課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、創業以来の経営基本方針である「3つの安心」の価値観を受け継ぎ、内外環境変化に適応するために発展的に再定義した新たな企業理念「Sysmex Way」を制定し、これに基づき、お客様、従業員、取引先、株主、社会に対する提供価値を示した「行動基準」を掲げております。

 

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Mission   ヘルスケアの進化をデザインする。

Value    私たちは、独創性あふれる新しい価値の創造と、

人々への安心を追求し続けます。

Mind     私たちは、情熱としなやかさをもって、

自らの強みと最高のチームワークを発揮します。

 

 

 当社グループの進むべき方向性と大切にすべき価値観を表した「Sysmex Way」をグループ全体で実践し、社会からのより厚い信頼とさらなる飛躍を目指します。

 

(2) 経営環境の認識

 今後の見通しにつきましては、国内においては、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種によるコロナとの共生が進む等、個人消費や企業収益の回復が期待されております。一方で、世界的な原油価格の上昇や更なる円安の進展による物価上昇等、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、海外においても、地政学的リスクの顕在化、米中関係の動向、エネルギー価格の高騰等、景気の不確実性が一層高まっております。

 医療を取り巻く環境につきましては、先進国の高齢化に伴う医療の効率化、新興国の経済成長に伴う医療需要の拡大と医療の質・サービス向上へのニーズの高まりに加えて、人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)等の最先端技術のヘルスケア領域への応用が急速に進展しており、今後も継続した成長が期待されております。また、グローバルでの新型コロナウイルス感染症のパンデミックを起点とした医療体制の在り方や医療環境自体が大きく変化する可能性もあり、医療アクセスの向上、セルフメディケーションへの注目等、更なる成長機会が見込まれております。

 こうした中、当社グループでは、2021年4月より新たな中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期まで)をスタートさせました。長期ビジョンに基づくポジショニング目標達成に向けて、グループの力強い成長の持続とそれを支える経営基盤の強化を推進いたします。

 2023年3月期の連結業績予想につきましては、製品ラインアップの拡充や販売・サービス体制の強化等により、売上・利益共に伸張することを想定しており、売上高410,000百万円、営業利益76,000百万円、税引前利益72,500百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益50,000百万円を予想しております。

(注)新型コロナウイルス感染症が収束に向かい、経済活動も徐々に正常化する前提であります。

また、算定にあたりましては、通期の為替レートを対米ドル120円、対ユーロ130円で想定しております。

なお、上記予想は、現時点で入手している情報に基づき算定したものであり、様々な要因により変動する可能性があります。

 

(3) 目標とする経営指標

 グループ中期経営計画におきまして、2024年3月期を最終年度として、連結売上高420,000百万円、連結営業利益80,000百万円を達成することを目指します。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、2021年4月より新たな中期経営計画(2022年3月期から2024年3月期まで)をスタートさせております。2025年に向けた長期ビジョン(2018年制定)に基づくポジショニング目標の達成を目指し、今後3年間で取り組むべき重点アクションを設定し、具体的施策の実行を継続して推進いたします。グループ最大の収益源であるヘマトロジー分野に加え、血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野を重点分野と定め、優先的な資源配分により研究開発活動を強化し、新たな価値の創出と製品ラインアップの拡充を実現いたします。更に、手術支援ロボットを核とした新たな事業の創出と育成にも引き続き取り組み、非連続な成長の実現を目指します。

 また、新たな価値創造及び企業体質強化に向けたビジネスプロセス改革をグローバルに推進するため、次世代基幹システムやデジタル基盤刷新への取り組みを継続いたします。グループ全体の生産性を向上すると共に、お客様に対する新たなソリューションの創出に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指します。

 加えて、地球環境の持続可能性が喫緊の課題となっている中、グローバルに事業を展開する企業として、事業活動における環境への負荷低減が重要な課題の一つだと認識しております。長期的な環境マネジメントの指針として「シスメックス・エコビジョン2025」を策定しており、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量や水消費量の削減、環境に配慮したグリーン調達等を継続して推進いたします。このように製品・サービスの提供を通じた医療課題解決に取り組むと共に、環境への配慮や魅力ある職場の実現等、優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)をグループ全体で推進し、多様なステークホルダーの皆様へ安心をお届けすると共に、サステナビリティ経営の実現を目指します。

 経営戦略の実行における重要な課題は以下のとおりであります。

<ポジショニング目標達成に向けた取り組み>

 ① 成長性・収益性の向上を目指した新製品の投入加速、新興国戦略の推進

 ヘマトロジー分野では、「多項目自動血球分析装置 XRシリーズ」及び「多項目自動血球計数装置XQシリーズ」のグローバル展開を加速させることで、成長性・収益性の向上を目指します。また、人口増加及び経済成長、医療品質の向上が大きく期待される新興国において、ニーズに適した製品の導入を進め、医療アクセスの向上や医療インフラ強化に貢献します。特に、2019年度に直接販売・サービスを開始したインドを重要市場と位置付け、事業企画・製品開発・市場導入を推進し、新興国における市場シェアの拡大に取り組みます。

 また、各事業分野及び分野横断的な新たなクリニカルバリューを継続的に創出するため、戦略的にKOL(Key Opinion Leader)ネットワークを構築し、連携強化を図ります。更に、新製品投入加速に向け、商品開発に関わるバリューチェーン全体を変革する他、売上原価率の低減、サービス収益の向上及び事業活動全般のプロセスを効率化し、収益性向上を目指します。

 ② 重点分野(血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野)への積極的な投資による高成長の実現

 今後、大きな成長が期待される血液凝固検査分野、免疫検査分野、ライフサイエンス分野を重点分野に定め、経営資源を優先配分し、製品ラインアップの拡充と販売・サービス体制の強化により高成長と大幅な収益性の改善を目指します。また、必要に応じて戦略的なアライアンスやM&Aを効果的に活用し、強固な事業構造への変革を推進します。

 加えて、既に保有している技術の早期事業化に向け、製品開発の早期ステージから共同開発先や病院等のステークホルダーと連携することで、新しい価値創出に向けた取り組みを加速させます。

 ③ 非連続な成長実現のための新たな事業の育成

 手術支援ロボット「hinotori™」による外科領域のビジネスを日本で着実に拡大すると共に、将来のグローバル展開に向け、海外薬事承認取得に向けた活動を推進します。また、当社が検体検査領域で培った技術やノウハウを活かすことで、再生医療や遺伝子治療等、診断と治療の境界に位置する領域での新たな事業の創出や、革新的なデジタル技術の社会及び医療への実装を見据え、オープンイノベーションを推進し、医療データを利活用した新たな事業の創出にも取り組みます。

 ④ グループのデジタル化推進と顧客価値創出に向けたDXの実現

 新たな価値創造及び企業体質強化に向けたビジネスプロセス改革をグローバルに推進するため、継続的に次世代基幹システムやデジタル基盤の刷新に取り組み、バリューチェーン全体の最適化・効率化を目指します。また、お客様に対するデジタル化については、既に提供を開始しているICTソリューション「Caresphere™」のアプリケーション拡充による新たな付加価値の提供により、新しいソリューションの創出に向けて取り組みを推進します。

 

 ⑤ 戦略実行に資する人材ポートフォリオの充実と多様な人材を活かす魅力ある組織風土への転換

 持続的な成長を支える次世代リーダーと高度専門人材の獲得及び育成を強化するため、グローバル共通のジョブ型人材マネジメントシステムの定着を推進します。また、健康経営施策の実行による従業員の心身の健康をサポートし、すべての従業員が心身ともに健康で安心して働ける環境を整え、従業員の能力発揮とエンゲージメント向上を目指します。

 ⑥ サステナビリティ経営の強化・実践に向けたビジョン策定、施策展開

 医療課題の解決、品質の向上、環境配慮への対応強化、ガバナンスの強化等、当社の持続的成長に向けた優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)及びサステナビリティ目標に基づき、事業活動を通じた社会課題解決への貢献を通じて、企業価値の向上を図ります。

※ ヘマトロジー:

前連結会計年度において表記していた「血球計数検査」について、当連結会計年度より「ヘマトロジー」として表記している。

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

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