文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
事業再生計画に一定の目途が付けられる状況に至りましたが、一方で、当社を取り巻く事業環境が大きく変化したことを踏まえ、当社グループは、「2023年度中期経営計画(以下、「23中計」)」を一年前倒しし、22年度からスタートします。23中計では、持続可能社会への急速な移行、環境変化や当社自体の変革を踏まえ、グループの企業理念・ビジョン・経営姿勢を再定義いたしました。
■企業理念
エンジニアリングとサービスを通じて、人に信頼され、社会に貢献する。
■ビジョン
2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決を目指す。
■経営姿勢
新しい価値の創造を顧客と共に実現
健全な財務体質と堅実な利益を追求
健康で安全に働ける環境整備を推進
また、当社は2023年4月に純粋持株会社体制を解消し、事業持株会社体制への移行に伴い、社名を見直し「E&S」に込める意味を、今後の当社の目指していく姿勢や事業ドメインに沿って再定義しました。
■新社名 株式会社三井E&S
「E&S」には、「Engineering & Services for Evolution & Sustainability」の意味合いがあり、当社が社会の進化と持続を目指しエンジニアリングとサービスに注力することで、当社グループの企業価値の持続的向上を図る企業姿勢を込めております。
(2)経営戦略等
2019年度にスタートした「三井E&Sグループ 事業再生計画」では、「財務・収益体質の強化」、「事業構造の変革」という2つの戦略を掲げ、総額約1,200億円規模の事業・資産売却を完了いたしました。
また、「2020年度中期経営計画」においては、施策であるパワーメカトロニクス製品のデジタル化推進・クリーンエネルギー転換といった成長機会に対応するため、アンモニア焚き舶用エンジンや港湾クレーン自動化技術等に関する設備投資・研究開発を積極的に展開し、当社グループの成長戦略推進を図っております。
しかし、事業再生計画には一定の目途がついた一方、持続可能社会への急速な移行等、当社を取り巻く事業環境が大きく変化しているため、次期中計を1年前倒しで取り組むこととし、「23中計」を2022年5月に公表しました。
「23中計」のビジョンは「2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決」を目指す姿として、当社グループの中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業の強みを更に強化し、サービスやソリューション提供へと収益モデルの変革を進めます。
(3)経営環境等
当社グループを取り巻く事業環境は、ウクライナ情勢の変化等による原材料・エネルギー価格の高騰、為替や資源相場のボラティリティの増大に加え、引き続き新型コロナウイルスの感染状況の変化といった世界経済の先行き不透明感が一層増す中、新造船市場の低迷、中国・韓国の競合企業の攻勢による価格競争の激化、持続可能社会への急速な移行等、既存のビジネスモデルからの変革が求められる環境となっております。一方、新型コロナウイルスのワクチン接種や各国の政策対応が回復に重要な役割を果たし、抑制されていた経済活動が徐々に回復しており、新興国を中心としたエネルギー需要の増加や環境・省エネ志向の高まり、さらには国内のインフラ更新需要の増大等、事業拡大の機会も再び大きくなるものと想定されます。
なお、新型コロナウイルス感染症による主な事業等への影響については、「2 事業等のリスク」又は「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 b. 経営成績」に記載のとおりです。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「23中計」では、2025年度に、連結売上高:2,800億円、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26%、及びNET有利子負債EBITDA倍率:5倍、を経営数値目標として掲げ、その達成に全力を注いでまいります。
また、当社グループは、サステナビリティ課題に対し、以下のマテリアリティ及び2030年度目標を設定しました。各社会課題の解決及び人材育成・多様性の確保に注力してまいります。
マテリアリティ |
2030年度目標 |
脱炭素社会の実現 |
・環境対応製品市場投入によるCO2削減貢献量 従来比66%削減(2019年度比) ・グループの生産活動によるCO2削減量 従来比17%削減(2019年度比) |
人口縮小社会の課題解決 |
・自動化製品(トランステーナ) 市場投入: 自動化製品率40%(年間売上高比) |
多様化確保への取り組み |
・管理職 女性比率: 5%、外国人比率: 3% ・従業員全体) 〃 :10%、 〃 : 5% ・技術職新卒) 〃 :10%、 〃 :20% |
前中計期間である2021年度の達成・進捗状況は、「20中計」との対比として「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④経営計画の達成・進捗状況」に記載のとおりです。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、エンジニアリング事業の海外大型EPCプロジェクトの損失により、財務基盤が大きく毀損したことから、この回復を最優先課題として進めて参りました。また、造船事業やエンジニアリング事業など、不採算事業からの撤退や新たな収益の柱となる成長事業の育成を進めています。このような状況のもと、当社グループは、ステークホルダーの皆様の信頼回復に向け「三井E&Sグループ 事業再生計画」に加え、「23中計」を1年前倒しスタートさせ、22年度は事業再生計画の仕上げと、成長戦略の遂行に向けた土台固めに取り組んでまいります。具体的には以下のとおりです。
(財務体質及び収益体質の強化)
事業再生計画に基づく、事業や資産売却の実行に加え、財務体質の健全化及び成長資金確保のため、2022年3月31日付で、合計約170億円の資金対策を行うことを公表いたしました。更に、「23中計」では、「事業再生計画の仕上げ」、「成長戦略」、「機能戦略」を基本方針とした戦略を掲げ、成長戦略による売上規模拡大と収益安定化を図り、財務体質の更なる改善に努めます。
(成長戦略の推進)
「23中計」では、「マリン領域を軸に、当社グループの中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業を「グリーン」と「デジタル」の切り口で発展させる」ことを成長戦略の柱としております。具体的な施策は 次のとおりです。
①コア事業の強化
コア事業を「舶用推進」「港湾物流」「保守・探査」と明確にし、コア事業を軸に収益力強化を進めてまいります。この一環として、2022年3月31日付で、「株式会社IHI 原動機の舶用大型エンジン事業承継に関する基本合意書の締結」を公表し、コア事業である「舶用推進」の、舶用大型機関の開発・生産・アフターサービス強化を進めてまいります。
②収益モデルの変革
コア事業である「舶用推進」「港湾物流」の各事業を、「グリーン戦略」と「デジタル戦略」により、更なる強化を進めてまいります。
グリーン戦略では、当社環境対応製品のエンジニアリングに注力し、脱炭素関連製品提供を進めてまいります。また、デジタル戦略では、当社サービス網とデジタル技術の掛け合わせによるサービス開発により、海上輸送と港湾荷役の連携など強みを持つ分野で、デジタル技術を活用したサービスを提供してまいります。
(サステナビリティ課題の取組み)
気候変動や人口縮小社会の到来は、当社事業にも重要な経営課題と認識し、当社事業へのリスクと機会を踏まえ、マテリアリティを、「脱炭素社会の実現」と「人口縮小社会の課題解決」と設定いたしました。このマテリアリティに向け、中長期の目標を掲げ、取り組みを推進してまいります。
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