業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 業績

業績全般に関する動向

 当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による厳しい状況が、ワクチン接種も進み、徐々に緩和される中で、持ち直しの動きが見られました。一方で、新たな変異株により感染が再拡大するなど、依然として不確実性の高い状況が続いています。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、一部の国や地域におけるサプライチェーンへの影響や、新型コロナウイルスの感染拡大や米中の貿易摩擦に伴う、世界的な半導体不足による影響、ウクライナにおける戦争による影響、資源価格の高騰による影響も発生しています。わが国経済においても、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が緩和される中で、世界経済と同様に持ち直しの動きが見られました。

 こうした環境下にあるものの、当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指し、2019年11月に発表した中長期の経営戦略に沿って、持続的な成長に向けた取り組みを推し進めています。

 本経営戦略に基づき、当社は内視鏡事業及び治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化に努めています。その一環として2022年4月1日には、科学事業の持続的な成長と収益性の向上に向けて、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに当社の科学事業を承継させる会社分割を実施しました。

 

業績の状況

 以下(1)から(7)は継続事業の業績を、(8)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。なお、前連結会計年度において、映像事業を日本産業パートナーズ株式会社が設立した特別目的会社であるOJホールディングス株式会社に譲渡したことにより、当該事業に関わる損益については、非継続事業に分類しています。

(単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

増減率(%)

(1)売上高

730,544

868,867

138,323

18.9%

(2)売上原価

271,014

297,172

26,158

9.7%

(3)販売費および一般管理費

357,032

405,399

48,367

13.5%

(4)持分法による投資損益/
その他の収益/その他の費用

△20,513

△12,398

8,115

(5)営業利益

81,985

153,898

71,913

87.7%

(6)金融損益

△5,175

△4,025

1,150

(7)法人所得税費用

11,140

33,903

22,763

204.3%

(8)親会社の所有者に帰属する当期利益

12,918

115,742

102,824

796.0%

 

(1)売上高

 前期比1,383億23百万円増収の8,688億67百万円となりました。内視鏡事業、治療機器事業、科学事業、その他事業の全ての事業で増収となりました。詳細は次ページのセグメント別の動向に関する分析に記載しています。

(2)売上原価

 前期比261億58百万円増加の2,971億72百万円となりました。売上原価率は、34.2%と前期比2.8ポイント改善しました。

 前期においては、新型コロナウイルス感染症による影響で生産高が減少した結果、工場の操業度が低下するなどの影響が生じました。また、治療機器事業および内視鏡事業で気管支鏡および胆道鏡の自主回収に伴う費用約57億円を計上し、治療機器事業で処置具の自主回収に伴う費用約20億円を計上しました。一方、当期は、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円、前期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円を、それぞれ計上しました。さらに増収に加え操業度の改善もあり、売上原価率も改善しました。

(3)販売費および一般管理費

 前期比483億67百万円増加の4,053億99百万円となりました。新型コロナウイルス感染症に伴う販売活動等の制限の緩和により、業務委託費、研究費、人件費等の費用が増加しました。

(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用

 持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で123億98百万円の損失となり、前期比で損失が81億15百万円減少しました。その他の収益は、2019年3月期に当社の海外子会社が行った間接税に係る自主調査に関して追加的な負担を見込んで引当計上した税額の内、発生が見込まれなくなった約36億円や、Medi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円等を計上したことにより、前期比で、約59億円増加しました。一方、その他の費用は、減少しました。当期は、科学事業における分社化に係る費用約94億円、内視鏡事業における開発資産の減損損失約16億円をそれぞれ計上しており、また、企業変革プラン「Transform Olympus」を推進するための関連費用は約28億円増加しましたが、前期は、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用約119億円や、映像事業における分社による新会社の設立及び譲渡に係る費用約52億円を計上しており、前期比で、約13億円減少しました。

(5)営業利益

 上記の要因により、前期比719億13百万円増益の1,538億98百万円となりました。

(6)金融損益

 金融収益と金融費用を合わせた金融損益は40億25百万円の損失となり、前期比で損益は11億50百万円改善しました。損益の改善は、主として支払利息が減少したことによるものです。

(7)法人所得税費用

 税引前利益が増加したことにより、前期比で227億63百万円増加し、339億3百万円となりました。

(8)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算)

 上記の要因に加え、前期は非継続事業で526億81百万円の損失を計上していたこともあり、前期比で1,028億24百万円増益となる1,157億42百万円となりました。

 

(研究開発支出および設備投資)

 当期においては、当社グループ全体で852億72百万円の研究開発費を投じるとともに、755億3百万円の設備投資を実施しました。

 

(為替影響)

 為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=112.38円(前期は106.06円)、1ユーロ=130.56円(前期は123.70円)、1人民元=17.51円(前期は15.67円)となり、売上高では前期比で487億84百万円の増収要因、営業利益では前期比で227億91百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比12.3%の増収、連結営業利益は前期比59.9%の増益となります。

 

セグメント別の動向に関する分析

 第1四半期連結会計期間より、呼吸器科分野の事業強化を目的として、従来「内視鏡事業」セグメントに含めていた気管支鏡を、「治療機器事業」セグメントに移管しています。前期のセグメント情報については、移管後の報告セグメントに基づき組替を行い、表示しています。

 

 

売上高

営業利益又は営業損失(△)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

内視鏡

393,664

461,547

17.2

98,771

133,204

34.9

治療機器

231,842

275,586

18.9

30,567

60,826

99.0

科学

95,861

119,105

24.2

4,949

17,526

254.1

その他

9,177

12,629

37.6

△682

△2,024

小計

730,544

868,867

18.9

133,605

209,532

56.8

消去又は全社

△51,620

△55,634

連結計

730,544

868,867

18.9

81,985

153,898

87.7

(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。

 

[内視鏡事業]
 内視鏡事業の連結売上高は、4,615億47百万円(前期比17.2%増)、営業利益は1,332億4百万円(前期比34.9%増)となりました。

 消化器内視鏡分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、全ての地域で前期比プラス成長となり、特に北米と欧州の売上が増加しました。製品別では、新製品である「EVIS X1」シリーズの販売が堅調に推移していることに加えて、一世代前の上部消化管用スコープや下部消化管用スコープに対するニーズも底堅く、増収に寄与しました。なお、全体の売上に占める「EVIS X1」シリーズの割合も徐々に上昇しています。

 外科内視鏡分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、前期比プラス成長となりました。特に、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅡ」の販売が好調に推移した北米と欧州で売上が増加しました。

 医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上や、新規契約の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、修理件数の増加が見られており、全ての地域で前年同期比プラス成長となりました。

 内視鏡事業の営業損益は、大幅増益となりました。前期は、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用として約42億円をその他の費用に計上していた一方、今期は、開発資産の減損損失約16億円を計上したものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴い大幅な増収となり、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円も計上しました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比10.5%の増収、営業利益は前期比20.3%の増益となっています。

 

 

[治療機器事業]

 治療機器事業の連結売上高は、2,755億86百万円(前期比18.9%増)、営業利益は608億26百万円(前期比99.0%増)となりました。

 消化器科(処置具)分野では、症例数が回復傾向にあり、全ての地域・製品群でプラス成長となりました。特に、社会経済活動が正常化する中で、症例数が増加している欧州や北米で好調に推移しました。また、スクリーニング検査における組織採取に用いられる生検鉗子等のサンプリング、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群、病変の切除に使用されるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)、EMR(内視鏡的粘膜切除術)用の製品群で売上が増加しました。

 泌尿器科分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進んでいる、北米と欧州を中心に好調に推移し、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極と尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System」の拡販が奏功しました。

 呼吸器科分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進んだ北米と欧州を中心に大幅なプラス成長となりました。2020年12月に子会社化したVeran Medical Technologies, Inc.が当期を通じて売上に貢献したほか、EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具や気管支鏡等も好調に推移しました。

 その他の治療領域では、耳鼻科、エネルギーデバイスで売上が好調に推移しました。特に、耳鼻咽喉科向け内視鏡や「THUNDERBEAT」の売上が寄与しました。

 治療機器事業の営業損益は、大幅増益となりました。前期において、気管支鏡の自主回収に伴う費用を約55億円、処置具の自主回収に伴う費用約20億円、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用として約14億円を計上していた一方、当期は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴い大幅な増収となり、Medi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円や、前期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円、Veran Medical Technologies, Inc.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動に伴う利益約12億円も計上しました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比12.3%の増収、営業利益は前期比80.7%の増益となっています。

 

[科学事業]
 科学事業の連結売上高は、1,191億5百万円(前期比24.2%増)、営業利益は175億26百万円(前期比254.1%増)となりました。

 ライフサイエンス分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、前期比プラス成長となりました。研究所、大学での予算執行が進んだことに加え、販売活動の制限緩和により、市場環境の回復が顕著なアジアパシフィックや北米で生物顕微鏡の拡販等が寄与しました。

 産業分野では、全体的な市況回復に伴い、顧客の設備投資状況に改善が見られ、全ての分野で前期比プラス成長となりました。特に、北米において、市場環境に回復が見られる非破壊検査機器が好調に推移したほか、中国において、5G関連の電子部品や半導体市場が活況であることから工業用顕微鏡が好調に推移し、売上増加に寄与しました。

 科学事業の営業損益は、前期に社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用として約12億円を計上した一方、当期における新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴う大幅な増収により、大幅増益となりました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比17.3%の増収、営業利益は前期比196.5%の増益となっています。

 

[その他事業]
 その他事業では、人工骨補填材等の生体材料、整形外科用器具などの開発・製造・販売等を行っているほか、新規事業に関する研究開発や探索活動に取り組んでいます。

 その他事業の連結売上高は、126億29百万円(前期比37.6%増)、営業損失は20億24百万円(前期は6億82百万円の営業損失)となりました。

 2020年11月に子会社化したFH ORTHO SASの売上約44億円が寄与し、大幅増収となりました。その他事業の営業損益は、増収だったものの、前期に当社子会社であったオリンパスRMS株式会社の全株式を譲渡したことに伴う譲渡益17億70百万円を計上していたこともあり、悪化しました。

 

 

② 財政状態の状況

 

 

前連結会計年度末

(百万円)

当連結会計年度末

(百万円)

増  減

(百万円)

増減率

(%)

資産合計

1,183,453

1,357,999

174,546

14.7

資本合計

395,480

511,362

115,882

29.3

親会社所有者帰属

持分比率

33.3%

37.6%

4.3%

 

 

 当連結会計年度において、2020年12月に買収したVeran Medical Technologies, Inc.及び2021年2月に買収したQuest Photonic Devices B.V.の取得資産と引受負債の公正価値を修正したことにより、前連結会計年度末の連結財政状態計算書を遡及修正しています。遡及修正の内容については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 40. 企業結合 (暫定的な金額の修正)」に記載しています。

 

[資産]

 当連結会計年度末は、資産合計が円安の影響もあり、前連結会計年度末から1,745億46百万円増加し、1兆3,579億99百万円となりました。これは為替変動の影響分も含めて、現金及び現金同等物が850億94百万円増加したこと、営業債権及びその他の債権が205億8百万円増加したこと、及び子会社を取得した影響によりのれん及び無形資産がそれぞれ371億14百万円及び155億51百万円増加したことが主な要因となります。

[負債]
 負債合計は円安の影響もあり、前連結会計年度末から586億64百万円増加し、8,466億37百万円となりました。これは為替変動の影響分も含めて、外貨建て社債の発行による資金調達を主因に流動負債及び非流動負債に含まれる社債及び借入金が308億63百万円増加したこと、及び未払法人税が236億17百万円増加したことが主な要因となります。

 

[資本]

 資本合計は、前連結会計年度末から1,158億82百万円増加し、5,113億62百万円となりました。剰余金の配当及び自己株式の取得を行った一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益1,157億42百万円を計上したこと等により、利益剰余金が268億14百万円増加したことに加え、円安の影響による為替換算調整勘定の変動により、その他の資本の構成要素が361億65百万円増加したことが主な要因となります。


 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の33.3%から37.6%となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

124,122

169,729

45,607

投資活動によるキャッシュ・フロー

△118,918

△71,016

47,902

財務活動によるキャッシュ・フロー

40,800

△40,667

△81,467

現金及び現金同等物期末残高

217,478

302,572

85,094

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において営業活動により増加した資金は、1,697億29百万円(前連結会計年度は1,241億22百万円の増加)となりました。税引前利益1,498億73百万円及び減価償却費及び償却費の調整646億15百万円が主な要因になります。

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において投資活動により減少した資金は710億16百万円(前連結会計年度は1,189億18百万円の減少)となりました。主な要因は、デモ機等の有形固定資産の取得による支出416億88百万円、Medi-Tate Ltd.の取得による支出218億37百万円及び開発資産等の無形資産の取得による支出200億83百万円となります。

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において財務活動により減少した資金は、406億67百万円(前連結会計年度は408億円の増加)となりました。主な減少要因は、自己株式の取得による支出300億1百万円(単元未満株式の買い取り含む)、配当金の支払154億28百万円、長期借入金の返済による支出262億46百万円及び短期借入金及びコマーシャルペーパーの減少54億54百万円等となります。一方で、増加要因としては外貨建て社債の発行に伴う収入561億43百万円となります。

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から850億94百万円増加し、3,025億72百万円となりました。

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

354,993

3.1

治療機器

211,718

8.1

科学

113,297

20.6

その他

2,657

82.9

682,665

7.4

(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

   2 当連結会計年度より、呼吸器科分野の事業強化を目的として、従来「内視鏡事業」セグメントに含めていた気管支鏡を、「治療機器事業」セグメントに移管しています。そのため、前連結会計年度のセグメント情報については、移管後の報告セグメントに基づき組替を行いました。下記④販売実績も同様です。

 

② 仕入実績

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

-

-

治療機器

-

-

科学

-

-

その他

1,463

△16.8

1,463

△16.8

 

③ 受注実績

 当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。

④ 販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

461,547

17.2%

治療機器

275,586

18.9%

科学

119,105

24.2%

その他

12,629

37.6%

868,867

18.9%

(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度時点において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

 当社グループは、2019年11月に発表した中長期の経営戦略において、目標とする業績指標を営業利益率で定めており、2023年3月期に営業利益率を20%超に改善することを目指しています。

 当連結会計年度における営業利益率は、販管費の効率化を進めたものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、17.7%(前期比6.5ポイント改善)となりました。

 目標とする業績指標の達成に向けて、内視鏡事業では消化器内視鏡システム「EVIS X1」の拡販を進めるとともに、治療機器事業では消化器科処置具、泌尿器科、呼吸器科処置具の3領域に注力し、売上の成長と費用の効率向上を図るとともに、引き続き、財務の健全性を考慮しつつ、収益性と資産効率性の向上に向け、事業活動を推進していきます。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況

(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、子会社株式の取得や自己株式の取得による支出があった一方で、営業活動からのキャッシュ・インフローが堅調であったことに加え、外貨建て社債の発行による資金調達を行いましたので、当連結会計年度末時点で約3,000億円(前連結会計年度末より約850億円増加)の手元資金を保有しています。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。

(ⅱ) 財務政策

 当社グループは、財務健全性の維持と、適正な財務レバレッジのコントロールによる資本効率向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、D/Eレシオや有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達基盤の多様化、拡充を進めており、調達コストの低減に取り組んでいます。

 当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2022年3月31日現在における状況は、次のとおりです。

 

格付投資情報センター:A(長期、見通し安定的)、a-1(短期)

S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通し安定的)

ムーディーズ・ジャパン:Baa2(長期、見通し安定的)

 

(ⅲ) 資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは、人件費および広告・販売促進費等のマーケティング費用です。当社グループの研究開発費は、様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および欧米を中心とした製造、修理拠点の拡充など、生産効率向上のための設備投資です。加えて、当連結会計年度においては、Medi-Tate Ltd. の買収を行い、戦略投資の資金需要も生じました。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、引き続き積極的に対応してまいります。

 

 

 

(ⅳ) 資金調達

 当社グループの運転資金および設備投資資金は、内部資金により充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行により資金を調達しています。これらの借入金および社債については、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できると考えており、今後も成長に必要となる資金の調達に問題はないものと考えています。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA格、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+及びムーディーズ・ジャパンはBaa2となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金を調達することが出来ると考えています。さらに、主要通貨(米ドル・ユーロ・円)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。

 当連結会計年度においては、手元流動性の確保及び資金調達手段の多様化を目的とし、2021年12月に外貨建て社債の発行による500百万米ドルの資金調達を行いました。安定した財務基盤の維持と、適正な財務レバレッジのコントロールによる資本効率向上の両立を意識しながら、今後も資金需要に応じて、借入や社債の発行による調達を検討していきます。

 

(ⅴ) 資金配分

 (ⅳ) 資金調達に記載したとおり、機動的な資金調達体制により、当社グループは、成長投資や株主還元に必要な手元資金も十分に確保出来ています。当社グループの持続的な成長を実現させるため、手元資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ継続的に増配する方針で、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。

 

 

③ 重要な会計方針および見積り

 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

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