(1)基本理念
当社グループ(以下、NAGASE)は、グループ共通の価値観として、経営理念、ビジョン、ありたい姿およびサステナビリティ基本方針を掲げております。
なお、NAGASEは、2032年(創業200年)の「ありたい姿」“温もりある未来を創造するビジネスデザイナー”の実現に向け、NAGASEにとって重要なステークホルダーと各ステークホルダーに提供したい価値、それらを実現するためのマテリアリティ(重要課題)を下記のとおり特定しております。
(2)中期経営計画 ACE 2.0
NAGASEは、2032年(創業200年)の「ありたい姿」を実現するため、2032年からバックキャスティングし、5ヶ年の中期経営計画ACE 2.0を策定しました。ACE 2.0の位置づけを“質の追求”と掲げ2021年4月から始動しており、ACE 2.0に掲げる事項を対処すべき課題と捉えております。
※“ACE”は、Accountability(主体性)、Commitment(必達)、Efficiency(効率性)を表します。
ACE 2.0 の定量目標
ACE 2.0の定量目標は、下表のとおりです。
2021年度は、市況高騰等の外部環境の影響もあり、収益力の拡大のKGI(Key Goal Indicator)として掲げる営業利益350億円に到達しました。ACE 2.0では、“質の追求”を実現することで各定量目標を恒常的に実績化できることを目指しており、下記基本方針のもと、引き続きACE 2.0を推進していきます。
ACE 2.0 基本方針
ACE 2.0では、NAGASEの持続的な成長を可能にするため、すべてのステークホルダーが期待する“想い”を具体的な“形”(事業・仕組み・風土)として創出し、“温もりある未来を創造するビジネスデザイナー”を目指し、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革と、両変革を支える機能として、DXのさらなる加速、サステナビリティの推進およびコーポレート機能の強化を図ります。
収益構造の変革‐“ありたい姿”に向けた収益基盤の構築
経営資源の最大効率化を図るために、経営資源の確保と再投下を実行いたします。効率性および成長性の観点から、事業を「注力」、「育成」、「基盤」、「改善」の4つの領域に分類し、各領域に応じて戦略を実行し、さらにリソースシフトを加速させるべく、全社投下資本の10%を確保した上で注力/育成領域に再投下していきます。また既存事業の強化にあたり、グローバリゼーションによる事業機会の拡大および製造業の生産性向上と技術革新による付加価値の拡大を図ります。加えて、DXの活用等により顧客、社会との接点を増やし、そこから見つけた新たな課題に対し、「利益を生み出す解決策」を提供することで、社会・環境価値向上に向けた“持続可能な事業”(=N-Sustainable事業)の創出を図っていきます。
(事業ポートフォリオの考え方)
[取組み状況]
(注力領域)
フード関連事業は、Prinovaグループにおいて、取扱い品目の拡充およびビジネス領域の拡大を目的とした甘味料専門ディストリビューター“The Ingredient House, LLC”の買収や、受託製造ビジネスにおける製造キャパシティ増強を目的とした投資を実行し、さらなる収益基盤の強化を進めました。また、Prinovaグループの持つ顧客基盤を活用した㈱林原の食品素材の販売拡大、Prinovaグループの取扱い製品とアジアを中心としたNAGASEの顧客基盤を組み合わせたシナジーの実現・強化およびグローバル戦略立案に関する議論の深化を図るため、事業部トップを米国に配置する等、経営基盤の強化を進めました。
半導体関連事業は、半導体戦略推進チームを創設し、前工程から後工程のサプライチェーン全体での情報共有・連携強化の促進、技術革新・最新の開発トレンドの理解と将来におけるビジネスの企画・立案サポートを通じて競争力の強化を進めました。
バイオ関連事業は、NAGASEが有するバイオテクノロジーに関する知見・ノウハウを結集し、NAGASEバイオテック室を創設しました。また、ナガセR&Dセンターをナガセバイオイノベーションセンターに名称変更し、バイオ関連技術を有するグループ会社等との連携を強化し、グループ全体のバイオイノベーションの創出を推進する体制を構築しました。今後、グループの中核となる事業とすべく資本投下し、ライフサイエンスに加え工業および農業等の分野への展開を図り、新規素材の開発および事業創出を推進していきます。
(育成領域)
次世代通信、新規素材開発等の分野での優れた技術や、新規ビジネス創出が期待できる分野でノウハウを持つスタートアップ企業への投資・提携を通じて、将来の収益貢献が期待される分野への資源投下を進めました。
(基盤領域)
収益性改善に向けた取組み等により効率性の向上を図りました。また、デジタル技術を活用したマーケティング・営業活動の効率化を推進し、それらが顧客との新たな接点となり、提供価値の拡大に繋がりました。
(改善領域)
改善が必要と判断したビジネスについては、改善方針の決定・KPIの設定を行う等、PDCAの徹底を図っています。なお2021年度は、一部不採算事業からの撤退および子会社売却による資本の確保等を行いました。
2021年度は、上記のとおり改善領域において一部事業からの撤退による資本の確保、また注力領域に対する資本投下を推進しました。ただし、事業の入替えは不十分であると認識しており、2022年度はコーポレート主導で全社規模での事業の入替えを検討していきます。また2021年度は、育成領域において様々なスタートアップ企業への投資等を行いましたが、投資・モニタリングの仕組みの見直しを改めて行い、これら投資によって生まれるビジネスが早期に収益貢献できるよう推進していきます。
なお、Prinovaグループのビジネスが拡大したこと等により、ナガセケムテックス㈱、㈱林原およびPrinovaグループを中心とするグループ製造業の利益は過去最高となりました(製造業営業利益169億円(単純合算値))。拡大する製造ビジネスにおいて、さらなる生産性の向上および付加価値の拡大を図るべく、グループ製造業各社の製造能力、生産技術、研究開発、品質管理、エンジニアリング、投資評価等を俯瞰し、製造業の強化・拡充を推進することを目的として、2022年4月1日にグループ製造業経営革新室を創設し、基盤強化を図りました。
企業風土の変革‐“ありたい姿”に向けたマインドセット
「質の追求」を実現するためには、経済価値と社会価値を両輪で追求していくことが必要と考え、財務情報に加え非財務情報のKPIを設定し、両KPI達成に向け徹底したモニタリングを行います。また効率性の追求に向け、コア業務の生産性の改善を図り、また事業戦略によるROICの向上、財務戦略によるWACCの低減を行い、ROICスプレッドの改善を図ります。ROICがWACCを上回る状態を常態化させ、企業価値の向上を目指します。加えて、変革を推進する人財の強化が必要と考えており、社員と会社のエンゲージメントを向上させ、双方の持続的な成長と発展を実現します。
(効率性の追求) |
(エンゲージメントの向上) |
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[取組み状況]
2021年度は、事業全体として業績が好調に推移したことによる運転資本の積み上がりにより投下資本は増加しましたが、運転資本については適正化に向けた在庫管理の徹底を実施し、また市況の高騰、高付加価値商材の販売等による利益率の改善、加えて政策保有株式の売却を推進したこと等により、ROICは5.3%となりました。また運転資本の増加に伴う資金需要を受け負債による資金調達を行ったこと、加えて株主資本の適正化に向け、株主還元方針に沿って増配および自己株式の取得を継続的に行った結果として、WACCが5.5%まで低減しました。なお有利子負債が増加したこと等により、Net DEレシオは0.3倍となりました。
2021年度は、半導体などサプライチェーン上でのモノ不足、物流網の混乱など厳しい市場環境が続く中、NAGASEの強みである広域なネットワーク、技術知見ならびに課題解決力・人財を活かしビジネスを維持・拡大させ、また需給バランスの崩れによる市況高騰等もあり業績は伸長しましたが、効率性の観点において課題認識しており、「質の追求」をすべく、引き続きACE 2.0のもと推進していきます。
(政策保有株式の売却実績)
ROICについては、事業毎に定量化・可視化を進めモニタリングができる体制を構築し、定期的なモニタリングを開始しました。
またコア業務の生産性の改善に向け、シェアードサービス会社である長瀬ビジネスエキスパート㈱においてBPR(Business Process Reengineering)を行い、業務効率化を図りました。加えてBIツール(Business Intelligence tools)やCRM(Customer Relationship Management)等を活用した間接業務ならびに営業・販売活動の効率化を促進しました。
変革を推進する人財の強化については、社員と会社のエンゲージメントを向上させるべく、現状把握と向上施策の策定を目的に従業員エンゲージメントサーベイを実施しました。現状の課題を認識し、エンゲージメントの向上に向けた施策を全社・各組織で開始しました。
変革を支える機能
両変革を実現するために、DX、サステナビリティおよびコーポレート機能はグループ横断的に必要な機能であり、これらの機能を拡充します。
DXを手段として活用することで、NAGASEの強みである「広域なネットワーク」、「技術知見」および「課題解決力・人財」をさらなる強みとし、顧客や社会の課題を解決できるビジネスモデルの深化・探索、イノベーションの創出および生産性の向上等を図ります。
またサステナビリティ基本方針を根幹に置き、「ありたい姿」の実現に向け、経済価値と社会価値の追求を実現すべく、グループ全体に機能を提供していきます。
[取組み状況]
デジタルマーケティングによる顧客基盤の強化・拡大に向け、マーケティングプラットフォームを構築し、まずPrinovaグループなど米州のグループ会社において顧客体験型のWEBサイトをリリースいたしました。これらを他地域にも展開すべく、引き続き推進しています。
また、「ありたい姿」の実現に向け、経済価値と社会価値の追求を実現すべくサステナビリティ推進体制を下記のとおり構築しました。なお、2022年4月1日付でコーポレートコミュニケーション本部はサステナビリティ推進本部に改名し、代表取締役社長直下の組織としました。
(サステナビリティ推進体制)
2021年度、サステナビリティ推進委員会は、グループ全体で取組むべき優先順位の高いマテリアリティ(重要課題)を従業員エンゲージメント向上とカーボンニュートラルと決定し、その行動計画とKPIの策定を目的に2つのコーポレートプロジェクトを設置しました。また、各プロジェクトはACE 2.0の期間中にモニタリングしていく非財務目標(KPI)の原案を策定し、取締役会が意思決定を行いました。
非財務目標(KPI)
※連結子会社を対象とし、Prinovaグループは1社として算定。
※2021年度:グループ会社の実施割合は41%(24社(1回のみの実施含む))。長瀬産業(単体)のエンゲージメントサーベイトータルスコアは、52.4。
従業員エンゲージメント向上
NAGASEでは、持続的成長を実現するためには従業員エンゲージメントの向上が最重要と認識し、従業員エンゲージメントを「会社(組織)と従業員が相互に理解し合い、お互いを高め合う状態」と定義しました。ACE 2.0の初年度にあたる2021年9月に、当社では現状把握と向上施策の策定を目的として、対会社8領域、対上司4領域、対職場4領域の合計16領域で構成されるエンゲージメントサーベイを実施しました。また、トップマネジメントの関与、主体性や透明性等に関わる事項を定めた実施ガイドラインを定め、グループ全体で着実に施策を進めてまいります。
(従業員エンゲージメントサーベイの内容)
カーボンニュートラル
NAGASEは、マテリアリティ(重要課題)において「社会・環境課題の解決とグローバリゼーション」を掲げています。NAGASEにとって、気候変動への対応は重要な課題と認識しており、2050年までにGHG(温室効果ガス)排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成(Scope1,2)を掲げています。NAGASEは商社機能に加え、製造・加工機能を有することから、「商社業/製造業」と「可視化/削減」の2軸4象限に分類し、目標達成に向け取り組んでいきます。
なお、NAGASEはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同表明を行いました。TCFDが推奨する項目に沿った開示内容は下記のとおりです。
≪ガバナンス≫
気候関連のリスクおよび機会についての取締役会による監視体制
NAGASEでは、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、取締役会の監督のもと、サステナビリティ推進委員会、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、方針や課題等を検討・協議しています。また取締役会において、NAGASEカーボンニュートラル宣言、TCFD賛同表明およびACE 2.0の非財務目標(KPI)について決議いたしました。このように、気候変動は取締役会による定期的、直接的な監督を受ける体制となっております。
≪戦略≫
リスクと機会
気候変動に関する様々なリスク・機会がある中で、NAGASEにとって重要なリスク・機会を以下のとおり特定しました。
戦略
NAGASEは商社機能に加え、製造・加工機能を有することから、「商社業/製造業」と「可視化/削減」の2軸4象限に分類し、全体施策および施策①~④からなる「NAGASEグループカーボンニュートラル宣言」のもと、目標達成に向け取り組んでおります。
なお2021年度は、サプライチェーン上のCO2排出量の算出・可視化に向け、企業の脱炭素経営の支援を目的とし株式会社ゼロボードが開発したCO2排出量・可視化クラウドサービス「zeroboard」の販売・事業展開を開始しました。NAGASEの有する国内外のネットワークを活用し、化学業界を中心に普及拡大を図ります。また顧客のニーズを収集した上でCO2排出量削減ソリューションの開発・提供等を行っていきます。
≪リスク管理≫
リスク・コンプライアンス委員会のもとで環境ISO運営組織を展開し、環境マネジメントシステムISO14001の継続的な活動を行っています。またサステナビリティ推進委員会において、気候変動による事業リスク・機会や対策を共有し、進捗管理を行っています。
≪指標と目標≫
NAGASEは、2050年までにGHG排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成を掲げています(Scope1,2)。加えて、2030年までにScope1,2を46%削減(2013年比)、Scope3を12.3%以上削減(2020年比)することとしています。ACE 2.0の期間中の目標については、前段記載の「非財務目標(KPI)」に記載のとおりです。
なお、Scope3は今後のサプライチェーンとの対話により目標値の更新も検討します。
(NAGASE温室効果ガス排出量実績と目標(Scope1,2))
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