課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

新型コロナウイルス感染症による社会・経済への影響が長期化する中、世界的な脱炭素化に向けた潮流の加速や、ウクライナ情勢などによる燃料価格の大幅な変動が生じるとともに、電力自由化の中での供給力確保のための責任・役割の在り方に係る課題が顕在化するなど、当社グループを取り巻く環境は大きく変化している。

2030年度をターゲットとするグループ経営ビジョン「エネルギアチェンジ2030」の実現に向けた歩みは3年目を迎えているが、こうした様々な環境変化に柔軟に対応しながら、ビジョンの実現に向けて以下の諸課題に取り組んでいく。

 

(1)エネルギー事業を中心とした既存事業の強化・進化

当社は、2021年2月に、当社グループとして「2050年カーボンニュートラル」に挑戦することを公表している。この取り組みを着実に進めるため、2030年度までに小売電気事業におけるCO₂排出量を2013年度比で半減させる目標を設定し、2022年6月には、「カーボンニュートラル推進本部」を設置するなど推進体制を整備する。こうした目標・体制のもと、当社グループは、S+3E(安全性、安定供給、経済性、環境への適合)を同時達成する電源構成の実現を目指しながら、脱炭素化と競争力強化に向けて積極的に取り組んでいく。

また、業績に対する燃料や卸電力取引市場の価格高騰の影響を抑制し、強靭な収益構造の構築を目指すべく、価格変動リスクの低減に向けた対応や経営効率化の取り組みを着実に進めていく。

 

  原子力発電所の再稼働・運転開始及び開発に向けた取り組み

原子力発電は、安定供給、経済性、環境への適合の観点から重要な役割を担うベースロード電源であり、また、確立した脱炭素技術としても、一定比率を維持していく必要があると考えている。

 島根原子力発電所においては、地震・津波対策などの設備面の安全対策の着実な実施のほか、原子力災害発生時に備えた訓練等の継続的な実施や関係自治体との連携強化など、原子力防災対策にも積極的に取り組み、更なる安全性を不断に追求していく。

 島根2号機については、2021年9月に、原子力規制委員会より原子炉設置変更許可を受領し、再稼働に向けた大きな節目を迎えた。引き続き、新規制基準への適合性審査に適切に対応していくとともに、地域のみなさまからご理解を得られるよう丁寧な説明を行いながら、島根2号機・3号機の早期の再稼働・運転開始に向け、最大限取り組んでいく。

 加えて、将来にわたっての重要な電源として新規原子力発電所の開発も必要であると考えており、上関原子力発電所の開発に引き続き取り組んでいく。

 

  火力発電の脱炭素化に向けた取り組み

 当社は、現在、経年化が進む既設火力発電所の代替として三隅発電所2号機の建設を進めており、2022年11月の営業運転開始に向けて、3月に試運転に伴う発電を開始した。建設にあたっては、利用可能な最良の発電方式である超々臨界圧(USC)の採用、バイオマス混焼の拡大等によって環境性にも優れた電源とし、環境負荷の低減にも努めていく。

 このほか、脱炭素化に向けた研究・開発として、「大崎クールジェンプロジェクト」による石炭火力発電の高効率化、CO 分離・回収技術の開発及びカーボンリサイクルなどに取り組んでいく。また、発電用燃料としての水素・アンモニアの導入に向けた協業の検討を他社と進めるなど、水素・アンモニア発電についても、経済的・技術的な課題等の解決後に遅滞なく導入できるよう、2030年までに実装準備を進めていく。

 

 

  お客さまニーズに合わせたエネルギーサービスの展開

小売電気事業者間での販売競争が激化する中において、電気事業の収益性を向上させていくためには、電源の競争力強化に加え、お客さまのニーズにあわせた付加価値の高いサービスを展開していくことが重要と考えている。

 国による「2050年カーボンニュートラル」宣言以降、お客さまの環境意識は一層高まり、そのニーズも多様化している。こうしたニーズに応えていくため、当社グループでは、再生可能エネルギーを活用した電気料金メニューの提供や、分散型エネルギーリソースを活用した太陽光発電PPAサービス等の新たなサービスの展開を進めている。

こうした取り組みにより、電力販売利益の拡大に努めていくとともに、脱炭素化をはじめとしたお客さまの環境経営の実現にも貢献していく。

(注)太陽光発電PPA(電力購入契約)サービス=当社又は業務提携先がお客さまの建物や敷地に太陽光発電設備を設置し、お客さまは初期投資の負担なく、月々のサービス料金で太陽光発電の電気を自家消費できるサービス。

 

  徹底した経営効率化

島根原子力発電所の運転停止が長期化している中においても、収支の改善・財務体質の悪化抑制を図り、競争力を強化していくため、競争発注の拡大などによる資機材調達コストの低減、燃料費の削減など、費用全般にわたる効率化を進めていく。

また、中国電力グループIT構想のもと、最新のICTを活用したデジタル・トランスフォーメーション(DX)への取り組みを推進するとともに、業務運営の抜本的な見直しを進め、労働生産性の向上に努めていく。

 

  電力の安定供給の確保

当社グループは、設備保全の高度化・合理化やレジリエンス(災害に対する強靭性及び回復能力)強化の観点から、最新のDX技術を積極的に活用しながら、設備の計画的かつ確実な点検・補修、更新工事などを行うとともに、業務品質の維持・向上に向け、実践的な訓練や点検作業を通じ、保有する技術・技能の向上と着実な継承に努めていく。

また、災害時に迅速かつ円滑に災害対応を実施するため、引き続き、社外関係機関や自治体等との連携強化に努めていく。

 

(2)更なる成長に向けた新たな事業への挑戦

当社グループは、多様化する社会の変化から可能性を見つけ出し、新たな事業領域の開拓に挑戦していく。

 

  海外事業の領域拡大に向けた取り組み

当社グループは、海外事業を利益の一角を担える事業にしていくため、これまで培ってきた電気事業の知見を活用し、海外事業への出資参画を進め、収益力の強化に取り組んでいる。

引き続き、再生可能エネルギーを中心に海外発電事業の発掘・獲得を進めるとともに、送配電・小売事業や電力周辺事業に加え、新たなエネルギービジネスにも積極的に取り組み、事業領域を拡大していく。

 

  再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組み

再生可能エネルギーを地球環境問題への対応だけでなく成長領域の一つと位置づけ、ビジョンで掲げる目標達成に向け、水力や風力等の導入に積極的に取り組んでいる。2020年代中盤には新規導入量が約30万kWとなる見込みであり、今後は特に成長分野と見込まれる洋上風力発電の開発を積極的に進めることで、最大限の導入に取り組んでいく。

 

 

  エネルギア創造ラボの取り組み

エネルギア創造ラボでは、「地域の未来の創造」と「電気の未来の創造」をコンセプトに掲げ、カーボンニュートラル、DX、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマにベンチャー企業等の先進的な製品・サービスを地域に展開することで、新たな収益源とするとともに地域の課題解決に貢献していく。

 2022年3月末時点で早期成長が見込める10社のベンチャー企業への投資を行っており、今後、多様なサービス展開を推進するため投資を拡大し、投資リターンと事業収益により新たな利益の獲得を目指していく。

 また、再生可能エネルギーや蓄電池、EV等を活用した新たなエネルギーサービスの開発に向けて、先進技術を有するベンチャー企業等との協業や実証実験等に取り組み、サービスメニューを順次拡大していく。

 

(3)多様な人材が活躍できる更なる環境づくり

ビジョンを実現し、当社グループが持続的に成長していくためには、多様な価値観・経験を持つ社員一人ひとりの活躍が不可欠である。

当社は、女性社員の活躍推進や障がい者の雇用促進に加え、他企業経験者や専門能力を有する人など幅広く多様な人材の採用に取り組んでいる。また、社員の健康を確保するとともに、柔軟かつ生産性の高い働き方を実現できるよう、フレックスタイム勤務制度、在宅勤務制度、勤務間インターバル制度、仕事と育児・家庭の両立を支援する制度等を設け、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みを推進している。

今後も時代の要請に合わせて柔軟に対応しながら、多様な人材が活躍できる企業文化の醸成や制度の構築に取り組んでいく。

 

(4)ESG経営の推進

近年のESG投資の拡大により、企業はSDGsの達成に向けた取り組みなど、持続可能な社会の実現に貢献することが求められている。

当社グループは、この持続可能な社会の実現に向けた貢献を自らの使命とし、「エネルギアグループ企業行動憲章」にも明記のうえ、ESGを重視した経営を推進している。

こうしたESGの取り組みをステークホルダーのみなさまに分かりやすくお伝えするため、引き続き、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等の主要なフレームワークに対応するなど、ESG情報の開示の充実に取り組んでいく。

 

 

 

〇 中国電力グループ経営ビジョン「エネルギアチェンジ2030」

 


 

 

〇 中国電力グループ「2050年カーボンニュートラル」への挑戦

   ~脱炭素社会の実現に向けたギアチェンジ~

 


 

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