(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当社の主要な事業領域である電子書籍市場については、インプレス総合研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書2022」によれば、2021年度の電子書籍市場規模は5,510億円で、前年度の4,821億円から14.3%増加し、そのうち84.6%にあたる4,660億円をコミックが占めております。昨年の同研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書2021」では、2020年度の電子書籍市場規模のうちコミックが占める割合は83.0%であったことから、コミック市場の規模は拡大傾向にあります。また、2026年度には電子書籍市場は2021年度の約1.5倍の8,048億円に拡大すると予想されています。なお、「電子書籍ビジネス調査報告書2021」より、電子書籍市場の定義を見直し、従来「電子雑誌」と「電子書籍」を合わせて「電子出版」としておりましたが、「電子雑誌」を「電子書籍」に含めております。
当社は、「日常に&を届ける」をミッションとして掲げ、中核事業となるAPP事業において、主に大手出版社と共同開発したスマートフォン向けのマンガアプリの収益拡大に注力してまいりました。当事業年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う行動制限の緩和を背景とする巣ごもり需要の剥落も一定程度見られましたが、電子書籍市場におけるコミック市場は、中長期的にも成長が期待される有望な市場であるという見方を変えておりません。
当事業年度においては、APP事業において、主力事業であるマンガアプリ事業では広告市況の悪化に伴い広告ARPU(注1)が低下したことで広告収益が減少しましたが、課金率の高いアプリが好調に推移したことや人気作品の牽引によって課金売上が増加いたしました。エンタメ事業では占い事業が好調に推移しましたが、APP事業全体で売上高は前年同期と比較してやや減少しました。当事業年度においては、有名占い師と連携したアプリの開発も行い、収益の増加に大きく寄与しております。
RET事業においては事業構造改革により「&AND HOSTEL」の運営にかかる損益が大幅に改善したこととともに、ターゲットやコンセプトの転換を行ったことで稼働率も上昇傾向にあります。また、収益性の見通しに鑑み、直営店舗の第三者への業務委託も進めており、事業全体のコスト構造の改革に努めました。
その他事業においては前事業年度に事業ポートフォリオの見直しの一環として、宿泊領域及び賃貸不動産領域向けサービスを事業譲渡したことにより前年同期比で売上高が減少しましたが、不採算事業の撤退により営業損失は縮小いたしました。
以上の結果、当事業年度における 売上高は2,833,435千円 (前年同期比6.9%減) 、 営業利益66,079千円 (前年同期は営業損失83,567千円) 、 経常損失144,147千円 (前年同期は経常損失239,793千円) 、 当期純損失350,379千円 (前年同期は当期純損失561,392千円) となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。なお、当事業年度より、報告セグメントの名称及び区分を変更しており、当事業年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいて記載しております。
当事業年度において、「マンガUP!」、「マンガPark」、「マンガMee」など既存マンガアプリについては、積極的な広告宣伝の実施や新規連載開始等によりMAU(注2)が増加しました。さらに、人気コンテンツの掲載延長、作品追加等によって、サービス提供を開始して以降、好調に推移しております。また、2020年5月にリリースした株式会社集英社と共同開発したマンガアプリ「ヤンジャン!」及び2020年5月にリリースした株式会社アムタスと共同開発したマンガアプリ「めちゃコミックの毎日連載マンガアプリ」についても、リリース以降、着実にMAUが増加しており、当社の収益に貢献しております。当社のMAUは8月時点で1,184万人と過去最高を記録しており、今後も更なる事業拡大を目指してまいります。
一方で、新型コロナウイルス感染症の影響による広告市況全体の悪化等が影響し広告ARPUは下降傾向にあり広告収益は減少しました。
この結果、当事業年度におけるAPP事業の売上高は2,690,555千円(前年同期比2.8%減)、セグメント利益は532,824千円(前年同期比9.3%減)となりました。
(注)1.Average Revenue Per Userの略称であり、ユーザー一人当たりの収益単価であります。
2.Monthly Active Userの略称であり、1ヶ月に一度でもアプリを利用したユーザーの数を指します。
当社のAPP事業において運営するスマートフォンアプリのうち、「マンガアプリ」の四半期毎の平均MAU数の推移は下表のとおりであります。
(単位:万人)
当事業年度において、当社が運営する宿泊施設である「&AND HOSTEL」では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた前事業年度に比べ、一部店舗においてターゲットやコンセプトの転換を図り、新規顧客層の獲得を推進した結果、稼働率は回復基調となりました。一方、顧客単価は回復基調にはあるものの依然低い水準にあり、各店舗の運営収益は前年同期と比較して横ばいで推移しました。また、前事業年度において一部店舗における契約見直しを実施した結果、赤字店舗の賃料等の固定費が削減され前年同期と比較して赤字幅は縮小いたしました。
一方、不動産関連売上は不動産賃貸収入が継続して発生していることと、物件売買仲介手数料及び賃貸物件のコンサルティング事業である「&RESIDENCE」におけるコンサルティング収入がスポットで発生いたしました。
この結果、当事業年度におけるRET事業の 売上高は137,243千円 (前年同期比7.6%減) 、 セグメント損失は54,109千円 (前年同期はセグメント損失165,882千円) となりました。
(その他事業)
前事業年度までIoT事業セグメントに含まれていた宿泊領域及び賃貸不動産領域向けサービスを事業譲渡したことにより、前年同期と比較すると売上高は減少しておりますが、不採算事業の撤退により営業損失は縮小いたしました。
この結果、当事業年度におけるその他事業の売上高は5,635千円(前年同期比95.6%減)、セグメント損失は38,454千円(前年同期はセグメント損失101,292千円)となりました。
(資産)
当事業年度末における総資産は4,855,398千円となり、前事業年度末に比べ521,152千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が295,595千円、投資有価証券が91,688千円、敷金及び保証金が43,884千円、また立替金が31,281千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は4,314,402千円となり、前事業年度末に比べ173,855千円減少いたしました。これは主に解約損失引当金が179,534千円増加した一方で、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)が277,136千円、短期借入金が60,000千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は540,995千円となり、前事業年度末に比べ347,296千円減少いたしました。これは主に当期純損失の計上により利益剰余金が350,379千円減少したこと等によるものであります。
なお、自己資本比率は11.1%(前事業年度末は16.5%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度に比べて295,595千円減少し、479,131千円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動の結果使用した資金は、32,058千円(前事業年度は118,116千円の支出)となりました。これは、主に、解約損失引当金の増加額179,534千円、未払金の増加額66,997千円があった一方で、税引前当期純損失の計上346,599千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動の結果獲得した資金は、69,401千円(前事業年度は79,713千円の支出)となりました。これは、主に、投資有価証券の売却による収入70,020千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動の結果使用した資金は、332,938千円(前事業年度は55,764千円の支出)となりました。これは、主に、短期借入金の純減少額60,000千円、長期借入金の返済による支出277,136千円があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況
当社が営む事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b 受注実績
当社が営む事業は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社の財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社が財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりです。
(売上高)
当事業年度の売上高は2,833,435千円(前年同期比6.9%減)となりました。これは主にAPP事業においてマンガアプリの収益が減少したこと、およびその他事業においてinnto事業、tabii事業、totono事業を事業譲渡したことによるものであります。
(売上総利益)
当事業年度の売上原価は、1,207,903千円(前年同期比12.1%減)となりました。これは主に、事業拡大に伴い労務費が598,159千円(前年同期比6.3%増)となった一方で、前事業年度においてRET事業の一部店舗における契約見直しを実施したことにより経費が624,591千円(前年同期比8.7%減)となったことによるものであります。
以上の結果、当事業年度の売上総利益は1,625,531千円(前年同期比2.7%減)となりました。
(営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は1,559,451千円(前年同期比11.1%減)となりました。これは主に、給料及び手当212,164千円(前年同期比14.2%減)、広告宣伝費866,365千円(前年同期比14.8%減)となったことによるものであります。
以上の結果、当事業年度の営業利益は、66,079千円(前年同期は営業損失83,567千円)となりました。
(経常利益)
営業外収益の主な内訳は、補助金収入893千円(前年同期比97.2%減)、営業外費用の主な内訳は、支払利息29,987千円(前年同期比1.4%増)地代家賃173,165千円(前年同期比9.1%増)であります。
以上の結果、当事業年度の経常損失は144,147千円(前年同期は経常損失239,793千円)となりました。
(当期純利益)
当事業年度の法人税等(法人税等調整額を含む)は3,779千円(前年同期比0.0%増)となりました。
以上の結果、当事業年度の当期純損失は、350,379千円(前年同期は当期純損失561,392千円)となりました。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社の主な資金需要は、当社のサービスを効果的に拡大していくための広告宣伝費及び開発等に係る人件費であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資やM&A等によるものであります。これらの資金需要につきましては、必要な資金を自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は、外部環境の変化に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保することにより経営成績に重要な影響を与える可能性のあるリスク要因を分散、低減し、適切に対応を行ってまいります。
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