経営者の視点による当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度における国内外経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な再拡大やロシアのウクライナへの侵攻などによる原材料、エネルギー価格の上昇等の影響はあるものの、防疫と経済の両立進展により経済・社会活動の制限が段階的に緩和され回復基調にありました。
このような状況のもと当社グループの主要市場の状況は、新型コロナウイルス感染症の再拡大による部品調達納期の長期化や、市況回復に伴う需要急増による原材料価格の高騰、世界的な半導体不足の影響等があるものの、パワーエレクトロニクス市場は設備自動化需要増加によるロボットニーズの拡大や第5世代移動通信システム(以下「5G」)対応のスマートフォンの普及、データセンター増強などにより工作機械、半導体製造装置市場の拡大が進みました。情報通信市場では高速大容量に対応した新規格Wi-Fiや5Gなどの市場拡大に加えて、電動工具のコードレス化や中国、インドの電動バイク需要増加などでリチウムイオン電池市場も拡大しました。また、昨年度新型コロナウイルス感染症の影響により大きく落ち込んだ車載市場も回復しました。
これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高120億52百万円(前年同期比26.0%増加)、営業利益12億39百万円(前年同期比14.2倍)、経常利益13億14百万円(前年同期比30.0倍)、親会社株主に帰属する当期純利益11億60百万円(前年同期比8.1倍)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日改正)等を当連結会計年度の期首から適用しています。収益認識に関する会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は15百万円減少しましたが、営業利益および経常利益への影響は軽微です。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。
セグメント別の業績は以下のとおりです。なお、当連結会計年度から、一部予算で決定した固定金額を含んでいた販売費及び一般管理費等の報告セグメントへの配分を全額実績金額へ変更しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。当連結会計年度の比較分析は、変更後の配分方法に基づいています。
〔パワーエレクトロニクス事業〕
当セグメントの売上高は 49億76百万円 (前年同期比 24.6 %増加)となりました。
ノイズフィルタは、データセンターなどの需要増加に伴う半導体メーカーの設備投資増加などにより半導体製造装置向けや、ロボットニーズの拡大により工作機械向けも増加しました。また、昨年度新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ電磁波ノイズ測定も需要が回復し、セグメント全体で売上高が増加しました。
営業利益は、主に売上高の増加により2億12百万円(前年同期は1億79百万円の損失)となりました。
〔情報通信事業〕
当セグメントの売上高は 72億39百万円 (前年同期比 27.2 %増加)となりました。
厚膜印刷基板は、電動工具のコードレス化の進展や電動バイク需要増加によりリチウムイオンバッテリーに搭載されるヒューズ向けが増加し、昨年度新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ車載市場の回復に伴い車載向けも増加しました。また、積層誘電体フィルタは新規格Wi-Fi向け新製品や5G用基地局向けなどが増加し、セグメント全体で売上高が増加しました。
営業利益は売上高の増加に加え、為替の円安効果などにより10億27百万円(前年同期比3.7倍)となりました。
生産・受注および販売の実績は以下のとおりです。
イ.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.金額は販売価格によっています。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.当連結会計年度において、受注実績に大きな変動がありました。これは、パワーエレクトロニクス事業
におきまして、主としてノイズフィルタの受注が著しく増加したことによるものであります。
ハ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合
(2)経営者の視点による財政状態およびキャッシュ・フローの状況の分析
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前期末に比べ14億42百万円増加し157億71百万円となりました。
流動資産は、日本ガイシ株式会社への転換社債型新株予約権付社債(以下「CB」)の繰上償還6億円や、国内グループ会社工場建屋改修および増産対応のための製造設備投資の支払い等で現金及び預金が3億61百万円減少しましたが、売上高の増加に伴い売上債権が7億82百万円増加、棚卸資産が1億27百万円増加したことにより、前期末に比べ5億35百万円増加し80億83百万円となりました。固定資産は、国内グループ会社工場建屋改修および増産のための製造設備投資等により、前期末に比べ9億7百万円増加し76億88百万円となりました。
負債は仕入債務が2億40百万円、未払金が1億96百万円、未払法人税等が1億74百万円、賞与引当金が91百万円増加する一方で、釜屋電機株式会社によるCBの新株予約権行使9億円や日本ガイシ株式会社へのCB繰上償還6億円等により、前期末に比べ7億19百万円減少し38億56百万円となりました。
純資産は主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の10億67百万円増加および退職給付に係る調整累計額の1億26百万円増加に加え、新株予約権行使により資本金および資本剰余金がそれぞれ4億50百万円増加したこと等により、前期末に比べ21億62百万円増加し119億15百万円となりました。
これらの結果、自己資本比率は、前期末に比べ7.5ポイント増加し75.6%となり、1株当たり純資産額は、前期末に比べ71円53銭増加し696円76銭となりました。
セグメント別の資産は以下のとおりです。
〔パワーエレクトロニクス事業〕
当セグメントの総資産は、28億61百万円(前期比14.5%の増加)となりました。産業用機械、装置などに使用されるノイズフィルタの売上高の増加による売上債権の増加および受注増加による棚卸資産が増加しました。
〔情報通信事業〕
当セグメントの総資産は、46億30百万円(前期比24.9%の増加)となりました。リチウムイオン電池に搭載のヒューズ用厚膜印刷基板や通信機器に使用される積層誘電体フィルタの売上高の増加による売上債権の増加および増産対応のための製造設備投資による有形固定資産が増加しました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、19億51百万円(前期末は23億13百万円)となり、前期末と比べて3億61百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況と主な要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、9億85百万円の収入(前期は54百万円の支出)となり、前期と比べて収入が10億39百万円増加しました。主な要因は、収入の増加として税金等調整前当期純利益の増加12億66百万円、賞与引当金の増減額の増加1億8百万円、未払金等によるその他の増加1億94百万円、収入の減少として売上債権の増減額の増加3億64百万円、退職給付に係る資産の増減額の増加1億56百万円等です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、7億11百万円の支出(前期は2億46百万円の支出)となり、前期と比べて支出が4億65百万円増加しました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出の増加4億73百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、6億93百万円の支出(前期は14億12百万円の収入)となりました。主な要因は、前期はCBの発行による収入14億74百万円、当連結会計年度はCBの償還による支出6億円です。
③ 資本の財源および資金の流動性に係る情報
資本の財源および資金の流動性について、当社グループの資金需要は製品製造のための原材料の購入、人件費、外注費などの製造費用、営業費用や研究開発費、本社費用などの販売費及び一般管理費および設備投資資金です。
当連結会計年度においては、運転資金および設備投資資金ともに自己資金で賄っており、当連結会計年度末における金融機関他からの有利子負債はありません。
今後の当社グループに必要な資金は営業活動によるキャッシュ・フローのほか、内部留保から充当する予定です。
(3) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しています。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要とします。これらのうち主なものは以下のとおりですが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。
① 棚卸資産の評価
棚卸資産は、取得原価で計上していますが、当連結会計年度末における正味売却価額が取得原価より下落している場合には、当該正味売却価額を連結貸借対照表価額とし、取得原価との差額を原則として売上原価に認識しています。正味売却価額は、販売実績に基づく価額から販売直接経費を控除するなどして算定しています。市場環境が想定よりも悪化した場合には追加の損失が発生し、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 固定資産の減損損失
有形固定資産、無形固定資産について、独立したキャッシュ・フローを生み出す管理会計上の最小単位でグルーピングを行っており、減損損失の測定のステップに至った場合に、各グループの単位で回収可能価額を見積り、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しています。回収可能価額の算定にあたっては、将来キャッシュ・フローについては社内における将来事業計画を根拠として見積り、正味売却価額については不動産鑑定評価額等から関連する経費等を差し引いた額で見積っています。
事業環境の悪化により、収益性が当初の想定を下回る場合には、回収可能価額が低下することで損失が発生し、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
③ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積って回収可能と判断される将来減算一時差異等について計上しています。将来の課税所得の見積り額に変更が生じた場合、繰延税金資産が増額又は減額され、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
④ 退職給付債務および退職給付費用の計算
退職給付債務および退職給付費用は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しています。実際の計算が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合は、退職給付債務および退職給付費用が増額又は減額され、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 引当金の計上
期末日において将来における費用又は損失が発生することが見込まれる場合に、入手可能な情報に基づいて見積りを行い、引当金を計上しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。
お知らせ