事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 当社グループは検体検査に関連する製品及び関連するサービスを提供する「ヘルスケア事業」を主たる事業としております。また、事業活動をグローバルに展開しているため、当社グループの業績は、各国・地域で今後起こりうる様々な要因によって大きな影響を受ける可能性があります。

 当社では、リスクマネジメントを含む当社グループの内部統制全般を統括する組織として「内部統制委員会」を設置しております。メンバーは取締役社長と担当執行役員及び監査等委員(社外取締役を除く)で構成されており、当委員会では、様々なリスクについて定期的に抽出を行い、その中でも当社グループとして事業に与える影響が大きなリスクを特定して対策を講じております。更に各地域、各部門の活動テーマにおいても、年度単位で計画立案し、定期的に報告を行っております。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 新型感染症の拡大による影響について

 新型コロナウイルス感染症の拡大による各国の医療環境を含む社会情勢は刻々と変化しており、今後も引き続き不確実な状況が続くと想定されます。当社グループの生産・販売等の活動は各種感染予防対策の実施やオンラインでのコミュニケーションの活用等により支障なく継続しておりますが、特に物流網や原材料調達等においては未だ混乱が見られ、状況が長期にわたって改善しない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、確実な事業継続のために対策チームを設置しており、今後も製品の安定供給、顧客へのサービス活動の継続、従業員の安全確保等に努めてまいります。また、新型コロナウイルス感染症の診断で使用される検査試薬等、新たな需要に応えるべく、製品の開発・販売を行っております。

 

(2) 為替変動による影響について

 当社グループは海外関係会社及び代理店を経由して海外へ販売を行っており、連結売上高に占める海外売上高の比率は、2021年3月期84.0%、2022年3月期84.7%と高い水準で推移しております。海外関係会社の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受けております。当社グループの外貨建て資産及び負債の決済及び期末時評価額については、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じておりますが、予測を上回る為替変動によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 なお、2022年3月期における為替変動の影響は、以下のとおりであります。

1円変動の影響

売上高

営業利益

USD

688百万円

166百万円

EUR

534百万円

153百万円

CNY

5,246百万円

3,921百万円

 

(3) 医療制度改革の影響について

 急速な少子高齢化、医療技術の進歩、患者の医療の質に対する要望の高まり等、医療を取り巻く環境変化を背景に、医療費を適正化し質の高い医療サービスを効率的に提供するための医療制度改革が継続して進められております。また、コロナ禍を機に医療インフラの比較的脆弱な国においても検査・医療の重要性が再認識され、医療制度改革が加速されると共に新たなニーズが生まれることが想定されます。当社グループの経営成績及び財政状態は、このような医療制度改革の影響を受ける可能性があります。このため、当社グループのネットワークを活用して様々な環境変化の中から的確に機会を捉えた上、今後も個別化医療に資する診断技術創出等のライフサイエンスの事業化を進める一方、検体検査機器、検体検査試薬、IT、サービス&サポートを合わせたトータルソリューションを提供し、多様化するニーズにきめ細かく対応できるよう努めてまいります。

 また、当社の機器・試薬の大部分は各国の薬事承認や登録が必要ですが、各国において規制見直しの動きが加速しており、薬事承認取得に関する要求事項が複雑・高度化する一方、規制緩和に向けた動きも見受けられます。このような変化に迅速かつ的確に対応することができず、取得済みの薬事承認の維持や新製品の薬事承認取得が遅延した場合等には、市場獲得機会の損失や対応コストが増加する可能性があると共に、お客様に製品をタイムリーにお届けすることができなくなる可能性があります。

 そのため、各国業界団体への参画等を通じて法規制に関する最新情報の把握に努めると共に、当社のネットワークを活用したグローバルな薬事承認取得体制により、薬事承認の適時的確な取得・維持に取り組んでおります。

 

(4) 当社グループ及び第三者の知的財産権について

 当社グループは、特許、商標、意匠等をグローバルに出願しておりますが、一部または全ての国で権利が付与されない可能性があります。また、当社グループの保有する知的財産権が無断使用された場合に、その無断使用を防ぐために講じる手段が十分には成功しない可能性があります。一方、第三者の知的財産権に関して、当社グループに正当性があるか否かに関わらず、訴訟を提起される、ロイヤルティの支払いを要求される等の知的財産紛争が起こる可能性があります。

 当社グループでは、グローバルコンプライアンスコード及び従業員への知的財産教育を通じて、当社グループ及び第三者の知的財産権を尊重しながら事業活動を推進するよう努めております。また、社規定にて知的財産レビューシステムを導入し、研究開発・事業に即した知的財産権の獲得を進めると共に、第三者の知的財産権に関する知財紛争の可能性を低下させるよう、取り組んでおります。

 

(5) 製品の品質について

 当社グループが提供する検体検査機器製品及び診断薬製品等には高い信頼性が要求されるため、万全の品質管理体制の下、製品の品質保証に取り組んでおります。しかしながら、万が一製品に品質問題が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、各国の法令・国際規格等に準拠する品質を維持するための仕組みの整備・運用はもとより、国内外の市場及び社内からの信頼性や安全性に関する情報を調査・分析し、設計品質の向上につながる技術情報の蓄積、新製品の量産開始・市場導入前の品質チェックに生かすことによって、品質保証の強化に取り組んでおります。

 

(6) 製品の安定供給について

 当社グループでは、検体検査機器製品及び診断薬製品等を世界190カ国以上に供給しており、市場への製品の安定的供給に努めております。しかしながら、急激な市況の変化やサプライヤーの事業停止等により部品・原材料等の調達が困難となった場合や、製造やサプライチェーンの拠点が大規模な自然災害や感染症等の発生、また、火災等の重大な事故に罹災した場合には、市場への製品供給に支障をきたす可能性があります。

 部品・原材料等は在庫の確保や複数社購買等によるリスク回避に努め、また、製造拠点においても災害等に対する予防、復旧対策の充実に取り組んでおります。

 特に、当社グループ売上高の59.4%(2022年3月期)を占める診断薬製品に関しては、1カ月以上の安全在庫の維持や生産拠点の複数化を推進すると共に中でも主力事業であるヘマトロジー分野の診断薬については、現地生産による製造拠点の複数化に加え、欧州・米州・中国・日本の主要拠点間での相互供給体制を構築し、供給を継続できるよう備えております。

 

(7) 情報システム利用におけるリスクについて

 当社グループでは、情報伝達や基幹業務支援、稟議等の決裁手続きに各種情報システムを導入しており、事業上の情報の多くはネットワークを通じて処理しております。

 そのため、情報システムやネットワーク回線の障害、あるいはコンピュータウイルスや外部からの情報システムへの侵入等による業務への影響を最小限に抑えるために、不正通信検知やマルウェアの隔離等の仕組みの導入、24時間の監視、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置と団体加盟等によるセキュリティ対策と IT-BCP(事業継続計画)の見直しのほか、厳格なユーザー管理やアクセス制限等の内部統制の強化に取り組んでおります。

 

(8) 企業買収等に関わるリスクについて

 当社グループでは、持続的成長や事業展開の手段としてM&Aまたは資本提携等を実施することがあります。これらのM&A等の実施にあたっては事前に十分な調査を行い、当社の負担するリスクを限定するよう努めております。しかし、対象会社の経営環境や事業の変化、事前調査において判明しなかった情報の露呈、または買収後の対象企業の経営環境や事業の変化等の影響を受け、期待されていた効果等が実現されない可能性があります。

 

(9) その他のリスクについて

 当社グループは、製造、販売、研究等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しております。これらの拠点や周辺地域において、地震・風水害等の大規模な自然災害や、テロ・紛争、国家間の経済摩擦等の地政学的な問題が発生し、当社グループの設備・インフラ及び人材に甚大な被害が生じて生産・販売等の活動が制限されたり、顧客からの需要の低下等が起きた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、今般のロシア・ウクライナ紛争に関して、当社はロシアにおいては販売子会社シスメックス ルース エルエルシーを通じて、またウクライナにおいては代理店を通じて販売サービスを行っておりますが、ロシア及びウクライナにおける売上高はグループ全体の約2%に留まるため、業績への直接的な影響は軽微と考えております。ただし、同紛争がもたらす世界経済への影響は刻々と変化しておりますので、注意深く情報収集・モニタリングを行い、当社への影響や必要な対応を適時検討してまいります。

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