課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、経営方針として、「企業理念」、「行動憲章」、「行動基準」、「行動指針」及び「環境基本方針」を掲げ、事業活動を通して社会に貢献してまいります。また、技術立社として、トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)の領域をコアに、テクノロジーリーダーとして、来るべき時代を見据え、技術を磨き、企業としての社会的責任を果たしていく所存であります。

当社グループは、中長期的な視野に立って、販売・生産・技術・新事業などの事業戦略を掲げ、安定的な発展と成長を目指しておりますが、CASEの進展による自動車需要・利用形態の変化やEV化の加速(但し、内燃機関は暫くは残存)、脱炭素・カーボンニュートラル社会への進化に向けた再生可能エネルギー需要の高まりや、ESG, SDGs対応強化の流れなど、企業を取り巻く環境は常に大きく変化しており、その短期的な経営判断は、将来に向けた持続的な成長を確実なものとするうえで極めて難しい舵取りを要求されます。

そのような経営環境の中、2018年度から2023年度までの6ヵ年の中期経営計画として、「Raise Up "Daido Spirit" ~Ambitious, Innovative, Challenging~」(“大同スピリット”を更なる高みに引き上げ、大きな飛躍を果たす~高い志、改革する意欲、挑戦する心~)を推進しております。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による世界的な影響や環境変化が激しく、予測が難しい状況下ではあるものの、大同メタルグループの進化のスピードを上げて、揺るぎない体制を創りあげてまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、中期経営計画に基づき、引き続きすべり軸受の全分野において世界トップシェアの獲得を目指すと同時に、自動車の来るべきパラダイムシフト(エンジンからモーターへ)に向けEV・PHV・HVなどの電動自動車で多くの需要が見込まれるアルミダイカスト製品などの新事業領域への取り組みを強化し、また、成長が期待される既存事業領域である一般産業分野の風力発電等の再生可能エネルギー向け特殊軸受の世界的拡販体制を整備、強化し需要拡大に対応することでシェアの拡大を図り、自動車用エンジン軸受以外の売上高比率を高めることで事業拡大を進めてまいります。

 

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2021年5月14日に中期経営計画(2018年度~2023年度)に関する後半3年間の計画を発表してから、1年が経過いたしました。2021年5月時点において、事業を取り巻く環境や会社経営を取り巻く環境、働き方・働く人を取り巻く環境の変化を認識しておりましたが、更なる材料費、及び物流費の高騰等、現在に至るまで、一層厳しい事業環境が続いております。他方、そのような中におきましても、自動車産業、船舶業界等において新型コロナウイルス感染症による影響からの需要の回復が国内外で見られ、また、当社グループを挙げた生産性の向上や合理化によるコストダウン等の更なる固定費・経費の削減に取り組みました。その結果、2021年度時点の目標であった「売上高:920億円」、「営業利益:35億円」、「営業利益率:3.8%」に対し、「売上高:1,040億円(+120億円)」、「営業利益:50億円(+15億円)」、「営業利益率:4.8%(+1.0%)」となり、計画を上回る結果を達成することができました。

未だ新型コロナウイルス感染症の終息が見えない中、材料費高騰の継続、半導体需要逼迫の長期化、ウクライナ情勢悪化による資源価格高騰等、先行きの見通しはさらに不透明感を増しておりますが、当社グループは、中期経営計画に掲げた「既存事業の磨き上げ」、「新規事業の創出・育成」、「強固な基盤の確立」、「組織・コミュニケーションの活性化」を基本戦略とし、事業を取り巻く環境やその変化を捉え、柔軟に、かつ迅速に対応することで、さらに収益を向上させていく所存です。

当社は、中期経営計画において、経営の重要な軸として次の四本の柱を位置付けており、2021年度の主な実績及び優先的に対処すべき課題は以下のとおりです。

 

第1の柱:既存事業の磨き上げ

"真のトライボロジーリーダーへ"

第2の柱:新規事業の創出・育成

"新たな事業の柱を築く"

第3の柱:強固な基盤の確立

"システム、財務基盤など経営基盤の整備"

第4の柱:組織・コミュニケーションの活性化

"外部環境に適応した柔軟で活力ある組織づくり"

 

 

<第1の柱:既存事業の磨き上げ>

① 自動車用エンジン軸受、自動車用エンジン以外軸受

既存事業におけるマーケットシェア(2021年暦年、当社推定)につきましては、2020年に引き続き自動車エンジン用半割軸受において世界トップシェア(36.7%)を達成いたしました。EV化が進展している中ではありますが、EV化の進展による内燃機関の需要の減少までには猶予があると見込まれます。当社としましては、設備投資については慎重に検討・対処しつつも、市場の顕在ニーズ及び潜在ニーズに確実に応え、トラックエンジン用軸受の拡販やガソリンエンジン用軸受の新規開拓等により更なるシェア拡大を目指してまいります。

自動車用エンジン以外軸受につきましては、市場のニーズに対応した新製品・新用途の拡販を、さらにスピードを上げて進めてまいります。

② 非自動車用軸受

舶用低速ディーゼルエンジン用軸受のマーケットシェア(2021年暦年、当社推定)につきましても、2020年に引き続き、世界トップシェア(66.0%)を達成いたしました。特に大型コンテナ船やLNG船等の需要の高まりといった受注環境の好転が継続していることに伴い、海外の新規顧客を取り込むことができ、シェア拡大に繋がりました。また、舶用中高速ディーゼルエンジン用軸受についても、国内・海外市場の積極的な開拓によりシェア拡大を果たすことができました。今後も生産性及び競争力を高め、更なるシェア拡大を目指してまいります。

また、一般産業分野におけるエネルギー分野においては、火力発電向けのガスタービンや蒸気タービン用軸受の需要の増加が当面の間継続することが想定されるため、マーケットシェアの拡大を目指すとともに、小水力分野の開拓も進めてまいります。

③ 自動車用軸受以外部品

アルミダイカスト製品については、主に電動化自動車用アルミダイカスト製品を生産する新子会社であるDMキャスティングテクノロジー(タイ)CO., LTD.が2021年夏に本格的な量産を開始しました。電動化自動車用部品の積極的な開拓により、2021年度売上高目標を達成することができました。収益的には、不良率低減を含む歩留りの向上や物流コスト等になお課題があると考えていますので、2022年も売上拡大とあわせて収益改善にも取り組んでまいります。

曲げパイプ、ノックピン、NC切削品などの部品についても、日本や北米、中国における堅調な需要回復により、2021年度売上高目標を達成することができました。

 

 

<第2の柱:新規事業の創出・育成>

グリーンエネルギーへの貢献として、風力発電用軸受の積極的な市場開拓に継続して取り組んでおります。2022年春には、風力発電用軸受に関する基礎技術開発(設計及び評価)を専業で行う独立組織「風車技術研究所」を新設し、風車ビジネスの拡販に向けてさらにスピードアップを図ってまいります。

また、当社グループ主力事業であります自動車業界においてはEV化の進展が加速していることから、「電動化対応推進センター」を新設し、EV化への対応のみならず、化石燃料を用いない自動車(水素燃料車等)への対応等、自動車業界におけるニーズを新規ビジネスに結びつけるべく取り組んでまいります。

さらに、環境、エネルギーに優しい材料、機能をもつ商品の開発等に繋がる新領域研究につきましても、当社コア技術の基礎研究や新領域における技術開発を通じて、当社が長年培ってきた技術を最大限活用しながら、引き続き積極的に取り組んでまいります。

 

<第3の柱:強固な基盤の確立>

当社グループは、グローバル企業として持続可能な社会の実現に貢献すべく、「ステークホルダーにとっての影響度」と「当社グループにとっての重要度」の2軸からESGの各分野で優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。

そして、昨今の環境意識の高まり、日本政府の2050年における「カーボンニュートラル実現」などの動きを踏まえ、当社グループの戦略を策定し、各種施策を統括する専門組織「カーボンニュートラル推進センター」を新設し、カーボンニュートラルの実現に向けても取り組んでまいります。

2021年度においては、技術開発体制において世界5拠点の技術開発情報の共有を継続実施しましたが、2022年春には日本と海外との人材交流も図ってまいります。

さらに、リスク管理の観点でも、海外拠点含め管理体制を再構築し、昨今製造業各社が被害を受けているサイバー攻撃への対応を強化いたしました。また、強化した品質監査基準にて品質保証制度の運用を一部開始し、更なる品質向上を目指していくとともに、事業運営・日常業務に対するガバナンスの強化、リスク管理体制の強化も引き続き行ってまいります。

 

<第4の柱:組織・コミュニケーションの活性化>

当社グループは、コミュニケーションの活性化に向け、各種社内コミュニケーションツールの充実を図るとともに、中期経営計画(2018年度~2023年度)に関する後半3年間の計画初年度である2021年は、当該計画の浸透を目的として、策定を主管した経営企画部門と各部門や関係会社各社との直接対話を実施してまいりました。

また、当社は、従業員の心身の健康増進を重要な経営課題の1つとして捉え、さまざまな活動を行った結果、2022年3月に経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」の認定を受けることができました。今後も、多様な人材が多様な働き方で活躍できる職場づくりの実現と職場の整備を、引き続き推進してまいります。

 

(4)目標とする経営指標

 当社グループは、経営戦略策定において、経営資源を柔軟かつ効率的に活用することに努めており、収益性や資本効率の高い経営を維持していくために、「売上高営業利益率」や「自己資本利益率(ROE)」などを重視しております。

売上高営業利益率については、前半3年間に実施した各種施策を後半3年間では確実に成果に繋げることで、2023年度には8.0%の達成を目指しております。

自己資本利益率(ROE)については、当社株主に対する安定的な配当を継続しつつ、株主資本コストを意識し、2023年度には9.0%の達成を目指しております。目標達成のために、今後も運転資金の効率化や通常投資の見直し等、さらなるキャッシュ・フローの改善を進めます。

今後も、経営環境の大きな変化に柔軟に対応できる企業体質の強化と合理化等に取り組み、中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

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