文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
当社グループは、経営理念である「広く未来をみつめ 人と自然を大切にし 良質なサービスを通じて 豊かな社会づくりに貢献します」のもと、高度化・多様化・広範化しているグローバルサプライチェーンにおいて、お客様・株主・従業員などあらゆるステークホルダーから、最も選ばれるソリューションプロバイダとなることを経営ビジョンとして掲げ、さまざまな『協創』を通じた課題の解決と『価値』の創出に取り組み、持続的な成長を実現していく。なお、経営理念、経営ビジョンの具現化に向け、当社グループのあり方と進むべき道を「HB Way」として体系化している。
(2) 中長期的な経営戦略について
当社グループは、2022年度から2024年度(自2022年4月1日 至2025年3月31日)を対象とした中期経営計画を策定・公表し、企業価値の向上をめざしている。
当社グループを取り巻く環境は、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大による影響は回復傾向にあるものの、
変異株による感染症再拡大や、米中対立・ロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスク、世界的なインフレ率
上昇に加え、従来からの気候変動、自然災害等の影響により、依然として不透明な状況が続いている。
このような状況下、当社グループにおいては、日本国内の少子高齢化を背景とした労働力不足、新型コロナウイ
ルス感染症の拡大、地政学的リスクの顕在化、気候変動、業界の垣根を超えた競争激化等の直面する経営環境の変
化に対し、グローバルサプライチェーンの維持・強靭化のため、IoT(*1)・AI(人工知能)(*2)・ロボティクス(*3)、
DX(デジタル・トランスフォーメーション)によるイノベーションで課題解決を図り、持続可能な社会の実現に取り
組 んでいくことが求められている。
(*1) IoTとは、モノのインターネット(Internet of Things)の略称であり、身の回りのものがインターネットにつながる仕組みのこ
とを意味する。
(*2) AIとは、人工知能(Artificial Intelligence)の略称である。
(*3) ロボティクスとは、ロボットの設計・製作・制御を行う「ロボット工学」を意味する。
[基本方針]
当社グループは、ブランドスローガン「未知に挑む。」とビジネスコンセプト「LOGISTEED」を掲げ、「HB
Way」と「LOGISTEED」の一体化で、経済価値のみならず社会価値・環境価値を創り上げる。
2022年度から2024年度(自2022年4月1日 至2025年3月31日)を対象とした中期経営計画(LOGISTEED2024)では、
事業の盤石化とグローバル展開を進め、めざすべき「アジア圏3PLリーディングカンパニー」に向けた重点施策を
「DX・LT(Logistics Technology)・現場力でグローバルなサプライチェーン戦略パートナーへ」をスローガンに実
行する。
そして、その先にある「経営ビジョン(グローバルサプライチェーンにおいて最も選ばれるソリューションプロバ
イダ)」をめざす。
[重点施策]
スローガン:DX・LT・現場力でグローバルなサプライチェーン戦略パートナーへ
① 海外事業の強化・拡大(アジア圏3PLリーディングカンパニーへ) <主に国際物流>
ⅰ.重点エリアへの投資
・北米:シェアードミルクラン(*4)・幹線輸送ビジネスの拡大、工場向け一気通貫ロジスティクスの提供
・欧州:インターモーダル(*5)事業の広域化、欧州成長エリア・市場での事業拡大
・中国:自動化・省人化による安全・品質・生産性の更なる向上、高付加価値物流サービスの強化
・アジア:インド・タイ・インドネシア・マレーシア他での投資・事業拡大、コールドチェーンの展開、
地域・域内ネットワークの強化
ⅱ.M&A (フォワーディング、輸送事業)
(*4) ミルクランとは、1台のトラックで複数サプライヤーの拠点を巡回して生産部品等の集荷を行い、生産工場に一括納品する輸
送方式を意味する。
(*5) インターモーダルとは、トラック・船・鉄道等の異なる輸送モード(輸送機関)を複数組み合わせた複合一貫輸送を意味する。
幹線輸送部分に鉄道や船を組み入れることで環境負荷の低減が期待できる。
② 新たな付加価値による事業領域の拡張(LOGISTEEDの加速) <全社共通>
ⅰ.サプライチェーンの課題解決、DX(*6)による可視化と最適化の提案
ⅱ.製造と物流の境界領域における新サービスの拡大、VAS(Value Added Services)(*7)の展開
(*6) 当社は、経済産業省が主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」において、「DX銘柄2022」に選定され
ている。
(*7) VASとは、顧客への調達支援や製造支援を含む高付加価値サービスを意味する。
③ スマートロジスティクス(*8)の進化 <全社共通>
ⅰ.システムと機械が連動した自動化・省力化、DXによる労働環境の向上
ⅱ.三温度帯倉庫(*9)や危険物倉庫などの倉庫機能強化・充実化
ⅲ.SSCV(輸送デジタルプラットフォーム)(*10)の活用による輸送事業強靭化とドライバー不足(2024年
問題(*11))・脱炭素化への対応
(*8) スマートロジスティクスとは、お客様の多様な物流ニーズにワンストップでお応えし、ロジスティクスのスマート化を実現
するソリューションを意味する。
(*9) 三温度帯倉庫とは、常温・冷蔵・冷凍機能を備えた倉庫を意味する。
(*10)SSCVとは、「Smart & Safety Connected Vehicle」の略であり、「持続可能な輸送サービス」と「事故ゼロ社会の実現」をめ
ざして開発・提供する輸送デジタルプラットフォームであり、「SSCV-Safety」(安全運行管理)、「SSCV-Smart」(受発注管
理、配車管理、運行管理)及び「SSCV-Vehicle」(車両管理の最適化、故障予兆・予防整備)の3つのソリューションで構成さ
れている。
(*11)2024年問題とは、働き方改革関連法によって2024年4月に自動車運転業務に対して、時間外労働時間の年間960時間の上限規制
が適用されることに伴い、発生するドライバー不足を含む諸問題を意味する。
④ ESG経営(*12)の基盤強化 <全社共通>
ⅰ.災害対策・リスクマネジメントの遂行
ⅱ.脱炭素活動の加速
ⅲ.高度かつ持続的な安全・品質活動
ⅳ.VC(Value Change & Creation)活動(*13)の継続・拡大
ⅴ.DX・LT・グローバル展開のための人財強化
(*12)ESG経営とは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向け、環境・社会・ガバナンスと企業倫理を意識した行動を意味する。
(*13)VC(Value change & Creation)活動とは、会社・組織・従業員間で方針の目的・プロセス・ゴールの情報共有を図り、1人ひとり
が「わたくしごと」として改善し続ける組織となるための取り組みをいう。
[参考]注力分野、SDGsの位置づけ
中期経営計画(LOGISTEED2024)の策定にあたり、サステナビリティをめぐる課題への対応は、重要な経営
課題であるとの認識のもと、重要課題(マテリアリティ)の見直しを行った。また、重要課題に事業活動を
通じて対応すべく、3つの注力分野と注力分野を支える基盤に分類している。注力分野におけるSDGs(持続
可能な開発目標)の位置づけは以下の通りである。
なお、今後、HTSK株式会社(注)による当社の普通株式(以下「当社株式」という。)に対する公開買付 け(以
下「本公開買付け」という。)が予定されている。本公開買付け及びその後に予定される一連の手続きを経て、
同社は当社株式全てを取得することを企図している。これにより、当社株式は上場廃止となる予定である。本
取引後、当社は新しいパートナーとともに、これまで以上の意思決定のスピードアップや、投資資金の獲得、
また外部知見の導入を行い、当社の競争力と収益力を伸張させ、新成長により企業価値の向上をめざす。
(注) HTSK株式会社は、当社の株券等を取得及び所有し、本公開買付け成立後に、当社の事業活動を支配及び管理
することを主たる事業として2022年4月21日に設立された株式会社であり、その発行済株式の全てを2022年
4月21日に設立された株式会社であるHTSKホールディングス株式会社(以下「公開買付者親会社」という。)
が所有している。また、米国デラウェア州設立の投資顧問会社であるKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.
によって間接的に保有・運営されている、カナダ国オンタリオ州法に基づき2022年4月25日に設立されたリ
ミテッド・パートナーシップであるHTSK Investment L.P.が、公開買付者親会社の発行済株式の全てを所有
している。
[参考]当社グループがめざす姿
[参考]気候変動への取り組み:TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に基づく情報開示
気候変動への対応方針
当社グループの経営理念は「広く未来をみつめ 人と自然を大切にし 良質なサービスを通じて 豊かな社会
づ
くりに貢献します」であり、気候変動対応についても、経営の最重要課題と捉えている。当社グループは、
国際社会の共通目標であるSDGs、パリ協定及び日本政府目標等、国の内外で求められるCO₂排出量削減の取り
組みの重要性を深く認識している。そのため、TCFD提言への賛同を2021年9月に表明するとともに、その提
言内容に基づき、気候変動対応を推進している。
■ガバナンス
取締役会は、気候変動への取り組みの最高責任者である執行役社長を通じて、当社グループ経営の最重要事項
である経営戦略、事業計画等に含まれる気候変動への取り組みについて指導・監督を行っている。また、CO₂排
出量削減のための目標設定、省エネ投資等の具体的な気候変動対応の施策、予算の配分等の決定を監督してい
る。
担当執行役は、気候変動に関する経営課題への取り組みの進捗状況について、年1回または必要に応じて取締
役会へ報告している。
本社経営戦略本部サステナビリティ推進部は、サステナビリティ戦略運営の最高責任者である執行役専務(経営
戦略本部長)の監督のもとに環境経営全般の実務を統括している。当該執行役専務(経営戦略本部長)を含む当社
グループの各環境責任者で構成される環境推進会議を半期に1回の頻度で開催し、エネルギー使用量、CO₂排出
量実績及び目標の達成状況等の気候変動対応に関する施策の達成状況の確認、必要な是正策等の決定、今後の
施策案の議論を行っている。環境推進会議での決定事項を踏まえ、当該執行役専務(経営戦略本部長)承認のもと
に、半期に1回または必要に応じて、気候変動対応施策の取り組み状況、今後の戦略案等を執行役会に報告また
は 提案している。
■リスク管理
当社グループでは、識別された全ての経営リスクを踏まえ、マテリアリティを選定している。本社経営戦略
本部サステナビリティ推進部において、マテリアリティの一つである気候変動対応に適合するリスクと機会を
選定し、この中で財務影響が大きい項目を重大なリスクと機会として特定している。特定されたリスクと機会
は、同部を責任部署として、執行役会の承認と取締役会の監督のもと、その対応方法を気候変動対応関連の各
計画に織り込むとともに、その実施を管理している。
■指標と目標
・中長期CO₂排出量削減目標
当社グループでは、気候変動のリスクと機会に対応するため、2021年7月にCO₂排出量削減の中長期
目標を見直している。
*1 スコープの定義
スコープ1: 自社施設、車両等からエネルギー(燃料等)の使用に伴い、直接排出したCO₂(例:自社の車両から排出されるCO₂)
スコープ2: 自社施設でのエネルギーの使用に伴い排出したCO₂のうち、排出場所が他者施設のCO₂(例:電気の使用により発
電所から排出されたCO₂)
スコープ3: スコープ1・2以外のサプライチェーンによる間接排出(例:外注委託輸送や従業員の出張等、全15カテゴリ)
*2 カーボンネットゼロ:温室効果ガスのひとつである二酸化炭素(CO₂)の排出量から、吸収量・除去量を差し引いた合計をゼロにす
ること。
*1 スコープ1及びスコープ2の合計 対象範囲:日立物流、国内グループ会社
*2 提出日時点
*3 2013年度比
*4 中計期間における投資額及び費用額の合計規模
*5 2030年度までの平均削減率
■戦略
当社グループでは、中長期の事業活動に影響を与えると想定される気候関連リスク・機会を、シナリオ分析を
活用して特定・評価するとともに、レジリエンスの評価及び対応策の検討を行っている。
(1)シナリオ分析プロセス
当社グループでは、下記の手順に従ってシナリオ分析を実施している。パリ協定の目標が達成されるシナ
リオ(2℃未満シナリオ)、及び新たな政策は実行されず公表済みの各国政策が達成されることを前提とした
シナリオ(4℃シナリオ)を設定し、キーパラメータの推移等の情報をもとに、特定した気候関連リスク・機
会に関する財務影響を評価している。
* 参照シナリオ:
2℃未満シナリオ:IEA Sustainable Development Scenario/IPCC RCP2.6
4℃シナリオ:IEA Stated Policies Scenario/IPCC RCP8.5
(2)気候関連リスク・機会と財務影響評価
当社にとって重要な気候関連リスク・機会として特定した9種類の項目について、シナリオ分析を用いて
潜在的な財務影響を定量的・定性的に評価した。また、現状の対応策のレジリエンス及び未来の施策につ
いて検討した。当社グループでは、特に財務影響の大きいリスクの軽減及び機会獲得に向けて対応策
を検討・実行しており、十分なレジリエンスを有していることを確認している。
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