課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(経営理念)

当社グループは、企業理念として、世界中のステークホルダーの皆さまとともに歩む「共生」を掲げています。「共生」とは、文化、習慣、言語、民族などの違いを問わず、すべての人類が末永く共に生き、共に働き、幸せに暮らしていける社会をめざすものです。この「共生」の理念のもと、当社グループは、「共生」の理念に基づき、世界の繁栄と人類の幸福のため、企業の成長と発展を目指し企業活動を進めています。

 

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(中長期経営計画:グローバル優良企業グループ構想フェーズⅥ)

 当社は、「共生」の理念のもと、永遠に技術で貢献し続け、世界各地で親しまれ、尊敬される企業を目指し、1996年に5か年計画『グローバル優良企業グループ構想』をスタートしました。

 2021年を初年度とする新5か年計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅥ」(以下、フェーズⅥ)では、「生産性向上と新事業創出によるポートフォリオの転換を促進する」を基本方針に、テクノロジーとイノベーションによって新たな価値を生み出し、コンシューマーの分野ではより豊かな生活を、オフィスやインダストリーの分野ではより快適なビジネス環境を、そしてソサエティの分野ではより安心・安全な社会づくりをめざします。

 

①産業別グループへの組織再編成による事業競争力の強化

フェーズⅥでは、従来の事業本部とグループ会社を産業別に広く大きく括ったグループを単位として戦略・施策を策定しました。これを受け、2021年に、プリンティング、イメージング、メディカル、インダストリアルの4つのグループが組織としてスタートしました。事業本部間・グループ会社間の垣根をなくしたことで、グループ内の各分野で人材・技術の交流と情報・リソースの共有が促進され、統合の効果が表れています。今後は、グループの技術力と事業領域を再評価して、より競争力のある開発・生産体制を構築することで、市場の多様なニーズに応える新しい製品やソリューションを生み出すことと、更なる生産性と品質の向上を図ります。

 

各グループにおける、フェーズⅥの主な戦略・施策は以下の通りです。

 

プリンティンググループ

DX(デジタルトランスフォーメーション)時代、オフィスではプリント数を極力減らすという意味でのペーパーレス化は今後も進むものの、思考や仕事の成果の共有という点では底堅いプリント需要が見込まれます。新型コロナウイルスの感染拡大により、オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドな働き方が加速し、クラウドの活用等により働く場所で制約を受けないプリンティング環境・サービスの提供が求められています。当社グループは、電子写真技術とインクジェット技術という2つのデジタルプリント技術と、ワールドワイドでの販売・サービス網を有する強みを活かし、DX時代に合わせたプリンティング・ソリューションの提供に注力し、オフィスとホームプリンティングの分野において世界No.1を目指します。

また、今後更にアナログからデジタルへのシフトが進むと予想されるカタログ印刷等の商業印刷、ラベル印刷やパッケージ印刷等の産業印刷の分野では、この機をとらえ、省力化や付加価値向上を支援するワークフロー・ソフトの充実とともに、グループの総力を挙げて競争力ある新製品を順次市場に投入し、確固たる地位を築きます。

以上により、プリンティンググループでは、売上高で年率4から5%の安定的な成長を目指します。

 

イメージンググループ

スマートフォンの普及により、デジタルカメラ全体の市場は大きく縮小したものの、フルサイズのセンサーを搭載したミラーレスカメラの販売は、コロナ禍にあっても堅調に推移しており、高画質の写真に対する需要は底堅いものがあります。世界屈指の光学技術を有する当社は、こうした需要に応えるカメラ・交換レンズを今後も順次市場に投入し、「高画質」を重視するプロ・ハイアマチュアユーザーを対象の中心に、ミラーレスカメラにおいても世界No.1の地位を確立します。また近年様々な分野で仮想現実映像、立体映像、360度映像の利活用が進んでいることから、自由視点映像システム、2021年に投入したEOS VRシステム、MREALなどでこれら新たな映像体験市場を取り込み、事業の拡大を図ります。

放送や映像制作の分野では、IPストリーミングの需要が増大を続けていることから、高画質リモートカメラシステムのラインアップを強化します。

ネットワークカメラの分野では、世界有数のメーカーであるアクシス社や映像管理ソフト・ベンダーのマイルストーンシステムズ社、映像解析ソフト・ベンダーのブリーフカム社を擁する当社は、グループの総力を挙げて、スマートシティ向けを含むセキュリティ分野におけるプレゼンスを強化します。また同時に、生産現場での検品業務、集配センターでの欠品検知、店舗や展示会場での混雑具合の検知など、従来のセキュリティ目的を超えて、各種業務に対する映像を活用したDXを提供する製品・サービスの展開を図ります。

自動運転などの変革が著しいモビリティの分野では、長年培ってきた当社の光学技術とネットワーク技術を基軸として車載カメラや交通インフラへの事業参入を図り、運転支援等のモビリティサービスの普及に貢献します。

以上により、イメージンググループでは、売上高で年率10%以上の成長を目指します。

 

メディカルグループ

高度化する医療に対応するため、画像診断事業をコアにヘルスケアITや体外診断の領域にも事業領域を拡大し、世界の医療に貢献することを目指しています。

画像診断事業については、2021年に買収したRedlen Technologies Inc.(以下、レドレン社)の活用により、これまでにない診断機能への発展可能性と大幅な被ばく低減とを同時に実現するPhoton Counting CT(以下、PCCT)の技術開発を進め、早期の実用化に注力します。また、MRIの基幹技術であるQED社のRFコイル技術をはじめとするグループ会社の独自技術に加え、AIを活用した画像処理技術などを活用し、次世代の高機能MRIを開発します。超音波診断装置においては、プラットフォームの内製化・共通化、キヤノンのもつ生産技術による原価低減にも取り組みます。更に、米国を中心とする販売網の強化に取り組むことにより、CTはグローバルシェアNo.1を、その他の画像診断装置は世界トップグループ入りを目指します。

ヘルスケアITの領域では、臨床によって集められた画像や非画像のデータを統合し、AI等の技術を活用して解析・加工し、世界中に提供することによって、質の高い診断支援や効率的な医療の提供を目指します。また、体外診断の領域では、新型コロナウイルス感染症検査試薬をはじめ、検査装置周辺領域へとポートフォリオを広げて事業拡大を図ります。

コンポーネント事業については、新規顧客開拓、販売機能集約等により既存事業を拡大するとともに、M&Aによる成長も視野に入れ、完成品、モジュール、プロセス、サービスなど複数階層のソリューションを提供し、全体売上の10%超を占めるBtoB事業の拡大を目指します。

以上により、メディカルグループでは、売上高で年率5%以上の成長を目指します。

 

インダストリアルグループ

通信規格5Gやクラウド・コンピューティングの普及により、ICやメモリーといった半導体の需要は今後も拡大すると見込まれます。また、ネット配信を利用した視聴や学習の個別化、画像の更なる高精細化により、液晶パネルや有機ELパネルの需要も堅調に推移すると見込まれます。当社グループの半導体製造装置、FPD露光装置、有機ELディスプレイ製造装置は、ほぼフル生産の状態が続いており、需要増への臨機応変な対応が課題となっているため、グループの総力を挙げて生産体制を拡充するとともに、顧客サポート体制を強化します。加えて、顧客生産性に貢献する性能向上や機能追加により製品力を高め、シェアの拡大を図ります。

他方、ナノインプリント・リソグラフィ技術の適用拡大を視野に技術開発を推進して早期商品化を図るとともに、有機ELディスプレイの次世代製造技術の確立にも注力します。更に、超精密位置合わせ、超高精度加工、真空システムといったグループ内のコア技術を融合して新たな製品・サービスを創造し、新たな価値を顧客に提供することにより事業領域の拡大を目指します。

以上により、インダストリアルグループでは、売上高で年率10%程度の成長を目指します。

 

②本社機能の徹底強化によるグループ生産性の向上

事業の競争力の強化と拡大を図るため、人事制度を改定し、より一層の競争原理を働かせることで管理部門の生産性を向上するとともに、事業貢献を意識した本社R&D体制の整備など、本社機能について徹底して強化を行います。また、当社が有するあらゆる技術を活用して、材料やコンポーネントなどの事業化に取り組む横断的な組織を新設し、これまでM&Aによる獲得が中心であった新規事業を社内からも創出することで、収益拡大への貢献を進めていきます。

 

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(中期経営計画連結業績目標)

当社は、フェーズⅥ期間最終年度である2025年度の連結業績目標として、売上では当社史上最高を記録した2007年を上回る売上高4兆5,000億円以上、利益では営業利益率12%以上、当期純利益率8%以上の達成を目指します。また、事業ポートフォリオの転換を評価する指標として、連結売上高に対する、新規事業売上高の比率を設定し、2025年に全体の36%以上まで新規事業を育成することを目標とします。なお、新規事業には、キヤノンプロダクションプリンティング、キヤノントッキ、アクシス、キヤノンメディカルシステムズなど、フェーズⅠ以降に取得した主要な事業会社の事業と、フェーズⅥ期間中の事業化を目指す新規事業を含めています。

その他、財務の安定性の指標として、株主資本比率では60%以上を確保します。

 

 

2021年

実績

2022年

見通し

 

2025年

目標

売上高

3兆5,134億円

3兆8,700億円

 

4兆5,000億円以上

営業利益率

8.0%

8.6%

 

12%以上

当期純利益率

6.1%

6.3%

 

8%以上

 

 

 

 

 

株主資本比率

60.5%

62.1%

 

60%以上

 

 

(現行事業・新規事業売上比率)

 

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(気候変動とTCFDへの対応)

当社は、気候変動への対応を含む「地球環境の保護・保全」を経営の重要課題(マテリアリティ)の一つとしています。課題解決に向けて、開発、生産、販売といった自らの事業活動だけでなく、サプライヤーにおける原材料や部品の製造、販売店などへの輸送、さらにはお客さまの使用、廃棄・リサイクルに至るまで、製品ライフサイクルの各ステージにおける環境への影響を捉え、削減に取り組んでいます。

2050年にCO₂排出量をネットゼロとすることを目指し、製品の小型・軽量化、物流の効率化、生産拠点での省エネルギー活動、製品使用時の省エネルギー、製品リサイクルなど、様々な取り組みを推進しています。「キヤノングループ中期環境目標」である「ライフサイクルCO₂製品1台当たりの改善指数 年平均3%改善」を確実に達成することで、CO₂排出量の着実な削減を図っていきます。

また、当社は、金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しており、サステナビリティレポートやウェブサイトを通じて、推奨される情報を継続的に開示しています。

 

<ガバナンス>

気候変動対応を含む環境目標は、代表取締役会長兼社長 CEOが承認しています。中長期計画については、サステナビリティ推進本部が策定の上、取締役を含めた役員間の協議を経た上でCEOの承認を得ています。目標達成に向けサステナビリティ推進本部が中心となってグループ全体で活動を実行しています。目標の進捗について毎月経営層に報告するとともに、年間のレビューをCEOに報告しています。

また、当社では取締役会決議に基づき、リスクマネジメント委員会を設置し、環境法規制や自然災害に関する重大なリスクは、リスクマネジメント委員会において審議を行っています。

 

<戦略>

専門機関や政府機関からの情報をもとに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の気候変動シナリオなどを活用した製品ライフサイクルCO₂削減に対する数値シミュレーションを実施し、事業上のリスクや機会を特定するとともに中長期戦略を策定しています。※特定したリスク・機会の概要は、下表を参照

また、リスクを縮小し、機会を拡大するため、製品ライフサイクル全体を視野にCO₂削減を図る「緩和」と物理リスクへの「適応」の両面からのアプローチが重要と認識し、対応計画を策定・実行しています。

さらに、資源循環への取り組みを通じたCO₂削減も実行しています。例えば、複合機のリマニュファクチュアリングにより、新規の原材料調達や部品加工に伴い発生するCO₂削減が可能であるほか、インク・カートリッジのクローズドループリサイクルにより、回収したカートリッジからプラスチックをペレット化し、再度原材料として使用することで、新規の原材料調達や輸送等にかかるCO₂を削減することが可能となります。

 

 

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気候変動領域における主なリスク・機会

 

<リスク管理>

特定した気候変動リスク・機会は、ISO14001のPDCAサイクルに沿って管理しています。

当社は、環境保証活動の継続的な改善を実現する仕組みとして、全世界の事業所においてISO14001によるグループ共通の環境マネジメントシステムを構築しています。

具体的には、環境マネジメントシステムは、各部門の活動と連携した環境保証活動を推進(DO)するために、中期ならびに毎年の「環境目標」を決定(PLAN)し、その実現に向けた重点施策や実施計画を策定して事業活動に反映させています。さらに、各部門における取り組み状況や課題を確認する「環境監査」や、業績評価に環境側面を取り込んだ「環境業績評価」を実施(CHECK)することで、環境保証活動の継続的な改善・強化(ACT)へつなげています。

これらリスク・機会への対応は、全社環境目標や重点施策に反映されるとともに、当社では、環境への対応を経営評価の一部として取り入れており、各部門の環境目標の達成状況や環境活動の実績は、グループ全体の経営状況の実績を評価する「連結業績評価制度」の一指標として実施される「環境業績評価」の中で年2回、評価・評点化しています。評価結果はCEOをはじめとする経営層に報告されています。

 

<指標と目標>

製品ライフサイクル全体をスコープに、省エネ、省資源、リサイクルなどあらゆる環境活動の成果を一つの指標で統合的に捉え、管理していくため、「ライフサイクルCO₂ 製品1台当たりの改善指数 年平均3%改善」を「キヤノングループ中期環境目標」に設定しています。

この目標を継続的に達成することで、2030年には2008年比で50%の改善になると考えています。2021年時点では目標を上回る2008年比42%の改善となりました。また、ライフサイクルCO₂総量は7,616千t-CO₂(スコープ1+2+3合計)でした。これらのGHG(Greenhouse Gas)排出量データは、毎年第三者保証を取得しています。2021年も取得済みです。

当社は、社会と連携しながら、製品ライフサイクル全体での取り組みを通じて、2050年にCO₂排出量をネットゼロとすることを目指しています。

 

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