業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の概況

当社グループでは、第6次中期経営計画「FUKUVI NEXT」(2020年度~2022年度)で掲げた3つの基本方針に基づき取り組んでまいりました。

・成長分野への積極展開

新規事業、既存事業各々の成長分野へ戦略的に経営資源を配分して取り組んでいます。新規事業では、CFRTP(熱可塑性炭素繊維複合材)の製造において、「革新的一貫製造プロセスの開発」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」実用化開発フェーズに採択され、今後、量産化に向けた試行を展開してまいります。既存事業では、引き続き断熱材分野を強化するとともに、資源循環の分野で新たな商品開発に注力しております。海外での展開では、アメリカ現地法人において、倉庫など非住宅市場に向けて「VICTORY BEAR ブランド事業」を拡充したことや、高付加価値OEM商品への切り替えを進めたことが売上、利益の伸長につながりました。ASEANエリアは今後も成長を見込めるマーケットとして捉えており、課題であるマーケティングやアライアンスの強化に取り組んでまいります。

・収益構造の改革推進による利益の創造

事業ポートフォリオ再構築の観点から、建材事業本部、CSE事業本部各々で注力分野への積極展開や不採算分野の見直しを継続して取り組みました。また、2023年度に導入を予定している基幹システム(ERP)の運用に合わせて管理会計システムの導入も予定しており、同システムを活用した収益構造の改革に資する体制の構築を進めております。

・挑戦と変革を実現する経営基盤の確立

多様な働き方を後押しするために、コロナ禍での勤務体制を整備するとともに、働き手のエンゲージメントを高めるべく、従業員支援プログラム(EAP)推進室の設置に向けた準備を進めてまいりました。また、DXを加速させるため、社長直轄組織「デジタル戦略室」の2022年度設置準備に着手するとともに、ペーパーレス化をはじめ、業務改革に取り組んでおります。

以上により、当連結会計年度の売上高は、367億41百万円と、前期に比べ3.1%の増収となりました。

一方、利益面につきましては、原材料による原価高騰を、原価低減活動や、付加価値の高い品目の売上増強等によって吸収することで、売上高総利益率の改善につなげることができました。経費についても抑制に努めた結果、営業利益12億70百万円(前期比53.5%増)、経常利益16億26百万円(同17.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11億36百万円(同24.2%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増 減

 

分 類

金 額

(百万円)

構成比

(%)

金 額

(百万円)

構成比

(%)

金 額

(百万円)

増減比

(%)

 

外装建材

4,615

12.9

4,907

13.4

292

6.3

 

内装建材

11,539

32.4

12,076

32.9

537

4.7

建築資材

床関連材

7,480

21.0

7,475

20.3

△5

△0.1

 

システム建材

3,596

10.1

3,756

10.2

160

4.4

 

27,230

76.4

28,214

76.8

984

3.6

産業資材

 

8,406

23.6

8,527

23.2

121

1.4

合 計

 

35,636

100.0

36,741

100.0  

1,105

3.1

 

 

〔建築資材事業〕

建築資材事業では、①競争力のある製品群への集中②戦略的行動のための意識改革③新技術による新市場開拓の強化、などに取り組みました。その中の注力製品を中心にウェブセミナーをパートナーとの共催により実施し、新たな顧客の開拓と関係強化に努めました。

製品別では、外装建材において再生プラスチックを使用し木材代替品として好評を得ている樹脂製瓦桟や、防水部材が堅調に推移し、49億7百万円(前期比6.3%増)となりました。

内装建材においては、住宅の高断熱化への意識の高まりから、高性能断熱材「フェノバボード」や環境配慮型断熱材「フクフォームEco」の積極的な訴求提案が奏功したこと、また木材製品の代替材として認知が進んできた樹脂製開口枠が堅調に推移したことで、120億76百万円(同4.7%増)となりました。

床関連材においては、パーチクルボード等の資材が不足し乾式二重床システムは減少したものの、OAフロアなどは順調な伸びを示し、74億75百万円(同0.1%減)となりました。システム建材においては、防蟻システムが好調に推移し、37億56百万円(同4.4%増)となりました。

こうした結果、売上高は、282億14百万円(前期比3.6%増)となりました。

 

〔産業資材事業〕

産業資材事業の売上は、85億27百万円(同1.4%増)で、売上高全体の23.2%を占めました。住宅設備向け部材、窓枠、事務機器部材、業務用冷蔵庫部材は堅調に推移しましたが、車輌関係において、乗用車の車載向け精密加工品が半導体不足等を背景とした自動車業界の生産調整による受注減を余儀なくされ、また、バスの車輌部材では観光業低迷の影響を大きく受けることとなりました。

 

② キャッシュ・フローの概況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末と比べ8億11百万円(前期末比7.0%)増加し、123億35百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及びその主な要因は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益16億43百万円、減価償却費12億92百万円、および仕入債務の増加額3億94百万円などの収入に対し、法人税等の支払額4億41百万円、退職給付に係る資産の増加額2億31百万円、及び未払消費税の減少額1億72百万円などの支出より、合計20億55百万円のプラスとなりましたが、前期比では5億38百万円減少しました。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、機械設備等の有形固定資産の取得による支出7億53百万円に対し、投資有価証券の売却及び償還による収入10百万円などにより、合計7億53百万円のマイナスとなり、前期比では24百万円改善しました。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額4億8百万円、およびリース債務の返済による支出2億52百万円などの支出に対し、長期借入金の借入れによる収入1億円などにより、合計6億31百万円のマイナスとなり、前期比では6百万円減少しました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製商品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製商品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 経営成績の概況」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

伊藤忠建材㈱

7,124

18.7

7,509

19.0

三井物産プラスチック㈱

3,589

9.4

3,471

8.8

 

 

④ 財政状態の概況

 (資産)

総資産は前連結会計年度末に比べ18億60百万円(前期末比3.9%)増加し、493億78百万円となりました。主な増減要因としましては、流動資産では、現金及び預金が8億11百万円増加、また収益認識会計基準を当期から適用したことで、棚卸資産が6億29百万円増加したことなどにより、18億52百万円(同5.8%)の増加となりました。固定資産では、有形固定資産が2億63百万円減少した一方で、投資その他の資産が2億77百万円増加したことなどにより、7百万円(同0.0%)の増加となりました。

 

 (負債)

負債は前連結会計年度末に比べ8億90百万円(前期末比5.8%)増加し、161億24百万円となりました。主な増減要因としましては、流動負債では、収益認識会計基準を当期から適用したことにより、有償支給取引に係る負債が5億34百万円増加、また支払手形及び買掛金が4億3百万円増加したことなどにより、8億49百万円(同6.2%)の増加となりました。固定負債では、リース債務が66百万円減少した一方で、長期借入金が66百万円増加、また繰延税金負債が35百万円増加するなど、41百万円(同2.7%)の増加となりました。

 

 (純資産)

純資産は前連結会計年度末に比べ9億69百万円(前期末比3.0%)増加し、332億54百万円となりました。主な増減要因としましては、利益剰余金が7億29百万円増加、また為替換算調整勘定が92百万円増加しました。株主資本合計は308億75百万円となり、この結果、自己資本は326億円、自己資本比率は66.0%となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り及び予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り及び予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

なお、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある主な見積りとして、以下の会計処理があります。

 

(棚卸資産の評価)

当社グループは、棚卸資産を取得原価で測定しておりますが、塩ビ・オレフィン等の汎用プラスチック樹脂を主原料としており、これらの原材料価格の変動を、適時に生産技術の向上により吸収できない場合、あるいは製品価格に転嫁できない場合や、市場環境の悪化により市場価格の下落が生じ、その結果として正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額で測定し、取得原価との差額を当期の費用として処理しております。また、棚卸資産の種類ごとに期間を定め、当該期間に出荷や使用がない場合等、営業循環過程から外れて滞留する棚卸資産については、将来の需要や市場動向を反映して正味売却価額等を算定しております。市場環境が予測より悪化して正味売却価額が著しく下落した場合には、簿価切下げが必要となる可能性があります。

 

(繰延税金資産)

当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、国内外において取引先のニーズに応えるため継続的な設備投資を行っておりますが、生産設備の稼働率が当初予定していた生産計画を大幅に下回り、投資額の回収が困難となる可能性があります。その結果として固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響が当面続くとの仮定の下、期末時点で入手可能な情報を基に会計上の見積りを行っております。しかしながら、当該感染症の影響は不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もあり、状況に変化があった場合には当社グループの財政状態、経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は367億41百万円と、前期に比べ3.1%の増収となりました。

一方、利益面につきましては、原材料による原価高騰を、原価低減活動や、付加価値の高い品目の売上増強等によって吸収することで、売上高総利益率の改善につなげることができました。経費についても抑制に努めた結果、営業利益12億70百万円(前期比53.5%増)、経常利益16億26百万円(同17.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益11億36百万円(同24.2%増)となりました。

当グループが主要マーケットとする住宅関連業界の動向としましては、全体的な趨勢では、戸建て住宅や賃貸住宅の需要減が予想されます。一方、新型コロナウイルス感染拡大がもたらした生活態様の変化により、住まいの分野においては、性能や機能の高度化・多様化などのニーズに加え、グリーンやECOなどの価値観を取り入れた製品ニーズが従来にも増して高まるものと考えられ、新たに市場創造をしていく必要があると考えております。

そういった環境のもと、当社は100年企業に向けた強固な経営基盤を構築すべく、第6次中期経営計画で掲げた3つの基本方針「成長分野への積極展開」「収益構造の改革推進による利益の創造」「挑戦と変革を実現する経営基盤の確立」を実現すべく、事業別の戦略を明確にして技術開発を進めることはもとより、企業価値向上のためのポートフォリオ再構築を一層のスピード感をもって推進してまいります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当連結会計年度におけるわが国経済は、持ち直しの兆しが見えるものの、一部では新型コロナウイルス感染拡大が長期化するなかで弱さも見られ、変異株の発生に伴う感染再拡大の影響を注視する必要があります。また、世界経済につきましても、先進国を中心とした新型コロナウイルスワクチン接種の進展と、経済に力点を置く政策転換の効果が見られる一方で、急回復した需要と供給に大きなギャップが生じ、世界的な部材不足といった供給制約の問題が発生しています。そうした中、ロシア・ウクライナ情勢が新たな懸念材料となっており、先行きの不透明感が増しています。

当社の主要マーケットである住宅業界におきましては、直近では材料高による建築費の上昇が住宅取得マインドを低下させることとなり、回復のスピードが鈍化しておりますが、前半のコロナ禍からの回復や、住宅取得支援策の後押しなどが背景となって比較的堅調に推移したこともあり、令和3年度年間を通しての新設住宅着工戸数は、戸数866千戸(前年比6.6%増)、床面積71,161千㎡(同7.3%増)となりました。

〔新設住宅着工の推移〕

 

平成29年度

平成30年度

令和元年度

令和2年度

令和3年度

前年比 増減数

前年比 

増減率

着工戸数(千戸)

946

953

884

812

866

54

6.6%

着工面積(千㎡)

75,829

76,573

73,107

66,299

71,161

4,861

7.3%

 

   (出典:国土交通省)

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、円滑な営業活動のための流動的な資金確保と長期的かつ安定的な資金調達を基本とし、資本効率にも考慮したうえで、運転資金および設備投資資金については、自己資金又は金融機関からの借入による調達を行っております。また、事業展開等に伴う資金需要に機動的に対応するため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

2,593

2,055

△538

投資活動によるキャッシュ・フロー

△777

△753

24

財務活動によるキャッシュ・フロー

△626

△631

△6

現金及び現金同等物に係る換算差額

11

140

129

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

1,202

811

△391

現金及び現金同等物の期首残高

10,322

11,524

1,202

現金及び現金同等物の期末残高

11,524

12,335

811

 

(注)( )内は期末休日要因を除いた実質ベースの金額であります。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、20億55百万円のプラスとなりましたが、前期比では5億38百万円減少しました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、機械設備等の有形固定資産の取得による支出7億53百万円などにより、7億53百万円のマイナスとなり、前期比では24百万円改善しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額などにより6億31百万円のマイナスとなり、前期比では6百万円減少しました。

これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、123億35百万円となり、前期比では8億11百万円(前期末比7.0%)増加しました。現金及び現金同等物の自己資本に対する比率は、37.8%(同1.5%増)となりました。

また、フリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、前期末比5億14百万円減少し、13億2百万円となりました。インタレスト・カバレッジ・レシオは440.6(同22.0増)となりました。

 

当連結会計年度末における財政状態は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減額

 

流 動 資 産

31,745

33,597

1,852

 

固 定 資 産

15,773

15,780

7

資  産  合  計

47,518

49,378

1,860

 

流 動 負 債

13,694

14,543

849

 

固 定 負 債

1,540

1,581

41

負  債  合  計

15,234

16,124

890

純 資 産 合  計

32,284

33,254

969

 

 

当連結会計年度において親会社株主に帰属する当期純利益11億36百万円を計上したことなどにより、株主資本合計は308億75百万円(前期末比2.5%増)となりました。この結果、自己資本は326億円(同2.9%増)となり、自己資本比率は66.0%(前期比0.7%減)となりました。なお、時価ベースの自己資本比率は24.8%(同2.2%増)であります。

 

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