当社グループは中期経営戦略のもと、科学・医用システム、電子デバイスシステム、産業システムの各事業セグメントを中心に、中長期的な市場・産業の動向を見据えてハード・ソフトの両輪で最先端の技術開発を推進しております。既存のコア技術を高めるとともに、事業拡大や将来的に収益確保が見込まれる分野での技術および事業開発に向けて、積極的な投資を実行しております。
これらの活動に係る当連結会計年度の研究開発費は
科学・医用システム
電子顕微鏡を中心とした解析システム製品の分野では、2つの新製品を市場投入することが出来ました。2018年7月には大型試料室や低真空対応機能により多様な観察ニーズに対応する新型の超高分解能ショットキー走査電子顕微鏡 SU7000を市場投入し、同年9月には好評を得ている走査電子顕微鏡FlexSEM1000のステージ、検出器、ソフトウェアを強化したFlexSEM1000Ⅱを市場投入しました。また、異物検査・粒子解析自動化ソリューションとして、ディープラーニングを用いた人工知能(AI)画像認識エンジンを搭載した「EM-AI」を開発しました。今後、電子顕微鏡を用いた高精度な異物検査ニーズに対応したソリューション提供を行っていきます。
医用システム分野では、中・大型セグメント向けの自動分析装置として、新規開発した生化学分析部「c503」・ISE(Ion Selective Electrode)分析部と既存製品である免疫分析部「e801」を接続可能とした「cobas® pro integrated solutions」を2018年12月に発売し、海外展開を開始しました。この装置は、24時間運用とメンテナンスフリー化を実現し、検査以外に掛かる時間の短縮化を図っております。また、中国において新製品である日立自動分析装置「3110」の完成品を現地にて生産を開始し、2019年1月に中国市場に投入しました。完成品生産を中国拠点(日立儀器(蘇州)有限公司)で行うことで、コスト競争力の強化を図るとともに、より中国市場ニーズに対応した製品提供を行っていきます。
遺伝子解析の分野では、当社の遺伝子解析事業パートナーである米国サーモフィッシャーサイエンティフィック社と共同で、ハイスループット解析のための3730xl DNA Analyzerの最新版を開発しました。この製品は、大規模キャピラリーDNAシーケンサのゴールドスタンダードである3730xl DNA Analyzerに対して、固体レーザーを搭載して、低消費電力化とラボへの設置の簡便化を実現させた他、これまで以上に幅広いアプリケーションへの対応を可能としています。DNAシーケンサを中心とした遺伝子解析の分野において、電気泳動によるサンガー法シーケンシングやフラグメント解析に対する根強い需要に対応して参ります。
慶應義塾大学と「プレシジョン・メディシン分子診断プロジェクト」を開始しました。遺伝子情報に基づいて疾患原因や治療の効果・安全性を評価し最適な治療を行うゲノム医療は、臨床現場への普及が進んでいます。慶應義塾大学薬学部の創薬研究センター内に共同研究のためのラボを新設しました。今後、当社が開発する分子診断システムの活用を通じて、バイオ・ヘルスケア分野の事業展開を加速し、健康社会の発展に貢献します。
分析計測装置を製造販売している㈱日立ハイテクサイエンスでは、改正RoHS指令で2019年7月以降、新たに使用が規制されるフタル酸エステル4種のスクリーニング精度を大幅に向上させた加熱脱離質量分析計「HM1000A」を2018年9月に発売しました。さらに、2019年1月には試料のスペクトルデータと蛍光・反射画像の分離表示データの同時取得を実現し、より高精度な測定が可能となった分光蛍光マイクロスコープ「EEM® View」を国内向けに発売しました。また、Hitachi High-Tech Analytical Science Ltd.では、金属中の極微量の窒素検出を可能とした据置き型の発光分光分析装置「FM EXPERT」を2018年9月に発売しました。
当セグメントに係る研究開発費は
電子デバイスシステム
データセンター向けを中心としたサーバー市場は高成長を維持し、スマートフォン市場は成長率が鈍化するも高性能化が進展しました。半導体市場はこれらに必要なDRAMやNANDフラッシュメモリー、およびサーバー向け先端MPUが成長しました。
先端ロジックデバイスについては、最先端半導体メーカーと製造受託企業(ファウンドリ)において14~7nmの幅広い世代の半導体の量産が拡大するとともに、7~5nm品の開発が本格化しました。また、NANDフラッシュメモリーでは3次元構造のメモリーセル積層数が90層以上となる次世代品の開発が進展しています。さらに、DRAMでは微細化が進展し10nm世代品の生産が拡大しています。これら先端ロジックおよび先端メモリーデバイスの加工に必要な、パターン加工技術や計測検査技術が必要とされています。また、先端デバイスの量産歩留まり管理のために、ウェーハ出荷・受け入れ時の品質管理やウェーハ裏面異物に対する検査ニーズも増えています。
このようなニーズに応える計測検査技術として、当社は微細パターン測長装置及び欠陥検査装置を事業展開しております。最先端デバイスの微細パターンの高精度加工では、従来よりも多数の測定が必要であり、最新の測長SEM/レビューSEMによる高速・多点計測検査機能の開発を推進しています。また、ウェーハの出荷・受け入れ検査でのウェーハ両面検査や、ウェーハ裏面の異物等が原因となる不良の解析向けに新型光学検査装置を開発しました(2018年12月)。
また、当社は先端デバイスのキープロセスの一つである微細加工向けにプラズマエッチング装置事業を展開しており、先端ロジックおよび先端メモリー向けにマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)をプラズマ源に用いたエッチング装置を製品化しています。2018年3月に7nm以降の最先端半導体デバイスの開発・量産向けに開発した「エンハンス版マイクロ波ECRエッチングモジュール」の顧客先評価を進めました。また、次世代プロセス向けに新たにドライリムービングプロセス用のリアクタの開発を進めています。
開発スピードの増す先端半導体において顧客からの技術開発要求はますます高度化しており、それに応えるため国内外の開発体制の整備と強化を図るとともに、顧客とのコラボレーションを通した次世代装置の開発を推進しています。これらの取り組みを通し顧客に対するソリューション提供のスピードアップを図っていきます。
当セグメントに係る研究開発費は
産業システム
社会インフラ分野の鉄道検測では、走りながら線路の状態を常時監視する営業列車搭載型検査装置を製品化し、顧客先での運用ならびに本格導入が開始されました。さらなる検査項目の拡大に対応するために新型検査装置や、AIを活用した画像検査技術の開発を進めています。
産業インフラ分野では、働き方改革や労働力人口の減少による作業者の確保が困難であるといった課題を解決する双腕ロボットを導入した自動化設備の販売を開始しました。さらに高度な作業を可能にするハンドリングや動作制御技術の開発に加えて、お客様にご来場いただいた上で課題解決の検証ができるエリアを自社工場内に構築中です。
計装システムでは、DCS(Distributed Control System)「EX-N01」において新型コントローラ「MLC-N01A」を2018年11月にリリースしました。従来機より処理性能の向上と、二重化回路強化や診断機構強化による信頼性向上を実現しました。また、ビッグデータ解析ツール「BD-CUBE」は、診断結果確認画面のMan Machine Interface機能改善により継続した操作性の向上を図りました。また検査装置では、微生物迅速検査装置「Lumione BL-2000」の開発を継続して実施しております。本装置は、ATP(Adenosine Triphosphate)生物発光法と日立独自の解析技術により、製薬用水中の微生物の有無を最速1時間で検出可能であり、CSV(Computerized System Validation)対応への機能強化およびユーザビリティ向上を図りました。
当セグメントに係る研究開発費は
全社
イノベーション推進本部は研究開発のインキュベーターとしての役割を果たすことで、複雑化する高度な製品技術だけでなく、技術に基づくソリューション・サービス事業の創出を進めています。またサービス・ソリューション事業推進本部では、IoTと当社製品を掛け合わせたソリューション型サービスの充実・拡大を図っています。
当セグメントに係る研究開発費は
お知らせ