当社の財政状態、経営成績等、投資家の判断に重要な影響を与える可能性があると考えられるリスクには、主に以下のようなものがあります。当社はこれらのリスクを認識した上で、事態発生の回避及び発生した場合の迅速かつ適切な対応に努めます。なお、本項における将来に関する事項は、別段表示のない限り、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)保険業法等に係る法的リスク
当社は、保険業法第3条に基づき損害保険業の免許を取得した保険会社であり、監督官庁である金融庁による包括的な規制等の広範な監督下にあります。保険業法等の関連法令では、健全性確保の観点から、「保険会社に係る保険金等の支払能力の充実の状況(以下「ソルベンシー・マージン比率」とする。)」をモニタリングしており、国内の保険会社はソルベンシー・マージン比率を200%超に維持するよう定められております。
ソルベンシー・マージン比率が基準値より低下し、金融庁から是正措置等が発動された場合に、健全性の回復に向けた業務改善計画の提出・実行、全部又は一部の業務停止を余儀なくされる可能性があります。
また、保険業法は内閣総理大臣に対して免許取消し、業務停止等の保険業に関する広範な監督権限を与えており、原則として金融庁長官にそれらの権限が委任されています。損害保険業の免許は無期限ですが、当社が、法令に基づく内閣総理大臣の処分又は定款、事業方法書、普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書等の基礎書類に定めた事項のうち特に重要なものに違反した場合、免許に付された条件に違反した場合、又は公益を害する行為をした場合に、保険業法第133条第1項により、内閣総理大臣は当社の損害保険業免許を取り消すことができる旨が定められております。
当事業年度末現在において、当社では上述の事由に該当する事実はありませんが、仮に、当社の免許が取り消されることになれば、当社は事業活動全般に支障を来すとともに、当社の財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)当社の損害保険事業に係るリスク
①保険引受リスク
保険引受リスクは、経済情勢や保険事故の発生率が保険料設定時の予測に反して変動すること等により、保険会社が損失を被るリスクです。当社のペット保険は、適正な補償内容及び保険料水準を設定しておりますが、経済情勢や保険事故の発生率、診療費単価水準等が保険料設定時の予測に反して変動した場合、適正な保険料水準を確保できなくなる等の不確実性を内包しております。
②資産運用リスク
資産運用リスクは、保有資産の運用に伴い、保険会社が損失を被るリスクであります。当社は、預貯金の他に、有価証券等を含む多様な資産の運用を行っており、主に以下のリスクを内包しております。
ア.市場リスク
当社は、株式や債券、外貨建ての有価証券等を保有しており、株価の下落や金利の上昇、為替差損の発生により評価損が生じることにより、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
イ.信用リスク
当社の保有する有価証券等の資産については、発行者等の信用力の低下や破綻、信用市場の混乱により、資産価値の減少や元本・利息の回収ができなくなる等、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
ウ.不動産投資リスク
当社は運用資産として不動産を保有しておりますが、賃貸料の変動等を要因として不動産に係る収益が減少し、又は市況の変化等を要因として不動産価格自体が減少し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③流動性リスク
流動性リスクとは、資金確保又は市場取引において、通常よりも著しく低い価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスクであります。
当社は、保険金の支払い等に対応するために、必要な一定程度の現金・預貯金を確保しておりますが、犬・猫等のパンデミック型の疾病の発生等による急激な保険金の支払い増加により資金繰りが悪化し、通常よりも著しく不利なコストで追加資金の調達や不利な条件での資産売却を余儀なくされることにより、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④代理店に関するリスク
当社の保険商品は、ペットショップ代理店を通じた契約獲得が重要な販売経路となっております。そのため、ペットショップ代理店における販売頭数の減少や代理店契約の解除等が発生した場合には、当社の販売推進力が減退し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、保険代理店に対するモニタリングが機能せず、不祥事やお客さまへの不利益が発生した場合、当社のレピュテーションの低下又は財務上の損害が発生する可能性があります。
⑤競合リスク
当社が行うペット損害保険事業において、既存の同業他社の拡大、新規事業者の参入等により、商品・サービスや代理店獲得に係る競争が激化した場合、新規の契約獲得の減少、既存契約の解約の増加のほか、広告宣伝費の増加、商品設計や代理店手数料の見直し、あるいは競合他社が協力金等の名目で資金を投下し、代理店の獲得に乗り出してきた際には、こうした攻勢に対応を要する等の理由による収益性の悪化等、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥事務リスク
事務リスクとは、当社の役職員が正確な事務を怠る、又は事故・不正等を起こすことにより、当社又はお客さま等が損失を被るリスクです。
当社の事務手続きにおいて重大な過失が発生することにより、事業運営リスクが顕在化した場合や監督官庁による行政処分を受ける場合、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦システムリスク
システムリスクは、システムダウン又は誤作動、セキュリティ対策の不備等が原因となって、当社若しくはお客さま等が損失を被るリスクです。
当社は、自然災害・大規模災害、事故、サイバー攻撃等による不正アクセス及び情報システムの開発・運用にかかる不備等により、情報システムの停止・誤作動・不正使用が発生するシステムリスクを一定程度に抑える対応を実施しておりますが、重大なシステム障害を始め全データの消失等の想定外な事象の発生により当社の情報システムが機能しなくなり、事業中断を余儀なくされた場合に、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧システム開発プロジェクトに係るリスク
当社は、ペット保険市場の拡大に伴い継続的に保有契約件数が増加しており、2020年3月末時点において、保有契約件数は50万件を超えております。当社は、システムの拡張性の確保や事務処理の自動化を実現することで今後の業容拡大に対応すべく、基幹システム開発プロジェクトを推進しており、2020年1月に基幹システム刷新のリリースを予定しておりましたが、より確実に実現していくために計画を見直し、2020年度中に基盤システムのバージョンアップを実施することにしています。今後、何らかの理由によりプロジェクトが遅延又は中断した場合には、プロジェクト費用の増加、新商品開発の遅延、既存システムの継続使用によるコスト増、固定資産除却損の発生等により、当社の財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、その他のシステム開発においても開発費用が資産計上されるため、一定の投資後に開発計画が中断した場合は除却損の発生等を通じて経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨情報漏えいに係るリスク
当社は、保険事業における契約者情報をはじめ代理店や動物病院等の情報等、多数の個人情報及び当社の機密に関わる情報を取り扱っております。これらの情報に関しては、当社の情報セキュリティ態勢を整備し、厳重に管理しておりますが、当社又は外部委託先のシステムへの不正アクセスやコンピューターウイルスの感染等により、情報が流出する事故が発生した場合には、社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する損害賠償金の支払い等により、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩社会情勢や法規制の変更に伴うリスク
近年、犬の飼育頭数は微減、猫の飼育頭数は微増傾向で推移する一方、ペットに対する健康意識の高まりによる動物病院の利用拡大とペット医療の高度化により、ペット保険の利用頻度や認知度は向上しております 。この結果、ペット保険市場は拡大を続け、2019年度の市場規模は824億円(前事業年度比115.7%)※と見込まれております(※矢野経済研究所「ペットビジネスマーケティング総覧 2020年版」)。しかしながら、今後経済環境の変化等によりペット飼育頭数の著しい減少やペット保険の普及率の伸び悩みといった事象が発生した場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が行う損害保険事業は保険業法、金融商品取引法その他の法令による規制を受けておりますが、ペット保険の販売に特化している特性上、動物愛護管理法等ペット業界に関連する法令の新設、改正等が、当社のペット保険の販売環境に影響を与える可能性があります。
⑪大規模災害等における事業継続性に係るリスク
当社では、首都直下型地震等の大規模な自然災害や新型インフルエンザ・新型コロナウイルス等の感染拡大による不測の事態に備えて、BCP(事業継続計画)の策定をはじめとする危機管理態勢を整備することにより、事業中断期間を一定程度に抑え、継続的に事業を行える態勢を整備しておりますが、この事業継続計画の想定を超えるような大規模災害等が発生した場合に、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫風評リスク
マスコミ報道やインターネット上の書き込み等で、当社に対する否定的な風評が発生し流布した場合に、それが事実に基づくものであるか否かに関わらず、当社の社会的信用に影響を与える場合があります。当社では、これらの風評の早期発見及び影響の極小化に努めておりますが、悪質な風評が流布した場合には当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑬訴訟リスク
当社は、弁護士等と相談しながら訴訟の発生リスクを極小化しており、当事業年度末までのところ重大な訴訟問題は発生しておりません。しかし、損害保険事業に関した訴訟においては、当社が不利な結果を被る可能性もあり、将来にわたって当社の経営成績に影響を及ぼす訴訟や係争が発生する可能性があります。また、同様に、他社が係争中の訴訟において、損害保険会社に不利な判決が下された場合においても、潜在的な訴訟リスクや顧客対応にかかる事務コストの増加につながる場合があります。これらの結果、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑭普通責任準備金の積立基準が変更されるリスク
損害保険会社は、保険業法施行規則第70条第1項第1号に基づき、事業年度毎に、普通責任準備金として未経過保険料残高と初年度収支残高の大きい方を負債計上し、当事業年度の残高と前事業年度の残高の差分を繰入額として当事業年度に費用計上します。未経過保険料残高は、保険契約の未経過期間に対応する保険料の合計額であります。一方、初年度収支残高は、「保険料=保険金+営業費及び一般管理費」が成り立つことを前提とする理論であり、毎決算日において当年度契約に係る利益相当額は普通責任準備金として 負債計上されます。
当社では、 初年度収支残高が未経過保険料残高を上回って推移しており、現状、初年度収支残高によっていますが、今後、未経過保険料残高が初年度収支残高を上回り、未経過保険料残高によることとなった場合、繰入額が大幅に変動することにより、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
参考情報として、直近5年間の未経過保険料残高・繰入額、初年度収支残高・繰入額及びそれぞれの方式による経常利益は以下のとおりで推移しております。
なお、当社では社内管理用の指標として未経過保険料方式による損益を重視しており、未経過保険料方式による経常利益は、「初年度収支残方式による経常利益+初年度収支残方式による繰入額-未経過保険料方式による繰入額」により算出されます。
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(単位:百万円) |
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決算年月 |
2016年3月 |
2017年3月 |
2018年3月 |
2019年3月 |
2020年3月 |
初年度収支残高 |
2,135 |
2,612 |
3,018 |
3,832 |
4,775 |
未経過保険料残高 |
1,922 |
2,351 |
2,874 |
3,533 |
4,411 |
初年度収支残方式による繰入額 |
458 |
477 |
405 |
814 |
942 |
未経過保険料方式による繰入額 |
1,103 |
429 |
522 |
658 |
878 |
初年度収支残方式による経常利益 |
307 |
297 |
561 |
297 |
413 |
未経過保険料方式による経常利益 |
△336 |
345 |
444 |
453 |
477 |
⑮ 異常危険準備金の取崩しが発生するリスク
損害保険会社は、保険業法施行規則第70条第1項第2号に基づき、異常危険準備金を責任準備金として負債計上する必要があります。異常危険準備金は、異常災害による損害の填補に備えるため、事業年度毎に収入保険料の一定割合を積み立てる責任準備金の一種であり、大蔵省告示第232号第2条の別表で記載されている基準損害率を超える場合に、当該損害率を超過した支払保険金相当額について、異常危険準備金の前事業年度残高から取崩すこととされています。
当社が扱うペット保険においては、取崩しの判断基準となる損害率は50%であるところ、当社の損害率はこの基準損害率を下回るため、収入保険料に3.2%を乗じた金額を事業年度毎に積み立てておりますが、今後、当社の損害率が上昇した場合は、取崩しが発生することにより、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、直近5年間の異常危険準備金繰入額及び残高は以下のとおりであります。
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(単位:百万円) |
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決算年月 |
2016年3月 |
2017年3月 |
2018年3月 |
2019年3月 |
2020年3月 |
異常危険準備金繰入額 |
260 |
322 |
391 |
475 |
580 |
異常危険準備金残高 |
1,034 |
1,356 |
1,748 |
2,223 |
2,803 |
⑯親会社グループとの関係について
当社の親会社は株式会社ドリームインキュベータであり、当事業年度末現在で当社発行済株式総数の56.2%を所有しております。親会社は、戦略コンサルティング事業及びインキュベーション事業を主たる事業としております。同社はインキュベーション事業の一環として、2011年2月に当社を子会社化しております。
ア.親会社グループにおける当社の位置付け
当社は、親会社グループの事業のうち、インキュベーション事業に区分されますが、2019年3月期における親会社のセグメント開示では、開示基準に従い、保険セグメントとして営業投資セグメントから独立して掲記されております。また、当社への投資はインキュベーション事業の一環であるという親会社の経営方針に照らし、当社株式は、最終的に全て売却される予定です。なお、親会社グループ企業において当社と競合する事業を営む会社は存在せず、現時点において、今後も競合が想定される事象はないものと認識しておりますが、将来的に親会社の経営方針に変更が生じた場合等には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
イ.親会社グループとの取引関係
当社と親会社グループとの取引は生じておりません。
ウ.親会社グループとの資本関係
当社は、自らの経営責任を負って独立した事業経営を行っておりますが、当社の親会社である株式会社ドリームインキュベータは当社発行済普通株式の56.2%(当事業年度末現在)を所有しており、当社は同社の連結子会社となっております。また、親会社は当社株式を最終的に全て売却する予定ですが、当面は連結を維持する方針であります。
このような影響力を背景に、親会社は当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、親会社の利益は、当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。
また、親会社における今後の当社株式の保有方針及び処分方針によっては、当社株式の流動性や市場価格等に影響を及ぼす可能性があります。
エ.親会社グループとの人的関係
本書提出日現在、当社の取締役である原田哲郎は、親会社である株式会社ドリームインキュベータの代表取締役CEO執行役員を兼務しております。同取締役は、その豊富な経営経験に基づく知見の活用等を目的として、当社が招聘したものであり、親会社からの独立性は確保されている状況にあります。
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