業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度(2020年4月1日から2021年3月31日まで)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症拡大による2度の緊急事態宣言発令や、宣言解除後も外出を控える動き等による経済活動への影響から、先行きの不透明な状況が続きました。
 海運業界を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、外航海運では、主要貨物であるロシア炭の国内需要が減少したことなどにより輸送量が減少し、また、内航海運では、貨物の荷動きは下期より回復基調となりましたが、旅客フェリーにおいては年間を通じて利用者の低迷が続くなど、内外航ともに厳しい経営環境が続きました。
 こうした情勢下、当社グループの当連結会計年度の売上高は、コロナ禍による運賃市況の悪化や輸送量の減少に加え、内航部門での運送契約終了による運航隻数の減少や燃料油価格の下落に伴う燃料調整金収入の減少などにより、前期に比べて16.4%減収の370億59百万円となりました。営業利益は、燃料費や借船料は減少したものの、大幅な減収の影響を受け、前期に比べて78.9%減益の4億4百万円となり、経常利益は前期に比べて90.2%減益の1億87百万円となりました。
 また、船隊整備の一環として外航船、内航船およびオフショア支援船の各々1隻を売船し、固定資産売却益の計上などの一方、外航の高コスト船の契約解除による用船契約解約金の計上に加え、内航船で減損損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損益は前期13億70百万円の利益に対して1億12百万円の損失となりました

 

事業のセグメント別業績概況は次のとおりです。

 

<セグメント別 売上高/営業損益>

                                        (単位:百万円)

 

 

2021年3月

2020年3月

増減額

増減率

上期

下期

近海部門

売上高

9,494

4,320

5,174

11,935

△2,441

△20.5%

営業損益

△291

△89

△201

△350

59

内航部門

売上高

26,140

13,076

13,063

30,339

△4,199

△13.8%

営業損益

1,142

553

588

2,085

△943

△45.2%

OSV部門(※)

売上高

1,421

755

665

2,059

△637

△31.0%

営業損益

△448

△229

△218

177

△625

その他

売上高

3

1

1

3

0

15.5%

営業損益

1

0

0

0

0

107.1%

合計

売上高

37,059

18,154

18,905

44,337

△7,277

△16.4%

営業損益

404

235

168

1,913

△1,508

△78.9%

 

(※)OSVとは「Offshore Support Vessel(オフショア支援船)」の略称です。

 

「近海部門」

鋼材輸送では、上期においては鉄鋼メーカーの減産の影響もあり、鉄鋼製品の出荷量が減少しましたが、下期においては需要が大幅に回復し、輸送量は前期並みとなりました。
 木材輸送では、輸入合板の輸送量は需要低迷により、前期を下回ったものの、再生可能エネルギーとして需要が増加しているバイオマス発電用燃料(ウッドペレットやPKS)の輸送量は前期を大幅に上回りました。

 バルク輸送では、主要貨物であるロシア炭の国内需要が減少したことなどにより輸送量は前期を大幅に下回りました。

 

この結果、同部門全体ではコロナ禍における貨物輸送量の落ち込みや航海数の減少などから、前期を下回る輸送量となり、売上高は前期に比べて20.5%減収の94億94百万円となりました。営業損益は、上期の市況低迷などの影響はありましたが、新造船の竣工を市況回復に合わせて延期するなど、荷動きに伴う船隊規模の調整を進めたことに加え、借船料や燃料費などの費用の減少もあり、前期3億50百万円の損失に対して当期は2億91百万円の損失にとどまりました。

 

「内航部門」

定期船輸送では、製紙関連や自動車関連の大宗貨物が減少するなか、食品関連貨物などの取り込みを図りましたが、運送契約終了による運航隻数の減少などもあり、輸送量は前期を下回りました。
 フェリー輸送では、コロナ禍のなか、緊急事態宣言発令の影響のみならず、宣言解除後も不要不急の外出を控える動きがあることなどから、旅客と乗用車の輸送量が前期を大幅に下回りました。一方、トラックの輸送量については建設用資材や外食産業向けの業務用食品などの荷動きは低下したものの、巣ごもり需要による個人向けの食料品や宅配貨物などの荷動きが増加したことなどにより、輸送量は前期から微減にとどまりました。
 不定期船輸送では、貨物輸送需要の減退により、石灰石・石炭の各専用船や一般貨物船ともに稼働は前期を下回りました。
 この結果、同部門全体ではコロナ禍の影響が大きく、また運航隻数の減少もあり、前期を下回る輸送量となり、売上高は前期に比べて13.8%減収の261億40百万円となりました。営業損益については、減収の影響が大きく、運航隻数の減少による借船料や燃料費など費用の減少はありましたが、前期に比べて45.2%減益の11億42百万円の利益となりました。

 

「OSV部門」

OSV部門は、連結子会社である株式会社オフショア・オペレーションが事業遂行を担っており、同社は主にCCS(二酸化炭素の回収・海底貯蔵)関連の調査業務及び海洋資源開発の分野におけるサプライ業務等に加え、サルベージ業務などに従事しております。
 当期は海洋調査業務については増加したものの、サルベージ業務については前期より大きく減少したことなどで稼働率が大幅に低下したことなどにより、同部門の売上高は前期から31.0%減収の14億21百万円となりました。営業損益は、稼働率の低下による減収の影響を賄うことができず、前期1億77百万円の利益から4億48百万円の損失となりました。
 

 また、財政状態の状況については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容」に記載しております。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動及び財務活動による収入が、投資活動による支出を上回ったため、当連結会計年度期首に比べ22億円増加し、123億66百万円となりました。

   (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の税金等調整前当期純利益が20億95百万円であったのに対し、当連結会計年度は2億29百万円の損失となったほか、仕入債務の減少などにより、前連結会計年度に比べ27億53百万円減少し、24億80百万円の収入となりました。

   (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶や投資有価証券の売却などを行った一方、船舶の取得などにより、前連結会計年度の1百万円の収入に対し、30億49百万円の支出となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払いなどを行った一方、船舶設備資金および事業を安全かつ安定的に行っていくための運転資金を調達した結果、前連結会計年度の29億54百万円の支出に対し、27億84百万円の収入となりました。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

   当社グループは、海運業を主たる事業としているため、生産及び受注の状況は記載しておりません。また、販
   売の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要」において記載しております。
 
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
  ① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
    経営成績の分析
   「売上高」

   当社グループの当連結会計年度における売上高は、前期に比べて72億77百万円(16.4%)減少し、370億59百万円
  となりました。
   減収の主な要因は、近海部門においてコロナ禍における貨物輸送量の落ち込みや航海数の減少などから、前期
  を下回る輸送量となり、同部門の売上高は、前期に比べて24億41百万円(20.5%)減少し、94億94百万円となり
  ました。

  内航部門においては、コロナ禍の影響が大きく、また運航隻数の減少もあり、前期を下回る輸送量となったこ
  となどにより、同部門の売上高は、前期に比べて41億99百万円(13.8%)減少し、261億40百万円となりました。
   OSV部門においては、前年より稼働率が大幅に低下したことなどにより、同部門の売上高は、前期に比べて6億
  37百万円(31.0%)減少し、14億21百万円となりました。
   各報告セグメントの連結売上高に占める割合は、近海部門が25.6%、内航部門が70.5%、OSV部門が3.8%、そ
  の他が0.0%となりました。
   
  「営業利益」
    当社グループの当連結会計年度における営業利益は、前期に比べて15億8百万円(78.9%)減少し4億4百万
  円となりました。

  売上原価は前期に比べて55億56百万円(14.6%)減少し、324億92百万円となり、販売費及び一般管理費も、前
  期に比べ2億12百万円(4.9%)減少し、41億62百万円となりましたが、上記のとおり売上高が前期に比べて72億
  77百万円(16.4%)減収になったことで減益となりました。
   各部門における売上原価の主な減少要因は、近海部門では荷動きに伴う船隊規模の調整を進めたことに加え、
  借船料や燃料費が減少したことなどによるもので、内航部門では運航隻数の減少による借船料や燃料費が減少し
  たことなどによるものです。

 
  「経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益」
    当社グループの当連結会計年度における経常利益は、前期に比べて17億19百万円(90.2%)減少し、1億87百万
  円となりました。
   親会社株主に帰属する当期純利益は、船隊整備の一環として外航船、内航船およびオフショア支援船の各々1
  隻を売船したことで4億55百万円の特別利益を計上した一方で、内航船で減損損失として7億27百万円と、外航
  の高コスト船の契約解除をしたことによる用船契約解約金3億76百万円を特別損失として計上し、法人税等を控
  除した結果、1億12百万円の損失となりました。

 

    財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ16億40百万円増加489億36百万円となりました。
流動資産は、海運業未収金を主とする受取手形及び営業未収入金や関係会社への短期貸付金等の減少があったものの、現金及び預金の増加により14億44百万円増加189億48百万円となりました。固定資産は、船舶の売船や減価償却による減少があったものの、船舶建造に係る建設仮勘定の増加により、1億95百万円増加299億87百万円となりました。

 

負債は、前連結会計年度末に比べ20億21百万円増加214億99百万円となりました。
流動負債は、海運業未払金を主とする支払手形や未払法人税等の減少があったものの、短期借入金の増加により、10億89百万円増加91億46百万円となりました。固定負債は、主に長期借入金の増加により、9億31百万円増加し123億52百万円となりました。

 

純資産は、配当金の支払いに加え、親会社株主に帰属する当期純損失による利益剰余金の減少により、前連結 会計年度末に比べ3億81百万円減少274億36百万円となりました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。

 

 

2019年3月

2020年3月

2021年3月

自己資本比率(%)

53.2

56.2

53.9

時価ベースの自己資本比率(%)

19.7

15.6

16.4

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

3.4

2.3

6.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

32.7

56.8

32.3

 

 

 自己資本比率                       : 自己資本/総資産

 時価ベースの自己資本比率           : 株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数)/総資産

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率 : 有利子負債/営業キャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ   : 営業キャッシュ・フロー/利払い

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を図るため、資本コストを意識した経営と財務体質の安定を基本方針とし、経営資源の配分及び配当政策に基づいた株主還元を行っております。

当社グループにおける運転資金需要としては、運航費・船費・借船料等の海運業費用と一般管理費等がありますが、その資金は「営業活動によるキャッシュ・フロー」により確保しております。また、設備投資の需要としては、船舶等の建造・取得がありますが、投資額の一部資金を金融機関からの長期借入により確保しております。なお、グループ内の資金管理は、当社において一元化しており、自己資金と外部借入をバランス良く組み合わせることにより、資本効率の向上に努めております。

新型コロナウイルス感染症の流行拡大に対しては、事業を安全かつ安定的に行っていくための備えとして、当社は複数の金融機関との間で当座貸越契約を締結しており、資金の流動性に留意しつつ、機動的な資金調達を行うことで、経営の安定を図っております。

 

 
  ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得