開発品質の向上と効率の向上を目指しプロセス改善にも引き続き、取り組んでまいります。

 

防衛装備品事業

航空機用電子機器の供給から始まったフルノの防衛装備品事業は、舶用事業と同様に、顧客からの強い信頼を得ており、継続して防衛省のニーズに対応しております。信頼ある商品・サービスを通じて防衛装備品を持続的に提供することが、国民の安全・安心・平和の維持に貢献するという認識のもと、事業成長のためのニーズの先取りと衛星測位や水中音響分野における将来技術の先行開発に取り組んでおります。

 

当連結会計年度における研究開発費の金額は633百万円であります。

 

(3) 無線LAN・ハンディターミナル事業

舶用電子機器開発で培った無線通信技術、情報処理技術を陸上物流に応用することから始まった、当該事業は、顧客ニーズにマッチした信頼性の高い商品と手厚いサポートをもとに、文教市場で高いシェアを持つに至っております。

最新Wi-Fi規格へ対応した製品開発や新たな市場創出のためのサブギガ帯Wi-Fi(新規格802.11ahに準拠)の技術開発、クラウド関連の技術開発の取り組みを進めております。

 

当連結会計年度における研究開発費の金額は169百万円であります。

 

(4) その他

 「NAVI NEXT 2030」のもと、技術研究所ではSPC&Iにより「技術のフルノ」を維持・発展させつつ、「既存事業の強化」と「新規事業の創出」に取り組むこととしております。当連結会計年度には、新規市場の創出に向けて、ハンドヘルドのワイヤレス超音波プローブの活用分野探索等、共同研究及び市場評価のパートナーを広く募集するとともに、ダム・河川・港湾向けのマルチビームソナーによる自動計測技術及び小型無人船や、ビル建設現場向け/トンネル現場向け/地下現場向けの無線LANシステム等の研究開発を進めてまいりました。

今後も「NAVI NEXT 2030」における施策、具体的には、
・既存事業の競争力強化に向けた基盤技術の研究
・新規市場/新商品の創造に係る研究

・社内外の知見の結集と融合によるオープンイノベーションへの取り組み
等に取り組んでまいります。
 

 

新規育成事業

「NAVI NEXT 2030」では売上高1,200億円のうち、新規事業比率30%を目標に掲げております。新規事業を生み出していくためには、将来成長のための継続した投資は必要であることから、「戦略投資枠」を設定しており、新規事業の育成は戦略投資枠の対象とし、それらの育成に係る費用を事業部門とは別枠とする「新規育成事業」の考え方を導入し、それらへの挑戦を推進しております。「新規育成事業」の内、養殖支援事業については養殖関連の機器製造・販売とデータ解析サービス事業を本格的に始動し、建設テック事業については建設市場向けDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、 建設業界のデジタル化・遠隔施工を実現するため、現場環境に適した通信やセンサー機器の販売を積極的に展開しています。前連結会計年度に引き続き、社内研究開発を起点とした技術やアイデア、他社との協業をベースとした新規事業創出活動を継続します。また、今後は特に、既存事業における周辺領域への事業拡張を「領域拡大事業」として事業化に向けた活動を加速します。

 

当連結会計年度における事業セグメントに帰属しない研究所における研究開発費の金額は583百万円であります。

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