(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度におけるわが国経済は,景気の持ち直しの動きが継続したものの,新型コロナウイルスの影響による厳しい状況が残る中で一部に弱さがみられた。また,年度後半には世界的なエネルギー需要の増加や,ウクライナ情勢などを背景として,急激に燃料価格が上昇するなど,景気の下振れが懸念されている。この急激な燃料価格の上昇に伴う,電源調達コストの増加は,当社業績に大きな影響を及ぼした。
このような中,当連結会計年度の収支状況について,売上高は,2兆7,051億円となり,前連結会計年度と比べ2,302億円の減収となった。
経常損益は,593億円の損失となり,前連結会計年度と比べ2,515億円の減益となった。
(2) 生産,受注及び販売の状況
当社グループは,電力・ガスの販売と各種サービスの提供を行う「ミライズ」,電力ネットワークサービスの提供を行う「パワーグリッド」,燃料上流・調達から発電,電力・ガスの販売を行う「JERA」の3つのセグメント等が,バリューチェーンを通じて,電気事業を運営している。
当社グループにおける生産,受注及び販売の状況については,その大半を占める電気事業のうち主要な実績を記載している。
(注) 1 発電電力量及び出水率は,中部電力㈱の実績を記載している。
2 出水率は,1990年度から2019年度までの30カ年平均に対する比である。
3 四捨五入の関係で,合計が一致しない場合がある。
ア 販売電力量及び料金収入
(注) 1 販売電力量及び料金収入は,中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。
2 四捨五入の関係で,合計が一致しない場合がある。
3 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用を踏まえ,「電気事業会計規則」(1965年6月15日 通商産業省令第57号)が改正されたため,前連結会計年度まで営業収益に計上していた「再エネ特措法賦課金」の取引金額は,営業収益より除くこととなった。
(注) 中部電力ミライズ㈱及びその子会社,関連会社の実績を記載している。なお,グループ内の販売電力量は除いている。
(注) 中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。なお,中部電力ミライズ㈱の子会社及び関連会社への販売電力量は除いている。
イ 中部エリアの需要電力量及び料金収入
(注) 1 中部エリアの需要電力量及び料金収入は,中部電力パワーグリッド㈱の実績を記載している。
2 料金収入は,接続供給託送収益(インバランスの供給に係る収益を除く)を記載している。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当社グループに関する財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析については,連結財務諸表に基づいて分析した内容である。
(1) 財政状態の分析
固定資産については,㈱JERAなどの関係会社長期投資の増加により投資その他の資産が増加したことなどから,前連結会計年度末と比べ1,898億円増加し,5兆2,347億円となった。
流動資産については,㈱日本エスコンを連結子会社化したことにより棚卸資産が増加したことなどから,前連結会計年度末と比べ2,985億円増加し,9,400億円となった。
有利子負債の増加などから,負債合計は,前連結会計年度末と比べ4,687億円増加し,4兆514億円となった。
配当金の支払いや親会社株主に帰属する当期純損失の計上はあったが,その他の包括利益累計額の増加や㈱日本エスコンを連結子会社化したことによる非支配株主持分の増加などにより,純資産合計は,前連結会計年度末と比べ195億円増加し,2兆1,232億円となった。
この結果,自己資本比率は,32.7%となった。
〔資産・負債・純資産比較表(要旨)〕
(注) 億円未満切り捨て
(2) 経営成績の分析
中部電力ミライズ㈱の販売電力量は,新型コロナウイルス感染症影響の反動による増加はあったが,他事業者への切り替えなどから,前連結会計年度と比べ18億kWh減少し1,089億kWhとなった。
なお,中部電力ミライズ㈱及びその子会社,関連会社の合計の販売電力量は,前連結会計年度と比べ7億kWh増加し1,178億kWhとなった。
〔販売電力量〕
(注) 1 販売電力量は,中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。
2 四捨五入の関係で,合計が一致しない場合がある。
〔参考1〕
(注) グループ合計の販売電力量は,中部電力ミライズ㈱及びその子会社,関連会社の実績を記載している。
〔参考2〕
(注) 中部電力ミライズ㈱の実績を記載している。なお,中部電力ミライズ㈱の子会社及び関連会社への販売電力量は除いている。
中部エリアの需要電力量は,新型コロナウイルス感染症影響の反動などから,前連結会計年度と比べ36億kWh増加し1,275億kWhとなった。
〔中部エリアの需要電力量〕
(注) 中部エリアの需要電力量は,中部電力パワーグリッド㈱の実績を記載している。
収支の状況については,売上高(営業収益)は,「収益認識に関する会計基準」の適用により,再生可能エネルギー特別措置法に基づく収益,及びこれに対応する費用が純額処理となったことなどから,前連結会計年度と比べ2,302億円減少し2兆7,051億円となった。
経常損益は,JERAにおける燃料トレーディング事業の利益増加などはあったものの,燃料価格の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれが差益から差損に転じたことや,中部電力ミライズにおける卸電力取引市場の価格高騰による電源調達コストの増加などから,前連結会計年度と比べ2,515億円悪化し593億円の損失となった。
また,収支悪化に伴う中部電力ミライズの純資産の毀損を抑制するため,渇水準備引当金取崩し202億円を計上した。
さらに,2021年1月の電力需給ひっ迫に伴うインバランス料金の高騰による収益の一部を将来の託送料金から差し引く形で還元することに伴い,特別損失55億円を計上した。
この結果,親会社株主に帰属する当期純損益は430億円の損失となった。
当連結会計年度におけるセグメント別の業績(内部取引消去前)及び取り組みは以下のとおりである。
なお,㈱JERAは持分法適用関連会社のため,売上高は計上されない。
[ミライズ]
〔業績〕
電力・ガスの販売と各種サービスの提供に伴う売上高については,「収益認識に関する会計基準」の適用により,再生可能エネルギー特別措置法に基づく収益,及びこれに対応する費用が純額処理となったことなどから,前連結会計年度と比べ3,900億円減少し2兆281億円となった。
経常損益は,卸電力取引市場の価格高騰による電源調達コストの増加などから,前連結会計年度と比べ1,214億円悪化し834億円の損失となった。
〔当連結会計年度の取り組み〕
「とどける」「よりそう」「つなげる」をキーワードに,お客さまのくらしを豊かにし,ビジネスを支えるサービスを展開している。
2021年4月には,「生涯にわたってお客さまによりそう」をコンセプトに,くらし全般のサービスを提供する新会社「中部電力ミライズコネクト」を設立した。今後も,電気・ガスのお届けに加え,お客さまのライフステージに応じたサービスを拡充していく。
脱炭素社会の実現に向けては,CO2フリー電気のお届けを通じて再生可能エネルギーの普及・拡大と地産地消に貢献する「ミライズGreenでんき」や,ご家庭の太陽光発電設備や蓄電池の設置に係る初期費用負担をサポートする「カナエルソーラー」のお届けを開始するとともに,エネルギー利用の効率化やエネルギー源の転換による脱炭素化の提案,デマンドレスポンス※を活用したサービスの開発などを進めている。
なお,電源調達コストの増加を踏まえ,最大限の効率化を前提に,お客さまごとに必要なコストに応じた販売価格の見直しを進めている。引き続き徹底的な効率化に加え,最適な調達に努めていく。
※ 電力の需給と供給のバランス調整が必要になった場合などに,お客さまに電気の使い方を工夫してい
ただいたり,お客さまの設備を制御させていただく仕組み
[パワーグリッド]
〔業績〕
電力ネットワークサービスの提供に伴う売上高については,中部エリアの需要電力量の増加や,再生可能エネルギー特別措置法に基づく購入電力量の増加に伴い,卸電力取引市場を通じた販売電力量が増加したことなどから,前連結会計年度と比べ567億円増加し8,995億円となった。
経常損益は,中部エリアの需要電力量の増加はあったが,2021年度から導入された需給調整市場における再生可能エネルギー発電量の予測誤差に対応するための調整力確保費用が制度設計の想定を大きく上回り,交付金で賄われる額を大幅に超過したことなどから,前連結会計年度と比べ736億円悪化し148億円の損失となった。
〔当連結会計年度の取り組み〕
再生可能エネルギーの接続可能量の増大に向けて,電力系統設備・運用の高度化に取り組むとともに,中部エリアの安定供給に必要な予備力・調整力の確保や,他エリアとの電力融通の拡大に向けた設備増強などを着実に進め,需給安定に努めている。
また,再生可能エネルギー発電出力の予測精度向上や,他の一般送配電事業者との共同調達により,需給調整コストの削減に取り組んでいる。
加えて,2021年6月に運用開始した,スマートメーターなどのデータを用いた配電線の電気の流れの高精度な把握や,電圧調整器の設定を自動で変更できる「電圧集中制御システム」を用いて,再生可能エネルギー増加による複雑な電気の流れに対応するとともに,さらなる設備形成の合理化に努めている。
自律的な事業運営をより一層加速するため,2050年に向けての目指す姿を掲げた「中部電力パワーグリッドビジョン」にもとづき,安定供給と低廉な託送料金の実現に努めるとともに,脱炭素化に向けた取り組みの推進及び地域のニーズに寄り添ったサービスの展開により,地域の未来像実現に貢献できるよう努めていく。
[JERA]
〔業績〕
燃料上流・調達から発電,電力・ガスの販売に伴う経常損益は,燃料トレーディング事業の利益増加などはあったものの,燃料価格の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれが差益から差損に転じたことなどから,前連結会計年度と比べ660億円悪化し3億円の損失となった。なお,期ずれを除いた経常利益は 1,250億円程度となった。
〔当連結会計年度の取り組み〕
燃料上流・調達から発電,電力・ガスの販売にいたる一連のバリューチェーンを最適に運用するとともに,JERAのスケールメリットを活かすことにより,火力発電事業の効率的な運営に努めている。また,電力の供給,燃料調達など安定供給確保における重要な役割も担っている。
「世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する」,「クリーン・エネルギー経済へと導くLNGと再生可能エネルギーにおけるグローバルリーダー」というミッションとビジョンの達成に向けてさまざまな事業を展開するとともに,「JERAゼロエミッション2050」を掲げ,2050年時点で国内外のJERA事業から排出されるCO2の実質ゼロに挑戦している。
具体的には,台湾の洋上風力発電事業の開発やフィリピンの大手電力会社への出資を実施するとともに,CO2を排出しない燃料として期待される水素・アンモニアの混焼技術の確立に向けた実証事業やサプライチェーンの構築などに取り組んでいる。
(注)「JERAゼロエミッション2050」は,脱炭素技術の着実な進展と経済合理性,政策との整合性を前提としている。JERAは,引き続き,自ら脱炭素技術の開発を進め,経済合理性の確保に向けて主体的に取り組んでいく。
(目標とする経営指標の達成状況等)
当社は,中期経営目標(2019年公表)として「2021年度に連結経常利益1,700億円」を掲げていたが,当連結会計年度における期ずれ影響を除いた連結経常利益は,670億円程度となり,大幅な未達となった。
なお,2022年4月,新たな中期経営目標として,「2025年度に連結経常利益1,800億円以上,ROIC3.0%以上」を設定しており,当連結会計年度におけるROIC(期ずれ除き)は,1.9%となった。
(新型コロナウイルス感染症による影響評価)
当連結会計年度における中部エリアの需要電力量は,新型コロナウイルス感染症影響の反動などから,前連結会計年度に比べ2.9%増加した。なお,当連結会計年度における収支などへ与える影響については,各セグメントにおいて新型コロナウイルス感染症影響の反動があったと考えている。
ただし,新型コロナウイルス感染症の影響がさらに拡大・長期化した場合や,当社グループが社会構造の変容を十分に先取りできなかった場合などには,財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローは影響を受ける可能性がある。
〔連結収支比較表〕
(注)1 特別損失:当連結会計年度 インバランス収支還元損失
2 内部取引相殺消去後(億円未満切り捨て)
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは,中部電力ミライズにおける卸電力取引市場の価格高騰による電源調達コストの増加や中部電力パワーグリッドにおける需給調整費用の増加などから,前連結会計年度に比べ3,624億円減少し216億円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは,投融資による支出が増加したことなどから,前連結会計年度に比べ462億円支出が増加し2,620億円の支出となった。
この結果,フリー・キャッシュ・フローは,前連結会計年度に比べ4,086億円悪化し2,403億円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは,資金調達が増加したことなどから,前連結会計年度に比べ4,075億円増加し2,664億円の収入となった。
これらにより,当連結会計年度末の現金及び現金同等物は,前連結会計年度末と比べ262億円増加した。
資本の財源及び資金の流動性について,当社グループは,主に電気事業の運営上必要な設備資金を,社債発行や銀行借入等により調達し,短期的な運転資金は,主に短期社債により調達することを基本としている。
〔連結キャッシュ・フロー比較表(要旨)〕
(注) 億円未満切り捨て
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は,わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については,「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりである。
当社グループは,固定資産の評価,繰延税金資産,貸倒引当金,退職給付に係る負債及び資産,企業結合などに関して,過去の実績や当該取引の状況に照らして,合理的と考えられる見積り及び判断を行い,その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成しているが,実際の結果は見積り特有の不確実性があるため,これらの見積りと異なる場合がある。
また,連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち,重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載している。
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