文中における将来に関する事項は,有価証券報告書提出日(2022年6月29日)現在において判断したものである。
「くらしに欠かせないエネルギーをお届けし,社会の発展に貢献する」という当社グループの企業理念を実践していくために,「中部電力グループ 経営ビジョン2.0」を掲げております。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や新型コロナウイルスの感染拡大などにより,社会構造・生活様式は大きく変化しております。2018年3月に制定した経営ビジョンに掲げた,「一歩先を行く総合エネルギー企業グループ」を目指す当社グループの行動姿勢は,変わるものではありませんが,こうした事業環境の激変を新たなビジネスチャンスと捉え,2050年の社会像を見据えて果敢にチャレンジしてまいります。まちづくりへの参画,地域密着型サービスの領域拡大,エネルギーや資源の最適循環を実現する事業への参画などを通じて,「新しいコミュニティの形」の提供を加速し,2050年に向け,「安心・安全で強靭な暮らしやすい社会」の実現に貢献してまいります。2030年に向けては,2050年の社会を見据えたバックキャストに基づき,取り組みを加速し,「2030年には連結経常利益2,500億円以上」及び「国内エネルギー事業と新しい成長分野や海外事業などの事業ポートフォリオの比率1:1」を目指すこととしております。
当社グループは,この経営ビジョンのもと,お客さまや社会が求める価値を起点に新たなサービスを創出し,エネルギーとともにお届けするビジネスモデルへの変革に,当社グループの人財一人ひとりが取り組み,2050年に向けて持続的に成長してまいります。
また,脱炭素社会への貢献,社会課題の解決,大規模災害時における事業継続など,ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。
今後とも,お客さまや株主・投資家のみなさまに信頼,選択されるよう努め,地域社会の発展にも貢献してまいる所存です。
2022年4月,中期目標として「2025年度に連結経常利益1,800億円以上,ROIC3.0%以上」を設定いたしました。当社グループは,この目標の達成に向け,グループ一丸となって様々な取り組みを進めてまいります。
当社は,2020年4月から,送配電部門を中部電力パワーグリッド,販売部門を中部電力ミライズにそれぞれ分社し,これらにJERAを加えた3つの事業会社を核とする体制といたしました。パワーグリッドにおいては,一層の中立性・公平性を図るとともに,ミライズ・JERAにおいては,それぞれの市場,お客さまと向き合い,より強靭な企業グループへの成長を目指してまいります。
このような事業体制のもと,以下の課題への対応をはじめ,グループを挙げてエネルギーの安定供給に努めるとともに,お客さまの期待を超えるサービスを実現・提供することにより,中部電力グループ全体の持続的成長と企業価値の向上を果たしてまいります。
(収支悪化と国内エネルギー事業の利益回復)
2021年度は,世界的なエネルギー需要の増加や,ウクライナ情勢などを背景として,急激に燃料価格が上昇した結果,日本においても,卸電力取引市場の価格が過去に例のない水準で高騰しました。これらの影響により,中部電力ミライズで電源調達コストが,中部電力パワーグリッドで需給調整コストが増加し,中期経営目標(連結経常利益1,700億円)に対して大幅な未達となりました。
当社は,市場価格の高騰による収支悪化リスクを低減させるべく,電源調達ポートフォリオの見直しや,デマンドレスポンスの効果的な活用,再生可能エネルギー発電出力の予測精度向上などの対策に取り組むとともに,リスク管理のさらなる高度化を目指し,リスクの把握・評価・対策・モニタリングのサイクルを着実に推進してまいります。
また,経営効率化による徹底したコストダウンを進めてまいります。
こうした取り組みにより,早期に連結経常利益1,500億円程度の利益水準への回復を目指してまいります。
(浜岡原子力発電所の再稼働に向けた取り組み)
浜岡原子力発電所については,「福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさない」という固い決意のもと,安全性向上対策を進めております。3・4号機については,原子力規制委員会による新規制基準への適合性確認審査を受けており,基準地震動・基準津波の確定に向けて着実に進捗しております。これらが概ね確定した後は,プラント関係審査に対応していくとともに,これらにもとづき安全性向上対策の有効性をはじめ浜岡原子力発電所の安全性に係る理解活動を実施してまいります。
エネルギー資源の乏しいわが国において,化石燃料価格の変動や地球温暖化という課題に対処しつつ,将来にわたり安定的にエネルギーを確保していくためには,原子力を引き続き重要な電源として活用することが不可欠であると考えております。
今後も,新規制基準への適合性確認を早期にいただけるよう最大限努力するとともに,地域のみなさまのご理解をいただけるようコミュニケーションを図り,安全確保を大前提に浜岡原子力発電所の再稼働に向けて取り組んでまいります。
(脱炭素社会実現に向けた取り組み)
中部電力グループは,脱炭素社会の実現に向け,経営ビジョン2.0,ゼロエミチャレンジ2050及びJERAゼロエミッション2050を策定し,再生可能エネルギーの拡大や,水素・アンモニアサプライチェーンの構築を含むゼロエミッション電源の追求などに取り組んでおります。2030年頃に向けた再生可能エネルギー拡大については,従来目標(200万kW以上の新規開発)に加え,保有・施工・保守を含む再生可能エネルギー価値提供量120万kWの拡大(従来目標との合計:320万kW)も目指すこととしました。
目標達成に向け,短期的には太陽光発電,中期的には水力・バイオマス・陸上風力発電,長期的には洋上風力・地熱発電の開発・保有拡大を全国で積極的に推進してまいります。同時に,グループ会社による設備の保守・施工などに加えて,太陽光発電の設置・導入を支援する自家消費サービスの提供など,お客さまのお役立ちにつながる付加価値サービスを提供してまいります。
また,他エリアとの電力融通の拡大に向けた設備増強に努めるなど,再生可能エネルギーの拡大に貢献してまいります。
(安定供給確保に向けた取り組み)
近年,電力供給に関する課題が多様化・増加しており,安定供給確保に向けた取り組みがより一層重要となっております。
とりわけ,太陽光発電の大量導入が進展する一方,既存火力発電所の休廃止などにより,需要の増加と太陽光発電量の低下が重なる冬季に需給ひっ迫が生じやすくなっております。このため,発電事業者に対する追加の電源の公募や,燃料在庫にもとづく供給力の見通しを定期的に確認するなどの取り組みにより供給力を確保するとともに,再生可能エネルギー発電出力の予測精度向上などにより需給の変動に適切に対応し,安定供給に努めてまいります。
加えて,激甚化している自然災害を踏まえ,社会・お客さまとの情報連携や設備復旧体制の強化などにグループ一体となって取り組むとともに,他の一般送配電事業者との連携を一層強化してまいります。また,災害時のレジリエンス(強靭性)向上や再生可能エネルギーの地域利用といった課題の解決のため,さまざまな地域・コミュニティの特性に合わせた地域マイクログリッド※1の構築・支援を進めてまいります。
中部電力グループは,エネルギープラットフォーム※2を進化させ,接続する電源,蓄電池,EV・太陽光発電などの分散型電源を活用するなど,高度なエネルギーマネジメントを通じて,品質の高い電気を安価にお届けするとともに,多様な価値を創出してまいります。
※1 平常時には電力会社などの送配電網に接続し,災害時には事故復旧の手段として送配電網から切り離し,その地域内の再生可能エネルギー電源をメインに,蓄電池・EVなど他の分散型エネルギーリソースと組み合わせて自立的に運用することが可能なグリッドのこと
※2 電源,送配電網,お客さま設備などで構成する,エネルギー需給システム
(コミュニティサポートインフラの進化に向けた取り組み)
地域社会やお客さまが求める新たな価値をお届けするため,エネルギー事業の枠を越えた「事業領域の拡大」を進め,「ビジネスモデルの変革」に挑戦してまいります。
中部電力グループは,「お客さま起点」「脱炭素化」「デジタル化」をキーワードに,様々な領域で「つながることで広がる価値」を提供する「コミュニティサポートインフラ」の構築を進めております。今後,不動産事業や,医療・健康といった生活関連事業,資源循環・上下水道・地域交通などといった地域インフラ事業へのさらなる領域拡大により,お客さまの生活の質を向上させる「新しいコミュニティの形」を具体化し,その提供を加速してまいります。
当社及び中部電力ミライズは,2021年4月13日及び10月5日,独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いがあるとして,公正取引委員会の立入検査を受けました。みなさまにはご心配をおかけしておりますが,立入検査を受けた事実を真摯に受け止め,公正取引委員会の調査に対し,全面的に協力してまいります。
中部電力グループは,従前より,企業の社会的責任を果たすため,CSR宣言にもとづき事業活動を進めており,そのことがESGの観点を踏まえた事業経営の深化や,SDGsの課題解決に貢献するものと考えております。今後とも,お客さまや社会からの信頼が事業運営の基盤であることを肝に銘じて,コンプライアンスを徹底し,CSR(社会的責任)を完遂してまいります。
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