課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「中期経営計画2022ローリングプラン」において、2023年5月期終了時点でのありたい姿を「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」として位置づけしました。

 


 

「根元」とは、当社の事業の根幹である、20年以上の実績がある既存事業(コンタクトセンター・BPOサービス)のことを表現しており、「新芽」とはビジネスの次世代化に向けた新規事業(Omnia LINK外販等)のことを表現しております。「根元」は更に深く、「新芽」は更なる広がりを持って、両面で「健康」に成長し続けていくこと、これが当社の経営ビジョンです。

 

また、この経営ビジョンを達成するために以下の「5つの取組方針」を定めております。

 

  i.  ビジネスの継続的価値向上(根元)
コンタクトセンター・BPOにおける、顧客業界ごとの営業方針の策定、顧客ポートフォリオの改善、既存顧客に向けた領域拡大提案等を行ないます。

 ii.  ビジネスの次世代化(新芽)
Omnia LINK外販強化や、コンタクトセンター・BPOにおけるデジタル活用による生産性の向上、顧客業界を理解し、コンタクトセンター・BPOの延長にとどまらない新たな事業展開の検討などを行ないます。

iii.  事業基盤の強化
ビジネスを支える、コーポレート基盤の強化を行ないます。

 iv.  ダイバーシティ&インクルージョン
女性活躍推進、障がい者雇用、外国人採用、若年層の育成などを通じて、多様性のある会社を目指します。

  v.  ESG経営の推進
SDGsの推進、コーポレートガバナンスの強化、地域貢献等を積極的に実行します。

 

(2)経営戦略

当社の成長戦略は、経営ビジョンに「根元から新芽まで」とあるように、コンタクトセンター・BPOサービスとOmnia LINKを始めとするシステムソリューションの販売を両面で成長させることにあります。その成長の在り方として、コンタクトセンター・BPOサービスは事業規模及び売上高の成長、システムソリューション販売は利益額・利益率の成長のドライバとして位置づけております。

コンタクトセンター・BPOにおいては、重点戦略グループ(金融業界・小売流通業界・ライフライン業界・情報通信業界)を設定し、重点戦略グループにおける顧客の新規獲得や、取引開始済の顧客の深耕等を通じて、事業規模及び売上高の成長を牽引する方針です。

システムソリューション販売においては、Omnia LINKの外販拡大によるユーザー数の拡大、音声認識などのオプション販売の拡大によるユーザー当たりの売上高の拡大、また、オフィス向けのOmnia LINKの販売開始によるターゲットユーザーの拡大の他、新たなソリューション開発を行ないます。新たなソリューション開発として、現在は「CXプラットフォーム」ならびに、滋賀大学との共同で「声の印象評価システム」の研究開発を行なっております。CXプラットフォームは、保険や不動産契約等、本人確認を伴うために非対面化ができていない接客をオンラインで完結させるための顧客対応システムです。滋賀大学との研究開発は、Qua-cleですでに実現している電話応対品質の自動評価をさらに高度化するものです。

システムソリューション販売は、コンタクトセンター・BPOサービスと比較し、人件費などをはじめとした必ず発生する変動コストが少なく、販売数が増加することで固定費を回収し、利益が逓増する収益モデルとなっております。これらの取り組みを通じて、システムソリューション販売における売上高を拡大させるとともに、全社利益への貢献を図ります。

なお、上記の当社の今後の成長戦略を図示すると、以下のようなイメージとなります。


(3)目標とする経営指標

当社は堅実で持続的な成長の実現を通じて新たな事業創出を図り、豊かな社会づくりへの貢献を目指しています。当社が経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標は売上高成長率、営業利益成長率です。

 

(4)経営環境

「コールセンターサービス/コンタクトセンターソリューション市場の調査(2021年)」(㈱矢野総合研究所・2021年11月2日発表)によると、2020年度の広義のテレマーケティング市場規模(注1)は、前年度比5.2%増の1兆421億円と推計されております。同市場は、同研究所によると今後についても堅調に推移することが見込まれております。

 

(注1)㈱矢野総合研究所において、「テレマーケティング売上高及びその他関連サービスの合算」と定義。

 

その背景として、企業が昨今の労働力不足、人材不足を背景とした働き方改革やDX推進による自社内人的リソースの再構築を加速化させており、ノンコア業務をアウトソースする機運が高まっている点があげられ、また、改正労働契約法や改正労働者派遣法の2018年4月の適用開始に合わせて、自社雇用のパートや派遣スタッフからBPOに切り替えをする企業も増加していることで市場拡大が後押しされていると当社は考えております。

また、近年はAIやRPAなどのデジタル技術と人材によるオペレーションを組み合わせたサービスニーズが増加しており、当該市場へのプラス効果として働いております。特に、新型コロナウイルスの発生以降は、外出自粛に伴い企業のテレワークが急速に普及しており、各社で業務プロセス変革を余儀なくされていることが多いため、デジタル化やアウトソーシングニーズの増加につながっていると当社は考えております。合わせて、「顧客体験価値(注:商品やサービスの「価格」や「機能性」といった物理的な価値だけではなく、それらを通して得られる「満足感」や「喜び」というような感情や経験の価値も含めた概念)」を追求する企業が増加しており、顧客接点として重要な役割を持つコンタクトセンターにおいては、「窓口のマルチチャネル化による問い合わせ方法の多様化」や「ワンストップ化による問題解決力の向上」など、1つのセンターで対応しなければならない範囲の拡大と、問題解決力向上に向けた業務への深い理解が求められ、運営難易度が高まる傾向にあると考えております。そのため、専門業者の知見への期待から、アウトソーシングニーズの増加につながっております。

また、コンタクトセンターを自社運営している企業群は、上記の「広義のテレマーケティング市場規模」と別に1.3兆円超が存在すると見込んでおり、潜在市場として認識しております。(注2)

 

(注2)当社推定値。当社席数と「コールセンターサービス/コンタクトセンターソリューション市場の調査(2021年)」(㈱矢野総合研究所・2021年11月2日発表)における当社シェアにより、日本のコンタクトセンターアウトソーシング事業者席数を算出。コールセンターの運用形態(コールセンター白書2021 ㈱リックテレコム)より、自社運営コンタクトセンター席数を算出し、当社の1席あたり売上高を乗じて算出。

 

外部へ販売するシステムとしてのOmnia LINKの市場であるSaaS型サービス市場規模及びソフトウエア市場規模は合計で1,533億円(「コールセンター市場総覧 2021」㈱矢野総合研究所・発刊日2021年10月)となっております。特にSaaS型サービス市場は2020年度において、前年度比11.6%の成長率となっております。

また、現在のところOmnia LINKはコンタクトセンター向けの専門システムとなっておりますが、今後の展開としてオフィス内でのビジネスコラボレーションツールとしての機能を2023年5月期以降に展開する予定です。その場合、ビジネスコラボレーション市場規模1,264億円(「テレワーク/ニューノーマルを支えるコラボレーション・モバイル管理ソフトの市場規模 2020年度版」デロイト トーマツ ミック経済研究所㈱ 発刊日2020年10月5日)、非対面接客市場(WEB会議システム市場)197億円(㈱アイ・ティー・アール ITR Market Viewコラボレーション市場2020)も見据えることができ、その合計の顕在市場は0.3兆円と見込んでおります。

 

なお、新型コロナウイルス感染症の発生によって、当社を取り巻く環境は、官公庁案件の増加や、巣籠需要によるコンタクトセンターニーズの増加が見られ、需要が高まっている状況にあります。一方、コンタクトセンター・BPO事業は労働集約型ビジネスの性質も有しているため、就業中の従業員による感染拡大リスクの増加が懸念され、事業の継続と従業員の安全配慮の両軸での運営が求められております。そのような需要の拡大と従業員の安全性の確保の観点から、両課題を解消する手法として在宅コンタクトセンターが広まりつつあると考えており、当社においてもすでに全国1,200名以上(2022年5月現在)の在宅オペレーターが在籍しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

上記経営環境において、当社が対処すべき課題は下記のとおりです。

当社グループは、2020年に東京証券取引所への株式上場を見据えた3カ年の経営計画を策定しました。その後、2022年5月度取締役会にて、中期経営計画の最終年度の取り組みを盛り込んだ「中期経営計画2022ローリングプラン」を決議しております。

中期経営計画においては、具体的な取り組み事項として「5つの取り組み方針」を決定しております。「5つの取り組み方針」を通じて、企業価値の最大化と社会的信用力の向上の両立に取り組んでまいります。

 

① ビジネスの継続的価値向上(根元)

当社グループの売上の基盤を支えるコンタクトセンター・BPOサービスの営業力強化に向けて、営業活動の可視化・効率化に取り組んでおります。必要受注数からの逆算により、各パイプラインのKPIを定めることで現実とのギャップを明確化し、より効果の高いアクションを行うことを目的としております。また、本取り組みとの整合性を図るため、営業人事制度の改定も行う予定です。

既存顧客においては、受託案件へのSpeech To Textの追加導入や、在宅コンタクトセンターサービス「Bewith Digital Work Place」の導入、コンサルティングサービスの提供など、契約済サービスだけでなく複数のメニューを積極的に提案することで、付加価値の向上及び1社あたりの売上高の向上に向けて取り組んでまいります。

 

② ビジネスの次世代化(新芽)

Omnia LINK外販は、当社の成長ドライバとして位置付けており、販売ライセンス数は年80%の成長を目指しております。2023年5月期からは、Omnia LINK事業本部として新組織を組成し、営業・マーケティング体制の強化を図っております。さらに、オフィスでの活用を想定した「オフィス向けOmnia LINK」の開発も進めております。Omnia LINKをコンタクトセンターだけでなくオフィスユースに拡大することでターゲット市場を拡張し、さらなるOmnia LINKの拡販と知名度向上に努めてまいります。

また、非対面接客の拡大需要を背景として、非対面での資料の共有・本人確認・申し込み・電子契約までを可能とするシステムである「CXプラットフォーム」についても、開発を進めております。本システムはコンタクトセンターにおける対応範囲を拡充し、これまで対面でなければ実現できなかったビジネスプロセスを非対面で実現する取り組みです。このシステムを通じて、コンタクトセンターの新しいあり方を提案し、市場自体のさらなる拡大を進めてまいります。

 

③ 事業基盤の整備

当社グループは2022年3月2日に東京証券取引所市場第一部へ上場いたしました。当連結会計年度は上場に向けた課題解消のための制度設計や上場後の事業運営のため、コーポレート部門の体制強化を図って参りました。来期は上場後はじめて迎える年度となりますが、上場に向けて導入した制度の運用の徹底とブラッシュアップを図ってまいります。また、上場企業としてのさらなる事業基盤の強化を目指すとともに、販管費率の削減にも取り組んでまいります。

 

④ ダイバーシティ&インクルージョン

当社グループはダイバーシティ&インクルージョンを(1)ジェンダーフリー(女性活躍)、(2)マルチカルチャー(多様な国籍の人材の活躍)、(3)ディスアビリティ(障がい者の活躍)、(4)ジェネレーションフリー(すべての年代の活躍)の4つの視点でとらえております。働き方や教育面、やりがいの醸成など、継続して環境の整備を進めていくことで、性別や年齢・国籍・文化・価値観など、様々なバックグラウンドを持つ人材を活用し、多様なニーズに対応することで新たな価値を創造、提供できるよう努めてまいります。

 

⑤ ESG経営の推進

当社グループは、「ミライのために『今』できること」をスローガンに、持続可能な社会づくりに向けて、取り組んでおります。重点テーマとして「デジタルを活用した社会課題解決と新たな価値の創造」「働きがいの創出と多様性を尊重し合う社会の実現」「持続可能な地域・社会づくりへの貢献」の3つを定め、当連結会計年度に組成した「SDGs推進委員会」を中心に活動をさらに加速してまいります。

 

(ア)環境

世界共通の課題である気候変動については、持続可能な社会づくりにおける重要課題の1つとして認識しております。当社グループにおいては、CO2排出量の可視化から環境貢献度の公表までを実現するCO2排出量可視化ツール『CO-KAN ~CO2削減で環境に貢献~』を当連結会計年度にリリースしております。引き続き当社の開発力を活かした気候変動に関する課題を解決するプロダクトの開発等、ご提供するサービスを通じて顧客企業の課題解消へ寄与する取り組みを進めてまいります。

 

(イ)社会

当社グループは、全国15拠点で約8,000名の従業員を雇用しております。1人1人の従業員が健康で働きがいを持ち、能力がより発揮できる適切な労働環境の提供を目指しております。具体的には、Bewith Digital Work Placeの拡充による働きやすさの提供や適切な労働時間の管理、女性活躍推進に向けた取り組みや、次世代リーダーの育成等、幅広い取り組みを進めてまいります。

 

(ウ)ガバナンス

当社グループは、コーポレート・ガバナンスを透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための重要な経営の仕組みとして認識し、上場企業にふさわしいコーポレート・ガバナンス体制の構築をしてまいりました。引き続き、構築した仕組みの適切な管理サイクルの運用とさらなるガバナンス強化に取り組んでまいります。

 

⑥ 流動性の確保及び企業価値の拡大

当連結会計年度末における当社株式の流通株式比率はプライム市場の上場維持基準を充たしているものの、流通株式時価総額は基準を充たしておりません。今後の当社株式の流通株式数は投資家による売買を通じて変動することとなりますが、今後において上場維持基準を充足し続けるために、当面の間、㈱パソナグループとの連結関係を維持できる範囲において実施可能な資本政策を検討し、大株主(親会社等)と連携の上で流動性確保に努めるとともに、当社グループの経営方針・経営戦略に沿い、事業規模・売上高ならびに利益額・利益の成長を通じて企業価値を継続的に向上させることで流通株式時価総額の拡大にも努めてまいります。

 

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