課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。

 この基本思想のもと、当社グループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

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(2) サステナビリティ

 当社は、世界をリードする事業を通じて、グローバル規模で企業の社会的責任を果たしていきます。私たちは100年以上にわたり、革新的な製品・サービスを通じて、世界の人々の健康と安心、心の豊かさを実現し、社会にとって意義のある価値を提供してきました。特に、患者さまの苦痛軽減やQOL(生活の質)向上、医学・科学の分野における経済的価値の創出といったソリューションを提供することで、世界の医療に貢献してきました。私たちはESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を取り入れた取り組みを積極的に行うことで、持続可能な社会のために貢献できると考えています。そして、このような活動によって、当社もまた企業価値を向上させ、持続可能な成長を実現していきます。

 当社は、経営戦略、ステークホルダーのご意見、ESG評価機関によるベンチマークなどを反映し、グループ経営執行会議および取締役会でのプロセスを経て、6つのESG領域および5つの重要課題(マテリアリティ)を特定しました。 5つのマテリアリティは、事業を通じた社会課題の解決に貢献することを明文化し、相互に補い合って強化される関係にあります。当社が競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えています。マテリアリティは社会・事業変化によって可変のものであり、今後も必要に応じて見直しを行います。

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(3) 目標とする経営指標

 2019年に発表した中長期の経営戦略において、当社は、世界をリードするメドテック・カンパニーへ成長し、革新的な価値によって全てのステークホルダーにベネフィットをもたらし、世界の人々の健康に貢献することを戦略目標としています。この考え方に基づき経営戦略を実行した結果として、年率5-6%の売上高成長率を持続し、グローバルメドテック並みの20%を超える営業利益率の達成を目指すとともに、当社が注力する治療領域においてリーディングポジションを獲得していきます。

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*その他の収益およびその他の費用を除外

 

 また、目標とする財務ガイダンス・参考指標を以下のとおり定めており、2023年3月期に営業利益率を20%超に改善することを目指しています。

 

(2022年5月公表見通し)

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注:特殊要因調整後 *継続事業のみ **2020年3月期を起点とするCAGR

 

(4) 経営戦略

(事業の成長・収益性向上のためのコア要素)

 当社は、2019年に発表した「Transform Olympus」に沿って、1.グローバル・グループ経営執行体制の構築、2.人事マネジメントのグローバル統一、3.医療事業の再編成(「Transform Medical」)4.取締役会メンバーの多様化、5.指名委員会等設置会社への移行など、真のグローバル・メドテックカンパニーとして、当社グループの持続的な成長を可能とする基盤整備に取り組んでまいりました。また同年に発表した中長期の経営戦略により、真のグローバル・メドテックカンパニーとしての飛躍、そして、当社の企業理念である「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」のもと、より競争力のある、ハイパフォーマンスな企業文化の醸成や、顧客価値の創造を目指しています。本経営戦略における事業の成長・収益性向上のためのコア要素を、以下のとおり定めています。

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A 事業ポートフォリオの選択と集中

 当社の主要な事業は、(i)内視鏡事業、(ii)治療機器事業及び(iii)科学事業になりますが、(i)内視鏡事業や(ii)治療機器事業が属する医療市場は、全体として高い成長性や収益性を有することに加えて、当社の事業としても持続的な成長及び高い収益性を示しています。この点を踏まえ、定期的に全社の事業ポートフォリオを見直す中で、さらなる成長が見込まれる、(i)内視鏡事業及び(ii)治療機器事業に対して、今後も積極的に経営資源を投入していきます。

 なお、2021年1月に当社の映像事業を、日本産業パートナーズ株式会社が設立した特別目的会社であるOJホールディングス株式会社に譲渡しました。また、科学事業については、科学事業の持続的な成長と収益性の向上に向けて、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに当社の科学事業を承継させる会社分割を実施し、第三者へ譲渡する可能性なども念頭に置いた検討を進めています。

 

B 内視鏡事業における圧倒的ポジションの強化

 継続的な技術革新と強固な販売力により、リユース内視鏡の競争優位性をさらに高めるとともに、アンメットニーズへの対応も図り、市場全体として高い成長が期待できるシングルユース内視鏡分野における製品を拡充していきます。また、今後予想される医療機器に係るビジネスモデルの転換に適切に対応することで、内視鏡市場における現在の主導的な地位をより一層強固なものにしていきます。

 具体的には、以下の施策等を実施していくことで、内視鏡事業において2021年3月期から2023年3月期の3年間で年平均6%の成長を目指します。

(i) リユース内視鏡における競争優位性の堅持

・AI搭載CAD(Computer-aided Diagnosis)機能等を実装した新消化器内視鏡システムの導入

・病変の発見、分類、ステージング、処置のそれぞれのシーンにおいて術者を支援する新技術の投入による内視鏡診断・処置の質的な向上

・新機能の投入による内視鏡診断の質の向上を示すクリニカルエビデンスの確立

・今後大きな成長が期待出来る新興国市場におけるドクタートレーニング支援とその継続

(ii) シングルユース内視鏡によるポートフォリオ拡充

・豊富なリユース内視鏡のラインアップにシングルユース内視鏡を加えることで、内視鏡医療のあらゆるシーンに対応する圧倒的な製品ポートフォリオを構築

 

(iii) 内視鏡の販売・サービスモデルの強化

・エビデンスベース、症例ベース課金モデルを試験的に導入

・包括的な保守サービスプログラムの試行拡大

 なお、消化器内視鏡の領域においては、2020年4月には欧州と一部アジア地域、7月に日本で、主力の内視鏡システム新製品「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」を導入しており、2023年3月期の下期中には米国での導入を目指しています。また、2020年10月には欧州と一部アジア地域にてAIを活用した内視鏡CADプラットフォーム「ENDO-AID」を発売しました。今後も世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現に向けて製品の普及に取り組んでいきます。

 

C 治療機器事業への注力と拡大

 当社が高い競争力を有する、消化器科関連処置具、泌尿器科、呼吸器科関連処置具の3つの領域を中心として、製品の拡充や手技の普及、販売体制の強化によって成長の拡大を図っていきます。

 具体的には、2021年3月期から2023年3月期の3年間、以下の施策等を実施していくことにより、治療機器事業において年平均8%の成長を目指します。

(i)消化器科関連処置具

・ERCP、消化器ステント、止血デバイスなどの主要カテゴリーにおける付加価値の高い製品の拡充

(ii)泌尿器科

・泌尿器科クリニックに対する前立腺肥大処置に係るソリューションの提供

・ファイバーレーザー技術を用いた結石処置デバイスの導入と泌尿器内視鏡処置デバイスの導入によるラインアップ拡充

(iii)呼吸器科関連処置具

・気管支内バルブシステムの普及

・穿刺針の製品開発によるEBUS分野のポートフォリオ拡充

 

 なお、治療機器事業においては、世界最大の治療機器市場である米国における事業展開を促進するため、事業のグローバル統括機能を米国に配置していますが、事業開発機能の強化を通して社外パートナーとの協働やライセンシング、M&Aを推し進め、製品ポートフォリオの拡充や補完を図るとともに、法規制対応やクリニカルアフェアーズなどの機能の強化、製品や手技に対するバリュー・プロポジションの追求もあわせて推進していきます。

 当社は上記の3つの注力領域において自社開発による製品投入を行う他、M&Aにも積極的に取り組んでおり、2021年3月期以降、消化器科関連処置具の領域でArc Medical Design Limitedを、泌尿器科の領域でMedi-Tate Ltd.を、また呼吸器科関連処置具の領域でVeran Medical Technologies, Inc.を、それぞれ買収しました。

 

D 次世代低侵襲手術市場のリード

 当社は、患者さまの術後のQOL維持といった観点で期待を集める低侵襲手術の分野を中長期の成長に向けた戦略分野と位置付けています。今後、手技の革新、機器の改善、低侵襲なロボティックスの開発を通じて、低侵襲手術の発展に貢献するとともに市場全体を牽引すべく、以下の施策を実施していきます。

・技術革新を目標とした病院や学会とのパートナーシップの確立

・技術的な優位性を確立することを主眼に置いたM&Aの実施

・持続可能なものづくりを実現する社内機能の強化

・低侵襲な内視鏡による治療技術(エンドルミナルマニピュレータープラットフォーム)の開発

 

(医療分野における戦略的な方針)

 当社では予防からスクリーニング、診断、治療、予後にいたるまで、患者さまがたどる一連のケア・パスウェイに着目し、一人ひとりに適したケアをサポート、向上させ、患者さまのアウトカムの改善に貢献するべく、ソリューション提供の強化を図っており、以下の医療分野における戦略的な方針を2021年に発表しました。

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(i)「Focus」:当社は、消化器科・泌尿器科・呼吸器科のリーディングカンパニーであり、これらの領域で当社が最大限の力を発揮できる疾患に注力します。

・消化器科:新製品によるリーダーシップの維持、地域戦略と販売モデルの拡大による成長、関連する領域への事業拡大による成長

・泌尿器科:結石破砕治療におけるリーダーシップ、泌尿器科医に対し包括的なBPH治療ソリューションを提供

・呼吸器科:技術革新と臨床エビデンスによりコア市場でのリーダーシップを維持、アンメットニーズに対応するソリューションを拡充、市場でのプレゼンスを広げることで当社の影響力を拡大

(ii)「Shape」:新たな投資を行うことにより、診療水準を向上させるイノベーションや価値の創造につなげていきます。

・シングルユース内視鏡:内視鏡の領域のリーディングカンパニーとして、処置・治療部位など一人一人の患者さまのニーズに最適なツールを利用できるよう、シングルユース内視鏡の発売を複数の診療科で予定

・デジタルに関する取り組み:デジタル技術と自動化技術を活用して、臨床医やスタッフの負担の軽減につながる製品・サービスの提供を目指す

(iii)「Enable」:グローバル・メドテックカンパニーとして持続的な成長を果たす上で、組織基盤をグローバル・メドテックカンパニーに相応しい体制やオペレーションに転換する取り組みに注力します。

・ビジネスディベロップメント:インオーガニックな成長の促進のため、新たな機会を模索

・メディカル&サイエンティフィックアフェアーズ:製品やサービスの臨床的意義、経済的価値、安全性の向上のため、機能を強化

・さらなる組織力の強化:調達・サプライチェーン・製造、R&D、品質保証・法規制対応などにおいても、グローバル・メドテックカンパニーとしてふさわしい機能とするべく変革を推進

 

(5) 2023年3月期 経営方針

 半導体をはじめとした部品供給不足やウクライナにおける戦争、中国での新型コロナウイルスの再拡大など、不確実性の高いリスクが顕在化しています。一方で世界的には、新型コロナウイルス感染症については、新たな変異株による感染の再拡大のリスクがあるものの、その影響は引き続き縮小していくものと想定しています。2023年3月期はこれらのリスクへの対応を進めつつ、事業運営を行います。

 2023年3月期は、上述の「医療分野における戦略的な方針」を推進しつつ、事業成長と効率性の向上によりマイルストーンとして掲げた財務ガイダンスの達成を目指します。また、グローバル・メドテックカンパニーとして、患者さまに高い価値を提供することに注力したうえで、マテリアリティに掲げている社会課題の解決、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 2019年以降、スピード感を持ってさまざまな施策を実行し、企業変革を推進し続けてきたことにより、全社に変革の文化が根付いてきており、2023年3月期はマイルストーンとして営業利益率20%超の達成を目指すとともに、「変革」から「成長」にフェーズをシフトしていく年にしたいと考えています。従来の効率性の追求、機能のグローバル化、健やかな企業文化の実現を目指した取り組み等は今後も継続しつつ、「成長」に舵を切ることにより、売上と収益性を持続的に向上させ、最終的な目標である当社の存在意義「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」に貢献していきます。

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