当社グループの事業その他に関するリスクについて、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載している。当社グループは、グループ経営ビジョンの実現に向けて、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避や発生した場合の対応に努めていく。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
当社は、福島第一原子力発電所において発生した事故を踏まえ、地震・津波対策、外部電源の信頼性確保、フィルタ付ベント設備の設置といったシビアアクシデント対策など、2013年7月に施行された新規制基準への適合はもちろんのこと、さらなる安全性を不断に追求しているが、原子力に関する政策変更や法規制・基準の見直し等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。当社としては、新規制基準適合性審査の先行実績や規制動向を注視し、当社の原子力発電所の安全対策に、計画的かつ適切に取り組んでいく。
原子力のバックエンド事業は、超長期の事業であり不確実性を有しているが、使用済燃料再処理に要する費用と特定放射性廃棄物最終処分に要する費用については、それぞれの実施主体である使用済燃料再処理機構と原子力発電環境整備機構に拠出する制度が、また原子力発電施設の解体に要する費用については引当金として積み立てる制度が国により措置されており、事業者のリスクが軽減されている。しかしながら、今後の制度の見直しや将来費用の見積り額の変更、再処理工場の稼働状況などにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。当社としては、再処理事業者など関係先と連携し、事業の着実な実施に取り組んでいく。
現状、小売電気事業者間の競争状態については競争が不十分という評価のもと、小売料金の経過措置料金の解除が全エリアで見送られており、さらなる競争活性化に向けた追加的な対応が検討されている。これにより、旧一般電気事業者の自社小売部門と他社小売部門との間における内外無差別の確立に向けた規制がさらに強化される可能性があり、この動向によっては、当社の競争力や経営環境は影響を受ける可能性がある。当社としては、こうした規制強化のリスクも認識しつつ、調達コストの低減や経済合理的な判断プロセスの下で総合エネルギー事業全体としての利益最大化に取り組んでいく。
(3) 環境規制
政府は、2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度の温室効果ガス排出削減目標の引き上げを表明した。2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、S+3Eの大原則をこれまで以上に追求していくために、あらゆる政策を総動員していくとされている。今後の政策動向によっては、温室効果ガスの排出等に対する環境規制の強化やカーボンプライシングの導入が想定され、当社グループにおいては、それに伴う対応費用の発生や、取り組みが不十分と判断された場合の社会的評価の低下など、業績に影響を受ける可能性がある。
当社は、2021年2月に公表した「中国電力グループ『2050年カーボンニュートラル』への挑戦」等の当社グループ方針を踏まえ、「2030年度までにCO₂排出量半減(2013年度比)」など、「中国電力グループ環境行動計画」の見直しを行った。また、経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」にも賛同しており、持続的な未来社会の実現に挑戦していくこととしている。
当社は引き続き、再生可能エネルギーの導入拡大、安全確保を大前提とした原子力発電の早期稼動及び安定的な運転継続、水素・アンモニア発電等の脱炭素電源の活用、脱炭素のための電化促進等に積極的に取り組んでいくこととしており、技術開発の不確実性を踏まえつつ、複線的なシナリオを描きながら、カーボンニュートラルに向けた取り組みを進め、脱炭素社会の実現に向けて最大限取り組んでいく。
当社グループは、あらゆる業務運営においてコンプライアンス最優先に進めることを経営の基本とし、コンプライアンス徹底の取り組みに努めるとともに、コンプライアンスに反する行為に対しては、速やかな是正措置をとることとしているが、仮に重大な事案が発生した場合には、当社グループへの社会的信用が低下し、円滑な業務運営に影響を与える可能性がある。
当社としては、コンプライアンス経営推進宣言における3つの行動「良識に照らします、率直に話します、積極的に正します」を踏まえ、役員率先垂範のもと、コンプライアンス最優先の業務運営の徹底に取り組んでいく。また、グループ会社においてもコンプライアンス最優先の業務運営が行われるよう、各社を支援・指導していく。
なお、当社は、2021年4月13日及び7月13日に、他の旧一般電気事業者等と共同して顧客の獲得を制限している疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受けており、引き続き、公正取引委員会の調査に協力し、適切に対応していく。
(5) 災害・トラブルの発生
電気事業を中心とする当社グループは、電力供給設備をはじめ多くの設備を保有している。大規模な地震、台風等の激甚な自然災害、テロ等の不法行為、新型コロナウイルス等の重篤な感染症の蔓延、需給ひっ迫、その他の理由によるトラブルの発生により、それら設備をはじめ業務システムや多くの従業員等が被害を受けるほか、調達コストが大幅に増加するなどの可能性がある。その結果として、設備の復旧や代替火力燃料・電力の市場調達などに係る費用の増加や売上高の減少を余儀なくされるほか、停電の長期化などによる社会的信用やブランドイメージの低下、経済活動の停滞に伴う販売電力量の減等による売上高の減少、工事や資機材調達において支障が生じることによる費用の増減、インバランス料金の増減等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
当社グループとしては、国の法令等に準拠した電力設備設計や計画的な修繕、従業員に係る災害予防、災害応急対策及び災害復旧を図るための防災等に係る各種業務計画の策定、事業継続のための体制整備、防災訓練及び需給ひっ迫に関する国の審議会の検討結果も踏まえ、適切に対応する。
(6) 燃料価格、外国為替相場及び卸電力市場価格の変動
燃料価格、外国為替相場及び卸電力市場価格の変動により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
燃料価格や外国為替相場の変動は、「燃料費調整制度」により電気料金へ反映され、業績への影響は緩和される。ただし、一部のお客さまには上限価格が設定されており、上限価格を超える部分については電気料金に反映できない。
当社としては、今後の大型電源の稼働により、電源構成に占める火力発電及び卸電力調達の割合を低減するとともに、デリバティブ取引等の金融手法を活用することにより、燃料価格、外国為替相場及び卸電力市場価格の変動リスクの低減に努めている。
2022年3月末時点で、当社グループの有利子負債残高は2兆5,277億円であり、市場金利の変動及び格付の変更に伴う調達金利の変動により支払利息が増減し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ただし、有利子負債残高の多くは固定金利で調達した長期資金(社債や長期借入金)であるため、業績への影響は限定的と考えられる。
また、2022年3月末時点で当社グループの退職給付債務は2,320億円及び年金資産は2,385億円である。退職給付費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されており、金利・株価等の変動に伴う割引率や運用利回りの変動により、退職給付費用が増減し、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。ただし、当社グループは年金資産をリスクを抑えた資産構成で運用しているため、業績への影響は限定的と考えられる。
小売電気事業における他事業者との競争激化に伴う、当社から他事業者へのスイッチングの増加等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。当社グループとしては、家庭用から事業用までエネルギーに関する多様なニーズに対し、付加価値の高いサービスを提供し、事業基盤である中国地域のお客さまに引き続き選択していただけるよう取り組んでいくとともに、中国地域外においても、首都圏や関西地域を中心とした営業活動などにより、収益の拡大に向け取り組んでいく。
また、新たな市場などでの市場取引をはじめ収益性が見込める販売チャネルを活用し、電力販売利益の最大化を図る。
当社グループは、電気事業におけるお客さまの情報をはじめとして、多くの業務情報を保有している。これらの業務情報が、高度化・巧妙化するサイバー攻撃等により外部に漏えいした場合、社会的評価の低下を招くほか、当社グループの業績は影響を受ける可能性がある。
当社としては、管理体制とともに情報管理基本方針及び個人情報保護方針等の社内ルールを整備し、定期的な教育・訓練により遵守するよう徹底している。また、技術的セキュリティ対策の継続的な見直しを行うこと等により、厳重に業務情報の管理を行っている。
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