(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のわが国経済は、一時的に新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、経済活動に持ち直しの動きがみられたものの、期の終盤にかけて新変異株の感染拡大により経済活動が再び制限されるなど、依然として厳しい状況のうちに推移いたしました。
このような経済情勢の下におきまして、当社グループでは、2021年度の1年間を対象とした短期計画に基づき、お客さまの安全の確保を大前提としつつ、抜本的な事業構造改革を進める一方、コロナ収束後の反転攻勢を見据えた足元固めに注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。
① 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、9,209億76百万円となり、前連結会計年度末に比べ412億52百万円減少いたしました。これは主に、高石市内連続立体交差化工事(上り線)の竣工に伴う固定資産の圧縮記帳等により有形固定資産が282億5百万円減少したことや、現金及び預金が53億85百万円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、6,602億60百万円となり、前連結会計年度末に比べ433億99百万円減少いたしました。これは主に、有利子負債残高が239億88百万円減少したことや、高石市内連続立体交差化工事(上り線)の竣工等に伴い、流動負債その他が173億51百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、2,607億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億47百万円増加いたしました。これは主に、剰余金の配当により28億33百万円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により40億21百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は26.9%(前連結会計年度末は25.6%)となりました。
② 経営成績
当連結会計年度におきましては、建設業において完成工事高が減少したものの、運輸業における輸送人員の増加や、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用による増収等により、営業収益は2,017億93百万円(前期は営業収益1,908億13百万円)、営業利益は121億90百万円(前期は営業利益55億52百万円)、経常利益は99億31百万円(前期は経常利益18億54百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は40億21百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失18億61百万円)となりました。
なお、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態及び経営成績に影響を及ぼしております。そのため、当連結会計年度における経営成績に関する説明においては、対前期増減率を記載しておりません。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<運輸業>
鉄道事業におきましては、営業面では、南海線及び高野線の最終列車運転時刻の繰上げを実施するなど、コロナ禍による新しい生活様式に応じた輸送体制の見直しを実施いたしました。一方、新たな需要喚起施策及び沿線活性化施策といたしまして、人気キャラクターとのコラボレーションによる車両のラッピングやスタンプラリーを実施したほか、「加太さかな線プロジェクト」の一環として運行している観光列車「めでたいでんしゃ」の4編成目として、地元和歌山市出身のアーティストのプロデュースによる車両の運行を開始いたしました。施設・車両面では、旅客サービスの改善をはかるため、駅トイレのリニューアルを計画的に推進するとともに、南海線新今宮駅のリニューアル工事が完成し供用を開始したほか、高野線に8300系新造車両12両を投入いたしました。このほか、旅客の利便性向上と旅客サービスのデジタル化に向けた実証実験として、Visaのタッチ決済及びデジタル乗車券による駅改札機利用や難波駅においてAIを活用した非接触型ディスプレイによる旅客案内等を実施いたしました。また、昨年5月、高石市内の南海本線・高師浜線連続立体交差化工事の一部が完成し、南海本線上り線の運転を高架に切り替えるなど、運転保安度の向上を進めました。
バス事業におきましては、ワクチン接種会場への送迎バスの運行や、自治体等によるワクチン接種施設として車内を改造した大型バスの提供を実施するなど、コロナ禍によって運休を余儀なくされたバス車両の有効活用をはかりました。また、南海りんかんバス株式会社において、鉄道からの乗継ぎを想定し、Visaのタッチ決済及びデジタル乗車券の実証実験を実施したほか、徳島バス株式会社及び南海バス株式会社において、環境負荷の低減をめざし、水素を燃料として走行する燃料電池バスを導入いたしました。
海運業におきましては、就航から2周年を迎えた「フェリーあい」の記念イベントや、早朝深夜便を限定とした乗用車半額キャンペーンを実施し、利用促進をはかるとともに、本年3月、航路においては日本初となるVisaのタッチ決済の実証実験を開始いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、鉄道事業やバス事業において前期と比べ輸送人員が増加したことや収益認識会計基準等を適用したこともあり、運輸業の営業収益は833億71百万円(前期は営業収益665億66百万円)となり、73億82百万円の営業損失(前期は営業損失135億99百万円)となりました。
提出会社の運輸成績
区分 |
単位 |
当連結会計年度 |
|||
(2021.4~2022.3) |
対前連結会計年度増減率 |
||||
営業日数 |
日 |
365 |
% 0.0 |
||
営業キロ |
キロ |
154.8 |
0.0 |
||
客車走行キロ |
千キロ |
95,192 |
△1.1 |
||
旅客人員 |
定期外 |
千人 |
65,964 |
8.7 |
|
定期 |
千人 |
116,887 |
△0.5 |
||
計 |
千人 |
182,851 |
2.6 |
||
運輸収入 |
旅客収入 |
定期外 |
百万円 |
20,538 |
10.8 |
定期 |
百万円 |
18,495 |
△0.3 |
||
計 |
百万円 |
39,033 |
5.2 |
||
運輸雑収 |
百万円 |
2,669 |
10.2 |
||
収入合計 |
百万円 |
41,703 |
5.5 |
||
乗車効率 |
% |
23.3 |
- |
(注) 乗車効率の算出は 延人キロ/(客車走行キロ×平均定員)によります。
営業成績
業種 |
営業収益 |
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
|
|
百万円 |
百万円 |
鉄道事業 |
48,078 |
45,665 |
軌道事業 |
1,346 |
1,211 |
バス事業 |
17,513 |
16,189 |
海運業 |
1,441 |
1,250 |
貨物運送業 |
16,989 |
3,744 |
車両整備業 |
4,300 |
3,842 |
調整額 |
△6,297 |
△5,336 |
営業収益計 |
83,371 |
66,566 |
<不動産業>
不動産賃貸業におきましては、北大阪トラックターミナルの高度化利用計画推進の一環として、昨年11月、近隣地において大阪府食品流通センターE棟の新築工事に着手いたしました。また、南海本線七道駅前において、店舗付賃貸マンション「サザンクレスト七道シエル」の賃貸を開始するとともに、堺市堺区において、稼働中の賃貸マンションを取得するなど、収益物件の拡大に努めました。このほか、コロナ禍による新しい生活様式に対応するため、南海堺駅ビル及び泉ヶ丘ひろば専門店街において、直営シェアオフィス「Lieffice(リーフィス) By NANKAI」をオープンいたしました。
駅を拠点としたまちづくりにおきましては、なんばエリアにおいて、なんばパークス以南の回遊性向上と都市機能の充実を目的として、ホテルやオフィスビルの建設を主な内容とする「難波中二丁目開発計画」を進めるとともに、文化・エンターテインメントを軸としたまちづくりをめざし、昨年7月、なんばスカイオにおいて、eスポーツ体験型ショールーム「eスタジアムなんば Powered by NANKAI」をオープンいたしました。また、大阪市と協働で進める「なんば駅周辺における空間再編推進事業」の一環として、昨年11月下旬から10日間、歩行者空間拡大の社会実験を実施いたしましたほか、将来的な空間再編を見据え、当該事業の対象エリアに隣接した開発計画の検討に着手いたしました。一方、「恵美須町開発計画」において、若年就業者を中心とする新たな交流拠点をめざしたシェアスタイル企業寮の建築工事を進めました。泉北エリアにおいては、エリアの重要拠点である泉北ニュータウン・泉ヶ丘を次代の沿線中核都市へと成長させることを目的として、「泉ケ丘駅前活性化計画」を始動させるとともに、エリアの活性化につながる官民協働の取組みを進めました。
不動産販売業におきましては、新街区「美加の台グランクラス」の分譲を開始したほか、南海くまとり・つばさが丘等で宅地及び戸建住宅の分譲を進めました。また、当社沿線にあっては三国ヶ丘、沿線外では大阪市福島区や大阪府守口市等において、当社グループの分譲マンションブランド「ヴェリテ」シリーズを展開いたしました。
以上のような諸施策を進めました結果、不動産販売業において事業用物件の売却が増加したこと等もあり、不動産業の営業収益は455億98百万円(前期は営業収益417億77百万円)となりましたが、不動産賃貸業における既存物件の減収等により、営業利益は125億77百万円(前期は営業利益128億78百万円)となりました。
営業成績
業種 |
営業収益 |
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
|
|
百万円 |
百万円 |
不動産賃貸業 |
32,531 |
30,737 |
不動産販売業 |
13,477 |
11,571 |
調整額 |
△409 |
△531 |
営業収益計 |
45,598 |
41,777 |
<流通業>
ショッピングセンターの経営におきましては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府や自治体からの要請等により、施設の休業や飲食店等一部店舗において営業時間の短縮を余儀なくされた期間がありましたが、昨年に引き続き、館内換気の強化やソーシャル・ディスタンスの確保等、感染拡大防止の取組みを徹底し、お客さまに安心してご来店いただける環境づくりに努めました。また、コロナ禍による生活様式の変化に対応するため、「南海アプリ」で注文した商品を指定した飲食店又は駅で受け取ることができるサービスの実証実験を実施いたしました。このほか、本年春にグランドオープン15周年を迎えたなんばパークスにおいて、大規模リニューアルを段階的に進める計画に着手し、第1弾として「食」や「健康」をテーマとする店舗の誘致に努めました。
駅ビジネス事業におきましては、コンビニエンスストア「アンスリー」の一部店舗において、宅配物の受取サービスを開始いたしましたほか、駅で荷物を受け取ることができるよう宅配受取専用ロッカーの設置を進めました。
以上のような諸施策を進めましたが、収益認識会計基準等の適用に伴い、消化仕入に係る収益を純額で認識したことや、コロナ禍の長期化による影響等もあり、流通業の営業収益は219億65百万円(前期は営業収益253億12百万円)となり、営業利益は11億44百万円(前期は営業利益18億83百万円)となりました。
営業成績
業種 |
営業収益 |
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
|
|
百万円 |
百万円 |
ショッピングセンターの経営 |
12,260 |
12,368 |
駅ビジネス事業 |
10,705 |
13,648 |
その他 |
609 |
744 |
調整額 |
△1,608 |
△1,448 |
営業収益計 |
21,965 |
25,312 |
<レジャー・サービス業>
旅行業におきましては、新型コロナウイルスの影響により旅行需要の減退が続く厳しい状況の下、ワクチンの自治体における集団接種や職域接種の運営受託に注力いたしました。
ボートレース施設賃貸業におきましては、インターネットによる投票が好調に推移し、増収を確保いたしました。
ホテル・旅館業におきましては、コロナ禍による厳しい事業環境が続く中、新たな収益源の開拓を進めるため、「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」において、一島を貸切りできるプランや新設したグランピング施設を利用するプラン等、宿泊客のニーズに対応した多様な宿泊商品の販売に注力いたしました。
ビル管理メンテナンス業におきましては、提供するサービスの領域拡大及び品質向上に注力するとともに、複合施設やホテル、公共施設等の新規管理物件の受託と設備工事の受注に努めました。
葬祭事業におきましては、昨年4月、ティアとして関西2店舗目となる家族葬専用ホール「ティア羽曳野」を開業いたしました。
この結果、ビル管理メンテナンス業において設備工事収入が増加したこと等により、レジャー・サービス業の営業収益は382億41百万円(前期は営業収益347億56百万円)となり、営業利益は38億34百万円(前期は営業利益22億85百万円)となりました。
営業成績
業種 |
営業収益 |
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
|
|
百万円 |
百万円 |
旅行業 |
2,368 |
952 |
ホテル・旅館業 |
380 |
434 |
ボートレース施設賃貸業 |
5,873 |
5,635 |
ビル管理メンテナンス業 |
23,757 |
22,346 |
葬祭事業 |
2,758 |
2,652 |
その他 |
4,976 |
4,690 |
調整額 |
△1,872 |
△1,955 |
営業収益計 |
38,241 |
34,756 |
<建設業>
建設業におきましては、民間住宅工事のほか、医療機関、学校施設等の民間非住宅工事や公共工事の受注活動に注力いたしました。
この結果、完成工事高の減少等により、建設業の営業収益は381億21百万円(前期は営業収益454億90百万円)となったものの、利益率の改善等により、営業利益は19億59百万円(前期は営業利益16億99百万円)となりました。
営業成績
業種 |
営業収益 |
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
|
|
百万円 |
百万円 |
建設業 |
38,156 |
45,510 |
調整額 |
△34 |
△19 |
営業収益計 |
38,121 |
45,490 |
<その他の事業>
その他の事業におきましては、営業収益は26億53百万円(前期は営業収益30億27百万円)となり、営業利益は1億76百万円(前期は営業利益2億48百万円)となりました。
営業成績
業種 |
営業収益 |
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度 |
|
|
百万円 |
百万円 |
その他 |
2,663 |
3,041 |
調整額 |
△10 |
△13 |
営業収益計 |
2,653 |
3,027 |
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ48億16百万円減少し、361億1百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は418億79百万円(前期は213億38百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益81億84百万円のほか、減価償却費285億91百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は196億69百万円(前期は332億73百万円の使用)となりました。これは主に、固定資産の取得による支出232億37百万円のほか、工事負担金等受入による収入49億17百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は270億26百万円(前期は358億21百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出391億18百万円のほか、長期借入れによる収入168億20百万円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)の受注及び販売品目につきましては多種多様であり、セグメントごとに金額及び数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績につきましては、「② 経営成績」におけるセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗状況
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、「共創140計画」における経営指標として、「営業利益」及び「純有利子負債残高/EBITDA倍率」をそれぞれ採用しております。
当連結会計年度末における各指標の状況、及び「共創140計画」で掲げる数値目標はそれぞれ以下のとおりであります。
経営指標 |
2021年度 (実績) |
2024年度 (目標) |
営業利益(※1) |
129億円 |
280億円 |
純有利子負債残高/EBITDA(※2)倍率 |
10.7倍 |
7.5倍以下 |
(※1)営業利益+受取配当金
(※2)営業利益+受取配当金+減価償却費
なお、当連結会計年度において、「(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況 ② 経営成績」に記載の各種施策に取り組んだ結果、2021年度経営計画で掲げる各指標の当連結会計年度末における結果は以下のとおりとなりました。
経営指標 |
2021年度 (目標) |
2021年度 (実績) |
営業利益(※3) |
150億円 |
129億円 |
純有利子負債残高 |
4,560億円 |
4,460億円 |
(※3)営業利益+受取配当金
当連結会計年度につきましては、依然として運輸業を中心に新型コロナウイルス感染症の影響が続き、営業利益は未達成となりました。一方で、投資抑制の効果により、純有利子負債残高は計画以上の削減を達成いたしました。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.資金調達の方法及び状況
資金調達につきましては、鉄道事業等における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び金融機関からの借入金など、市場の環境や金利の動向等を総合的に勘案したうえで決定しております。
また、資金調達手法の一つとして複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。
さらに、当社グループの資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、極力グループ内資金を有効活用する仕組みを構築しております。
このほか、大規模自然災害等が発生した場合の対処として、震災対応型コミットメントライン契約を締結しております。
b.資金需要の動向
「南海グループ経営ビジョン2027」達成に向けた10年間(2018年度~2027年度)は、基本的には営業キャッシュ・フローを成長投資に優先配分し、収益力向上を通じた財務体質の強化をめざすこととしておりますが、当連結会計年度は新型コロナウイルス感染拡大を受け、コスト削減を徹底するとともに、安全性・緊急性を判断した上で設備投資の抑制に努めました。なお、当連結会計年度における各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
配当の基本方針は、長期にわたる安定的な経営基盤の確保と財務体質の強化に努めつつ、収益のさらなる向上をはかることにより安定的な配当を実施することとしております(配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご覧下さい。)。なお、内部留保資金は、鉄道事業の安全対策を中心とする設備投資のほか、当社グループの持続的な成長のための投資、財務体質の強化等に充当する考えであります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積り及び予測を行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的だと考えられるさまざまな要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社グループで重要であると考える会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定には、以下のようなものがあります。
a.固定資産の減損損失
当社グループは、管理会計上の区分を基礎に、事業ごと又は物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。回収可能価額は、資産グループの事業計画に基づく将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載しております。)。これらの前提条件は長期的な見積りに基づくため、将来の当該資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
b.退職給付に係る資産・負債
当社グループは、退職給付債務及び費用について、年金資産の長期期待運用収益率や割引率等数理計算上で設定される仮定に基づいて算出しております(当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。)。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって費用化されます。使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、実際の結果との差異又は仮定自体の変更が生じた場合には、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
c.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
d.完成工事高及び完成工事原価
工事契約において、一定の期間にわたり充足される履行義務については、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づく収益及び費用を計上しております。計上にあたっては取引価格、工事原価総額及び当連結会計年度末における履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積っております。
取引価格については、当初契約金額及び追加変更契約金額に基づいておりますが、過去に実績のある一部の工事については、自社で合理的な見積りを実施しております。工事原価総額については、図面や仕様書に基づき、詳細な積み上げ計算を行い、状況の変化に応じて見直しを実施しております。
また、当連結会計年度末における履行義務の充足に係る進捗度についてはインプット法を採用し、当連結会計年度末までに発生した工事原価累計額が予想される工事原価総額に占める割合をもって決算日における進捗度とする方法を採用しております。
この見積りが、建設資材及び労務外注の調達遅れや価格高騰、市況の変動等も含め、工事着工後の状況の変化により大きく変動した場合は、当社グループの損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
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