業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態の状況

当連結会計年度末における資産合計は147,943百万円であり、前連結会計年度末に比べ10,722百万円減少しております。流動資産は87,525百万円と前連結会計年度末に比べ1,943百万円減少しました。これは主に、売上の増加により売上債権が増加したものの、借入金の返済や配当金の支払により現金及び預金が減少したことによるものです。固定資産は60,417百万円と前連結会計年度末に比べ8,778百万円減少しましたが、これは主に海外セグメントにおける商標権の減損及び株式の売却による投資有価証券の減少によるものです。

負債合計は59,616百万円であり、前連結会計年度末に比べ5,300百万円減少しております。これは主に借入金の返済によるものです。

純資産合計は88,326百万円であり、前連結会計年度末に比べ5,422百万円減少しております。これは主に配当金の支払によるものです。

これらにより当社グループの流動比率は214.7%、自己資本比率は59.4%となり、その他の要素も含め、健全な財政状態を維持しております。

 

(海外セグメントにおける主要な無形資産の状況)

当社は2016年11月に米国における壁装材製造販売会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.の全株式を取得し、連結子会社としました。当連結会計年度における減損後の無形資産の状況は、以下のとおりであります。

 

Koroseal Interior Products Holdings,Inc.株式取得関連

(単位:百万円)

連結貸借対照表

科目

償却年数

前連結会計年度

当連結会計年度

連結貸借対照表計上額

償却額

減損損失額

連結貸借対照表計上額

残存

償却年数

商標権

非償却

5,474

5,593

230

非償却

無形固定資産

その他

(技術資産)

13年

493

58

487

8年

5,967

58

5,593

717

(注)1.上記以外に、為替レート変動による増減が発生しております。

2.当連結会計年度末において、商標権に対する繰延税金負債59百万円、無形固定資産その他(技術資産)に対する繰延税金負債125百万円を計上しております。

 

②経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など、新型コロナウイルス感染症への対策が実施され、厳しい状況が継続する中、ワクチン接種の促進等により、経済活動には緩やかな回復傾向が見られました。しかしながら、新たな変異株の出現や原材料価格の高騰と供給制約、金融資本市場の変動、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクの高まり等により、先行きの不透明感が強まっています。

当社事業に関連の深い国内建設市場におきましては、新設住宅着工戸数や、非住宅の着工床面積が前年比プラス基調で推移していますが、原材料価格の高騰や物流費の高止まり等の影響はさらに拡大しており、経営環境は予断を許さない状況が継続しています。

 

このような状況下で、当社グループは、マーケットインを重視した商品・見本帳開発に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献する環境対応型商品や、デフレ指向を強める市場に対応する商品を開発・発売したほか、海外事業においては、中国・東南アジア市場の組織体制を再編しました。また、2021年12月には、長期ビジョンで掲げる「スペースクリエーション企業」を具現化した「関西支社センターオフィス」を大阪市に開設しました。一方、9月以降の更なる原材料価格の高騰に伴う仕入価格の上昇等を背景に、商品の安定供給と物流サービスレベルの維持ならびにインテリア業界の健全な発展のため、2021年9月から実施した商品の価格改定に加え、2022年4月1日受注分より再度の価格改定を行うことを発表しました。

これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高149,481百万円(前年同期比-)、営業利益7,959百万円(同18.8%増)、経常利益8,203百万円(同16.5%増)となりましたが、米国の子会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.関連の商標権の減損を行ったことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は276百万円(同94.2%減)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。当該会計基準等を適用しなかった場合の売上高は158,827百万円(前年同期比9.3%増)であります。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

(インテリアセグメント)

壁装事業では、住宅市場における新設住宅着工戸数の回復も追い風となり、量産壁紙見本帳「SP」が売上を牽引しました。非住宅市場においては、非住宅向け壁紙見本帳「FAITH」が堅調に推移したほか、2021年11月に発刊した粘着剤付化粧フィルム「リアテック」では、デザイン性の高さや、新発売の低価格帯シリーズ「ベーシックウッド」が市場から高い評価を受け、売上に貢献しました。壁紙製造メーカーであるクレアネイト株式会社の設備損傷に伴う供給遅延が一部発生したものの、2022年4月1日からの再度の価格改定を前にした駆け込み需要の影響もあり、壁装材の売上高は62,337百万円となりました。

床材事業では、非住宅リニューアル市場の回復が追い風となり、各種施設向け長尺シートやカーペットタイルが売上を牽引したほか、住宅・非住宅で幅広く使用できるフロアタイルも好調を維持しました。また、脱炭素社会の実現に貢献する環境配慮型カーペットタイル「NT double eco」が、市場の高い評価を得て採用が進んだほか、2022年1月には高い意匠性を持つカーペットタイル見本帳「DT」を発刊するなど、戦略的な販促活動と商品開発を進めました。これらの結果、床材の売上高は44,881百万円となりました。

ファブリック事業では、コントラクト市場における伸び悩みが一部で見られたものの、住宅市場において、ハイエンド向けの商品を収録したカーテン見本帳「ストリングス」や、ワンプライスによる選びやすさを追求したカーテン見本帳「シンプルオーダー」が売上を牽引しました。また、椅子生地見本帳「UP」も、非住宅を中心に堅調に推移しました。2022年1月には、メカタイプの窓まわり商品見本帳「RBコレクション」を発刊し、分かりやすい見本帳構成と価格設定で、メカタイプの商品ラインアップを強化しました。株式会社サンゲツヴォーヌにおいては、マンション向けオプション販売会の積極的な実施に加え、EC事業ではBtoC事業の強化策として、ECサイト専用のオリジナル商品を拡大し、また、利便性向上に向けたWEBサイト改修や集客施策を着実に実施した結果、売上が伸長しました。これらの結果、カーテンと椅子生地を合わせたファブリックの売上高は8,612百万円となりました。

これらのほか、施工費や接着剤等を含むその他の売上7,210百万円を加え、インテリアセグメントにおける売上高は123,042百万円、営業利益は9,097百万円(前年同期比28.5%増)となりました。なお、収益認識会計基準等を適用しなかった場合の売上高は122,895百万円(同9.9%増)であります。

 

(エクステリアセグメント)

エクステリアセグメントにおいては、新築住宅市場の回復による住宅外構工事の増加により、フェンスやカーポート等の販売が好調に推移しました。また、アルミ商材関連での2022年4月からの価格改定を前にした駆け込み需要の影響もあり売上が伸長しました。一方、非住宅では、物件数は一定の回復が見られたものの、大型物件の減少が見られました。こうした中、新たな事業領域への展開として、コンセプトデザインから施工監修まで対応可能な組織体制を構築するとともに、施工体制を強化し、植栽や住宅外構工事における事業の拡大を進めました。

これらの結果、エクステリアセグメントの売上高は5,823百万円、営業利益は541百万円(前年同期比29.8%増)となりました。なお、収益認識会計基準等を適用しなかった場合の売上高は15,316百万円(同4.7%増)であります。

 

(海外セグメント)

海外セグメントでは、海外関係会社の2021年1月から12月までの実績を、当連結会計年度の業績に算入しております。

北米市場では、第1四半期までは前年と比較して売上の減少が継続したものの、第2四半期以降は建設市場の緩やかな回復と新デザイン商品発売の効果等により、回復基調となりました。しかしながら、人手不足による生産面での混乱に加え、原材料価格や人件費高騰に対応する価格改定を2月・10月・12月の三次にわたり実施したものの、値上げの実現が遅延したことにより厳しい収益状況となりました。さらに、壁面保護材料事業(Wall Protection)の内、レール(手すり)等低収益商品からの撤退を決定し、それに係る在庫の評価減を行い、また、一部商品に関して製品保証引当金を計上しました。

東南アジア市場では、新型コロナウイルス感染症の変異株の拡大により、各国でロックダウンが実施され、依然として厳しい状況が継続しました。主要マーケットであるホスピタリティ市場が、建設工事の延期や計画の見直しにより縮小する中、拡大傾向にあるヘルスケアやレジデンシャル市場といった新規市場への開拓を進めるとともに、シンガポール・タイ(バンコク)のショールームをリニューアルするなど、営業活動の強化を進めました。また、中東市場を担当するGoodrich Global Dubaiの株式を現地パートナーに売却し、撤退を完了しました。

中国・香港市場では、当連結会計年度は、ゼロコロナ政策により新型コロナウイルス感染症拡大防止による人的移動の制限等、厳しい対策が継続したものの、他アジア諸国と比べ市場への制約は少なく、一部の大口物件や高級住宅物件への納品が進み、売上は伸長しました。また、10月に当社子会社である山月堂(上海)装飾有限公司と、Goodrich Global Limited(在香港)の子会社で当社孫会社であるGoodrich Global Chinaを統合し、Sangetsu Goodrich Chinaへと組織改編を行い、事業の効率化と収益力強化に取り組みました。

これらの結果、海外セグメントにおける売上高は15,930百万円(前年同期比6.0%増)、営業損失は1,821百万円(前年同期は営業損失985百万円)となりました。

なお、Koroseal Interior Products Holdings,Inc.の業績が、新型コロナウイルス感染症拡大による市場の急激な縮小に加え、原材料価格・人件費の高騰といった供給面の影響により、想定した計画を下回って推移しており、市場の急速な回復は見込めないことから、事業計画を見直した結果、同社の商標権について減損損失5,593百万円を特別損失として計上しました。

 

(スペースクリエーションセグメント)

スペースクリエーションセグメントの施工部門においては、まん延防止等重点措置による一時的な工事量の減少が一部で見られたものの、建設市場の緩やかな回復基調の継続に加え、需要期である年度末に工事の再開が集中したことが追い風となり、売上が好調に推移しました。また、当社と連携した営業活動により、主力のオフィス市場だけでなく、マンションの大規模改修工事といった幅広い分野への事業領域拡大に努めたほか、より収益性を意識した営業管理体制の整備を行いました。

デザイン部門においても、インテリア事業の顧客基盤を活かした営業活動を継続し、安定的な顧客の獲得や、新たな市場分野の開拓を進めました。特に2022年1月以降においては、これまでの営業活動により獲得した物件の竣工が進み、売上が伸長しました。

これらの結果、スペースクリエーションセグメントの売上高は6,579百万円(前年同期比25.6%増)となりましたが、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は139百万円(同30.8%減)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,237百万円減少し、16,886百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は5,718百万円(前年同期は9,694百万円の獲得)となりました。これは主に、減損損失5,593百万円及び減価償却費3,667百万円の計上、税金等調整前当期純利益による収入3,506百万円、ならびに売上債権の増加による支出4,822百万円などによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は827百万円(前年同期は2,599百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,897百万円、定期預金の預入による支出1,211百万円及び投資有価証券の売却による収入1,819百万円などによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は13,341百万円(前年同期は11,836百万円の使用)となりました。これは主に、借入金の返済による支出6,704百万円、配当金の支払額3,869百万円及び自己株式の取得による支出2,692百万円などによるものです。

④仕入及び販売の状況

a.仕入実績

当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

インテリア

(百万円)

92,576

エクステリア

(百万円)

3,559

海外

(百万円)

10,152

116.0

スペースクリエーション

(百万円)

5,373

125.6

調整額

(百万円)

△1,874

合計

(百万円)

109,787

(注)1.セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。

2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。なお、インテリアセグメントとエクステリアセグメントにおける当連結会計年度の仕入実績については、当該会計基準等を適用した影響が大きいため、前年同期比を記載しておりません。

b.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

インテリア

(百万円)

123,042

エクステリア

(百万円)

5,823

海外

(百万円)

15,930

106.0

スペースクリエーション

(百万円)

6,579

125.6

調整額

(百万円)

△1,893

合計

(百万円)

149,481

(注)1.セグメント間の取引については調整額欄で相殺消去しております。

2.総販売実績の10%以上の割合を占める主要な取引先はありません。

3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。なお、インテリアセグメントとエクステリアセグメントにおける当連結会計年度の販売実績については、当該会計基準等を適用した影響が大きいため、前年同期比を記載しておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(インテリアセグメント)

インテリアセグメントにおいては、国内の建設市場の状況は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から回復基調で推移しております。住宅市場のリフォームや非住宅市場のリニューアルは回復が大きい一方、非住宅市場の新築については現在需要の端境期にあり、緩やかな回復に留まっております。そのような環境下で、販売価格の改定として、2021年9月から一次値上げを実施した影響や、2022年4月からの二次値上げ前の駆け込み需要もあり、3事業とも増収となりました。市場における数量シェアに関しては、前年と比較して壁装事業はほぼ変わらず、床材事業では上昇したものと見込んでおります。ファブリック事業についても、主力の新見本帳の発刊が続き、販売量が伸長しました。また、壁装事業においては、2021年3月に連結子会社とした壁紙製造メーカーであるクレアネイト株式会社とのシナジー創出を進めております。塩ビ壁紙のうち大きな割合を占める量産壁紙に関して、同社は国内最大規模の生産キャパシティを有しております。今後も、市場における量産壁紙の需要は拡大すると予想しており、製販一貫体制を更に強化することで、壁装事業における競争優位の確保を目指します。

インテリアセグメントの課題は、基幹事業としての収益確保であります。原材料価格等の高騰が続く中、インテリア業界の継続的かつ健全な発展のためには、収益性を維持・改善することを前提として、更なる販売価格の改定について、市場の状況を見ながら実行することが求められると考えております。また、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]に基づく施策を着実に実行し、きめ細やかな配送体制の強化や配送サービス機能の拡充、商品・空間・コトのデザイン提案力の強化、市場ニーズに応える環境商品の拡充などにより、収益力強化に向けた取り組みを継続してまいります。

 

(エクステリアセグメント)

エクステリアセグメントを担う株式会社サングリーンにおいては、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用したことにより、売上高が大きく減少する影響が表れております。なお、エクステリアの市場環境自体は、新築住宅市場の回復により堅調に推移しており、同基準を適用しなかった場合には、エクステリアセグメントは増収増益となります。エクステリアセグメントの業績は安定しているものの、更に伸ばしていく必要があると強く認識しております。中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]に基づく施策を着実に実行するとともに、スペースクリエーション事業部の機能強化により、デザイン提案から現場管理まで対応可能な体制を構築し、事業領域の拡大を進めてまいります。

 

(海外セグメント)

北米市場においては、新型コロナウイルス感染症拡大後の米国経済の回復により、Koroseal Interior Products Holdings,Inc.では売上高は前年を上回ったものの、利益は大きく下回りました。利益が低迷した主な要因は、米国における労働供給不足を背景とした人手不足が同社の製造部門にも大きく影響して生産効率の低下を招いたとともに、原材料価格や人件費等のコストの急激な上昇に対応する販売価格改定が遅れたことによるものです。特に当連結会計年度の下期の収益は厳しい結果となりました。米国の非住宅市場の需要は、新型コロナウイルス感染症が拡大した前連結会計年度に大きく落ち込み、今後2~3年をかけて緩やかに回復するものと予測されております。同社が主力としていたホテル・宿泊施設等のホスピタリティ市場は更に落ち込みが大きく、需要回復により長い期間を要すると見込まれております。市場予測から、早期の売上高の急回復が見込めない中、同社の最重要課題は、収益性の改善となります。低利益商品からの事業撤退や自社製造壁紙へのリソース集中といった生産効率の改善、コスト上昇に対する販売価格改定といった施策を着実に実施するとともに、高付加価値商品の開発と販売拡大、非住宅・ホスピタリティ市場主体から脱却したマーケット展開などに取り組み、全体的な収益力の向上を進めてまいります。

東南アジア市場においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う各国のロックダウンで営業活動が制限されたこと等により、売上高、利益とも低迷しました。一方で、Goodrich Global Holdings Pte., Ltd.を中心とした事業基盤の確立を進めております。Goodrich Global Dubaiの株式売却により中東市場から撤退し、東南アジア市場への経営資源の集中を図るとともに、主力とするホスピタリティ市場以外の新規需要分野への販路拡大に着手しております。

中国市場においても、新型コロナウイルス感染症拡大により様々な活動への影響はあったものの、他のアジア各国に比べると制約は少なく、売上高は前年を上回りました。2021年10月に中国事業における各社統合再編を行い、組織管理体制の強化及び営業体制の効率化と拡充を目指しております。

海外セグメントは、セグメント損失が継続しており、黒字化には期間を要すると見込んでおります。日本国内における収益力向上に継続して取り組む一方、将来的な国内市場の数量限界は避けられず、海外における事業展開の必要性を改めて強く認識しております。海外セグメント各社に対するマネジメントの強化、共通の商品・サプライヤー戦略の強化、各国市場に応じた個別施策を実行し、次世代事業として収益化実現に取り組んでまいります。

 

(スペースクリエーションセグメント)

フェアトーン株式会社では、まん延防止等重点措置による一時的な影響はあったものの、全体としては建設市場が回復基調で推移したことから、売上高が好調に推移しました。当社と連携した事業領域拡大も着実に進み、売上高が新型コロナウイルス感染症の発生以前から年々伸長しております。また、2021年9月に東北地方の内装施工事業者である株式会社壁装の株式を取得し、連結子会社としました。地理的拡大を通じた施工体制の構築や強化についても、重要な戦略として引き続き取り組む必要があると認識しております。

当社のスペースクリエーション事業部では、将来の事業拡大に向けて、デザイン力を有した専門人員の獲得等を積極的に進めております。現時点では引き続きコストが先行するものの、必要な成長投資として更に採用を進めるとともに、当社グループ全体として、空間デザイン人材を拡充するための従業員の育成にも取り組んでおります。

スペースクリエーションセグメントにおいては、売上高は年々伸長しているものの、事業基盤の整備や強化を優先しており、現時点における収益は低水準であります。同セグメントは、当社グループがスペースクリエーション企業を目指す上で重要な位置付けであります。今後も専門人材の採用、アライアンス強化等による体制整備を継続するとともに、他セグメントとの協業を更に推進して事業領域を拡大し、次世代事業としての成長と収益性向上の両立を目指してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは5,718百万円となりました。仕入価格や物流関連費用などの上昇に対して販売価格の値上げで収益を確保するとともに、現中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における配送体制やデザイン力の強化といった各施策を通じて、引き続き収益力の向上に取り組みました。様々なコストが上昇する中でも、営業利益は前年同期比18.8%増となったことから、基礎収益力は確実に向上したと認識しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響からの市場の回復及び販売価格の値上げにより、売上債権が大幅に増加した結果、営業活動によるキャッシュ・フロー自体は、前年同期から3,976百万円減少しました。

投資活動によるキャッシュ・フローにおいては、新型コロナウイルス感染症による各市場への影響は残るものの、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]で掲げた基本方針に基づく施策は着実に実行することとしており、将来の収益拡大に向けて必要な投資を実施しました。インテリアセグメントにおける投資として、インテリアとエクステリアが融合した空間デザインによる「関西支社センターオフィス」を開設し、サンゲツグループが目指すスペースクリエーション企業を具現化しました。また、スペースクリエーションセグメントにおける投資として、フェアトーン株式会社が、施工機能の強化を目的に東北エリアの内装施工事業者である株式会社壁装の株式を取得し、連結子会社としました。一方で、コーポレートガバナンス・コードに基づき、保有意義がなくなった政策保有株式の売却も進めており、当該株式の売却による収入が発生しました。

財務活動によるキャッシュ・フローにおいては、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における資本政策及び2021年12月公表の株主還元方針に基づき、安定増配と機動的な自己株式取得を概ね計画通り実施しました。

 

当社グループは、連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物に換金性の高い金融資産を加えた資金を、現金及び現金同等物として認識しております。現金及び現金同等物をベースに、営業キャッシュ・フローの獲得による資金創出及び借入による外部資金調達で得られた資金を財源とし、様々な成長投資及び資本政策を通じた株主還元に使用しております。また、手許資金と有利子負債のバランスを維持するため、ネットキャッシュ残高にも留意しております。当連結会計年度末における現金及び現金同等物、ネットキャッシュの状況は次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2021年3月31日)

当連結会計年度

(2022年3月31日)

(1)連結キャッシュ・フロー計算書における現金及び現金同等物

25,124

16,886

(2)預入期間が3ヶ月を超える定期預金

595

1,460

(3)有価証券

300

300

(4)投資有価証券(株式除く)

1,921

1,894

現金及び現金同等物 残高

27,941

20,541

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2021年3月31日)

当連結会計年度

(2022年3月31日)

(1)現金及び現金同等物

27,941

20,541

(2)短期借入金

△1,169

△862

(3)1年内返済予定の長期借入金

△6,092

△1,101

(4)長期借入金

△8,660

△7,734

ネットキャッシュ 残高

12,018

10,842

 

中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における3年間の資本配分の計画は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]を見据え、将来の事業拡大に向け必要な成長投資及び資本政策に基づく株主還元は着実に実施する方針であります。原資となる資金については収益拡大による営業キャッシュ・フローの最大化を図るとともに、成長投資における資金需要に応じて外部借入を柔軟に活用します。

 

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた見直しにより、当社グループは、緊急時の必要資金として想定する現金及び現金同等物を25,000~30,000百万円の金額内で当面維持する方針としました。当連結会計年度末における現金及び現金同等物20,541百万円については、新型コロナウイルス感染症の影響による市場縮小からの回復により、当連結会計年度はCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)が悪化していることも影響し、一時的に想定する必要資金の金額を下回っているものの、安全性並びに流動性を確保しつつ、想定に近い水準を維持しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成には、経営者による会計基準の選択及び適用、資産及び負債並びに収益及び費用の見積りを必要とします。経営者は、見積りについて過去の実績や状況を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果や将来の見込みは見積り特有の不確実性により、見積りと差異が生じる可能性があります。

当連結会計年度において、当社グループが重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定として認識しているものは次のとおりであります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

(固定資産の減損に係る見積り)

米国の子会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.及びSangetsu USA, Inc.は米国会計基準に準拠して財務諸表を作成しており、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」により、当社グループの連結決算手続上、当該財務諸表を利用しております。当社グループは、固定資産について減損の兆候の有無の判定を行い、その帳簿価額が回収不能となる兆候がある場合、減損テストを行っております。

a.有形固定資産及び償却無形資産

有形固定資産及び償却無形資産については、減損の兆候が生じるような状況の変化が生じた場合、減損の兆候判定を行っております。減損の兆候判定において、資産の価格や使用方法、会社の経営成績等の定性的な要素を総合的に評価した結果、減損の兆候があると判断された場合、回収可能性テストを実施しております。回収可能性テストにおいて、有形固定資産及び償却無形資産の使用及び最終的な処分から見込まれる割引前将来キャッシュ・フローの総額が当該資産の帳簿価額を下回る場合には、減損テストを実施することとなります。回収可能性テストに用いる将来キャッシュ・フローは、当社グループが想定する今後の事業計画を基礎としております。将来キャッシュ・フローの見積期間は、主要な資産の償却残存期間を加重平均した年数を採用しております。

当連結会計年度においては、回収可能性テストを実施した結果、有形固定資産及び償却無形資産の使用及び最終的な処分から見込まれる割引前将来キャッシュ・フローの総額が当該資産の帳簿価額を上回ったため、減損損失は認識しておりません。

b.非償却無形資産

非償却無形資産に関する会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

公正価値計算のための割引率は、税引後の加重平均資本コスト(WACC)の水準及び不確実性リスクを考慮して設定しております。WACCは決算日現在の米国における実効税率、国債や社債利回り等を勘案して算定しております。米国内外の経済状況や金融・資本市場、国際情勢に予期せぬ変化が生じた場合、割引率が著しく変動する可能性があります。

当連結会計年度の減損処理については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

(3) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、自己資本利益率(ROE)を重要な経営指標と位置付けております。中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における定量目標(KPI)として、2023年3月期のROE9.0%とともに、連結売上高1,720億円、連結営業利益120億円、連結純利益85億円、ROIC9.0%、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)65日の達成を目指します。基幹事業の質的成長による収益の拡大と基幹事業のリソースに基づく次世代事業の収益化により成長を実現することを基本方針とし、更なる企業価値向上に取り組んでまいります。

当連結会計年度は、米国の子会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.関連の商標権の減損や新型コロナウイルス感染症拡大による各国市場の縮小などにより、海外セグメントの損失が大きく拡大したことが影響し、親会社株主に帰属する当期純利益は276百万円(前年同期比94.2%減)となり、ROEは0.3%となりました(前年同期比4.8ポイント下降)。一方で、主力となるインテリアセグメントにおいては、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]における様々な施策の実行と販売価格の改定などにより、原材料価格が高騰する中でも営業利益が増加し、基礎収益力は確実に向上しております。中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]の定量目標であるROE9.0%達成に向けて、売上高当期純利益率の改善が最重要課題であると認識しており、インテリアセグメントを中心とした国内事業の収益力向上及び損失が続く海外セグメントにおける収益改善に引き続き努めてまいります。

 

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