当社グループの研究開発活動は、主として当社が行っており、先端的および基盤的な技術の研究開発と、製品化技術の研究開発を、総合的・有機的に連携させ運営しています。すなわち、コア要素技術である先端分析、革新バイオ、脳五感、AIと、製品基盤技術である機器制御設計、システム統合の領域で研究開発に取り組むことで、基盤事業としての計測機器事業、医用機器事業、産業機器事業、航空機器事業に対する新製品開発を推進しています。
また、子会社においては、独自に研究開発を行うほか、欧州および中国の研究開発子会社において次世代の当社製品の核となる基盤要素技術の研究開発を行うなど積極的な研究開発に取組んでいます。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
当連結会計年度における主要な研究開発成果にはつぎのものがあります。
<計測機器事業>
計測機器事業では、クロマト分析システム、質量分析システム、光分析システム、ライフサイエンス関連分析システム、表面分析・観察システムなどの開発に注力しています。
クロマト分析システムとして、抗体医薬品などのバイオ医薬品や核酸医薬品などの分析で安定した測定を実現可能な、
高速液体クロマトグラフを開発しました。また、ガスクロマトグラフ質量分析計や液体クロマトグラフ質量分析計の自動前処理装置を開発しました。これは、省力化や感染リスク低減、処理精度の向上を可能とする自動前処理装置で、多検体処理に優れた卓上型の前処理装置となります。さらに、当社の高速液体クロマトグラフと、株式会社堀場製作所のラマン分光装置を融合させた計測機器を開発しました。クロマトグラフの「わける」技術と、ラマンの「みえる」技術の結合により、計測の精度や効率を大幅に高めるとともに、未知成分の検出も期待でき、新たな計測価値を提供します。
質量分析システムとして、液体クロマトグラフと同様の操作性を実現すると共に小型化を行い、「使いやすさ」「基本性能の高さ」「コンパクトさ」を全て実現した高速液体クロマトグラフ質量分析計を開発しました。また、装置高が約1メートルというコンパクトさで、卓上型として世界最高級の分解能・感度を実現したマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計を開発しました。
光分析システムとして、現行機種と比較して約2倍の感度・分解能を実現すると共に、経験の浅いユーザーでも操作が可能なフーリエ変換赤外分光光度計を開発しました。従来の分野だけでなく、新素材、バイオ医薬など、様々な分野の研究開発・品質管理に貢献可能な装置となります。
ライフサイエンス関連分析システムとして、従来法で30分かかっていた核酸抽出の手作業工程を2分間に短縮可能な核酸抽出システムを開発しました。遺伝子解析の効率化に貢献します。
表面分析・観察システムとして、従来機に比べ分析速度・感度・使いやすさがより一層進化した、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を開発しました。各種規制への対応に加えて、高感度を生かした材料組成や不純物分析、研究開発に貢献します。
<医用機器事業>
医用機器事業では、X線TVシステム、X線撮影システム、血管撮影システム、PETシステム、放射線治療装置用動体追跡システム、近赤外光イメージング装置、医療情報システムなどの開発に注力しています。
X線撮影システムとして、透視検査室と一般撮影検査室の統合を可能にする、動画とワイヤレス静止画撮影が可能なX線TVシステムを開発しました。また、本体支柱を伸縮式にして広い前方視界を実現することで、感染症や災害などの医療現場でもストレスなくX線撮影が可能な、回診用X線撮影装置を開発しました。
放射線治療装置用動体追跡システムとして、治療中でも短時間で高精度に照射位置決めを可能とし、治療時間を削減可能な、がんの放射線治療支援システムを開発しました。治療時間や治療回数減少による患者の負担軽減とともに、医療機関の治療スループットの向上が可能となります。
<産業機器事業>
産業機器事業では、ターボ分子ポンプ、油圧ギヤポンプ、コントロールバルブ、パワーパッケージ、高速スパッタリング装置、動釣合試験機(バランシングマシン)、ヘリウムリークディテクタ、工業炉、ガラスワインダ、液送ポンプなどの開発に注力しています。
ターボ分子ポンプとして、業界トップクラスの性能と環境に配慮した、薄膜コーティング用途専用ターボ分子ポンプを開発しました。従来機種と比べて、排気速度を向上させることでより高品質な成膜が可能になると共に、起動時間の短縮や防水性能・安全性、省資源につながる製品重量の軽減、消費電力の低減を実現しました。今後も環境に配慮したターボ分子ポンプの研究開発に従事してまいります。
今後も、当社の先端的および基盤的な技術と、製品化技術を用いた研究開発を活かして、社会課題の解決に役立てるよう取り組みます。
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