業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりで

あります。

①経営成績の状況

当事業年度における経済状況は、各国がwithコロナへと移行が進み、全体に立ち上がってきました。特に米国は株価の上昇もあって、消費が活発化しGDPは増加しました。物価が上昇してきたため、政策金利の上昇や、金融緩和の停止が進められ、2022年1月以降は株価の反落が見られました。

このような状況下で、依然としてコロナ禍による旅行等への消費支出は完全に回復していないと見られ、代替支出としての宝石購入はかなりの高水準で推移したとの情報があります。LGD(Laboratory Grown Diamond:人工宝石)市場は、天然ダイヤモンドの鉱山開発の負の側面が無く、倫理的にも優れていることが消費者に理解されたことから、拡大傾向を一層強めたとの報道もあります。このため、LGDの製造業者である当社の種結晶ユーザーは、一斉に増産を進めてきました。単に設備増設ばかりでなく、新たな大型投資によって工場を新設する動きも見られました。このために、当社への既存ユーザーからの種結晶供給量の増加依頼が多数入り、当社は2021年4月に成長装置を増設したものの、継続的に生産能力以上の引き合いを受ける状況となりました。一方、前事業年度にも増して新しく宝石製造を開始する企業が多数起業し、これ等の企業からも当社製品への引き合いが来ております。

前事業年度に決断した設備投資が、期首に稼働しましたので、生産量を増加出来ました。種結晶生産の効率化も鋭意進めましたので、当社の種結晶生産能力は大幅に増加しました。ユーザーからは、更なる生産能力の増強が求められていましたので、ユーザーの増産計画を聴取して、当社として新工場の建設が必要と判断しました。

一方、本社にありました生産及び開発関連設備を2021年12月30日で停止し、移転するため、横江第1工場に近い建物を借り、横江第2工場として2022年2月に一部が稼働する状況になりました。この際、生産部の工程合理化を同時に進めるため、成長工程と研磨工程を各々集中されることに致しました。設備の配置換えを伴いましたので、工期が長くなりましたが、2022年3月末には生産設備は全て稼働いたしました。

上記のとおり、設備投資による増産と一部設備の停止という事態がありましたが、その後、生産関連設備停止の影響を克服し、生産効率は予想以上に向上しました。加えて、為替相場が円安に振れたことでの増収もあり、売上総額は12月に修正した予想を上回り、前年同期比37.0%増加の1,562,260千円に達しました。また、設備増設、人員増によって減価償却費や人件費が増加しましたが、製品売上原価は前年同期比7.8%の増加に留まりました。準備を進めてきましたIPO対応と、上記の設備移転関連費用の支出がありましたので、販売費及び一般管理費は、前年同期比58.3%と大幅に増加致しました。しかし、売上が増加した効果は大きく、営業利益は大幅に増加しました。

以上の結果、当事業年度の売上高は1,562,260千円(前年同期比37.0%増)、営業利益は520,465千円(前年同期比94.4%増)、経常利益は527,877千円(前年同期比95.0%増)、当期純利益は374,816千円(前年同期比47.9%増)となりました。

なお、当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をしておりません。

また、製品種類別の販売実績は以下のとおりであります。

(種結晶)

上記のような市場の状況で、量的に拡大しているだけでなく、大型の宝石を指向する動きが顕著に見られます。すなわち、3カラット以上の宝石の需要が高まっており、これに対応するように各種のカット形状が選択されています。当社の種結晶への要求も、10x10mm以上の大型品が大幅に拡大したことで、平均単価が上昇しました。当社の売上上位6ユーザーへの出荷数量は大幅に拡大して、10x10mm以上の大型種結晶の出荷数が増加し、平均単価も上昇しました。また、この1年間だけでも50社以上の新参入の企業から種結晶の引き合いがありましたが、生産能力が限界に達しており、多くは対応できない状況でした。当社は引き続き各ユーザーに長期的な契約締結を要請した結果、主なユーザーからは6ヶ月以上の発注を頂いており、安定な生産と共に、生産設備の拡充を計画的に進めております。

 この結果、売上高は1,453,333千円(前年同期比45.4%増)となりました。

(基板及びウエハ)

ダイヤモンドのデバイス応用研究は、世界各地で活発化していますが、未だ基礎的な段階にあって、多くの研究機関は小型の基板での研究開発を行っています。当社の2インチウエハの開発遅れもあり、本格的なデバイス開発への移行は進んでいません。コロナ禍の影響で、日本では公的研究機関や大学の一部が半ば休止状態を継続し、受注が減少いたしました。米国、欧州、オーストラリアからの発注がありましたが、売上高は47,101千円(前年同期比19.1%減)となりました。

(光学部品及びヒートシンク)

これまで試作的に出荷してきた、赤外線やX線の窓材が、量産に移ったことで、まとまった受注を継続的に得られるようになってきました。ヒートシンクについても、量産に近づいた製品がありましたが、一方で基板と同じように、コロナ禍の影響による開発活動低下もありました。売上高は29,506千円(前年同期比15.2%減)となりました。

 

(工具素材)

スマホ関連部材の加工用工具といった大きな案件がありませんでしたが、長刃長の工具素材は安定した受注を得ることが出来ました。売上高は32,319千円(前年同期比32.1%減)となりました。

 

②財政状態の状況

 (資産)

当事業年度末における流動資産は1,418,554千円となり、前事業年度末に比べ232,354千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が118,961千円、仕掛品が62,185千円及び売掛金が37,495千円それぞれ増加したことによるものであります。

固定資産は1,398,999千円となり、前事業年度末に比べ304,987千円増加いたしました。これは主に有形固定資産が

333,690千円増加したことによるものであります。

この結果、資産合計は2,817,554千円となり、前事業年度末に比べ537,342千円増加いたしました。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は357,188千円となり、前事業年度末に比べ12,830千円増加いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が100,560千円減少したものの、未払法人税等が42,421千円、未払金が34,543千円及び賞与引当金が13,436千円それぞれ増加したことによるものです。

固定負債は415,105千円となり、前事業年度末に比べ114,195千円増加いたしました。

この結果、負債合計772,294千円となり、前事業年度末に比べ127,025千円増加いたしました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は2,045,259千円となり、前事業年度末に比べ410,316千円増加いたしました。これは主に、資本金が17,750千円増加、資本準備金が17,750千円増加、当期純利益の計上により繰越利益剰余金が374,816千円増加したことによるものです。

この結果、自己資本比率は72.6%(前事業年度末は71.7%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ118,961千円増加して、当事業年度末には1,066,995千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は635,000千円(前事業年度は440,577千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益516,451千円、減価償却費231,257千円があった一方で、棚卸資産の増加額67,297千円等があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は545,005千円(前事業年度は401,284千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出533,931千円、及び差入保証金の差入れによる支出12,815千円等があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は15,666千円(前事業年度は525,955千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入190,000千円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入35,206千円等があった一方で、長期借入金の返済による支出202,344千円があったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における生産実績は以下のとおりであります。

生産高

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

前年同期比(%)

生産高合計(千円)

727,038

109.0

 (注)1.金額は製造原価によっております。

    2.当社の売上高及び生産高は、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模(生産能力)に依存します。なお、最近2事業年度の当社の生産能力(カラットベース)は、以下のとおりであります。

 

前事業年度

(自2020年4月1日

至2021年3月31日)

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

(カラット)

(カラット)

生産能力

90,000

110,000

 

b.受注実績

 当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の受注実績は以下のとおりであります。

製品種類

当事業年度

(自2021年4月1日至2022年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

種結晶(注)

2,015,456

254.3

1,118,255

228.9

基板及びウエハ

43,888

80.4

7,261

83.1

光学部品及びヒートシンク

41,834

109.8

13,694

632.5

工具素材

32,462

78.9

2,667

105.7

合計

2,133,640

230.3

1,141,877

227.5

 (注)当社への既存ユーザーからの種結晶供給量の増加依頼が多数入った他、各ユーザーに対して長期的な契約締結を要請した結果、当事業年度における種結晶の受注高及び受注残高が前年同期比で増加しております。

 

c.販売実績

 当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の販売実績は、以下のとおりであります。

製品種類

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

前年同期比(%)

種結晶(千円)(注)2.

1,453,333

145.4

基板及びウエハ(千円)

47,101

80.9

光学部品及びヒートシンク(千円)

29,506

84.8

工具素材(千円)

32,319

67.9

合計(千円)

1,562,260

137.0

 (注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2020年4月1日

至2021年3月31日)

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Lusix LTD.

335,586

29.4

410,079

26.2

Sigma Carbon Technologies

178,278

15.6

387,413

24.8

CBC株式会社

188,796

16.6

244,378

15.6

Cornes Technologies USA

120,057

10.5

196,404

12.6

 

    2.当社は、大型のダイヤモンド単結晶を大量に製造することができますが、当社の主要な製品である種結晶に

      ついて、人工宝石市場における種結晶の大型化のニーズが増大しております。なお、当事業年度におけるサ

      イズ別の種結晶の出荷割合(出荷個数ベース)は以下のとおりであります。

種結晶サイズ

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

割合(%)

7x7mm以下

26.4

8x8mm~9x9mm

50.2

10x10mm以上

23.4

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。

また、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

なお、 新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

a.経営成績に重要な影響を与える要因

当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社の資金需要のうち主なものは、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備投資、研究開発費、人件費等の営業費用であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 当社は、日常の運転資金については自己資金で賄い、自己資金では賄えない設備投資資金等については金融機関からの長期借入で賄うとともに、資本での調達を検討することとしております。

 なお、当事業年度末における借入金の残高は、439,838千円であり、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,066,995千円であります。

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための成長性を判断する客観的な指標として、①売上高成長率、②経常利益率、③ROE、④自己資本比率を重視しております。

①当事業年度における売上高成長率は、37.0%(前期は61.9%)となっております。

売上高成長率は、当社の成長性や事業進捗のペースを表す指標として、重視しております。

当社が競争優位性を確保しながら適切なペースで売上高を向上させ、経営上の目標を達成するための施策としては、当社の売上高はダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模に依存することから、金融機関からの借入及び資本での調達による長期的な資金を獲得し、設備投資を進め、生産能力の拡大を図ってまいります。

 

②当事業年度における経常利益率は、33.8%(前期は23.8%)となっております。

経常利益率は、当社の売上高に対する収益性を表す指標として、重視しております。

当社の事業進捗及び競争優位性の確保にとって、設備投資及び研究開発活動が重要ですが、そのための長期的な資金として自己資金を継続的に確保することが必要であるため、一定の経常利益率の確保に努めてまいります。

 

③当事業年度におけるROEは、20.4%(前期は20.0%)となっております。

 ROEは、当社の投下資本に対する収益性を表す指標として、重視しております。

また、研究開発活動により、ダイヤモンド単結晶の新たな用途を開拓することにより事業領域の拡大を図ってまいります。具体的には、ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発や光学部品として必要な高品質結晶の開発を推進してまいります。

 

④当事業年度の自己資本比率は、72.6%(前期は71.7%)となっております。

 当社の事業進捗にとって設備投資は重要ですが、財務の健全性を保つためには、自己資本比率を50%以上に保ちたいと考えております。過度な借入を行うことがないよう、キャッシュ・フローにも注意を払っております。

 

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