課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。

(1) 経営方針、経営戦略等

① 経営方針

当社グループでは、技術と誠意を経営の根幹として、社会に役立つ価値を広く創造し、豊かな未来社会に貢献することを企業理念としている。

この企業理念のもと、“ものづくりとエンジニアリング”の知恵と先端技術を活用した製品・サービスを提供することにより、豊かな地球環境と社会・産業・生活基盤づくりに貢献する社会的存在感のある企業グループを目指すとともに、広く社会とのコミュニケーションを行い、会社情報を積極的かつ公正に開示することにより、社会から信頼される企業グループづくりに努めている。

 

② 経営戦略等

当社グループでは、クリーンなエネルギー・水の提供、環境保全、災害に強く豊かな街づくりを通じて、全てのステークホルダーに対する「サステナブルで、安全・安心な社会の実現に貢献するソリューションパートナー」として社会的使命を果たすことを目指して、2030年での達成を目指した長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」を掲げるとともに、2020年度を初年度とする3か年の中期経営計画「Forward 22」を実施している。

長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」では、世界的にSDGs(持続可能な開発目標)の概念が広がり、持続可能な開発・循環型社会の実現に向けて社会が動き出している中で、当社グループが収益性を高め持続可能な企業グループになるため、顧客への提供価値最大化による利益率の向上に取り組んでいく。クリーンなエネルギー・水に対する取組みとして、ごみ焼却発電の更なる展開、バイオマス発電、風力発電等の推進により、温室効果ガス排出削減に貢献する再生可能エネルギーの利用拡大を目指すとともに、水事業に対する国内自治体の財源不足に対応するための官民連携や、レンタル設備による災害時の緊急水需要への対応に取り組んでいく。また、環境保全、災害に強く豊かな街づくりの実現のため、ごみ焼却発電・リサイクル施設事業によるごみ処理・廃プラスチック問題への取組みを行うほか、フラップゲート式水門による津波・高潮対策や、橋梁、高速道路、水門等のインフラ設備の老朽化や自然災害対策としてのメンテナンス・遠隔監視事業の展開等に取り組んでいく。

中期経営計画「Forward 22」では、長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」で目指す姿を見据え、2020年度から2022年度までの3か年を「収益力の強化」を推進し確実に成果をあげる期間と位置づけ、グループ全員が一丸となり、「私がやる!踏み出す一歩が未来を変える」という心構えで着実に力強く前進するべく、製品・サービスの付加価値向上、事業の選択・集中の推進とリソースの伸長分野へのシフト及び業務効率化・生産性向上による働き方改革の実現に取り組んでいる。具体的な施策は次のとおりである。

 

中期経営計画「Forward 22」具体的施策

1.製品・サービスの付加価値向上

(1) 先端技術の活用

データの収集・蓄積・分析の基盤整備、診断・自動オペレーション技術の開発及び当社グループの製品やサービスへのIoTやAIの組み込み提案など、先端技術を活用した新しいビジネスの創出と伸長を行う。

(2) 事業立地の転換、顧客・市場との対話の促進

社会の変化を敏感に察知し、顧客との対話を通じて求められているものを的確に捉え事業立地の転換を図り、顧客の課題を解決する新しい事業モデル、製品・サービスを提供することにより、事業領域の拡大、良質受注の確保に努める。

(3) グループ総合力の発揮

当社グループは、クリーンなエネルギー・水の提供、環境保全、災害に強く豊かな街づくりなどの事業分野別に、当社事業部門と関係会社で構成する事業グループを形成しているが、さらに共同研究開発機関等や業務提携先を加え共創型の事業グループに進化させることにより、競争力のある企業グループを実現する。

2.事業の選択・集中の推進とリソースの伸長分野へのシフト

(1) 目標管理制度の導入

事業・機種別の目標数値を重要目標達成指標(KGI)で設定するとともに、それを達成するための重要成功要因(KSF)と重要業績評価指標(KPI)を明確にした事業戦略を策定し、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)サイクル、特に「Check」と「Action」を確実に実施することにより、収益管理を徹底する。

 

(2) ポートフォリオ・マネジメントの一層の推進

目標管理制度による各事業・機種の目標数値の達成度と当該事業の魅力度・将来性などの事業評価を定量的、定性的に総合判断して、事業の選択と集中を推進する。

3.業務効率化・生産性向上による働き方改革の実現

(1) グループ経営管理制度の変革による業務効率化

本社共通部門のグループ統括機能(戦略企画・推進機能、コントロール機能、コンプライアンス・社会的責任遂行機能)を強化し、グループ全体を統制するとともに、当社と関係会社で持つ専門サービス提供機能をグループとして再編・効率化し、グループ全体の管理部門の人員配置の見直し、重点部門への最適配置を推進する。

(2) ものづくり事業のあり方の検討

ものづくり事業へのロボットの導入、AIの活用、生産現場のIoT革新など、スマート工場化に向けた取組みを推進し、働き方改革や収益力向上に努める。また、グループ全体で「ものづくりのあり方」を検討し、事業の改善、再構築に取り組む。

(3) 人材育成と働き方改革

人事戦略のもと、人事の重点施策にKPIを設定し、人材育成の強化、ダイバーシティ・マネジメント及びテレワークの推進など働き方改革の一層の実現に取り組む。

 

③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、中期経営計画「Forward 22」の最終年度となる2022年度における計数目標を、4,000億円レベルの受注高・売上高、営業利益率5%としている。長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」で示した社会的使命を果たすためには、自らも収益性を高め持続可能な企業となる必要があるため、2030年の計数目標としては、持続可能な企業を判断する指標として利益率の向上(営業利益率10%)を最優先目標に設定している。また、当社グループの目指す姿の達成状況を判断するための一つの指標として、当社グループが設計・施工しているごみ焼却発電、バイオマス発電、風力発電などのクリーンエネルギー施設が、顧客の事業活動等を通じて貢献する温室効果ガス排出量削減を設定している。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中期経営計画「Forward 22」の中間年度となる当連結会計年度は、受注高、売上高、営業利益とも期初計画を上回る結果となった。Hitachi Zosen Inova AGにおいては期初計画を大幅に上回る受注を確保するとともに、2020年度に続き2期連続黒字を計上した。また、ものづくり事業についても一部機種において業務プロセスの改善等により収益が改善しており、今後もサービス事業等の継続的事業の拡大、固定費削減、資本効率の改善に注力した経営施策等に取り組むとともに、引き続き次のとおり中期経営計画「Forward 22」の具体的施策を着実に実行することで、収益力強化を推進し、確実に成果をあげていく所存である。

 

① 製品・サービスの付加価値向上

当社グループでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており、2021年12月、事業DX(製品・サービスの付加価値向上)、企業DX(業務効率化・生産性向上)及びこれらを支える基盤DX(DX推進に必要なデジタルプラットフォームの構築・人材育成)の3要素を柱としたDX戦略を策定し、先端技術の活用による顧客価値向上に取り組んでいる。2022年4月には、経済産業省より、DX認定事業者として認定された。

事業DXでは、2021年9月から製品・製造データの収集・蓄積・活用により運転状況の把握や故障予兆の検知などを可能とする全社共通基盤IoTセキュアプラットフォーム(EVOLIoT)の運用を開始した。Hitz先端情報技術センター(A.I/TEC)による24時間365日の遠隔監視と連携し、遠隔監視システムによる製品・サービスの高度化、新たな顧客価値の提供をさらに推進していく。水門、プロセス機器、フィルタープレス等では遠隔監視・診断などのサービス事業の展開、ごみ焼却発電事業ではごみピットの状態監視、燃焼制御等の効率化などサービスの付加価値向上、電力小売事業では適切な電力需給予測による収益向上を図っている。今後は、他の製品・サービスでもIoTやAIの活用を進め、利益率の向上に取り組んでいく。

 

② 事業の選択・集中の推進とリソースの伸長分野へのシフト

当連結会計年度は、事業の選択・集中を推進すべく、2030年の目指す姿である「サステナブルで、安全・安心な社会の実現に貢献するソリューションパートナー」との整合性を加味した事業評価を行った。評価にあたっては、定性評価と定量評価を組み合わせ、各事業について「主力」、「伸長」、「要収益改善」、「要対策」の4区分による評価を実施し、より長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」との整合性の高い分野に重点投資する仕組みを確立し、運用を開始した。また、事業評価に基づく当社グループ独自の目標管理を実施し、PDCAサイクルによる各事業の成長性や収益性の改善に取り組んでいる。一方、「要収益改善」、「要対策」と評価した事業に

 

ついては対応策を立案・実施するとともに、「クリーンなエネルギー」、「クリーンな水」、「環境保全、災害に強く豊かな街づくり」といった価値創造分野へのリソースのシフトを行っている。

当連結会計年度は、Hitachi Zosen Inova AGによるごみ焼却発電施設のサービス事業等の拡大を目的としたSteinmüller Babcock Environment GmbH(現Hitachi Zosen Inova Steinmüller GmbH)の買収を行った。同社はドイツ、北欧に豊富な実績があり、これらの国のごみ焼却発電施設が今後もメンテナンス事業の伸長市場になると考えている。また、不採算であった国内外の子会社の整理なども行った。今後も戦略的な経営資源の再配分を実施していく。

 

③ 業務効率化・生産性向上による働き方改革の実現

テレワークの推進、工場・現地工事現場におけるリモートスーパーバイザーやリモート検査等、ICTの活用により、多様な働き方、業務の変革を進めており、今後は、より一層のスピード感をもって、多様な働き方等に対応するための制度・環境整備を進めるとともに、基幹系システムによる業務革新、ICT活用によるスマート工場化を推進し、生産性の高い働き方を目指していく。また、DX戦略の主要施策であるデジタル人材の育成のため、事業部門、研究開発部門のほか管理部門を対象としたDX人材育成プログラムを進めている。さらに、高年齢層職員の積極的活用、技術・技能伝承など人材の育成をあわせて行っていく。

また、当社グループではダイバーシティ・マネジメントを重要課題のひとつとして推進しており、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を払拭し、役職員が多様性を受容するインクルージョン(包摂)に向けた取組みをさらに推進し、組織活性化や価値創造につなげていく。

 

その他、サステナビリティの推進のため、当連結会計年度には、取締役会の監督のもと、取締役社長を委員長として当社グループのサステナビリティ推進に係る計画、戦略、諸施策を決定するサステナビリティ推進室を設置し、体制を整備した。今後、当社グループが真に取り組むべき課題を整理し、定性的・定量的目標を策定・実行することにより、持続的な企業価値向上を支える基盤を強化するとともに、脱炭素にかかる事業を強化するなど、事業活動を通じて、社会のサステナビリティに貢献していく所存である。

また、内外における経営環境の激変、事業規模拡大及び事業活動のグローバル化等に伴う経営リスクの増大と複雑化に対応するため、リスク管理を強化していく。特に、当社グループにおける海外事業拡大とシナジー効果向上に向けて、海外事業に関わる業務を一元化する海外統括本部を設置し、戦略立案、リスク管理強化を行っている。

さらに、安全管理の徹底による災害ゼロの実現、コンプライアンスの徹底にも引き続き取り組んでいく。当社は、2022年4月に㈱東京証券取引所の新市場区分においてプライム市場に移行したが、今後もガバナンス体制を強化し、持続的成長と企業価値向上を図っていく。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、当社グループ事業の多くを占める官需では、大きな影響は見られないが、民需が中心となる機械事業の一部において、顧客業界の設備投資延期等による影響が出ており、引き続き状況を注視し、影響を最小限にとどめるよう対応していく所存である。

ロシア・ウクライナ情勢の影響については、Hitachi Zosen Inova AGがモスクワ近郊4か所でごみ焼却発電施設設備工事の機器を供給中であるが、本案件の契約に際しては戦争や制裁等を含む海外取引リスクに備えて、スイスの公的貿易保険(SERV)の保険を利用しており、また、本案件は経済制裁対象には該当していないが、各国、機関から発表される経済制裁の内容について確認するとともに、今後の業績への影響、コンプライアンスリスクや商務リスクについて精査を行いながら適切に対応していく。なお、当社グループにおいて、ウクライナでの事業はない。

 

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