課題

1【経営方針,経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは,社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」,「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと,21世紀の環境,エネルギー,産業・社会基盤における諸問題を,「ものづくり技術」を中核とするエンジニアリング力によって解決し,地球と人類に豊かさと安全・安心を提供するグローバルな企業グループを目指しています。

この基本方針を実現するため,当社グループ社員には,「グローバル」,「ものづくり技術・エンジニアリング力」,「世界に通用する業務品質」の観点から卓越した能力を持つプロフェッショナル集団となることを求めています。また,製品・サービスの高度化による社会の発展への貢献を通じて収益性を高め,資本市場から求められる資本効率や株主還元を実現し,持続的な企業価値の創造を図ることで,信頼される企業グループを目指しています。

このような中で当社グループは,ESGを経営の中心に据えることを改めて表明しました。人権を尊重し,多様な人材が活躍する企業風土を原動力として,事業活動を通じて気候変動問題を解決し,自然と技術が調和するサステナブルな社会の実現を目指しています。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び経営指標

当社グループを取り巻く経営環境は,新型コロナウイルス感染拡大による社会・経済の変貌や価値観の変容,デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によるビジネスモデルや働き方の変化,地球規模の気候変動問題に対する国際的な関心の高まり,企業のサステナビリティを重視するESG投資の拡大など急激に変化しています。

新型コロナウイルス感染拡大による影響に加え,サプライチェーンの混乱や原材料価格の高騰,地政学リスクの顕在化等により,2020年度から実行している中期経営計画「プロジェクトChange」の最終年度である2022年度の業績予想は,経営目標を下回る見通しとなっています。

しかしながら今後も,中期経営計画「プロジェクトChange」の取り組みを確実に実行し,強靭な収益構造への変革,新たな働き方への変革,ビジネスモデルの変革などを通じて,経営環境の急激な変化にスピード感をもって対応していきます。

また,2021年11月に公表した「IHIグループのESG経営」において,2050年までにIHIグループのバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現するとの目標を掲げました。その実現に向けて当社グループの総力を結集して活動していきます。

 

 「プロジェクトChange」の概要

 

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<目的>

・成長軌道への回帰

新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより毀損した事業の収益力とキャッシュ創出力を早期に回復させることで,成長事業の創出のための資金を確保するとともに,外部要因に左右されない事業構造への変革を目指します。

 

・成長事業の創出

SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて,“自然と技術が調和する社会”を目指し,「脱CO₂の実現」「防災・減災の実現」「暮らしの豊かさの実現」をIHIグループが取り組むべき社会課題として考え,それらの課題を解決し,IHIグループの成長をけん引していく3つの成長事業を「カーボンソリューション」「保全・防災・減災」「航空輸送システム」と定義しました。当社グループの総力を結集し,これらの成長事業の創出に向けた取り組みを加速し,事業ポートフォリオの変革を推進していきます。

 

<取り組み>

・業績回復ドライバーの実行

バリューチェーン全体にわたる徹底したコストダウンや生産性向上,需要変動の影響を受けにくい体制の構築によりコスト構造を強化し,収益基盤の強化を進めます。加えて,大胆なリソースシフトやDXの活用を実行し,お客さま価値の最大化のための,ライフサイクル全体の包括的なサービスを提供することで,ライフサイクルビジネスの拡大を着実に推し進め,成長軌道への回帰を早期に実現していきます。

 

・環境変化に打ち勝つ事業体質への変革

新たな発想や価値の創出を促進するために,ダイバーシティを重視し,一人ひとりが主体的に活き活きと働き,自ら挑戦できる,柔軟な働き方や自律的なキャリア形成を実現する環境づくりを進めます。また,プロフェッショナル人材を確保し,いかなる環境変化においても,常に新たな成長機会を探索し,持続的成長を実現する,強い事業体質へ変革していきます。

 

・財務戦略

財務健全性の確保と成長事業創出に向けた投資の原資確保のために,キャッシュ創出力の強化を最優先課題としています。生み出すキャッシュを最大化するために,ビジネスモデルや業務プロセスまで踏み込んで改革を進めていきます。また,資金を最適配分することで,成長事業の創出を加速します。

 

・「成長事業の創出」の具体化と迅速な実行

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた民間向け航空エンジンにおける航空旅客需要の回復には今後数年を要することが予想され,同事業に並ぶ新たな事業の柱を早期に創出することが喫緊の課題であると認識しています。これまで長期視点での成長事業のシナリオの検討を進めてきましたが,成長事業の具体的な姿と目標,そこに至るまでの道筋,施策を早急に確立し,迅速に実行していきます。事業の枠を取り払い,グループ全体のリソースを集中することによって,新たな成長事業の創出に向けた取り組みを加速し,新たな収益の柱を早期に創出していきます。

 

<経営目標>

現状では,ウクライナ問題や半導体不足の長期化など想定外の事象によって,「プロジェクトChange」で掲げた経営目標に対して未達となる見込みですが,できるかぎり当該目標に近づけるべく,努めてまいります。

2022年度の業績目標については,第2「事業の状況」3経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 「②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。

財務目標

2022年度

ROIC

10%以上

営業利益率

8%以上

CCC

80日

(注)各指標の算出方法は次のとおりです。

 ・ROIC  :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)

   ÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額)

 ・CCC   :運転資本÷売上収益×365日

 ・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債

 

(参考)売上収益:1兆4,000億円規模,投資水準(3年間):3,800億円

 

(3)会社の対処すべき課題

<短期的な課題>

 ① キャッシュ創出力強化

当社グループは,キャッシュ創出力の強化を優先すべき課題として認識しています。「プロジェクトChange」の下,これまで余剰在庫削減,リードタイムの短縮,入出金管理の厳格化などの運転資本削減活動等を全社的に展開してきました。その結果,当連結会計年度における,営業活動によるキャッシュ・フローは,過去最高の1,000億円を超える水準となりました。ビジネスモデルや業務プロセスまで踏み込んだ改革を引き続き実行し,キャッシュ創出に徹底的にこだわった事業運営への転換を加速していきます。

 

 ② ライフサイクルビジネスの拡大

当社グループは,製品・設備の保守や運用など,ライフサイクルビジネスの拡大に取り組んでいます。引き続き,DXの積極的な活用やリソースシフトを推し進め,さらに2022年度はグローバル展開に注力することで,航空・宇宙・防衛事業領域を除く陸上3部門においては,ライフサイクルビジネスの売上収益を30%以上拡大(2019年度比)することを目指します。

 

<長期的な課題>

 ESG経営

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当社グループは,自然と技術が調和する社会を創るために,取り組むべき社会課題を「脱CO₂の実現」,「防災・減災の実現」,「暮らしの豊かさの実現」としています。地球規模で問題となっている気候変動への対策として,温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と,その影響に備えて被害を軽減する「適応」に取り組み,暮らしの豊かさを実現していきます。

・社会課題の解決

当社グループは,2050年までに,バリューチェーン全体で,カーボンニュートラルを実現することを宣言しました。自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)だけでなく,私たちの上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減に取り組み,カーボンニュートラルを目指します。具体的には,既存技術を活用した「トランジション」と,新しい技術による「トランスフォーメーション」の2段階で取り組んでいきます。

また,自然災害に強く経済的なインフラ整備と,人的被害ゼロを実現する災害・被害予測とインフラを統合するシステムを構築し,安心・安全で暮らしやすいコミュニティの実現を目指します。橋梁を中心とした高度保全の知見を強みとして,センシング技術・モニタリング技術を活用し,予防診断技術の高度化を進め,適時適切なインフラの保全事業を拡大展開し,非常時には強く,平時には快適な,デュアルユースとなるインフラを備えたコミュニティの実現に取り組んでいきます。

 

・人権の尊重

当社グループは,「IHIグループ基本行動指針」において,地球的課題を意識し,あらゆるステークホルダーの期待に応えるために私たちがなすべきことを定めています。この指針に基づき,2020年12月に「IHIグループ人権方針」を定めました。国際規範に基づく人権啓発活動を通じて,人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる人権尊重の取組みを推進することで,あらゆる人びとに対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。また,サプライチェーンにおいても,取引先と協働して社会的責任を果たしていくCSR調達に取り組むことを,「IHIグループ調達基本方針」に定めました。

バリューチェーンを通じて,事業活動によるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減し,すべての人の豊かな生活を実現するために取り組みます。

 

・多様な人材の活躍

持続可能な社会を実現するには,多様性を受け入れ,環境の変化を的確に把握し対応することが必要です。

社会の発展に貢献するという経営理念や,自然と調和した社会を創るという目指す姿を,社員一人ひとりが理解し,企業としての使命を自覚することが必要です。会社と社員が,お互いの成長に貢献し合う関係性を保ちながら,個人と組織のベクトルを合わせていくことが重要であると考えています。

また,当社グループは,人材の多様性を尊重し受け入れる「ダイバーシティ&インクルージョン」を重要な価値観とし,多様なバックグラウンド・多様な経験・異なる視点を持った多様な人材が活躍できる環境を整備していきます。また,社員一人ひとりがより幅広い視野・経験を身に着けるための制度の拡充や,さまざまな機会提供を行なっていきます。

 

・ステークホルダーからの信頼の獲得

事業を通じて社会課題を解決し,企業価値を高めるためには,グループが本来有する力を最大限に発揮できるよう基盤を築くこと,また,あらゆるステークホルダーとの積極的な対話を行なうことが重要であると考えています。

 

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