課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループが、革新を続け持続的成長を果たすために、企業理念を「『人』と『絆』を大切に、社会の基盤を革新し、新たな価値を創造します」とし、当社グループが長い歴史の中で築いてきた、すべてのサービスの安全・品質に込める強い想いと誇りを示しております。そして、その使命を果たすことを皆様にお約束するために、ブランドメッセージを「私たちの約束:期待を超えなければ、仕事ではない」とし、その「私たちの約束」を具現化するため、全従業員の行動指針として「私たちの覚悟」を定めております。

また、今般、2030年に目指すべき姿として「私たちの目標:技術で、人が、高みを目指す」と定めました。

 

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(2)経営環境と2030年ビジョンの見直し

経営環境

当社グループは、2019年3月期~2021年3月期を対象とした中期経営計画(以下、前中期経営計画)を2030年ビジョン実現に向けた「確固たる基盤づくり」の期間と位置づけ取り組んでいた中、世界規模でのコロナウィルス感染拡大の影響による事業環境の大きな変化に見舞われました。まさに「先行きの見通せない創業以来の未曾有の危機」であり、2020年2月に「構造改革プラン」を策定し、直ちに着手いたしましたが、2021年3月期の業績は、特に空港関連において影響が顕著となり、売上高2,923億円、営業利益39億円と大幅な減益となりました。

これを受け、依然としてコロナ影響の収束が見通せない中、構造改革プランを継続するとともに、さらに取り組みを強化すべく、2021年5月には単年度の経営方針である「2022年3月期方針」を策定し、「1.利益率の改善」、「2.効率性の向上」、「3.競争力の強化」、「4.部門を越えた連携」の4項目について重点的に取り組んでまいりました。

この結果、2022年3月期は、全社では、売上高3,013億円、営業利益102億円、ROE7.5%まで回復いたしました。要因としては、生産・物流へのコロナ影響の軽減、海上・航空運賃の高騰、鉄鋼関連での生産回復、物流センター等新規拠点の開設の増収要因があったことに加え、社員の多能工化を含めた配置転換、適正単価の収受、業務効率化等を進め前年比で増益となりました。

 

(事業環境の変化・さらに進めるべき変革)

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2030年ビジョンの見直し

上記外部環境の大きな変化を踏まえ、さらなる変革を実現するには、当社グループの強みの源泉である人の成長が不可欠です。一人ひとりが能力を磨き、真価を遺憾なく発揮できる環境を整えることが、最重要課題であると認識しております。加えて、当社グループの現場には永年蓄積されたノウハウをはじめとした有形・無形の財産があり、これらも強みの源泉です。幅広い技術を活用し、業務改善・改革に取り組み、その過程で従業員一人ひとりが成長する。これが、事業環境が大きく変化し、将来の予測が難しい時代にあって、当社グループの永続的な企業価値の向上に不可欠な姿と考え、今般、2030年ビジョンとして「技術で、人が、高みを目指す」と定めました。

そして、「高み」を目指すための3つの指針を示し、これらを具現化していくことにより、2030年ビジョンを実現してまいります。

 

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なお、2030年ビジョンの財務目標は下表の通り、営業利益250億円、ROE10%以上を重視し、売上高4,500億円は実現に向けたガイドラインと位置付けております。これは、売上高に偏った成長を追うのではなく、幅広い技術の活用をはじめとした創意工夫により、お客様や社会の困りごとを解決し、高い利益成長を図っていくことを意図しております。加えて、サステナビリティの観点から新たに「環境」「人」「技術」の非財務目標を掲げました。

従業員全員が新たな2030年ビジョンを共有し、一人ひとりが成長意欲を持ち、活躍できる風土づくりを進め、目標達成に邁進してまいります。

 

2030年ビジョン[2031年3月期経営目標]

財務目標

売上高※

4,500億円

営業利益

250億円

ROE

10%以上

非財務目標

 環境

CO2排出量35%削減(2019年3月期比)

経営戦略に基づく人材育成の推進

従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上

技術

技術革新・DXによる自動化・省力化

労働環境改善による「安全」の絶えざる追求

※売上高はガイドラインとする。

 

(3)新中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)

当社グループでは2030年ビジョンの実現に向け、2023年3月期~2025年3月期までを対象期間とする新中期経営計画を策定いたしました。事業環境が大きく変化し、将来の予測が難しい時代にあって、従来の延長線上の取り組みのみでは2030年ビジョンの実現は容易ではありません。この中期経営計画では、『人と技術のシナジーで時代とともに変化する「期待を超える価値」を創造しよう』という基本方針のもと、当社グループの強みである人と、現場でのノウハウや新技術の活用により、さらなる収益力伸長、企業価値の向上を実現すべく、以下の4つの重点事項を定めました。

 

重点事項

① 革新への挑戦

・注力事業における挑戦(含M&A)

・技術の活用とDX並びに協業による挑戦

・人的資本強化

永続的な成長を実現するには、現在の延長線上にとどまらないサービスの革新が求められます。業界において比較優位性を持つ「空港関連」、「メディカル関連」の一層の競争力強化と、長期的には当社の事業基盤の強化にとって不可欠な「環境・エンジニアリング関連」、「インド事業」の育成を進めてまいります。

同時に従来から取り組みを進めてきました「技術の活用・DX推進」「社内外協業」による新たな提供価値の創造に挑戦してまいります。

 

(当社グループの事業ポートフォリオ)

分類

分野

基盤事業

鉄鋼関連、食品(食品)関連、食品プロダクツ関連、生活(生活)関連

改善事業

生活(物流)関連、食品(定温)関連、国際関連

注力事業

空港関連、環境・エンジニアリング関連、インド事業、メディカル関連

※2023年3月期より下記変更をしております。

海外関連を国際関連に名称を変更

分類名称について「収益改善事業」を「改善事業」、「成長事業」を「注力事業」に名称変更

メディカル分野の位置づけを注力事業に変更

 

 

② 安全・安心の追求

・より安全・安心な職場環境・社会の実現

・安全人づくり

「安全・安心」は当社グループの事業の根幹をなすもので、最も重要な価値観です。「安全・安心」な職場環境の整備は誰もが働くことのできる機会の創出につながり、当社グループの持続的成長に不可欠な取り組みであると認識しています。また、技術の活用により、これまで以上に「安全・安心」な職場環境、社会の実現に向け、継続的に取り組みを進めてまいります。加えて、従業員一人ひとりがルールを守り他者を守ると同時に、危険感受性を高め自分を守り、職場環境の改善に参画する「安全人」を育てることで真の「安全・安心」を追求してまいります。

 

③ サステナビリティの追求

・全員参加で豊かな社会の実現

当社グループが社会・ステークホルダーの皆様から信頼され、必要とされ続けるには、従来以上にサステナビリティへの取り組み強化が必要であるとあらためて認識しております。2021年11月にサステナビリティ委員会を設置し、取り組みを進めております。しかしながら、持続的・全社的な活動の定着には一人ひとりの参加意識の醸成が不可欠です。この中期経営計画では、CO2排出量削減をはじめとした取り組みを推進するとともに、一人ひとりの参加意識の醸成に努めてまいります。

CO2排出量の削減については、下記のとおり中長期的な目標を設定し、再生可能エネルギーの導入並びに省資源・省エネルギーにも努めてまいります。同時に、事業活動を通じた環境負荷低減が実現できるよう、新技術の導入や生産性の向上にも取り組んでまいります。

 

(CO2排出量の削減目標)

2025年3月期:20%削減(2019年3月期比)

2031年3月期:35%削減(2019年3月期比)

2050年:カーボンニュートラル実現へ

 

④ 収益力の向上

・革新への挑戦による収益性・効率性の向上

・収益の改善継続

事業環境変化に加え、技術革新の進展により、当社グループ事業も変化することが求められています。既に、単なる従来の延長ではない、技術の活用やサービスの組み合わせによる新たな価値創出が始まっておりますが、この取り組みを拡大、加速させてまいります。

収益改善について、従前より当社グループは資本効率の向上を図るため、ROICを活用し資本コストを意識した経営に取り組んでおります。

取り組みの一例として、前中期経営計画より継続してまいりました不採算事業の収益改善については、引き続き取り組みを進めてまいります。また、投資回収については、投資判断から投資後モニタリングに至る仕組みを強化し、半期毎の取締役会への報告と合わせ、投資実施部門とのコミュニケーション頻度を高め、確実な投資回収を図るよう取り組みを行っております。

 

新中期経営計画における空港関連・鉄鋼関連の前提

当社グループは、多様な企業との取引により事業リスクの分散を図り、特定企業又は業種の業況変動等による影響を低減するよう努めておりますが、コロナ影響が顕著な空港関連、鉄鋼業界の構造変化による影響が大きい鉄鋼関連については、新中期経営計画上において、それぞれ下記のとおりの前提を置き、対応を進めてまいります。

 

① 空港関連の見通しと対応

空港関連においては、コロナ拡大前の2019年と比較し、国際線の就航率は10%台に留まっており、依然として厳しい状況が続いております。加えて、国際航空運送協会(IATA)による今後の見通しでは、欧米などと比較し、アジア太平洋地域では、最大市場の中国で出入国緩和に向けた動きが見られないために、回復が遅れると指摘しております。当社の空港毎のサービス内容を勘案すると、アジア太平洋、特に中国便の回復状況を考慮する必要があり、回復には一定程度の時間を要すると考えております。そのため、国際旅客便就航率の回復状況をコロナ前の2019年と比較して2025年3月期は年平均70%と見込み、計画を策定しております。

しかしながら、インバウンドの回復を見込み、空港関連については注力事業としての位置付けを維持しており、需要回復時における応需体制の維持に必要な人材確保が課題となります。これにつきましては、グループ内外での応援・出向(人材マッチング)を継続しながら、需要回復に合わせた整員体制の構築をしてまいります。また、既存空港におけるサービス提供領域の拡大や新たな国内・海外空港への進出を目指してまいります。

 

② 鉄鋼関連の見通しと対応

鉄鋼関連においては、2021年の和歌山第1高炉休止に続き、鹿島第3高炉が2025年3月期末までに休止予定となっており、この影響は、2025年3月期より顕在化するものと見込んでおります。そのため、この中期経営計画期間中は、高炉休止に向けた準備と休止までの安定操業の完遂という両面で対応してまいります。具体的には、休止前後の生産体制に応じた要員の適正配置や、当社グループ各部門との連携強化による新規深耕化、DX推進やドローン活用による作業の効率化等の取り組みを進めてまいります。

 

主要目標

中期経営計画では、従来の売上高・営業利益といった事業規模や成長性を示す指標、自己資本当期純利益率(ROE)といった資本効率性を示す指標に加えて、2030年ビジョンと同様に「環境」「人」「技術」といった非財務目標を掲げ、進捗をモニタリングしてまいります。

 

 

中期経営計画最終年度(2025年3月期)

財務目標

売上高

3,320億円

営業利益

160億円

ROE

8.0%

非財務目標

 環境

CO2排出量35%削減(2019年3月期比)

人 ※

経営戦略に基づく人材育成の推進

従業員の働き甲斐(エンゲージメント)の向上

技術 ※

技術革新・DXによる自動化・省力化

労働環境改善による「安全」の絶えざる追求

※人、技術の各非財務目標は、下記の時期を目途に計画策定予定

(ⅰ)人:2023年3月期上期を目途に人材育成計画策定・サーベイ実施

(ⅱ)技術:2023年3月期上期を目途に取り組み計画を策定

 

財務方針

新中期経営計画においては、2030年ビジョンの達成と企業価値の持続的な向上を目指し、将来の成長に必要な成長投資に加え、技術革新・DX投資、M&A、維持更新などの一定の投資が必要と考えておりますが、資本コストを意識し、ハードルレートを踏まえたNPVとROICを基準に投資判断を実行してまいります。

営業CF450~500億円(3ヵ年累計)を前提にその枠内での設備投資・M&A・株主還元を計画しております。

また、財務規律については、投資余力・最適資本構成・株主還元余力のバランスを考慮した以下の財務規律を維持し、財務健全性を確保してまいります。

・DEレシオ0.8倍以下

・自己資本比率40%以上

・格付けA-以上

最後に、株主還元については、下記の方針により、安定的な株主還元を目指してまいります。

・2023年3月期は1株当たり配当金水準(年36円)に復帰

・以降は原則その水準の維持向上に努める

・事業環境及び財務状況に応じ機動的な自己株式取得も今後検討の選択肢とする

 

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