(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大がピークアウトしつつあり経済活動が本格再開する中、ウクライナ危機の発生により、市況価格の更なる高騰等、先行き不透明な状況にあります。米国では経済活動の再開に伴う需要の高まりによる供給不足でインフレが継続し、欧州でも各国政府が行動制限の緩和を進めているものの、ウクライナ情勢の緊迫化により景況感に悪化の兆しが見え始めております。中国では環境保全や不動産投資に対する政府の規制強化と感染拡大阻止に向けた厳しい行動制限等を背景に経済活動は減速傾向にあります。
一方、国内経済においても、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の進展により、経済活動に回復の兆しが見られましたが、原材料価格や原油価格の高騰、急激な為替変動など、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況のなか、持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社がコロナ禍に端を発する各種工程の遅延等により業績を大幅に悪化させた影響を受けて、多額の持分法による投資損失を計上いたしましたが、当社グループは引き続き、現在進めている「三井E&Sグループ 事業再生計画」(2019年5月に策定、2019年11月に一部見直し、以下、事業再生計画)の早期完遂、財務体質・収益体質の健全化及び、「2020年度中期経営計画」(2020年8月に策定、以下、「20中計」)に示す成長戦略の推進を最優先に取り組んでおります。
事業再生計画においては、2021年10月1日付で、「三井E&S造船株式会社の艦艇事業等(同日付で三菱重工マリタイムシステムズ株式会社に商号変更)の譲渡」及び、「三井E&S造船株式会社の商船事業の一部株式譲渡」、2022年1月11日付で「四国ドック株式会社の株式持分全ての譲渡」、また2022年4月1日付で「株式会社MESファシリティーズ(同日付で株式会社NHファシリティーズに商号変更)の株式譲渡」がそれぞれ完了いたしました。また、財務体質の健全化及び成長投資のための資本対策として、2022年3月31日付で、「第三者割当によるA種優先株式の発行、第三者割当による第1回行使価額修正条項付新株予約権の発行」により合計約170億円の資金調達を行うことを公表し、2022年4月18日付で、「第1回行使価額修正条項付新株予約権」の発行価額の全額の払込が完了いたしました。
さらに、当社グループは、今後の成長と収益力向上のために事業と経営との距離を縮め、一体となり戦略立案・実行スピードを上げることを目的として、2023年4月1日を目処に純粋持株会社体制を解消し、株式会社三井E&Sマシナリー及び株式会社三井E&Sビジネスサービスと、2022年3月31日付で吸収合併契約を締結いたしました。また、本吸収合併後の当社は、2022年6月28日開催の定時株主総会で定款の一部変更が承認されることを条件として、2023年4月1日付で商号を「株式会社三井E&S」に変更する予定です(2022年3月31日公表)。
このように、当社グループは事業再生計画に一定の目途が付けられる状況に至りましたが、一方で、当社を取り巻く事業環境が大きく変化したことを踏まえ、「2023年度中期経営計画」を1年前倒しし、2022年度からスタートすることを公表いたしました。この成長戦略の一環として、中核事業である舶用推進エンジン事業の開発・生産・アフターサービス強化のため、2022年3月31日付で、「株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン及びその付随事業の承継に関する基本合意書の締結」を公表いたしました。
当社グループでは、2022年度を事業再生計画の仕上げと、成長戦略の遂行に向けた土台固めと位置づけ、各施策の確実な遂行と、更なる成長戦略を実行・加速させることで、新生三井E&Sグループの企業価値向上に取り組んでまいります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて3,498億78百万円減少の4,091億50百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べて3,243億47百万円減少の3,462億円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて255億31百万円減少の629億49百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、受注高は5,110億89百万円(前期比△11.4%)、売上高は5,793億63百万円(前期比△10.1%)、営業損失は100億29百万円(前期は122億43百万円の営業損失)、経常損失は257億42百万円(前期は82億23百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は218億25百万円(前期は1億34百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
なお、会計方針の変更として、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社の連結財務諸表において、従来は日本基準を適用しておりましたが、当連結会計年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。当該会計方針の変更は遡及適用しているため、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。また、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。
〔経営成績の推移:連結ベース〕 |
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受注高 (百万円) |
売上高 (百万円) |
営業損失(△) (百万円) |
経常損失(△) (百万円) |
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△) (百万円) |
1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失 (△) (円) |
2022年3月期 |
511,089 |
579,363 |
△10,029 |
△25,742 |
△21,825 |
△269.94 |
2021年3月期 |
576,668 |
644,686 |
△12,243 |
△8,223 |
134 |
1.67 |
2020年3月期 |
996,848 |
786,477 |
△62,079 |
△60,457 |
△86,210 |
△1,066.47 |
セグメントごとの経営成績は次のとおりとなりました。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は変更後の報告セグメントの区分に基づき記載しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
(船舶)
受注高は195億21百万円(前期比△48.4%)、売上高は280億88百万円(前期比△53.3%)、営業損失は4億38百万円(前期は19億16百万円の損失)となりました。
(海洋開発)
受注高は2,706億97百万円(前期比△15.6%)、売上高は3,233億22百万円(前期比+11.2%)、営業損失は80億86百万円(前期は217億83百万円の損失)となりました。なお、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)等の事業を担う三井海洋開発株式会社及びその連結子会社は、持分の減少に伴い、第3四半期連結会計期間末より持分法適用関連会社に変更となっております。そのため、受注高、売上高、営業損益の認識は連結子会社であった第3四半期連結累計期間までとなり、第4四半期連結会計期間の損益は持分法投資損益として連結数値に反映しております。
(機械)
受注高は1,487億69百万円(前期比+18.7%)、売上高は1,537億36百万円(前期比△3.3%)、営業利益は81億56百万円(前期比△16.9%)となりました。
(エンジニアリング)
受注高は16億52百万円(前期比△92.6%)、売上高は76億29百万円(前期比△80.0%)、営業損失は108億10百万円(前期は4億74百万円の利益)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローは202億65百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは709億23百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは8億6百万円の収入となったことなどにより、前連結会計年度末に比べて846億64百万円減少(△62.5%)して508億18百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の支出は、202億65百万円(前連結会計年度は74億78百万円の収入)となりました。これは主として、棚卸資産の減少及び仕入債務の増加などによる収入があった一方、税金等調整前当期純損失の計上及び売上債権の増加などによる支出があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、709億23百万円(前連結会計年度は211億15百万円の収入)となりました。これは主として、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出及び貸付けによる支出などがあったことによるものであります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結キャッシュ・フロー計算書関係)」に記載のとおりです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、8億6百万円(前連結会計年度は68億13百万円の支出)となりました。これは主として、長期借入金の返済及び社債の償還による支出などがあった一方、短期借入金の純増加及び長期借入れによる収入などがあったことによるものであります。
〔財政状態の推移:連結ベース〕
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総資産 (百万円) |
純資産 (百万円) |
自己資本比率 (%) |
営業活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) |
投資活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) |
財務活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) |
有利子 (百万円) |
2022年3月期 |
409,150 |
62,949 |
14.0 |
△20,265 |
△70,923 |
806 |
150,679 |
2021年3月期 |
759,029 |
88,480 |
8.5 |
7,478 |
21,115 |
△6,813 |
174,936 |
2020年3月期 |
840,380 |
105,355 |
7.7 |
△37,213 |
84,125 |
△26,825 |
187,117 |
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
船舶 |
27,324 |
△53.8 |
海洋開発 |
319,811 |
4.1 |
機械 |
155,178 |
0.0 |
エンジニアリング |
8,466 |
△82.7 |
その他 |
67,058 |
△30.5 |
合計 |
577,840 |
△13.3 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
船舶 |
19,521 |
△48.4 |
7,991 |
△82.5 |
海洋開発 |
270,697 |
△15.6 |
- |
△100.0 |
機械 |
148,769 |
18.7 |
90,443 |
△3.3 |
エンジニアリング |
1,652 |
△92.6 |
20,844 |
△63.5 |
その他 |
70,449 |
0.3 |
129,354 |
2.8 |
合計 |
511,089 |
△11.4 |
248,634 |
△84.2 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、受注残高に著しい変動がありました。これは主に、海洋開発セグメントにおいて、連結子会社であった三井海洋開発株式会社の株式を一部売却し、連結の範囲から除外したことによるものであります。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
船舶 |
28,088 |
△53.3 |
海洋開発 |
323,322 |
11.2 |
機械 |
153,736 |
△3.3 |
エンジニアリング |
7,629 |
△80.0 |
その他 |
66,586 |
△31.0 |
合計 |
579,363 |
△10.1 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
Equinor Brasil Energia Ltda. |
698 |
0.1 |
86,234 |
14.9 |
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、主な内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の増減状況は、主に連結子会社であった三井海洋開発株式会社の株式を一部売却し、新たに持分法適用関連会社としたことで、連結の範囲から除外となったことによる影響が含まれております。
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ3,498億78百万円減少の4,091億50百万円となりました。これは、現金及び預金が858億85百万円、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度は受取手形及び売掛金)が1,553億91百万円、長期貸付金が378億33百万円それぞれ減少したことなどによります。
負債は、前連結会計年度末と比べ3,243億47百万円減少の3,462億円となりました。これは、支払手形及び買掛金が1,665億2百万円、前受金及び契約負債(前連結会計年度は前受金)が631億15百万円それぞれ減少したことなどによります。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことなどにより、前連結会計年度末と比べ255億31百万円減少の629億49百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の受注高は、連結子会社の株式売却に伴い連結範囲から外れたことにより、前連結会計年度と比べて655億79百万円減少(△11.4%)の5,110億89百万円となりました。
売上高は、船舶部門において新造船工事の減少及び、エンジニアリング部門において連結子会社の売却等により653億23百万円減少(△10.1%)の5,793億63百万円となりました。
営業損失は、エンジニアリング部門において期末の為替相場の影響により引当済みの外貨建て費用が一時的に増加したことなどにより、100億29百万円(前期は122億43百万円の営業損失)となりました。
経常損失は、営業損失の計上及び持分法による投資損失を計上したことなどにより、257億42百万円(前期は82億23百万円の経常損失)となりました。
親会社株主に帰属する当期純損失は、経常損失の計上及び法人税等調整額(借方)の計上により、218億25百万円(前期は1億34百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
なお、会計方針の変更として、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社の連結財務諸表において、従来は日本基準を適用しておりましたが、当連結会計年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。当該会計方針の変更は遡及適用しているため、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。また、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりです。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は変更後の報告セグメントの区分に基づき記載しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。
(船舶)
一般商船分野においては、コンテナ船並びにバルクキャリアの用船マーケットは引き続き高値を維持しておりますが、昨年後半からの資機材価格の上昇並びにロシアによるウクライナ侵攻から景気の不透明感が生まれ、船主、造船所双方の様子見姿勢が顕著になってきております。一方、環境負荷低減の動きは停滞しておらず、船主、造船所から新燃料搭載船舶検討の要望が寄せられております。
自律船関連の分野では、内航海運での船員不足及び船員高齢化が、日本の海上輸送の根幹を揺るがす重大な課題となっております。また海難事故の7割以上はヒューマンエラーと言われており、海上輸送の安全確保にはヒューマンエラーの最小化が不可欠であります。さらに国土交通省からの自動運航船の設計ガイドラインの発表や、国際海事機関(IMO)での自律・自動操船の規則に関する議論も活発になり、自律・自動船の社会実装に向けた社会制度の整備が進んでいるため、近い将来の需要拡大が期待されております。
このような状況下、当社グループは一般商船分野においては、これまで培ってきたエンジニアリング能力を活用し、国内外のパートナー企業と連携を取りながら当社設計のライセンス供与、環境対応船の開発、設計受託業務などの営業活動を中心に進めており、国内外を問わずエネルギーエンジニアリング分野において収益向上及び社会貢献につながるよう取り組みを進めております。またパートナー企業以外の他造船所とも船舶仲介、ライセンス供与(船型開発)の案件の協議を行っており、顧客の船型開発・設計要望に貢献できるよう受注活動を展開しております。
自律船分野においては、モニタリング装置、操船装置、操船支援装置を中心に海運会社に向けた営業活動を展開しております。また、現状の受注額としては少額ですが、船舶向けのDX技術を応用した船舶運航や保守の支援サービスについても営業活動を開始しており、「安全向上・省人化による船舶運航の改善」という海事産業の重要課題解決のため自律操船装置の製品化に向けて先駆的取り組みを行い、先行者の利を最大限得るべく積極的な活動を展開しております。
受注高は、新造船の受注が低調であったことなどにより、前期と比べて182億83百万円減少(△48.4%)の195億21百万円となりました。売上高は、新造船工事の減少などにより、前期と比べて319億94百万円減少(△53.3%)の280億88百万円となり、営業損失は、不採算工事の減少などにより、前期と比べて14億77百万円改善の4億38百万円となりました。
(海洋開発)
原油価格は、その時々の情勢により上下しつつも、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の進展により経済活動が徐々に正常化に向かい、需要回復期待が強まったことなどから、2022年初めには1バレル80米ドルまで回復してきましたが、2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、100米ドルを超える水準にまで上昇しております。
一方、取り巻く事業環境は、脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる普及、デジタル技術の進化など大きく変化しています。こうした事業環境の変化を確実に捉え、既存事業で確実に収益を確保しつつ、浮体式洋上風力発電、海底資源開発、デジタルソリューション事業など、将来の収益源の育成を着実に進めてまいります。
FPSO等の事業を担う三井海洋開発株式会社及びその連結子会社は、持分の減少に伴い、第3四半期連結会計期間末より持分法適用関連会社に変更となっております。そのため、受注高、売上高、営業損益の認識は連結子会社であった第3四半期連結累計期間までとなり、第4四半期連結会計期間の損益は持分法投資損益として連結数値に反映しております。
受注高、売上高及び営業損失の9ヵ月実績は、それぞれ、前期と比べて501億13百万円減少(△15.6%)の2,706億97百万円、325億21百万円増加(+11.2%)の3,233億22百万円、136億96百万円改善の80億86百万円の損失となりました。同社グループに係る持分法投資損益は、新型コロナウイルス感染拡大による建造工事の収益率の低下や、進捗の遅れ等による追加費用が生じたこと、チャーターサービスを提供するFPSOの操業停止及び修繕費の発生などにより、166億86百万円の損失となりました。
(機械)
舶用ディーゼル機関については、新型コロナウイルス感染症の影響、資機材価格高騰などにより厳しい事業環境が続く中、120基/274万馬力と低水準の引渡しとなりました。来期は137基/288万馬力を計画しており、回復の兆しが見られます。今後は、ゼロエミッション化の流れを受け、LNG、メタノール、アンモニアなど多様な燃料に対応すべく積極的な研究開発、受注活動に努めます。
運搬機については、前年度新型コロナウイルス感染症の影響による受注低迷から操業不足が懸念されましたが、第2四半期連結累計期間以降に大型案件の受注が続き、海外向け受注高は前期と比べて大幅増加となりました。国内市場においても、新設、増設に加え、既設の老朽化更新など、新型コロナウイルス感染症の影響は少なく、新たに販売を開始したコンテナヤードクレーンの脱炭素化を目指したニアゼロエミッショントランステーナの需要も堅調です。
産業機械については、脱炭素化の流れから石油精製向けの投資抑制の影響により、往復動圧縮機、軸流圧縮機などの受注環境は非常に厳しい状況にありますが、プロセス機器については老朽化による国内中小規模の更新案件などにより堅調に推移しました。今後は製造からアフターサービスまでの一貫した体制を構築すると共に、水素関連市場への取組みを強化し、成長に繋げていきます。
ソリューション事業については、定期点検要領の改訂により、道路・トンネル・橋梁の点検における「人手」による検査の代替として「次世代点検技術」(機械化)による検査が可能となり、今後、当社トンネル探査車等レーダ事業の需要拡大が期待できます。また、ロボティクス事業に加え、大型造波装置などの水理実験施設や大型可動構造物、素粒子物理学実験設備などを対象とする設備機械事業にも注力し、事業拡大を図ります。
アフターサービスを中心としたLSS事業(製品ライフサイクル対応型事業及び顧客問題解決型事業)については、ディーゼル部品が堅調だった一方、産業機械関係は投資抑制や高炉の一部停止などの影響で厳しい状況が続きます。クレーン関係は新型コロナウイルス感染症の影響により海外案件が低迷しましたが、国内は既設クレーンの更新工事などにより堅調に推移しました。
受注高は、各事業において新型コロナウイルス感染症拡大に伴う投資抑制が解消されつつあることを受け、前期と比べて234億49百万円増加(+18.7%)の1,487億69百万円となりました。売上高は、主に舶用ディーゼル機関の前期の受注高減少に伴う出荷台数減少などにより、前期と比べて53億12百万円減少(△3.3%)の1,537億36百万円となり、営業利益は、売上高の減少などにより前期と比べて16億63百万円減少(△16.9%)の81億56百万円となりました。
(エンジニアリング)
環境分野においては、2021年4月1日付で当社が保有する別海バイオガス発電株式会社及び西胆振環境株式会社の全株式を連結子会社である三井E&S環境エンジニアリング株式会社(以下、MKE)に会社分割(吸収分割)により承継させた上で、当社が保有するMKEの全株式について、JFEエンジニアリング株式会社へ譲渡いたしました。
海外インフラ分野については、現在、インドネシア向け火力発電所土木建築工事2件について確実な工事遂行に注力しております。本工事完了後は、同事業から撤退し、そのリソースを当社グループの成長の見込める事業に再配置いたします。
受注高は、前期に環境関連事業の子会社を譲渡した影響などにより、前期と比べて208億24百万円減少(△92.6%)の16億52百万円となりました。売上高は、新規受注を控えた影響に加え連結子会社の減少により前期と比べて305億70百万円減少(△80.0%)の76億29百万円となり、営業損失は、上記に加え、引当済みの外貨建て費用が期末の為替相場により一時的に増加したことなどにより、112億84百万円悪化の108億10百万円となりました。
c. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a. 資金需要
当社グループは個々の契約金額が大きな製品を受注生産しており、運転資金は工事にかかる材料費、請負工事費、及び人件費が占めておりますが、個々の工事の契約による支払い条件、工事の進捗により、一時的な運転資金が大きくなりやすい傾向があります。加えて、海外大型EPCプロジェクトの支出も想定しております。
投資資金の主なものは、製造工場を維持・増強するための設備資金となっており、足元では非中核事業等の売却を行って、運転資金、投資資金へも充当しております。
また、中核事業のグリーン戦略・デジタル戦略を推進するために必要な成長投資資金は、優先株の発行、及び新株予約権の行使により得られる資金を中心に充当いたします。
なお、現在当社グループは財務体質の強化が課題となっていることから、設備投資、投融資などの長期的な資金は、主力事業とする機械事業分野に集中させ、またリース取引を活用することで、一時的な多額の支出を抑制していく方針としています。
b. 資金調達
当社グループの運転資金、投資資金は主に営業活動による収入を財源とすることを基本とし、日々の資金の動きで不足が生じた場合は、金融機関からの借入で調達しております。また、海外大型EPCプロジェクトの遂行資金は、これまでは非中核事業や不稼働資産の売却により確保してきましたが、22年度からは主要取引金融機関からの借入により調達する予定です。これらの借入金を適時調達できる状態を維持するため、主要取引金融機関とは長年にわたる良好な取引関係を維持しており、一部の金融機関とはコミットメントラインを設定し、緊急の資金需要にも備えています。また、上場子会社を除いた連結子会社との間でCMS(キャッシュ・マネージメント・システム)を導入して、グループ全体での資金効率を高め、安定的に資金の流動性を確保できる体制を構築しております。
なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
合計 |
返済・償還 1年以内 |
返済・償還 1年超 |
短期借入金 |
94,615 |
94,615 |
- |
長期借入金 |
27,759 |
8,101 |
19,657 |
社債 |
20,000 |
15,000 |
5,000 |
リース債務 |
8,305 |
1,808 |
6,496 |
合計 |
150,679 |
119,524 |
31,154 |
④ 経営計画の達成・進捗状況
当社グループは、エンジニアリング事業における過年度の大規模な損失により、財政基盤が著しく毀損し、自己資本の回復と資金の確保が急務となっており、2019年度から2022年度までを事業再生計画期間とする「三井E&Sグループ 事業再生計画」を2019年5月に策定し、財務体質及び収益体質の強化、並びに事業構造の変革を推し進めております。また、当該期間中に発生した追加損失を受けて、2019年11月に計画の一部見直しを行い、「資産及び事業の売却案件の追加と実行の加速」、「事業構造の改革及び協働事業に関する他社との協業の促進」を対策に加えて推進しております。
さらに、当社グループは、2020年8月に「20中計」を策定し、事業の集中と協業を明確にし、アライアンスによる市場創出を進め、「全ての機械にデジタル価値を付加する企業」を目指して施策を推進してまいりました。
「20中計」では、有利子負債の削減や資産の有効活用を重視し、売上至上主義から脱却し、利益追求を重視する観点から、経営指標として売上高経常利益率、総資産回転率及びNET有利子負債EBITDA倍率を選定し、最終年度である2022年度において、売上高経常利益率:4.0%以上、総資産回転率:0.80倍以上及びNET有利子負債EBITDA倍率:5倍未満を達成することを目標として設定しました。
当連結会計年度においては、三井海洋開発株式会社が第3四半期連結会計期間末より持分法適用関連会社に変更となったことにより売上高が目標値と乖離し、また、同社においてコロナ禍に端を発する各種工程の遅延等を背景に大幅に悪化したことから持分法投資損失を認識したため経常損失となりましたが、環境関連事業の譲渡や艦艇事業の譲渡、商船事業の資本提携や子会社株式の譲渡等、「資産売却と協業の推進」を加速させた結果、総資産及び有利子負債は減少しております。また、過年度も含め総額約1,200億円規模の事業・資産売却が完了し、事業再生計画に一定の目途をつけることができました。
一方、持続可能社会への急速な移行等、当社を取り巻く事業環境が大きく変化しているため、当社グループは次期中計を1年前倒しで取り組むこととし、「23中計」を2022年5月に公表しております。現在は「23中計」で定める数値目標の達成に向けて取り組んでおり、その各施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。
<20中計の進捗>
指標 |
2022年度目標 |
2021年度実績 |
目標との差異 |
売上高 |
7,700億円 |
5,793億円 |
△1,906億円 |
売上高経常利益率 |
4.0%以上 |
△4.4% |
△8.4% |
総資産回転率 |
0.80倍以上 |
0.99倍 |
+0.19倍 |
NET有利子負債EBITDA倍率(※1) |
5倍未満 |
-(※2) |
- |
※1. NET有利子負債EBITDA倍率=(有利子負債残高-現金及び預金)÷(営業利益+減価償却費+持分法による投資損益)
※2. 2021年度 NET有利子負債EBITDA倍率の実績については、営業損失及び持分法による投資損失の合計額が減価償却費を上回ったことから「-」としております。
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