当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの変異株による感染再拡大や経済活動の再開に伴う需要増加に対する物流・供給の混乱、労働力不足などにより景気の回復ペースが減速したものの、各国でワクチン接種が進み、特に欧米では、各国で経済活動の制限が段階的に緩和され、個人消費の持ち直しや設備投資の拡大により、景気は順調に回復に向かいました。
当社事業においても、半導体をはじめとした部品不足の状況が継続していますが、各国におけるロックダウンの解除やウィズコロナといった経済政策とともに、各セグメントの需要は回復してきました。
このような経営環境の中、当社は損益分岐点経営・アジャイル経営の考え方の元、新興国二輪車市場でのプレミアム戦略や、製造拠点の構造改革を進めるとともに、物流の課題や部品不足についても常にグローバルで情報共有し、各拠点の状況に応じて対応していくことで生産台数の減少影響などを最小化することができました。
この結果、当連結会計年度の売上高は1兆8,125億円(前期比3,412億円・23.2%増加)、営業利益は1,823億円(同1,007億円・123.3%増加)、経常利益は1,894億円(同1,017億円・116.0%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,556億円(同1,025億円・193.1%増加)となり過去最高の売上高・利益を達成しました。
なお、年間の為替換算レートは米ドル 110 円(前期比3円の円安)、ユーロ 130 円(前期比8円の円安)でした。
売上高は、半導体をはじめとした部品供給不足を受けた生産減少や人員不足などの影響を受けたものの、販売台数や販売単価の増加により、増収となりました。営業利益は売上高の増加に加え、リモートワークなどのデジタル活用による固定費率の抑制、為替影響などで、物流費や原材料費高騰の影響を吸収し、大幅な増益となりました。
財務体質については、親会社株主に帰属する当期純利益率は8.6%(前期比5.0ポイント増加)、総資産回転率は1.04回(同0.12回増加)、自己資本は8,592億円(前期末比1,446億円増加)、自己資本比率は46.9%(同3.3ポイント増加)となりました。これらの結果、ROEは19.8%(前期比12.3ポイント増加)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は903億円のプラス(同238億円増加)となりました。
セグメント別の概況
〔ランドモビリティ〕
売上高1兆1,797億円(前期比2,333億円・24.6%増加)、営業利益687億円(同503億円・272.4%増加)となりました。
部門別の経営成績の概要は、次の通りです。
先進国二輪車では、売上高2,494億円(前期比299億円・13.6%増加)、営業利益率△1.1%(前期比2.8%改善)となりました。アウトドア・ファミリーレジャーの活況により、当社の販売台数もすべての地域で前年比増加し、増収・増益となりました。一方で、半導体等の部品不足とコンテナ不足による物流の遅れで市場在庫不足が継続しました。黒字化は未達となりましたが、赤字幅が大幅に縮小しました。
新興国二輪車では、売上高7,671億円(前期比1,631億円・27.0%増加)、営業利益率7.2%(前期比3.8%改善)となりました。フィリピン、インドネシア、タイなどでは、感染対策と経済活動の両立へ戦略転換したことにより需要が前年比増加しました。当社においては、新型コロナウイルス感染症の再拡大影響による工場・販売店稼働率の低下がありましたが、プレミアムモデルの販売増加によるモデルミックス改善が進み、増収・増益となりました。
二輪車全体の販売台数は、多くの地域での需要回復を受けて449万台(前期比18.1%増加)となりました。
RV(四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)、スノーモビル)では、売上高1,127億円(前期比329億円・41.3%増加)、営業利益率7.5%(前期:営業利益率△0.5%)となりました。新型コロナウイルス感染症再拡大の中でも、旺盛なレジャー需要が継続しました。部品供給不足などによる生産遅延の影響はあるものの、Wolverine RMAXシリーズ好調により販売台数が増加した結果、増収・増益となり黒字化を達成しました。
電動アシスト自転車では、売上高505億円(前期比73億円・16.9%増加)、営業利益率15.4%(前期比0.9%低下)となりました。通園、通学、通勤における自転車の有用性が見直されていることもあり、日本向けの完成車や欧州向けe-Kitの販売好調が続き、増収・増益となりました。
〔マリン〕
売上高3,911億円(前期比628億円・19.1%増加)、営業利益768億円(同262億円・51.7%増加)となりました。
船外機では、先進国での大型モデル需要が堅調に推移し、新興国での需要も回復しました。世界的なコンテナ不足による船積み遅れの影響はありますが、生産台数の増加により供給量が改善し、販売台数が増加しました。ウォータービークルでも、部品調達遅れへの対応が進み販売台数が増加しました。その結果、マリン事業全体では、増収・増益となりました。
〔ロボティクス〕
売上高1,203億円(前期比373億円・44.9%増加)、営業利益176億円(前期:営業利益33億円)となりました。
2021年上期では、特にアジア(中国・台湾・韓国含む)で新型コロナウイルス感染症の影響が収まったことで設備投資が活発化しました。下期からは、国内および欧米の販売が好調に推移し、サーフェスマウンター、産業用ロボットの販売台数がともに増加しました。また、ヤマハロボティクスホールディングス株式会社も販売が好調に推移したことや構造改革効果により、黒字転換しました。その結果、増収・増益となりました。
〔金融サービス〕
売上高486億円(前期比26億円・5.6%増加)、営業利益191億円(同116億円・153.1%増加)となりました。
市場在庫が縮小した結果、卸販売金融債権は減少しましたが、小売ファイナンスの増加や一過性要因としての貸倒引当費用減少により、増収・増益となりました。
〔その他〕
売上高727億円(前期比53億円・7.8%増加)、営業利益0億円(同17億円・97.6%減少)となりました。
ゴルフカー、汎用エンジンの販売台数が増加し、増収となりました。前年の一過性要因の影響および経費の増加により、営業利益は前期比で減益となりました。
なお、各セグメントの主要な製品及びサービスは以下のとおりです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 主要製品について記載しています。
当社グループは主に見込み生産をしています。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
総資産は、前期末比1,920億円増加し、1兆8,329億円となりました。流動資産は、主に部品不足に起因する生産遅延や物流の遅れによるたな卸資産の増加、世界各地での販売増加による受取手形及び売掛金の増加などにより同1,231億円増加しました。固定資産は、小売ファイナンスの増加に伴う長期販売金融債権の増加などにより同689億円の増加となりました。
負債合計は、支払手形及び買掛金などの増加により同405億円増加し、9,322億円となりました。
純資産合計は、配当金の支払384億円はあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益1,556億円、為替換算調整勘定の増加377億円などにより同1,515億円増加し、9,007億円となりました。
また、株主還元と資本効率の向上を図るため110億円の自己株式取得を行いました。
これらの結果、自己資本比率は46.9%(前期末:43.6%)、D/Eレシオ(ネット)は0.21倍(同:0.27倍)となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税金等調整前当期純利益1,997億円(前期:850億円)や減価償却費511億円(同:482億円)、仕入債務の増加145億円(同:115億円の増加)、販売金融債権の減少50億円(同:683億円の増加)などの収入に対して、たな卸資産の増加762億円(同:327億円の減少)、売上債権の増加86億円(同:173億円の減少)などの支出により、全体では1,413億円の収入(同:1,105億円の収入)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
固定資産の取得による支出668億円(前期:514億円の支出)などにより、510億円の支出(同:440億円の支出)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
配当金の支払、借入金の返済、自己株式の取得などにより935億円の支出(前期:837億円の収入)となりました。
これらの結果、当期のフリー・キャッシュ・フローは903億円のプラス(前期:665億円のプラス)、現金及び現金同等物は2,749億円(前期末比:78億円の増加)となりました。当期末の有利子負債は4,585億円(同:84億円の減少)となりました。
(5) 金融サービス事業を分離した経営成績情報
以下の表は金融サービス事業と金融サービス事業以外の事業を区分した要約連結貸借対照表、要約連結損益計算書及び要約連結キャッシュ・フロー計算書です。これらの要約連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準においては要求されていませんが、金融サービス事業はそれ以外の事業とは性質が異なるため、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の「金融サービス事業以外の事業及び消去」は連結計から金融サービス事業の数値を差し引いたものとしています。
要約連結貸借対照表
要約連結損益計算書
要約連結キャッシュ・フロー計算書
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金及び設備投資資金です。
運転資金については返済期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については原則として資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。
資金の流動性管理にあたっては、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することで、必要な流動性を確保しています。
当連結会計年度においては、たな卸資産の増加による運転資金の増加はあったものの、各国での旺盛な需要を背景にした好調な販売や、ヤマハ株式会社等の株式売却による収入などにより前年を上回るフリー・キャッシュ・フローを確保しました。また、株主還元と資本効率の向上を図るために自己株式の取得を行いました。
当社は株主の皆様の利益向上を重要な経営課題と位置付け、企業価値の向上に努めています。株主配当については期末配当1株当たり65円(2022年3月23日開催の第87期定時株主総会にて決議)、2022年は年間配当1株当たり115円を予定しています。
また、2022年の設備投資は970億円、研究開発費は1,010億円を計画しています。
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。なお、当連結会計年度における重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しており、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた繰延税金資産の回収可能性及び貸倒引当金等の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」及び「同 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しています。
当社グループは、たな卸資産の、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と総平均法による原価法(貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)による評価額との差額に相当する陳腐化の見積額について、評価減を計上しています。実際の将来需要又は市場状況が、当社グループ経営者による見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。
当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。なお、新型コロナウイルス感染症拡大による経済指標の著しい悪化などの外部環境の変化により債権の信用リスクが増加した場合には、必要に応じて見積りに対し補正を加えています。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
当社グループは、減損の兆候のある資産または資産グループごとに将来キャッシュ・フローの見積りを行い、固定資産の減損要否の判定を行っています。資産または資産グループの減損が必要であると判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を超える部分について減損損失を認識します。将来、回収可能価額が減少した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
当社グループは、販売又は仕入に係る取引先や金融機関等の株式を保有しています。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と時価を把握することが困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは、投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損損失を計上しています。時価のある有価証券についての減損処理に係る合理的な基準は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (有価証券関係)」に記載しています。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤ 繰延税金資産
当社グループは、将来の一定期間における課税所得の見積りやタックスプランニングに基づき、繰延税金資産の回収可能性を検討しています。これらの将来に係る見積りは、市場の動向や経済環境、また、当社グループの事業計画等の変動の影響を受けるため、回収可能性が大きく変動した場合、税金費用が大きく変動する可能性があります。
当社グループは、販売済製品の保証期間中のアフターサービス費用、その他販売済製品の品質問題に対処する費用の見積額を計上しています。当該見積りは、過去の実績若しくは個別の発生予想額に基づいていますが、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。当社及び一部の国内連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は優良社債を基礎とした複数の割引率を退職給付の支払見込期間ごとに設定しています。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に計上されるため、一般的には将来期間において認識される収益・費用、計上される資産・負債及び純資産に影響を及ぼします。数理計算上の差異等の償却は退職給付費用の一部を構成していますが、前提条件の変化による影響や前提条件と実際との結果の違いの影響を規則的に費用認識したものです。また、前述の前提条件の変化により償却額は変動する可能性があります。
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