課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境

当社グループは、「あるべき姿」である「安全とサービスを基盤として九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」の実現に向けて、「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」という「2030年長期ビジョン」を掲げています。

当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の発生を機に大きく変化しています。また、新型コロナウイルス感染症の感染収束時期など、将来における経営環境の変化の不確実性も一層高まっています。

そのようななかにおいても、「2030年長期ビジョン」そして「あるべき姿」を実現するために、2030年までに想定される主要な外部環境変化と、その変化に影響を受ける人々の豊かさに関する価値観の変化に着目するとともに、極端な変化を想定した未来シナリオも検討したうえで、「2030年長期ビジョン実現方針」と2022年度から2024年度の3カ年における方針及び重点戦略等を定めた「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」を策定しました。

「2030年長期ビジョン実現方針」では、当社グループの事業エリアの中心である九州の持続的な発展に貢献することに軸足をおく2つの方針を定めました。1つ目は、人々の豊かさの価値観が変化するなかにおいても九州の持続的な発展に貢献するために、これまで当社グループが主にターミナル駅周辺で進めてきたまちづくりを進化させ、「価値観の変化を捉えた“豊かな生活を実現する”まちづくり」を進めていくことです。九州を大きく2つのエリアに分けて捉え、ターミナル駅周辺・沿線においては、複合的な価値を提供し、「住みたい・働きたい・訪れたい」まちの構築を目指すとともに、地方においては、自治体や他交通モードとの連携、地域資源の再発掘と活用により交流人口の拡大を目指します。

2つ目は、当社グループの強みを活かして、事業ポートフォリオの強化及び拡大を進める「九州の持続的な発展に貢献する領域の拡大」を図り、環境、地域経済、地域社会へと当社グループの貢献領域を拡大していくことです。特に脱炭素社会の実現は、重要テーマの1つと考えており、2050年のCO2排出量実質ゼロに向けて、CO2排出量を削減する「守り」の視点だけではなく、新たな価値を創出する「攻め」の取り組みも推進してまいります。

さらに、ESGの取り組みについては、2030年長期ビジョンの実現に向けて、マテリアリティを見直し、それに付随する非財務KPIを設定しました。今後は、非財務KPIと役員報酬との連動も検討し、実効性を担保してまいります。

 

 

≪経営計画の体系≫

 

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(2)対処すべき課題

2023年3月期よりスタートした3カ年の「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」では、当社グループが早期に成長軌道への復帰を図る重要なステージとして位置づけ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況下において取り組んできた「事業構造改革の完遂」、そして前述の2030年長期ビジョン実現方針に基づいた「豊かなまちづくりモデルの創造」及び「新たな貢献領域での事業展開」という3つの重点戦略を推進してまいります。さらに、長期ビジョン実現に向けた重点戦略の実行を支える「戦略実行・実現を担う人づくり」、「グループ一体で戦略を推進する基盤づくり」にも取り組んでまいります。

 

1.事業構造改革の完遂

前中期経営計画より進めてきた事業構造改革は喫緊の課題と認識しており、長期ビジョン実現に向けた重点戦略をより強力に推進するためにも、鉄道事業、ホテル事業をはじめとした主力事業の構造改革を中期経営計画期間に完遂させます。

鉄道事業においては、取り組み中のBPR(Business Process Re-engineering)の完遂と更なるコスト削減により、持続的で安定した黒字体質の実現を目指します。また、ホテル事業においては、ブランド戦略再構築や、人材育成・共同調達推進等による総合力強化を図り、既存ホテルの競争力向上を目指します。あわせて、流通・外食事業におけるブランド/店舗の競争力向上、建設事業におけるグループ内から外への主戦場の転換を推進してまいります。

 

2.豊かなまちづくりモデルの創造

九州内各エリアにおける成長機会を認識したうえで、オフィス、商業、住宅等の開発を進めるとともに、中期経営計画期間では、西九州エリア及び福岡エリアでのまちづくりに注力してまいります。

西九州エリアにおいては、2022年9月に開業する西九州新幹線を起爆剤としてまちづくりを推進します。具体的には、新D&S列車「ふたつ星4047」の運行や、西九州エリアへのMaaS関連サービスの拡大、「長崎マリオットホテル」も含む新長崎駅ビル開発、嬉野旅館開発など、自治体、他企業など地域と一体になって西九州エリアの活性化に取り組んでまいります。

福岡エリアでは、福岡市地下鉄七隈線延伸による博多駅のターミナル機能向上を好機と捉え、「福岡東総合庁舎敷地有効活用事業」や「簀子小学校跡地活用事業」をはじめとした各種開発や、JR博多シティにおいて多様な消費・体験コンテンツの提供を行うほか、2028年中の開業を目指す「博多駅空中都市プロジェクト」の準備を加速してまいります。また、鹿児島本線における新駅整備やMaaS関連サービスの浸透により、シームレスな移動サービスの提供にも取り組んでまいります。さらに、福岡県大野城市における複合開発や折尾駅の高架下における商業開発など、ライフスタイルの多様化に対応した沿線開発も進めてまいります。

MaaSについては、トヨタ自動車株式会社及びトヨタファイナンシャルサービス株式会社が開発・提供するマルチモーダルモビリティサービス「my route」を通じた他の交通事業者との連携を九州一円へ展開してまいります。さらに、日田彦山線のBRTによる復旧を通して、持続可能なモビリティサービスのモデル構築も検討してまいります。

 

3.新たな貢献領域での事業展開

当社グループの主要事業はBtoC事業を中心としており、人口動態の影響を受けやすい特性があります。人口動態の影響を受けにくいBtoB事業及びBtoG事業を強化することで、九州への貢献範囲の拡大及び持続性の向上を目指します。

BtoB事業においては、M&Aの加速、事業展開エリア拡大、業務提携を通した事業拡大等により、BtoC事業に並ぶグループの柱へと成長を目指します。

BtoG事業については、多角化戦略で培った当社グループ全体の強みを活かして、鉄道に限らない都市インフラを支える公共工事など、競争優位性を持つことができる領域の探索と事業拡大を進めてまいります。

 

4.戦略実行・実現を担う人づくり

当社グループの経営戦略・ビジネスモデルや、労働市場が変化するなかで、「採用・配置」「育成」「評価」等の様々な場面で人事制度を改革し、戦略の担い手となる多様な社員の“個”の力の最大化と当社グループの成長を実現してまいります。

具体的には、「採用・配置」については、戦略に合致した人材ポートフォリオの実現に向けて、中途採用の強化、女性活躍推進などを行います。「育成」については、多様なキャリア実現と人材の最大活用に向けて、キャリアパスの見える化や専門性向上及びリスキリング支援などを進めます。また、「評価」については、従業員のエンゲージメント向上に向けて、人事賃金制度の見直しや健康経営の推進などを行います。

 

5.グループ一体で戦略を推進する基盤づくり

戦略を推進する基盤づくりとして、BtoBビジネス領域の位置づけ明確化と、機能子会社の成長促進を目的としたセグメント区分の変更を行います。また、グループ横断でのBtoGビジネスの強化及び持続的なモビリティサービスの構築を目的とした地域戦略部の新設を実施いたします。

さらに、当社グループ全体でのデータマーケティング加速を目的とした顧客管理基盤の整備と事業ポートフォリオの柔軟性強化にも取り組んでまいります。

また、DX推進の分野では、デジタルを活用した各種施策を推進するために、デジタル推進体制の構築とデジタル基盤の整備を進めてまいります。具体的には、デジタル推進体制の構築として、当社グループ全体のデジタル推進の司令塔としてデジタルCoE(Center of Excellence)を設置し、グループ全体のDX戦略の立案や高度開発、デジタル教育支援、基盤整備を行うとともに、デジタル人材の育成を推進します。また、デジタル基盤の整備として、デジタルワークプレイスの拡大、グループデータ顧客管理基盤の整備、クラウド・ネットワーク・セキュリティの強化を進めます。

 

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