(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の日本経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響下にありながらも、厳しい状況は徐々に緩和され、持ち直しの動きが見られました。テレビ広告市況におきましても、東京地区のスポット広告の出稿量がコロナ禍で低迷した前期を大きく上回り、好調に推移しました。
このような経済状況のなか、当連結会計年度の売上高は、テレビ放送事業におけるタイム収入、スポット収入の大幅な増収に伴い2,982億7千6百万円(前期比+12.7%)となり、売上原価、販売費及び一般管理費の合計が2,768億4千4百万円(同+10.7%)となりました結果、営業利益は214億3千1百万円(同+48.7%)となりました。また、経常利益は264億4千3百万円(同+47.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益は209億9千9百万円(同+66.7%)となりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 会計方針の変更」をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
当連結会計年度は、全日視聴率(6時~24時)個人全体が3.8%で2位、世帯が7.2%で1位、ゴールデンタイム(19時~22時)個人全体が5.8%で民放2位、世帯が10.1%で民放1位、プライムタイム(19時~23時)個人全体が5.8%、世帯が10.3%でともに1位、プライム2(23時~25時)個人全体が2.1%、世帯が4.1%でともに2位で終了し、個人全体では、9年ぶりのプライムタイムトップ、世帯では、開局以来初の民放3冠となりました。
当連結会計年度は、ゴールデン・プライム帯では、10月にリニューアルした「報道ステーション」をはじめ、「サタデーステーション」「サンデーステーション」とプライム帯のニュースベルトがそれぞれ好結果を残しました。連続ドラマでは、当期に放送された民放連続ドラマの個人全体視聴率平均でトップとなった「ドクターX~外科医・大門未知子~」(平均:個人全体9.7%、世帯16.5%)を含めて、「相棒season20」(平均:個人全体7.6%、世帯13.5%)、「特捜9」(平均:個人全体7.2%、世帯13.2%)、「緊急取調室」(平均:個人全体6.7%、世帯12.2%)とトップ10に4作品が入りました。そして、バラエティー番組では、金曜の「ザワつく!金曜日」「マツコ&有吉かりそめ天国」、土曜の「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」など週末の番組が高い数字となりました。
スポーツでは、夏の東京オリンピックで「ソフトボール決勝 日本×アメリカ」(個人全体14.5%、世帯23.0%)などが高視聴率となり、全中継平均で民放トップを獲得したほか、冬の北京オリンピックでは「フィギュアスケート 女子フリー」(個人全体11.4%、世帯19.0%)などが高視聴率となりました。また、サッカーではW杯アジア最終予選のホーム戦5試合(5試合平均:個人全体9.7%、世帯15.9%)を中継し、高視聴率となりました。
全日帯では、「羽鳥慎一モーニングショー」が個人全体視聴率で自己最高を更新し、2年連続の同時間帯トップ、「じゅん散歩」「大下容子ワイド!スクランブル」と午前帯のベルト番組が良い流れを作り、10月クールの全日帯トップに貢献しました。
年末年始は、「ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会」が高視聴率となり、大晦日で初の個人全体視聴率・民放3冠を達成、正月三が日は「相棒 元日スペシャル」などが高視聴率となり、プライムタイムは14年連続、ゴールデンタイムは8年連続のトップを獲得しました。
以上のような状況のなか、収益の拡大を図るため、積極的な営業活動を展開しました。
タイム収入は、「東京オリンピック」「北京オリンピック」「世界体操・世界新体操 北九州」「2022FIFA ワールドカップカタール アジア地区最終予選」「世界フィギュアスケート国別対抗戦 2021」などの単発番組により増収となりました結果、855億9千6百万円(前期比+13.8%)となりました。
スポット収入は、前期に低迷した東京地区の広告出稿量が反動増となったことから大幅な増収となりました。業種別では、「自動車・関連品」が減収となりましたが、「外食・各種サービス」「情報・通信」「飲料・嗜好品」「金融・保険」など多くの業種で増収となりました。以上の結果、スポット収入は935億4千5百万円(同+17.8%)となりました。
また、BS・CS収入は259億5千1百万円(同+4.2%)、番組販売収入は134億5千6百万円 (同+4.9%)、その他収入は227億7千1百万円(同+9.2%)となりました。
以上により、テレビ放送事業の売上高は2,413億2千1百万円 (同+13.2%)、営業費用は2,224億7千9百万円 (同+10.1%) となりました結果、営業利益は188億4千2百万円(同+70.4%)となりました。
前期は新型コロナウイルス感染症の影響により、所属アーティストのコンサートツアーを含む音楽イベントの開催を見送ったものの、当期は「平井大」「湘南乃風」及び「ソナーポケット」が全国ツアーを実施したことなどにより、音楽出版事業の売上高は73億4千5百万円(前期比+14.9%)、営業費用は64億1千8百万円(同+13.2%)となりました結果、営業利益は9億2千6百万円(同+28.4%)となりました。
インターネット事業では、2020年4月にKDDI株式会社との共同事業として始めたSVOD(定額制動画配信)サービス「TELASA」がテレビ朝日の番組と連動したTELASAオリジナルコンテンツを積極的に展開することによって、会員数を順調に伸ばしており、事業も拡大しております。今後200万人という目標へ向け、コンテンツの充実に邁進してまいります。株式会社サイバーエージェントとの共同事業「ABEMA」は、サービス開始からの目標であった1,000万WAU(ウイークリーアクティブユーザー)を恒常的に達成、有料の「プレミアム」会員も増えており、無料・有料ともに堅調に推移しました。「ABEMA NEWS」は注目度の高いコロナ関連ニュース・記者会見等や災害情報をリアルタイムで配信。報道特番などもタイムリーに編成し、緊急時の「生活インフラ」としても定着しつつあります。無料見逃し動画配信サービスを提供している「TVer」は、2021年8月に累計アプリダウンロード数が4,000万を突破し、月間ユニークブラウザ数も好調に推移しております。2022年4月からはプライム帯を中心に地上波放送のリアルタイム配信を開始し、新たなビジネスとして成長させていく予定であります。また、動画広告配信プラットフォームを構築・運用する連結子会社の株式会社UltraImpressionは、精度の高いデータに基づく多彩なターゲティングができることが好評で、見逃し動画配信での広告を中心に大きく業績を伸ばしております。コアファン向けのサービスでは「新日本プロレスワールド」「東映特撮ファンクラブ」に加え、新たに「アメトーークCLUB」や、株式会社藤子・F・不二雄プロダクション、株式会社小学館と共同で「ドラえもんチャンネルアプリ」を立ち上げるなど、新たな展開に着手しております。
イベント事業では、コロナ禍の厳しい制限が続くなか、出資案件の「フジロックフェスティバル」
「SUPER SONIC」、自主案件の「テレビ朝日ドリームフェスティバル」など、大型音楽ライブイベントを実施。またここ数年のタイドラマブームに応える形で、タイGMMTV社と連携した「GMMTV展」や人気俳優のオンラインファンミーティングなどの新規イベントも手掛けたことにより、増収となりました。
ショッピング事業は、年間を通して定期的に放送した通販特番「坂上くんが試してみた!!」や「今田耕司★ヒットの世界」で好調に売上を伸ばし、レギュラーで放送している「じゅん散歩」の安定的な売上とともに大幅な増収となりました。また深夜で新たな通販番組「東京トキメキ百貨店」を開始するなど、テレビ朝日グループとしてショッピング事業の強化を図っております。
出資映画事業は、2021年春の公開を予定していた「映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」がコロナ禍で1年延期となりましたが、2022年3月4日に公開し、好評を博しております。「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」は興行収入17億7千万円と好調だったほか、シリーズ20周年の集大成となる映画『科捜研の女 -劇場版-』を公開しました。しかし、前期に公開したドラえもん50周年記念作品「STAND BY ME ドラえもん2」の反動減などにより減収となりました。
DVD販売は、ジャニーズJr.×「ミュージックステーション」やオシドラサタデー「ザ・ハイスクール ヒーローズ」、人気シリーズ「相棒」など、様々なタイトルをリリースしました。
以上により、その他事業の売上高は634億4千1百万円 (前期比+8.3%)、営業費用は617億1千8百万円 (同+10.3%)となりました結果、営業利益は17億2千3百万円(同△34.5%)となりました。
報告セグメントごとの経営成績の推移は、次のとおりであります。
(単位:百万円、%表示は対前期増減率)
(単位:百万円、%表示は対前期増減率)
当社グループの当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。
流動資産は1,785億2千5百万円で、前連結会計年度末に比べ269億8千4百万円の増加となりました。これは、現金及び預金が312億6千6百万円増加したことなどによります。
固定資産は3,202億8千3百万円で、前連結会計年度末に比べ19億1千5百万円の減少となりました。これは、機械装置及び運搬具が17億7千万円減少したことなどによります。
以上の結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ250億6千8百万円増加し、4,988億8百万円となりました。
流動負債は695億5百万円で、前連結会計年度末に比べ91億4千3百万円の増加となりました。これは、未払費用が30億9千万円、未払法人税等が20億4千2百万円、未払金が15億3千8百万円増加したことなどによります。
固定負債は360億8千7百万円で、前連結会計年度末に比べ11億8千4百万円の減少となりました。これは、繰延税金負債が7億1千1百万円減少したことなどによります。
以上の結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ79億5千9百万円増加し、1,055億9千3百万円となりました。
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ171億9百万円増加し、3,932億1千5百万円となりました。この結果、自己資本比率は78.6%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ332億5千4百万円増加し、773億1千7百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、301億2千6百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入額が95億3千万円増加しました。これは、税金等調整前当期純利益が116億3千4百万円増加したことなどによるものです 。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、76億2千5百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入額が155億8千5百万円増加しました。これは、投資有価証券の取得による支出が62億2千6百万円、有形固定資産の取得による支出が56億8百万円減少したことなどによるものです 。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、45億6千3百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出額が36億8千7百万円減少しました。これは、自己株式の取得による支出が31億1千7百万円減少したことなどによるものです 。
販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の売上実績及びそれぞれの総売上高に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(単位:百万円、%表示は対前期増減率)
(売上高及び営業利益)
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(経常利益)
営業外収益は52億2千万円で、前連結会計年度に比べ14億2千6百万円の増加となりました。これは、持分法による投資利益が増加したことなどによります。営業外費用は2億8百万円で、前連結会計年度に比べ1千7百万円の減少となりました。
以上の結果、経常利益は264億4千3百万円(前期比+47.1%)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は46億5千5百万円で、前連結会計年度に比べ24億3千2百万円の増加となりました。上場株式の売却に伴い投資有価証券売却益を46億5千5百万円計上しております。特別損失は6億3千1百万円で、前連結会計年度に比べ7億3千9百万円の減少となりました。投資有価証券評価損を3億7千1百万円、新型コロナウイルス感染症による損失を2億6千万円計上しております。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は209億9千9百万円(前期比+66.7%)となりました。
(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
資本の財源として当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高が、総資産の15.5%を占める773億1千7百万円となりました。当社グループでは、主に営業活動から得た資金及び内部留保による自己資金を財源とし、コンテンツ力強化に向けた投資や設備投資、さらなる成長のための戦略投資などを行っております。なお、当社はグループ会社の資金調達及び資金運用を効率的に行うため、キャッシュ・マネジメント・システムを活用し、一括した管理を行っております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、決算時点で入手可能な情報や資料に基づき将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性の見込めない部分を評価性引当額として繰延税金資産から控除しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、市場の動向や経済環境の変化などにより見積りの前提条件や仮定に変更が生じた場合、課税所得の見積りが大きく変動し、繰延税金資産の取崩しなど税金費用の計上額に影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付に係る負債及び退職給付費用)
当社グループは、退職給付に係る負債及び退職給付費用の計算について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。経済環境や金融市場の変化等により実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される退職給付費用や計上される退職給付に係る負債に影響を及ぼします。
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