課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は、経営理念として「ペットとの共生環境の向上とペット産業の健全な発展を促し、潤いのある豊かな社会を創る。」を、また経営ビジョンとして「より安心なペットとの生活を共に創る。」を掲げております。ペットがケガや病気により動物病院で診療を受けると、人間の公的な健康保険制度のような仕組みがないことから、その診療費は100%飼い主さまのご負担となります。加えて、動物病院での診療は自由診療であり動物病院ごとに価格が異なることや、ペットの長寿命化、獣医療の高度化などにより、ペットの診療費が飼い主さまの経済的なご負担になることもあります。そのような環境のもと、当社のペット保険は、飼い主さまが経済的なご負担を気にすることなく、ためらわずに動物病院を受診したり、大切な家族であるペットのために最適な治療を選択しやすくしたりすることに貢献できるものと考えております。当社では、ペット保険の提供を通じて、経営理念、経営ビジョンの実現と、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

(2)経営環境等

当事業年度におけるわが国経済は、外需は弱いものの、雇用・所得環境の改善等により、内需を中心に緩やかに回復しました。ペット業界においては、矢野経済研究所が2019年12月に発行した「ペットビジネスマーケティング総覧 2020年版」によると、2018年度ペット関連総市場規模は小売金額ベースで前事業年度比1.6%増の1兆5,442億円で推移し、2019年度は前事業年度比1.7%増の1兆5,700億円と見込まれております。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、全国の犬の飼育頭数の推計は近年減少傾向にあり、2019年には8,797千頭、猫の飼育頭数の推計は微増が続き2019年には9,778千頭となっています。一方、2019年の犬・猫の飼育頭数推計の合計値(18,575千頭)は15歳未満の総人口(15,210千人、2019年10月1日現在(確定値)、総務省統計局 人口推計)を超えており、日本の世帯においてペットが大きな位置付けとなっていることがうかがえます。ペットを大切な家族の一員と考える飼い主さまが増えていることを背景に、ペット一頭あたりへの支出が増加しており、今後もペット関連市場は拡大していくものと予測されております。

この中で、ペット保険市場は、前述の矢野経済研究所の資料によると、2018年度には712億円だった市場規模が2019年度には824億円へと15.7%増の成長が見込まれています。海外の市場と比べても、ペット保険の普及率はスウェーデンで約65%、イギリスで約25%であるのに対し、日本では約10%と、拡大はしているものの依然として成長余地が大きい市場です。一方で、ペット保険市場は当社を含めて15社(少額短期保険事業者を含む)が参入する競争の激しい市場でもあり、当社が持続的に成長するためには、お客さまに付加価値を提供し続け、選ばれるペット保険会社であり続ける必要があると考えております。

また、2020年1月以降に顕在化した新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界経済が減速し、景気の先行きは不透明な状況となっており、当社の業績予想でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響を一定考慮しておりますが、現時点で当社の業績に対して大きな影響を与えるような状況は生じておりません。緊急事態宣言下においては、主要チャネルであるペットショップのうち、ショッピングモール等の一部の店舗は休業となり、新規契約が減少するリスクがあった一方で、インターネットチャネルでの新規契約は堅調に推移しており、緊急事態宣言解除後においては、ペットショップチャネルも急激に回復してきていることから、収入保険料や経常収益に大きく影響を与えるリスクは少ないと考えております。

なお、新型コロナウィルス感染症に対して当社では、お客さまや取引先、従業員の安全を第一に考え、厚生労働省の提唱する「新しい生活様式」をいち早く取り入れております。具体的には、従業員に対して感染リスクを低減するため可能な限り人との接触機会を削減するべく、テレワーク(在宅勤務)、ローテーション勤務、時差通勤を実施しており、出社の際もソーシャルディスタンスの確保に努めるとともに、打合せ等はWeb会議を推奨し、出張や営業等での外出も必要最小限にすることとしています。また、マスクの着用、手洗い、消毒の徹底などの対応も実施しております。

今後、事態がさらに深刻化、長期化した場合には、この影響をしっかりと見極めつつ、状況に応じて必要な対策を講じてまいります。

 

(3)経営戦略等

当社は成長市場であるペット保険事業の更なる拡大・強化に努め、2018年7月に「保険事業の経常収益を5年で2倍にする*」、「持株会社へ移行し、事業領域を拡大する」、「デジタライゼーションを推進する」を重点方針とした中期経営計画(3か年計画)を公表し、持続的成長に向けた各種施策に取り組んでおります。当社では、その中期経営計画を、前事業年度の成果をもとに毎年次の3か年の計画に進化させておりますが、当事業年度においては、2019年からの3か年計画にアップデートし、以下のような施策を重点的に実施しました。

*2017年度比

 

①保険事業の更なる強化

当事業年度においては、中長期的な成長に向けた先行投資として、新規契約件数の獲得に注力いたしました。当社の最大チャネルであるペットショップ代理店につきましては、大手ペットショップチェーンとの提携を行い、新規契約件数の増大に大きく寄与しております。また、前事業年度に引き続き、既存の代理店との更なる関係深耕を図る一方、当事業年度においては、高松支店、福岡支店沖縄営業所を開設し、各地域で代理店への支援を深め、販売強化に注力しております。なお、2020年4月1日には富山支店新潟営業所を新潟支店に昇格させるとともに、中日本営業部静岡営業所を開設しました。これにより、現在当社の営業拠点は、業界最多の15拠点となっております。

また、当社は継続してインターネットチャネルにも注力しております。2020年3月に実施した消費者調査で、当社は6つの調査においてNo.1の評価を獲得いたしました。楽天インサイトでの調査においては、「うちの子ライト」が手術補償特化型保険として7年連続1位となりました。加えて、Tアンケートの調査では、犬・猫それぞれのインターネット経由での新規契約件数で2年連続1位を獲得しております。

加えて、販売チャネルの複線化も推進しました。2019年2月の第一生命ホールディングス株式会社との業務提携の基本合意に基づき、当事業年度においては、従来の当社のペットショップチャネル、インターネットチャネルに加え、第一生命保険株式会社のウェブサイトや営業員(生涯設計デザイナー)によるペット保険販売も開始するなど、販路が更に拡大されました。これにより、既にペットを飼育している幅広い層や、インターネットを活用しない層、また日頃接点の少ない層に対し、効果的にアプローチすることが可能となりました。

当社では、商品・サービスの拡充によるお客さま満足度の向上にも取り組んでおります。当社は、動物病院の窓口で当社が発行している保険証又はマイページ画面をご提示いただき、かつ保険契約の有効性が確認できた場合、その場で自己負担分のみのお支払いで診療を受けられる「アイペット対応動物病院制度」を提供しております。この制度を利用することができる対応動物病院数は、当事業年度末で5,054施設(前事業年度より353施設増加)と、順調に増加しております。これにより、お客さまの利便性を更に高め、当社の保険商品をお選びいただく差別化の要素となっております。

また、当事業年度において、オウンドメディア等の継続的な活用及びお客さま参加型企画の開催等を積極的に行いました。具体的には、専門家監修の情報サイト「ワンペディア」、「にゃんペディア」の運営に加え、獣医師が病気・事故対策情報を提供する「うちの子 HAPPY PROJECT」での「皮膚トラブル対策」(第4弾)、「避妊去勢のすすめ」(第5弾)、「スキンケア対策」(第6弾)、「動画で学ぶしつけ」(第7弾)や、お客さま参加型の写真投稿企画「うちの子カレンダー2020」、「第6回ワン!にゃん!かるた」等を実施いたしました。

これらの施策が新規契約件数の順調な増加と、業界トップクラスの約90%の継続率につながり、より多くのお客さまにご支持をいただいた結果、保有契約件数は2019年8月には45万件、2020年3月には50万件へと、非常に速いペースで伸長しました。2019年5月に発表した中期経営計画では、2020年3月末に保有契約件数 48万5千件を目指しておりましたが、それよりも早いペースで目標を達成しております。

 

②持株会社への移行

当社は、経営理念を実現するため、ペット保険以外にも事業領域を拡大していくべく、金融庁の認可を得ることを前提に、2020年10月の持株会社設立に向けて準備を進めております。当社では、ペットとの共生環境向上を切り口として事業の多角化を行うことで、お客さまに様々な商品・サービスを提供し、お客さま一人あたりの収益向上を目指してまいります。また、持株会社化することにより、グループ内での集客・事務・システムなどを共通化し、更なる効率化とサービス向上を実現したいと考えております。加えて、事業を多角化することによるグループでの収益基盤、経営、人材力、組織力などの強化も追求してまいります。これらにより、ペット保険事業の安定や強化にも寄与するものと考えております。

持株会社への移行後の新規事業については、金融庁の承認を得る必要がありますが、収益が見込め、中長期的に取り組むことのできる事業領域、社会的な意義やマクロトレンド、既存事業との親和性、リスク、他社との提携等の可能性などを考慮して検討してまいります。

 

③デジタライゼーションを梃子にした発展

当社では、デジタライゼーションの推進により、お客さま満足度向上や、お客さまとの接点の強化、業務の自動化・効率化、コスト削減・施策のスピードアップを目指しております。お客さま満足度向上のためには、各種お手続きのオンライン化など、お客さま専用マイページの機能の拡充を行っております。お客さまとの接点の強化に向けては、1 to 1マーケティングを推進しCRM(Customer Relationship Management)に取り組んでおります。加えて、業務の自動化・効率化については、RPAを積極的に活用し、年間25,000時間相当の大幅な業務効率化を行いました。コスト削減・施策のスピードアップに向けては、当社の成長を支えるため、基幹システムの機能の強化を継続的に行っております。

 

これらの中期経営計画に定める取組みに加え、当社は、ペット保険会社として、社会的責任に真摯に向き合いつつ、成長の加速につなげるため、事業を通じた環境負荷の低減(Environment)、ペットと共に健康で幸せに生きられる社会への貢献(Social)、ガバナンスの強化による信頼性向上(Governance)等の取組みを推進しております。

環境負荷の低減(E)に向けては、デジタルマーケティングやお客さま専用マイページの拡充など、ビジネスプロセスの変革や環境に配慮した取組みを行ってまいりました。ペットと共に健康で幸せに生きられる社会への貢献(S)としては、当社がペット保険の普及に尽力することで、飼い主さまの診療費のご負担を軽減し、必要なときにためらわずに動物病院で診察を受け、最適な治療を選択していただけるようになります。これにより、ペットと共に健康で幸せに生きられる社会への貢献ができるものと考えております。また、2019年10月には、「人と動物が共生する社会の実現」を推進していくことを目指して、当社の事務センターの所在地である青森県との動物愛護に関する連携協定を締結いたしました。今後は、本協定に基づく具体的な取組みを進め、青森県での動物愛護の推進を支援してまいります。加えて、前述のカレンダー、かるたの写真投稿キャンペーンでは、1投稿につき10円を当社が非営利活動へ寄付する企画とし、合計676,080円を、一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルが実施する保護された犬や猫を一時的に預かるボランティア育成・認知に関する活動への支援に寄付いたしました。なお、今後、持株会社に移行した後は、グループでペットに関わる社会的課題に取り組んでまいりたいと考えております。ガバナンスの強化による信頼性向上(G)については、2019年6月に監査等委員会設置会社へ移行し、2020年4月には任意の指名・報酬諮問委員会を設置するなど、取締役会の監督機能強化や透明性の向上に加え、保険金不正請求防止への取組み、コンプライアンス・リスク管理の一層の強化などを行い、より信頼されるペット保険会社になるよう、努力を継続しております。ESGに関する取組みを推進することで、当社の事業を更に強固にし、また、更なる成長につなげられるよう、尽力してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は持続的な成長に向けて、成長を表す指標である「経常収益」と、事業の成果を示す「未経過保険料方式による経常利益(Non-GAAP)」を重要な指標として位置づけております。未経過保険料方式による経常利益(Non-GAAP)は、発生主義による利益と同額となり経営実態を適切に反映することから、当該指標を利用しております。

なお、当社は経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」といいます。)及び日本基準に基づく指標(以下「J-GAAP指標」といいます。)の双方によって、経営成績を開示しております。両者の差異は、責任準備金の計算方法によるもので、Non-GAAP指標は未経過保険料方式、J-GAAP指標は初年度収支残方式に基づいております。詳細については、後述の「 (普通責任準備金の取扱い:未経過保険料方式、初年度収支残方式による利益について) 」をご参照ください。また、未経過保険料方式に異常危険準備金影響額を加味した調整後経常利益及び調整後当期純利益を開示しております。詳細については、後述の「(異常危険準備金の取扱い:調整後利益について)」をご参照ください。

 

(普通責任準備金の取扱い:未経過保険料方式、初年度収支残方式による利益について)

損害保険会社は、保険業法施行規則第70条第1項第1号に基づき、未経過保険料残高と初年度収支残高の大きい方を責任準備金として負債計上し、当事業年度の残高と前事業年度の残高の差分を繰入額として当事業年度に費用計上します。当社では、初年度収支残高が未経過保険料残高を上回って推移しており、現状、財務会計上は初年度収支残方式によっていますが、当社は社内管理用の指標として未経過保険料方式による損益を重要視しております。理由としまして、未経過保険料方式により算定された利益は、発生主義による利益と同額となるため、期間比較が可能となり当社の経営実態を適切に反映していると考えております。一方で、初年度収支残方式は、収支相等の原則に立脚しており、当事業年度に係る保険料から保険金、事業費を差し引いた残額が、翌事業年度以降の保険金支払い等の原資になるという考え方であり、初年度収支残方式により算出された利益は、発生主義による利益とならないことから期間比較ができないと考えております。また、上場企業のうち、初年度収支残方式に基づく損害保険会社が存在しないため、競合他社との比較の観点からも、投資家が当社の業績を評価する上で有用な情報として未経過保険料方式に基づく開示を行っております。なお、これらの数値は金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査又は四半期レビューの対象とはなっておりません。

 

(異常危険準備金の取扱い:調整後利益について)

異常危険準備金は、異常災害による損害の填補に備えるため、事業年度毎に収入保険料の一定割合を積み立てる責任準備金の一種であり、大蔵省告示第232号第2条の別表で記載されている基準損害率を超える場合に、当該損害率を超過した支払保険金相当額について、異常危険準備金の前事業年度残高から取崩すこととされています。当社の損害率は基準損害率よりも低いため、事業年度毎に収入保険料の3.2%を乗じた金額を積み立てております。当社における未経過保険料方式に異常危険準備金影響額を加味した調整後経常利益及び調整後当期純利益は、競合他社の同指標あるいは類似の指標と算定方法が近似するものであり、比較可能性を高めるものであります。なお、これらの数値は金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査又は四半期レビューの対象とはなっておりません。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、中期経営計画に基づく経営を推進するにあたり、以下のような優先的に対処すべき課題について取組みを行ってまいります。

 

①保険事業の更なる強化

当社では、ペット保険の普及を促進することで、より多くの飼い主さまにとって、動物病院で診察を受け、最適な治療を選択するための経済的なご負担を軽減するお手伝いができると考えております。そのため、引き続き、ペット保険事業を強化し、収益の拡大はもとより、お客さま主義の徹底による業務品質の向上を進めます。

当社のペット保険事業においては、ペットショップ代理店を通じた新規契約獲得が重要な販売経路となっております。このペットショップ代理店における新規契約件数の減少や代理店契約の解除等がないよう、代理店とのコミュニケーションを強化し、適切に対策を講じてまいります。また、不祥事やお客さまへの不利益が発生することのないよう、募集管理態勢を強化し、保険代理店の適切な管理に努めてまいります。

更に、飼い主さまとの関係を構築、強化するため、CRMの推進を継続して行ってまいります。飼い主さまのセグメントに応じて効率的な施策を実施し、新規契約件数拡大や継続率の向上へつなげてまいります。

なお、これらの前提として、常にお客さま主義を徹底し、業務フローを徹底的に見直すことにより効率化を図りつつ、お客さまに寄り添うことを具現化することで、継続して業務品質の向上を図っていきたいと考えております。

 

②持株会社への移行

当社では、金融庁の認可を得ることを前提に、2020年10月に持株会社を設立することを優先的な課題として対応しております。近年、ペット業界の重要なテーマとしては、ペットの病気に対する不安や経済的負担、正確な医療情報提供、医療の高度化などの医療に関するもの以外にも、殺処分、ペット・飼い主の高齢化、不動産などのペットとの共生インフラ、ペットの飼育頭数減少などが挙げられます。当社は、持株会社へ移行し、グループの事業を通じてこれらの課題に向き合いたいと考えております。

 

③システムの強化

当社は、継続的に保有契約件数が増加しており、これを支えるためのシステムの機能強化を継続的に行う必要があります。また、保有契約件数の増加に伴い、保険金支払査定や契約管理等の事務手続きが増大することから、引き続き、システムを活用した事務処理の効率化を積極的に推進し、リーンオペレーションの実現と事務コストの抑制に努めてまいります。加えて、お客さま手続きのオンライン化など、お客さまやステークホルダーの皆さまの更なる満足度の向上に向けたシステム対応を今後も行ってまいります。

 

④ESG経営の推進

当社は、ESGの取組みを通じて、ペット保険会社としての社会的責任を果たしつつ、事業を更に強固にし、成長につなげていくことを目指しております。ESGを経営課題と捉え、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまにより信頼していただけるよう、これまでに行ってきた取組みの継続、進化、新たな取組みへの挑戦などを行ってまいります。

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得