課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中に将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針
 当社を中核とした広電グループは、運輸、流通、不動産、建設およびレジャー・サービス業により構成されており、多面的な事業展開を行うことにより、広島地区における地域社会の発展に貢献しております。
 グループの中核である運輸事業をはじめとして、各事業とも「お客様に満足いただける高品質のサービスの提供」を経営の基本方針として、安全性の確保を第一の使命とし、利便性や快適性の向上に努めるとともに、多様化するお客様のニーズに対応したきめ細かいサービスの実施や豊富な商品構成を行うことを心がけております。
 なお、新型コロナウイルス感染拡大による昨今の厳しい経営環境にあっても、この基本方針を念頭に置くとともに、グループ全体の収益力の強化と安定した経営基盤の構築を目標とし、グループ各社が相互に連携、協力しながら、新しいサービスや商品の開発に努める一方で、最終的にグループ会社それぞれが自立した企業経営を可能にすることにより、グループ全体での持続的成長と企業価値の向上を目指しております。
 

(2)経営ビジョン・人財ビジョン・経営戦略

 経営環境が大きく変化する中、持続的な成長に向けて広電グループの目標と計画を明確化し、経営指針の1つとして活用するとともに、経営基盤の強化と企業価値の向上に繋げるため、継続して経営計画を策定しており、2020年5月14日の取締役会決議により、新たに中期経営計画「広電グループ経営総合3ヵ年計画2022」を策定しております。
 この中期経営計画につきましては、当社グループの事業活動に大きく影響する、広島駅南口再開発事業が完了する2025年度を見据えた内容とし、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点によりSDGs(持続可能な開発目標)も意識し、以下の経営ビジョン、人財ビジョン、経営戦略を定め、経営基盤の強化と企業価値の向上に繋げるとともに、社会的課題の解決及び地域社会の持続可能な発展にも貢献してまいります。

 

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響等を踏まえ、2022年5月12日の取締役会決議により、中期経営計画の一部見直しを行っております。「既存事業の変革」と「新たな事業機会への挑戦」を引き続き推進することで、新型コロナウイルスがもたらした社会の変化に対応できる収益構造へ再構築し、持続的な成長への転換を図ります。

また、当社において新たに策定した人財ビジョンのもと、当社従業員一人ひとりの力を最大限発揮できる環境を整え、永続的な発展に繋げることを目指すとともに、当社グループ全体への展開を検討してまいります。

 

(経営ビジョン)

「人と人とをつなぎ、地域の魅力ある未来を拓く」

○広電グループは、夢と志を共有する皆さまと力を合わせ、未来の広島にふさわしいまちづくりに挑戦します。

○広電グループは、まちづくりを通じて地域社会の未来に貢献します。

○広電グループは、従業員一人ひとりが未来に向けてチャレンジし、安心して能力を発揮できる環境づくりを推

  進します。

 

(人財ビジョン)

 当社社員の“あるべき姿”や“なりたい姿”を定めた「人財ビジョン」は、「基礎力」と「実行力」の大きく二つで構成されており、さらにそれぞれの“力”において求められる要素を選定しております。

①「基礎力」

・責任感(Pride)

一人ひとりが「広島電鉄の顔」であり、「広島を動かす原動力」であるという「責任感」を持つ。

・感 謝(Understanding)

これからも広島の地で事業を続けていくために、全てのお客様、広島電鉄に関わる全ての関係者への「感謝」の心を忘れない。

 

②「実行力」

・主体性(Thinking)~向上心を持ち、自分事として課題を発見、解決する力~

自分や会社のなりたい姿、あるべき姿を思い描き、現実との差を直視することで課題を見つけ出し、解決に向けて自ら考え、行動する。

・挑 戦(Action)~既成概念に捉われず、新しい価値を創り出す力~

取り巻く環境が大きく変化する中で、前例に捉われず、新しい価値を創出することに積極的に挑戦し、諦めずに最後までやり遂げる。

・協 働(Teamwork)~お互いを尊重し、チーム一丸となって成果を生み出す力~

一人ひとりの考え方を尊重し、お互いに助け合い、協力することで、チームとしてより大きな成果を生み出す。

 

経営戦略

①環境にやさしく、安全・安心なサービスの提供
②わかりやすく使いやすい公共交通の整備
③にぎわいの創出と新規事業による新たな取り組みの推進
④人財の確保・育成といきいきと働きやすい環境の追求
⑤持続的な成長と長期的な財務の安定性の確保

⑥既存事業の変革と新たな事業機会への挑戦

⑦成長性の高い事業領域への経営資本再配分

 

(3)サステナビリティを巡る課題への対応方針

   当社は、ESGの観点から、国連において採択されたSDGsを意識した社会的課題の解決に積極的に取り組むことで、地域とともに持続的に成長していくことを目指しております。中でも運輸業及び不動産業という地域・街に根差した事業を行っていることを踏まえてSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」を重要度の高い取り組み目標とし、社会的目標の達成に向け積極的に取り組んでおります。

 気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適切な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めてまいります。

 また、地域社会の一員として、より一層の地域の活性化に寄与できるよう、文化振興活動や犯罪防止活動をはじめとした社会貢献活動・環境保全活動にも積極的・能動的に取り組んでまいります。

 なお、サステナビリティに関する取り組みについては、取締役会において適宜実施内容の報告を受け、進捗状況を確認することにしております。

 

(4) 目標とする経営指標

目標とする経営指標につきましては、中期経営計画「広電グループ経営総合3ヵ年計画2022」において、2025年度の展望を見据えた連結経営数値目標として「有利子負債/EBITDA倍率」を設定しております。

なお、具体的な設定数値及び分析については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しております。

 

 

(5)経営環境及び対処すべき課題

 今後の見通しにつきましては、新たな変異株の感染拡大により新型コロナウイルス感染症の収束時期が不透明な中で、特に運輸業におきましては、2022年度以降もコロナ禍以前の収益の回復が見込めない可能性があると思われます。

 2022年度は、運輸業を中心とする当社グループにとって、少子高齢化の進展や新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした社会の変化に対応できる収益構造を再構築し、黒字転換とその後の当社グループ全体の持続的な成長に向けた重要な時期であると認識しております。広電グループでは「お客様に満足いただける高品質なサービスの提供」を経営の基本方針とし、中期経営計画「広電グループ経営総合3ヵ年計画2022」の経営戦略に掲げる「既存事業の変革」と「新たな事業機会への挑戦」を推進し、「わかりやすく使いやすい公共交通」と「にぎわいのあるまちづくり」を目指し取り組んでまいります。また、社会の変化に強い事業ポートフォリオの構築に向けて、ビジネスモデルが異なる新たな事業分野への進出を進めるとともに、輸送の安全確保を前提として、運輸業自体の事業構造を転換することで、省コストを図り、安定した経営基盤の構築を目指してまいります。

 

 新たな取り組みとして2020年11月に当社を含む16社が出資して設立した広島国際空港㈱を通じて、2021年7月から開始された空港運営事業に参画いたしましたが、今後はさらに、広島市が実施する公有地の民間活用Park-PFI制度における「旧広島市民球場跡地整備等事業」や「中央公園広場エリア等整備・管理運営事業」への参画や、広島都心のまちづくり組織への参画・連携を通じて、賑わいづくりやまちづくりに積極的に携わり、将来的には、広島都心の価値向上や地域の活性化、交流人口の拡大、回遊性の向上が図られることで、当社事業への親和性や、相乗効果による当社グループ全体の収益性を高め、持続可能な事業展開を目指します。

 当社グループがお客様や地域社会から将来にわたって支持され続ける企業グループとして、ニューノーマル時代に対応した体制を構築し、ESGの観点やSDGsを意識しながら、中期経営計画「広電グループ経営総合3ヵ年計画」で掲げる経営戦略をさらに発展させて取り組んでまいります。

 なお、次期につきましては、経済活動が漸次再開される前提のもと、収益構造の再構築を目指す諸施策を通じて黒字転換を見込んでおり、復配を予定しております。


 各セグメントにおける対処すべき課題については、次のとおりであります。

 

①運輸業
 運輸業におきましては、2020年11月に地方の乗合バス事業に係る独占禁止法適用除外に関する特例法が施行されたことにより、事業者間での運行回数、運行系統の調整や運賃収入のプール精算が可能となったことから、当社グループは、持続可能な公共交通ネットワークの形成に向け、広島市をはじめとする沿線自治体や他事業者と協議のうえ、さらなる路線再編の検討を進めてまいります。

 広島市中心部では当社グループの電車、バスのほか、他のバス事業者も路線バスを運行しており、交通事業者7社が共同経営の協定を締結し、広島市中心部の対象区間内で完結する路線バスおよび電車市内線(白島線を除く)の運賃を220円均一にすることと併せて、路線バスと電車市内線の相互利用が可能な広島シティパスの対象エリアの拡大や6時間乗り放題のデジタルフリー乗車券新設などの取り組みを進めてまいります。これらの施策により、事業者の枠を超えた電車・バス共通のサービスを導入することで、地域住民・来訪者にとって「わかりやすく使いやすい」持続可能な公共交通とすることを目指しており、移動を便利にすることで地域を活性化し、広島のまちづくりに貢献してまいります。

 

 また、当社では2008年にサービスを開始したPASPYシステムに代わる新たな方式の乗車券システムの開発に着手しております。新方式では曜日別や時間帯別の利用状況に応じた柔軟な運賃制度が実現可能となり、利便性の向上やシステム全体の低廉化を図ることを目的として、2024年10月の導入を目指して開発を進めてまいります。

 鉄軌道事業におきましては、2022年8月に宮島線開業100周年を迎えますが、広島県や廿日市市が事業主体の宮島口整備事業に伴う軌道移設工事を進め、2022年7月より新しい広電宮島口駅の供用開始を予定しております。観光商業施設「etto(エット)」とともに宮島口周辺地区の観光拠点としての賑わいと快適性・利便性の向上を目指して取り組んでまいります。

 自動車事業におきましては、ICTを活用した運行管理の高度化に取り組み、安全性の向上を図りながら各営業所の運行管理業務を集約するとともに、DXを推進することで効率化を進め、生産性の向上につなげてまいります。

 海上運送業および索道業におきましては、新型コロナウイルスワクチン接種が進み、宮島観光客も増加傾向が予想されている中、安全管理、感染防止対策を強化するとともに、サービスや快適性を向上させ、利用促進を図ってまいります。

 航空運送代理業におきましては、今後新たな変異株の感染拡大等による利用客の動向が懸念されますが、感染リスクの対応を徹底したうえで安全安心な運航を第一目標として、お客様満足の向上に努力してまいります。

 

②流通業
 流通業におきましては、2022年3月で道路会社とのテナント契約が満了時期を迎えた下松サービスエリア店舗では、高速道路交通量の減少による売上の伸び悩みや運営面における人手不足や利益率の低下など多くの課題を抱えていたため、契約の更新を見送りました。宮島サービスエリア店舗につきましては、今後の高速道路交通量や利用者の動向を踏まえながら、利便性と快適性をさらに高められるよう努めてまいります。 

 

③不動産業
 不動産業におきましては、当社グループが保有する資産の有効活用を推進し、開発にあたっては専門的なノウハウを持つ当社グループ以外の事業者などとも連携しながら人が集まり、夢がある街づくりに取り組み、広島の活性化に寄与することで、公共交通を中心とする当社グループの事業の持続的な成長を目指してまいります。現在、広島市中区において分譲マンション「ザ・タワーレジデンス広島富士見町」の建設を進めているほか、2021年1月末日をもって営業を終了したホテルニューヒロデンの建物跡地、広島市西区己斐本町の社員寮跡地では分譲マンション事業を立ち上げております。また、広島市佐伯区の「ファミリータウン広電楽々園」内のテナント商業施設「ナイスディ」棟につきましては、2021年9月に閉館いたしましたが、今後「ファミリータウン広電楽々園」全体の具体的な活用方針の検討を進めていき、収益を最大限確保できるよう事業展開を図ってまいります。

 
④建設業
 建設業におきましては、来年度以降工事が本格化する広島駅南口広場の再整備等事業に伴う路面電車の広島駅前大橋ルート整備をはじめ、広島市安佐南区の大塚地区における土地区画整理に伴う大規模再開発事業等についても着実に工事を進めてまいります。

 

⑤レジャー・サービス業
 レジャー・サービス業におきましては、積極的な営業活動を展開するとともに、引き続き顧客満足度の向上に取り組むほか、子会社においても新規事業への取り組みを進めてまいります。㈱ヒロデンプラザにおいては低酸素ジム部門を新設し、今後中国地方初の個室型低酸素ジム事業による収益拡大に取り組んでまいります。

 広島市中区のボウリング場「広電ボウル」では、ボウリング教室などの様々なイベントや新たな企画などを実施し、来場者の増加に努めてまいります。

 広島県三原市の「グリーンバーズゴルフ倶楽部」では、入場者の拡充ならびに一年会員と2021年度から募集を開始したプレミアム会員の加入継続および新規獲得を目指し、積極的な営業活動を行うとともに、より一層のコース整備の充実に努め、「来場者の満足度の向上」により、リピーターの確保や来場者の増加に努めるなど、経営基盤の強化を図ってまいります。広島市東区のゴルフ練習場「広電ゴルフ」では、女性来場者の比率をさらに高めるとともに、練習場・ゴルフ用品・レッスンの三本の矢で、お客様の「上手くなりたい」とのお気持ちに応え、固定客の増加に努めてまいります。

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