世界的な、又は地域的なマクロ経済環境の変化は、個人消費や設備投資と深く関係し、商品市況にも影響を及ぼします。その結果、当社がグローバルかつ多様な産業領域に展開している事業の商品・製品価格、取扱量やコストなどに変動をもたらし、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の経済環境は、総じて新型コロナウイルス感染症による経済危機から持ち直しましたが、弱毒化を伴いながらも所々で見られた新型コロナウイルス感染再拡大、ロシア・ウクライナ情勢などの影響により、回復ペースが弱まる局面も見られました。今後も世界経済は回復を続ける見通しですが、ロシア・ウクライナ情勢や米中対立をはじめとする地政学リスク、米国の金融緩和の縮小、資源・エネルギー価格の高止まりなど、景気を下押しするリスク要因も多く、動向を注視すべきと認識しています。
以下「当期純利益」は、「当社の所有者に帰属する当期純利益」を指しています。当期純利益への影響額は、他に記載のない限り当社の当連結会計年度の連結業績を踏まえて試算した、翌連結会計年度に対する影響額を記載しています。
当社では、商取引や資源エネルギーの権益を保有して生産物を販売すること、事業投資先の工業製品を製造・販売することなどの活動においてさまざまな商品価格変動リスクを負っています。当社の業績に大きな影響を与える商品分野として次のようなものがあげられます。
(エネルギー資源)
当社は北米、東南アジア、豪州などにおいて、天然ガス・石油の開発・生産事業、液化天然ガス(LNG)事業を行っており、原油・ガス価格は当社の業績に重要な影響を与えます。
原油(Dubai)価格は、12月末には80米ドルに近い水準でしたが、1月以降価格は上昇し、2月のロシア・ウクライナ情勢を踏まえたロシア原油輸出量減少・途絶の懸念や、OPECプラスが3月2日会合でも追加増産に応じなかったことなどから原油価格は100米ドルを超過、更に3月8日の米国によるロシア原油輸入禁止の発表などもあり、同9日には130米ドルに近い水準まで上昇しました。その後、原油市場はIEA加盟国による石油備蓄の協調放出の動向等も踏まえ、3月末の時点で100米ドルに落ち着きました。短期的にはボラティリティの高い展開が続くと認識しています。
また、当社のLNG販売は長期契約が大部分を占めるものの、一部はスポット契約にて販売しています。1月初旬のアジアのLNGスポット価格は、百万Btu(英国熱量単位)当たり20米ドル台と例年比高値でスタートしました。ロシア・ウクライナ情勢を踏まえたロシアガス供給量減少を危惧し、欧州の天然ガス価格が一時高騰し、これに反応して3月上旬には過去最高値となる84米ドルまで急騰する場面もありましたが、その後はおよそ30米ドル台にて推移しました。
LNG価格は多くが原油価格にリンクしており、1バレル当たりの原油価格が1米ドル変動すると、当社の当期純利益は主に持分法による投資損益を通じてLNG・原油合わせて年間25億円増減すると試算されます。ただし、LNG・原油の価格変動が当社の業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
(金属資源)
当社は、100%出資子会社の三菱デベロップメント社(MITSUBISHI DEVELOPMENT PTY LTD、本社:豪州ブリスベン、以下「MDP社」)を通じて、製鉄用の原料炭を販売しており、石炭価格の変動はMDP社の収益を通じて当社の業績に影響を与えます。また、MDP社の収益は、石炭価格の変動の他にも、豪ドル・米ドル・円の為替レートの変動や悪天候、労働争議等の要因にも影響を受けます。
銅についても、生産者としての価格変動リスクを負っています。1トン当たりの価格が100米ドル変動すると連結純利益で年間16億円の変動をもたらす(1ポンド当たりの価格が0.1米ドル変動すると当期純利益で年間36億円の変動をもたらす)と試算されますが、粗鉱品位、生産・操業状況、再投資計画(設備投資)等、価格変動以外の要素からも影響を受けるため、銅の価格のみで単純に決定されない場合があります。
なお、生産・開発計画は長期間に及ぶため、短期的な価格の動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資の評価により重要な影響を与えます。商品市況の長期的な低迷又は上昇が想定される場合には、保有する「有形固定資産」や「持分法で会計処理される投資」などの減損及び減損戻入を通じて、業績に影響を与える可能性があります。
当社は、輸出入、及び外国間などの貿易取引において外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動リスクを負っています。これらの取引では先物為替予約などによるヘッジ策を講じていますが、それによって完全に為替リスクが回避される保証はありません。
また、海外における事業からの受取配当金や海外連結子会社・持分法適用関連会社の持分損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。当社の試算では米ドル・円のレートが1円変動すると、連結純利益に年間約40億円の変動をもたらします。
更に、当社の海外事業への投資については、円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、大口の投資については必要に応じて為替リスクのヘッジをするなどの施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。
当社は、当連結会計年度末時点で、取引先や関連会社を中心に約1兆100億円(時価)の市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っています。上記の価格は約1,600億円の評価益を含んでいますが、株式の動向次第で評価益は減少するリスクがあります。また、当社の企業年金では、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しています。よって、株価の下落は年金資産を目減りさせるリスクがあります。
当社の当連結会計年度末時点の有利子負債総額(リース負債除く)は5兆6,432億円であり、一部を除いて変動金利となっているため、金利が上昇する局面では利息負担が増加するというリスクがあります。
しかし、この有利子負債の相当部分は金利の変動により影響を受ける営業債権・貸付金等と見合っており、金利が上昇した場合に、これらの資産から得られる収益も増加するため、金利の変動リスクは、タイムラグはあるものの、相殺されることになります。また、純粋に金利の変動リスクにさらされている部分についても、見合いの資産となっている投資有価証券や固定資産からもたらされる取引利益、配当金などの収益は景気変動と相関性が高いため、景気回復の局面において金利が上昇し支払利息が増加しても、見合いの資産から得られる収益も増加し、結果として影響が相殺される可能性が高いと考えられます。ただし、金利の上昇が急である場合には、利息負担が先行して増加し、その影響を見合いの資産からの収益増加で相殺しきれず、当社の業績は一時的にマイナスの影響を受ける可能性があります。
このような金利などの市場動向を注視し、機動的に市場リスク対応を行う体制を固めるため、当社ではALM(Asset Liability Management)委員会を設置し、資金調達政策の立案や金利変動リスクの管理を行っています。
当社は、様々な営業取引を行うことによって、売掛金、前渡金などの取引与信、融資、保証及び出資などの形で取引先に対して信用供与を行っており、取引先の信用悪化や経営破綻等による損失が発生する信用リスクを負っています。また、当社は主としてヘッジ目的のためにスワップ、オプション、先物などのデリバティブ取引を行っており、デリバティブ取引の契約先に対する信用リスクを負っています。
当社では当該リスクを管理するために、取引先ごとに成約限度額・信用限度額を定めると同時に、社内格付制度を導入し、社内格付と与信額により定めた社内規程に基づき、与信先の信用状態に応じて必要な担保・保証などの取付けを行っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態悪化に対しては取引縮小や債権保全策を講じ、取引先の破綻に対しては処理方針を立てて債権回収に努めていますが、債権等が回収不能になった場合には当社の業績は影響を受ける可能性があります。
特に、新型コロナウイルスの変異・強毒化を伴った再びの世界的蔓延や地政学リスクの顕在化等により、企業の信用状態や資金繰りがより一層悪化する等して取引先の経営破綻が増加した場合には当社業績に影響を及ぼすリスクがあります。
当社は、海外の会社との取引や出資において、国の政治・経済・社会情勢に起因した、代金回収や事業遂行の遅延・不能等が発生するカントリーリスクを負っています。
カントリーリスクについては、保険を付保するなど、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。また、カントリーリスク対策制度及び、地域戦略委員会を通じてカントリーリスクを管理しています。
カントリーリスク対策制度では、各国を各種リスク要因を踏まえて区分の上、区分ごとに枠を設定するなどの手法でカントリーリスクを一定範囲内にコントロールしています。
また、国ごとのリスク状況の把握、カントリーリスク対策制度の立案・管理、個別案件の評価等をコーポレート担当役員(地域戦略)を委員長とする地域戦略委員会で行っています。
ロシア、ウクライナ両国宛てリスクについても、同制度を通じた管理を通じ、コントロールしています。
しかしながら、上記のようなリスクヘッジ策を講じていても、当社の取引先や出資先若しくは進行中のプロジェクト所在国の政治・経済・社会情勢の悪化によるリスクを完全に回避することは困難です。そのような事態が発生した場合、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
なお、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記2「(5)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。
当社は、株式・持分を取得して当該企業の経営に参画し、商権の拡大やキャピタル・ゲイン獲得などを目指す事業投資活動を行っていますが、この事業投資に関連して投下資金の回収不能、撤退の場合に追加損失が発生するリスク、及び計画した利益が上がらないなどのリスクを負っています。事業投資リスクの管理については、新規の事業投資を行う場合には、投資の意義・目的を明確にした上で、投資のリスクを定量的に把握し、事業特性を踏まえて決定した投下資金に対する利回りが、期待収益率を上回っているか否かを評価し、選別を行っています。投資実行後は、事業投資先ごとに、毎年定期的に「経営計画書」を策定しており、投資目的の確実な達成のための管理を行う一方、計画した収益を上げていない先については、持分売却・清算による撤退を含め、保有方針を明確にすることで、効率的な資産の入替を行っています。
しかしながら、このような投資評価の段階での案件の選別、投資実行後の管理を厳格に行っていますが、期待する利益が上がらないというリスクを完全に回避することは困難であり、事業環境の変化や案件からの撤退等に伴い、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
(重要な投資案件)
a. 豪州原料炭及びその他の金属資源権益への投資
当社は、1968年11月にMDP社を設立し、炭鉱開発(製鉄用の原料炭)に取り組んできました。2001年には、MDP社を通じ、約1,000億円で豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業(以下「BMA」)の50%権益を取得し、パートナーのBHP社(BHP Group Limited、本社:豪州メルボルン)と共に事業を運営しています。現在では、BMAは年間6,500万トンの生産量を誇る世界最大規模の原料炭事業に成長しています。また、当連結会計年度末のMDP社の固定資産帳簿価額は1兆29億円となっています。
なお、MDP社については、商品市況リスクにより業績に影響を与える可能性がありますが、詳細については「2 ② a. 商品市況リスク(金属資源)」をご参照ください。
b. チリ銅資産権益への投資
当社は、アングロ・アメリカン社(Anglo American Plc、本社:英国ロンドン、以下「アングロ社」)、チリ国営の銅生産会社であるCorporación Nacional del Cobre de Chile社(本社:チリ国サンチャゴ)と三井物産株式会社の合弁会社(以下「合弁会社」)と共に、チリ国銅資源権益保有会社アングロ・アメリカン・スール社(Anglo American Sur S.A.、本社:チリ国サンチャゴ、以下「アングロスール社」)の株式を保有しています。
前連結会計年度において、アングロスール社の事業価値向上に資する取組みを同社が所在するチリ国で他パートナーと機動的に行うなど事業経営の深化を図ることを目的として、中南米における金属資源開発事業の中核会社であるチリ国M.C. Inverversiones Limitadaにアングロスール社の株式の移管を実施しました。
アングロスール社への出資比率は、アングロ社グループが50.1%、合弁会社が29.5%、当社グループが20.4%となっており、当社の取得額は45.1億米ドルです。
同社は、チリ国内にロスブロンセス銅鉱山、エルソルダド銅鉱山、チャグレス銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区等の資産を保有しています(同社合計の2021年銅生産量実績は約37万トン)。
当社はアングロスール社への投資に対して持分法を適用しています。同社宛ての投資に関しては、「持分法で会計処理される投資」として減損の兆候判定を行っています。同社の生産・開発計画は長期間に及ぶため、短期的な価格動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資評価により重要な影響を与えるため、最新の銅価見通しや開発計画を含め、中長期的な観点から評価し判断しています。銅価格に関しては、将来の需給環境等のファンダメンタルズや、社外の金融機関等の提供するデータ等を考慮して、当社としての見通しを策定しています。
当連結会計年度末の帳簿価額は約1,700億円となっています。
アングロスール社への投資に関連する許認可プロセスの状況については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記41をご参照ください。
c. ペルー銅資産権益への投資
当社は、アングロ社と共同で、ペルー共和国ケジャベコ銅鉱山プロジェクト(以下「ケジャベコ」)の権益保有会社であるアングロ・アメリカン・ケジャベコ社(Anglo American Quellaveco S.A.、本社:ペルー共和国リマ、以下AAQ社)の権益40%を保有しています。
ケジャベコは約8.8百万トン(銅分換算)の埋蔵量を見込む世界最大規模の未開発鉱山で、高いコスト競争力を有しています。2018年8月より開発に向けた建設を開始し、2022年央の生産開始に向けた建設工事を進めています。本格的な生産立上げ後、当社持分生産量は約12万トン/年増加する見込みです。
当社はAAQ社への投資に対して持分法を適用しています。AAQ社宛ての投資に関しては、「持分法で会計処理される投資」として減損の兆候判定を行っています。ケジャベコは開発中であることに加え、生産計画は長期間に及ぶため、短期的な価格動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資評価により重要な影響を与えるため、最新の銅価見通しや開発計画を含め、中長期的な観点から評価し判断しています。銅価格に関しては、将来の需給環境等のファンダメンタルズや、社外の金融機関等の提供するデータ等を考慮して、当社としての見通しを策定しています。
当連結会計年度末時点のAAQ社に関する投資簿価と融資額の合計は約3,700億円となっています。
d. モントニー・シェールガス開発プロジェクト/LNGカナダプロジェクト
当社は、カナダにおいて上流資源開発からLNGの生産・輸出販売に至る天然ガスバリューチェーンを構築しています。上流事業として、パートナーのOvintiv社と共に、当社100%出資子会社のCUTBANK DAWSON GAS RESOURCES LTD.社を通じてシェールガスの開発事業を行っています。当社グループの権益保有比率は40%で、当連結会計年度末の帳簿価額は2,074億円となっています。
また、生産された天然ガスの一部をLNGとして輸出販売するため、事業パートナーと共に2018年にLNGカナダプロジェクトの最終投資決定をしました。同プロジェクトは、年間1,400万トンの生産能力を持つ天然ガス液化設備を建設し、日本など東アジアの需要国向けにLNGを輸出販売する事業で、2020年代中ごろの生産開始を予定しています。当社は子会社のDiamond LNG Canada Partnership(出資比率は当社96.7%、東邦ガス社3.3%)を通じて参画しており、パートナーであるShell社、Petronas社、PetroChina社、韓国ガス公社と共に同プロジェクトを推進しています。
なお、これらのプロジェクトについては、商品市況リスクにより、業績に影響を与える可能性がありますが、詳細については「2 ② a. 商品市況リスク(エネルギー資源)」をご参照ください。
上記以外の銅資産権益への投資や原油・ガス、LNG関連の投資についても、重要なリスクとして認識しています。なお、生産・開発計画は長期間に及ぶため、短期的な価格の動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資の評価により重要な影響を与えます。
e. ローソンへの出資
当社は、2017年に株式会社ローソン(以下「ローソン社」)の発行済株式数の16.6%を株式公開買付により取得し、それまで保有していた33.4%と併せて、発行済株式の過半数を保有することとなり、同社を連結子会社としました。ローソン社は、コンビニエンスストア「ローソン」のフランチャイズシステム及び直営店舗の運営を行うとともに、海外コンビニエンス事業及びそれ以外の周辺事業を運営しています。ローソン社の店舗網は、2022年2月末時点で、日本全国に約14,700店、海外に約4,800店の合計約19,500店の規模になっています。
前連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の影響による足元の業績悪化や先行き不透明な状況等を踏まえ、当社として同社の事業計画を見直したことを背景に、取得時に認識した「のれん」及び「無形資産」の一部について、税後836億円(当社持分)の減損損失を計上しました。
今後も事業環境が悪化した場合には、ローソン社の業績や、「のれん」の減損などを通じて当社の業績に影響を与える可能性があります。当連結会計年度末の「のれん」の帳簿価額は約1,600億円(持分比率勘案前)となっています。詳細については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記14をご参照ください。
f. Enecoへの投資
当社は、2020年3月に、中部電力株式会社と共同で設立したDiamond Chubu Europe B.V.を通じて、欧州で総合エネルギー事業を展開する N.V. Eneco(以下「Eneco」)の100%の株式を約5,000億円で取得しました。
Enecoは、再生可能エネルギー(以下「再エネ」)開発・供給事業、トレーディング事業、小売・新サービス事業それぞれの事業分野で高い競争力・適応力を有する総合エネルギー事業会社です。
当社は、Enecoの再エネに関する技術力・ノウハウを活用し、欧州及び欧州外で再エネ開発を加速させ、経済価値、社会価値、環境価値の三価値同時実現に資する取組みを強化する方針です。
電力需要や欧州マクロ経済が低迷する場合には、Enecoの業績や、取得時に認識した「のれん」の減損などを通じて当社の業績に影響を与える可能性があります。当連結会計年度末の「のれん」の帳簿価額は約1,200億円(持分比率勘案前)となっています。
当社は、国内外で多くの拠点を持ち、あらゆる産業を事業領域としてビジネスを展開していることから、関連する法令・規制は多岐にわたっています。具体的には日本の会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、贈収賄関連諸法、安全保障貿易管理等貿易関連及び制裁関連諸法、環境関連諸法や各種業法を遵守する必要があり、また海外で事業を展開する上では、それぞれの国・地域での法令・規制に従う必要があります。特に、足元ではロシア・ウクライナ情勢に起因する各国経済制裁が導入・強化されていますが、当社はその動向を適時にフォローし、適切な対応を行っています。
当社はコンプライアンス委員会を設け、その委員会を統括するチーフ・コンプライアンス・オフィサーが連結ベースでの法令・規制遵守を指揮・監督しています。その指揮・監督の下、各営業グループ及びコーポレートスタッフ部門においても、各グループ・部門のコンプライアンス・オフィサーが、固有のコンプライアンス施策の立案・実施をするなど、コンプライアンス意識を高めることに努めています。また、当社は、子会社及び関連会社(上場会社は除く)に対して、当社と同等の水準で各社に適したコンプライアンス管理体制を構築させ、又はさせるように努めています。
しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、関連する法令・規制上の義務を実行できない場合には、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象や、新型インフルエンザ・新型コロナウイルス等の新興感染症、大規模事故、テロ・暴動、その他予期せぬ危機的な事象が発生した場合、当社の社員・事業所・設備やシステムなどに対する被害が発生し、営業・生産活動に支障が生じる可能性があります。
当社では、緊急危機対策本部を設置し、危機発生時における当社関係者の安全確保・安否確認等の初動対応、重要業務の事業継続計画(BCP)の整備、建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)、定期訓練、必要物資の備蓄等の各種対策を講じています。また、あらゆる事象を想定したリスク・影響度分析に基づく初動対応・事業継続計画(BCP)の策定、継続的なPDCAサイクルの実施等の包括的なマネジメント活動である事業継続マネジメント(BCM)を推進し、各種危機に備えています。
新型コロナウイルスの世界的な蔓延に関しては 、産業医を加えた緊急危機対策本部を中心に、「社員の感染予防・感染拡大防止」と「適切な事業継続」の観点から、必要な措置を迅速に実行しています。国内・海外ともに、社員の安全を最優先としつつ、感染状況や日本政府・各自治体の要請、及び各国の情勢や規制に応じ、感染対策の徹底を図るとともに、都度必要な措置を実行し、安全状況を十分に確認した上で、適切な事業継続を図っていきます。
しかし、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、かかる事象の発生時には当社の業績は影響を受ける可能性があります。
異常気象の頻発による水資源への影響や、人口動態・自然界の生物多様性に与える影響、これに伴う食糧資源や自然資源への影響等、気候変動がもたらす影響は、地球環境や人類、企業活動にとり重大であるとともに、当社事業の継続性、並びに当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
気候変動に関連して生じるリスクは、カーボンプライシング(炭素税等)や各種規制拡大による操業・設備コストの増加、既存技術に依拠する製品・サービスの陳腐化等の移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク等)と、渇水・洪水等による事業の操業への影響等の物理的リスクに大別されます。「経済価値」「社会価値」「環境価値」の三価値同時実現を目指している当社は、「脱炭素社会への貢献」を「マテリアリティ」の一つとして掲げ、気候変動を対処・挑戦すべき経営上の重要課題と位置づけ、気候変動関連リスクにも対応しています。
具体的には、重要な気候変動関連リスクをサステナビリティ・CSR委員会において特定の上、事業への影響を評価するとともに、特に影響の大きな事業に関しては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言も踏まえて1.5℃シナリオ分析などを実施し、当社の方針、各国の政策、外部機関等の分析結果、及び各事業における固有の状況を総合的に勘案し、当該事業の戦略に反映しています。加えて、「中期経営戦略2024」で発表のとおり、当社の各事業を気候変動の移行機会・リスクに応じて分類し、同事業分類に応じて低・脱炭素化に向けた取組みを推進します。これら一連の内容は、取締役会にも報告を行っています。
なお、気候変動の問題は、再生可能エネルギー、電気自動車、エシカル消費等、新技術・代替製品の開発・普及を促すことから、当社にとっては新規ビジネス機会の増加に繋がる側面があります。
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