研究開発活動

5【研究開発活動】

 当社は創業当時より、業界をリードするコア製品を生み出す「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」、さらには成長の中で蓄えられてきたキヤノンブランドを支える技術・ノウハウであり、商品化技術のベースとなる「価値創造基盤技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行うと共に、事業の競争力を高めてきました。

 研究開発における主要戦略としては、1.「基盤要素技術と価値創造基盤技術のさらなる強化」、2.「強いコア技術と基盤要素技術に基づく次なる事業の芽の創出」、及び3.「時代の要請に応じたイノベーション型の技術開発の強化」を掲げ、その取り組みを進めています。

 1.では、価値創造基盤技術をさらに進化させることによって、現行事業の高効率化に貢献します。並行して現行事業がもつ幅広いコア技術のエッセンスを抽出し、基盤要素技術を深化させ、新規事業のコア技術に注入します。これにより、現行事業と新規事業の競争力の徹底強化を図ります。

 2.では、例えば、インク・トナー材料の基礎となる材料技術を生かした新たな機能性材料、特徴ある材料を生かした装置を開発し、事業の芽につながる次世代技術の育成に取り組む等、技術多角化を通して、新事業領域の開拓につなげていきます。

 3.では、DXやカーボンニュートラルなどのトレンドを捉え、企業価値の向上につながる技術開発を推進します。特に、多様なサービスの結合を可能とするサイバー(仮想)空間と人との接点であるフィジカル(現実)空間、これらを高度に融合するサイバー&フィジカルシステムに注目しています。フィジカル領域において世界トップレベルのコア技術に、アライアンスなども活用しながら高度なサイバー技術の拡張開発を進め、一歩先を行くサイバー&フィジカルのビジネスモデルと商品を開発し、さまざまなイノベーションを生み出していきます。

当期におけるグループ全体の研究開発費は、287,338百万円であり、セグメントごとの主な研究開発の成果は次のとおりです。

 

Ⅰ.プリンティングビジネスユニット

オフィス向け複合機においては、「imageRUNNER ADVANCE DX シリーズ」のラインアップを強化。新開発の低融点トナーにより定着温度を下げたことで、業界トップレベル※1の標準消費電力量(TEC2018※2)を実現しています。また、小サイズ紙の出力生産性向上や、さまざまな静音化の工夫により稼働音の低減を図るなど、複合機としての本質性能を向上させています。加えて、「imageRUNNER ADVANCE DX」9モデルはクラウド型MFP機能拡張プラットフォーム「uniFLOW Online」を介して、認証によるセキュアな印刷や集計レポート機能、さまざまなクラウドサービスとの連携などを実現し、業務のさらなる効率化に寄与していきます。使いやすく高性能な複合機と多彩なデジタルサービスの組み合わせで、オフィス業務のデジタルトランスフォーメーションを強力にサポートします。

商業印刷向け大型複合機においては、「imagePRESS C10010VP/C9010VP」で検品工程を自動化する「インスペクションユニット・A1※3」の機能を拡張し、特別なスキルに依存することなく印刷業務の手間を大幅に削減。検査業務の大幅な効率化、検品工程に対する依頼主からの信頼向上に寄与します。

プロダクションCAD市場向けの大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF TZ-30000 MFP」は、業界初となる「ストップレスロール紙交換システム」を搭載。本体にセットされた上下2段のロール紙のうち、一方が印刷中でも、もう一方のロール紙交換が可能となり、ダウンタイムを削減します。また、ポスター市場向けの「imagePROGRAF GP-4000/GP-2000/GP-300/GP-200」は、業界初となる蛍光インクを搭載し、ポスター印刷での明度と彩度を向上させ、明るく柔らかな色表現が可能になりました。

家庭用インクジェットプリンター「PIXUS XK100/TS8530/TS7530/TS5430」においては、新開発したWindows PC用アプリ「Canon Inkjet Smart Connect」により、直感的な操作で初心者でも簡単にプリントやスキャンが可能です。また「PIXUS XK100」は、「標準モード」のホーム画面に加え、自宅での仕事や学習によく利用する機能を一画面にまとめた「仕事/学習モード」のホーム画面の選択が可能。在宅業務や在宅学習の効率化をサポートします。

当ビジネスユニットに係る研究開発費は、101,151百万円であります。

 

※1  オフィス向けカラー複合機(A4片面、毎分70枚の出力速度)において。2021年7月5日現在。キヤノン調べ。

※2  国際エネルギースタープログラムで定められた測定法による数値。

※3  同製品をお持ちの場合は、システムのバージョンアップでバリアブル印刷の自動検品機能が使用可能。なお、

   新規の使用時は、「クーリングユニット・A1」、「インスペクションコントローラー・A2」、電源ケーブル

   100V(全て別売り)が必要。

Ⅱ.イメージングビジネスユニット

レンズ交換式デジタルカメラ(デジタル一眼レフカメラ及びミラーレスカメラ)の世界市場において、2003年から18年連続で台数シェアNo.1※4を達成しました。これからも基本コンセプトである「快速・快適・高画質」を追求し続けることで、幅広い製品ラインアップを揃え、写真・映像文化の発展に貢献していきます。

2018年に導入した「EOS Rシステム」では、キヤノンのレンズ交換式カメラEOSシリーズのフルサイズミラーレスカメラにおいて、EOSシリーズ初搭載となる新開発のフルサイズ裏面照射積層型CMOSセンサーと、映像エンジン「DIGIC X」を搭載し、プロやハイアマチュアユーザーから求められる高い性能と信頼性を兼ね備えたフルサイズミラーレスカメラ「EOS R3」や、VR(Virtual Reality:仮想現実)映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」に対応する「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」を含む「RFレンズ」8機種をラインアップに加えました。

映像解析ソリューションとして、「群衆人数カウント」や「顔認証」などのディープラーニングを用いた映像解析技術の開発と精度向上を推し進めています。「群衆人数カウント」技術はネットワークカメラで撮影した映像や、ビデオ管理ソフトウエアに保管した録画映像から人の頭部を検出することで、人が密集している状況下における人数カウントを実現しました。さらに「顔認証」技術では、入退室管理などの個別認証へと市場のニーズが急速に拡がる中、ディープラーニングの進化とともにマスクや眼鏡装着時を含め精度向上を実現しています。

画像を用いた橋梁やトンネルの点検では、撮影した画像の品質確認に手間がかかっています。この解決のため、カメラで培ったキヤノン独自の撮像面位相差AF技術「デュアルピクセルCMOS AF」を応用し、ピンボケを可視化する点検画像品質確認ツール「Inspection Image Quality Checker」を開発しました。これにより、人手による作業負荷を軽減し、点検作業全体のさらなる高度化・効率化を実現しています。

業務用4Kビデオカメラにおいては、「XF605」はフラグシップモデル「XF705」と同等の高画質を実現しながらも、小型、軽量化を実現。IPストリーミング機能によりニュース番組や動画サイトでのライブ配信を可能とし、またiPhoneアプリ「Content Transfer Mobile」との連携ワークフローによって、ニュース番組の即時性を向上させます。

映像制作用のリモートカメラシステムにおいては、パン、チルトとズーム機能を備えた「CR-N500」、「CR-N300」は業務用ビデオカメラ同等の4K映像プラットフォームを採用し高画質な映像撮影が可能です。また、映像制作現場にて広く普及する「NDI|HX」※5へ対応し、スイッチャーなどのNDI対応機器とネットワーク接続が可能です。更に全方向に対応するコントロールレバーを搭載したリモートカメラコントローラ「RC-IP100」やPC用ソフトウエア「リモートカメラコントロールアプリ」によって、ネットワーク接続された複数のカメラを制御可能となり、映像制作の効率化・省人化が実現できます。

映像ソリューションにおいては、ラグビー国際大会へ映像を提供した「自由視点映像生成システム」の技術を応用し、3Dコンテンツの撮影から編集までをワンストップで実現した「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」にて、CMやミュージックビデオ、TV番組、オンラインライブ配信の試験運用を行いました。撮影・映像生成技術の改良により画質の改善を進め、サッカーやラグビー以外のスポーツへの対応も準備しています。

当ビジネスユニットに係る研究開発費は、76,028百万円であります。

 

※4  2021年3月現在(当社調べ)。

※5  NDIは、NewTek, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標。

 

 

Ⅲ.メディカルビジネスユニット

CT装置においては、新世代320列エリアディテクターCTにおいて、超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE:ピーク)※6」および新たな被ばく低減技術「SilverBeam Filter(シルバービームフィルター)」を導入することで、高精細画像による診断能向上や、さらなる低被ばく検査に貢献します。

プレミアムクラスの超音波診断装置においても、より鮮明な画像を描出する技術やAI技術を用いて開発されたアプリケーション、そして計測の自動化機能などを搭載し、より簡単・効率的に検査が行える環境を提供し、質の高い検査の実現を追求します。

公益社団法人発明協会が主催する2021年度全国発明表彰において、「大視野CT検出器用データ読み出し方法の発明(特許第5135425号)」が「恩賜発明賞」および「発明実施功労賞」を受賞しました。

当社で確立された技術である「造影剤を用いずに血管を良好に描出できるMRI装置の開発」について、2021年春の褒章において当社の元社員が紫綬褒章を受章することとなりました。

また、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する2021年“超”モノづくり部品大賞において、新型コロナウイルス抗原検査キットをはじめとする迅速検査キット製品に使われている高感度検出技術「免疫光導波路センサ」が、「モノづくり日本会議 共同議長賞」を受賞しました。

当社は、国立研究開発法人国立がん研究センター(東京都中央区、以下国立がん研究センター)と、2020年7月に締結した包括協定および同年11月に締結した共同研究基本契約に基づき、国立がん研究センター先端医療開発センター(千葉県柏市)および同センター東病院(千葉県柏市)と、次世代の画像診断機器として期待されているPhoton Counting Computed Tomographyの日本で初めての実用化に向けた共同研究を開始しております。

当ビジネスユニットに係る研究開発費は、42,732百万円であります。

 

※6  PIQEは画像再構成に用いるネットワーク構築にてディープラーニングを使用しており,本システム自体に自己学習

機能は有しておりません。

 

 

Ⅳ.インダストリアルその他ビジネスユニット

半導体露光装置においては、ポストSi半導体として他分野で注目される化合物半導体などのデバイス製造に対応し、半導体製造に必要な総コストの指標であるCoO(Cost of Ownership)を低減したi線ステッパー「FPA-3030i5a」により、多様な半導体デバイス製造を可能としました。これにより今後需要が見込まれる車載向けパワーデバイスや5G対応の通信デバイスなどの半導体デバイス製造に対応していきます。また、後工程向けi線ステッパー「FPA-5520iV LFオプション」では、現行機種の基本性能を継承しつつ、52×68mmの広画角を実現しており、半導体業界に新しいパラダイムを生むと言われる先端パッケージングのニーズに応えています。

FPD露光装置においては、第6世代ガラス基板サイズにて解像力1.2マイクロメートルを実現する中小型ディスプレイ向け露光装置「MPAsp-E903T」を上市し、ディスプレイの更なる高精細化に貢献しています。

真空分野においては、2020年度日本真空工業会表彰にて「BC7000原子拡散接合装置製品化」が真空装置部門賞を受賞致しました。

当ビジネスユニットに係る研究開発費は、40,408百万円であります。

 

 

また、各ビジネスユニットに配分できない基礎研究に係る研究開発費は27,019百万円であります。

 

 注:製品名は日本国内での名称です。

 

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