業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」といいます。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。収益認識会計基準等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項  (会計方針の変更等)及び(セグメント情報等)」をご参照ください。

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の分析

①  概要

当期におけるわが国経済は、一部に持ち直しの動きがみられたものの、度重なる新型コロナウイルス感染症の拡大により、先行きが不透明な状況が続きました。また、ロシアによるウクライナ侵攻等、想定外の国際情勢の変化により、不透明感が増しています。

こうした経営環境のもと、当社グループは、「暮らしとビジネスの“さらなる進化”のお役に立つ企業グループ」となることを目指し、積極的に事業活動を展開してまいりました。

当期の売上高は、 国内エネルギー事業でのLNG価格の上昇や原料費調整制度に基づきガス販売単価が高めに推移したことによる増収、海外エネルギー事業での米国上流事業やフリーポートLNGプロジェクトでの増収等により、 前期に比べて 2,227億円増 ( +16.3% )の 1兆5,868億円 となりました。 経常利益は、海外エネルギー事業は増益であったものの、国内エネルギー事業での原料価格の変動がガス販売単価に反映されるまでのタイムラグによる減益影響(※)等により、 172億円減 ( △13.5% )の 1,104億円 となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、 米国の連結子会社において、法人税等調整額(益)を計上したことなどにより、 473億円増 ( +58.6% )の 1,282億円 となりました。

※原料価格の変動が原料費調整制度に基づくガス販売単価に反映されるまでには一定の時間差があるため、一時的な増減益要因となります。当期・前期は一時的な減益要因となっております。

 

当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期との比較については、変更後の報告セグメントに基づいております。

 

②  売上高

売上高は、国内エネルギー事業セグメントでのLNG価格の上昇や原料費調整制度に基づきガス販売単価が高めに推移したことによる増収、海外エネルギー事業セグメントでの米国上流事業やフリーポートLNGプロジェクトでの増収等により、前期に比べて2,227億円増(+16.3%)の1兆5,868億円となりました。当社グループのセグメント別売上高の中で最も大きな割合を占める国内エネルギー事業セグメントの売上高は、LNG価格の上昇や原料費調整制度に基づきガス販売単価が高めに推移したことなどにより、前期に比べて1,777億円増(+15.3%)の1兆3,361億円となりました。

ガス供給件数は、前期末に比べて2.3%減502万6千件となり、ガス販売量は、前期に比べて0.9%減70億9千6百万m3となりました。

ガス販売量の状況を用途別に見ると、家庭用ガス販売量は、競合影響等により、前期に比べて2.6%減18億5千4百万m3となりました。業務用等のガス販売量は、特定のお客さま設備の稼働減少等により、前期に比べて0.2%減52億4千2百万m3となりました。

家庭用のガス機器・サービスにつきましては、給湯、暖房、調理等の機器・設備に加え、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」等の商品の開発及び販売拡大に努めるとともに、ガス機器・水まわりの修理等や防災・防犯に関する「住ミカタ・サービス」等の各種サービスの提供に努めました。

 

2021年9月、「エネファーム」の累計販売台数が15万台を突破いたしました。停電時も電気と熱を供給する自立運転機能を備えた機種も用意しております。本年3月、お客さま一人ひとりのニーズに対応したインターネットサービス「さすガねっと」の提供を開始いたしました。通信速度や月額料金、サービス内容等が異なる3つのプランを用意しております。また、ガス料金メニュー「GAS得プラン」をリニューアルし、ガス・電気・インターネットをまとめてお得になる料金メニュー等の受付をあわせて開始いたしました。また、本年3月、他の事業者と連携して、お客さまの暮らしのお役に立つ商品やサービスをパソコンやスマートフォン等を介して提供する新サービス「スマイLINK」の提供を開始いたしました。

業務用のガス機器・サービスにつきましては、コージェネレーションシステム、冷暖房システム、厨房機器、ボイラ、工業炉、バーナ等の商品の開発及び販売拡大に努めました。また、エンジニアリング力を活用し、脱炭素化・分散化・デジタル化の視点でお客さまの様々な経営課題を解決する「D-Lineup(ディーラインアップ)」等、お客さまのニーズに応じた高付加価値のソリューションの提供に努めました。

2021年4月、脱炭素社会の実現に向けて、法人のお客さま向けに、カーボンニュートラルな都市ガスの受付を開始し、同年8月から供給を開始いたしました。

低圧電気供給件数は、前期末に比べて6.8%増161万3千件となり、電力販売量は、前期に比べて3.9%増167億6千万kWhとなりました。

ガスとセットでお得にご利用いただける電気料金メニューや、お客さまのライフスタイルや趣味にあわせた電気料金メニュー等、多彩な料金メニューの提供に努めました。2021年4月、法人のお客さま向けに、脱炭素に資する新料金メニュー「D-Green(ディーグリーン)」シリーズの受付を開始いたしました。

2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギー電源の拡大に積極的に取り組みました。海外エネルギーセグメントに含まれる海外分も含め、再生可能エネルギー電源の普及貢献量は、当期末時点で約140万kWとなりました。

当期は、宮崎県日向市におけるバイオマス発電事業(発電容量5万kW、2024年11月営業運転開始予定。出資比率35%)、岩手県雫石町等の国内4か所における太陽光発電事業(発電容量計約6万kW、営業運転開始済。匿名組合出資比率各20%)及び青森県上北郡横浜町における陸上風力発電事業(発電容量約4万kW、2023年4月営業運転開始予定。匿名組合出資比率39%)等に参画いたしました。

2021年9月、北海道寿都郡寿都町及び磯谷郡蘭越町における尻別風力開発㈱の陸上風力発電所(発電容量約3万kW)が営業運転を開始いたしました。

2021年9月、株式会社三菱UFJ銀行やNTTアノードエナジー株式会社等の8社とともに、再生可能エネルギーに投資するファンドの創設に向けた事業運営会社を設立いたしました。

海外エネルギー事業セグメントの売上高は、米国上流事業やフリーポートLNGプロジェクト等の増収により、前期に比べて364億円増(+82.4%)の807億円となりました。

米国テキサス州でシェールガス生産開発事業を行うサビン社(Sabine Oil & Gas Corporation。出資比率100%)は、開発が順調に進み、ガスの生産量が計画を上回るなど、業績は順調に推移いたしました。

北米における再生可能エネルギー事業につきましては、2021年9月、米国ノースカロライナ州において、ブライターフューチャー太陽光発電所(発電容量約2万kW)の持分50%を取得し、本年1月、営業運転を開始いたしました。また、米国の太陽光発電開発事業者2社と、米国における太陽光発電所の共同開発に関する契約を締結いたしました。

アジアにおけるエネルギー供給事業につきましては、2021年12月、インド南部を中心とした地域で都市ガス事業等を行う事業会社の持分の一部を取得いたしました。

ライフ&ビジネス ソリューション事業セグメントの売上高は、前期に比べて205億円増(+9.5%)の2,370億円となりました。

都市開発事業を展開する大阪ガス都市開発㈱は、当期中に「アーバネックス大阪天満橋」(大阪府)等の17物件の賃貸マンションを取得し、資産の拡充に努めました。また、「シーンズ上本町」(大阪府)等の2物件の分譲マンションが竣工いたしました。

情報ソリューション事業を展開する㈱オージス総研は、企業情報システムのコンサルティング・設計・開発・運用や、データセンター・クラウドサービス等、総合的なITサービスの提供に努めました。

 

材料ソリューション事業を展開する大阪ガスケミカル㈱は、ファイン材料、炭素材製品、保存剤等、付加価値の高い材料等の開発及び販売拡大に努めました。木材保護塗料の「キシラデコール」は、2021年に国内での販売開始から50周年を迎えました。

 

③  売上原価、供給販売費及び一般管理費

売上原価は、原材料費が増加したことなどにより、前期に比べて2,400億円増(+26.0%)の1兆1,618億円となりました。供給販売費及び一般管理費は、ほぼ前期並みの3,301億円となりました。

 

④  営業損益

国内エネルギー事業セグメントでは、営業利益は、原料価格の変動がガス販売単価に反映されるまでのタイムラグによる減益影響等により、前期に比べて488億円減(△57.3%)の364億円となりました。

海外エネルギー事業セグメントでは、営業利益は、フリーポートLNGプロジェクトや米国上流事業等の増益により、前期に比べて301億円増(+834.1%)の337億円となりました。

ライフ&ビジネス ソリューション事業セグメントでは、営業利益は、情報ソリューション事業で新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が緩和したことなどにより、前期に比べて42億円増(+21.9%)の235億円となりました。

以上の結果、営業利益は前期に比べ、175億円減(△15.6%)の949億円となりました。

 

⑤  営業外損益、経常利益

営業外収益は、ほぼ前期並みの340億円となりました。

営業外費用は、ほぼ前期並みの184億円となりました。

この結果、営業利益に営業外損益を加えた経常利益は、前期に比べて172億円減(△13.5%)の1,104億円となりました。

 

⑥  特別損益

特別利益は、前期に比べて238億円増238億円となりました。これは当期に関係会社投資有価証券売却益等を計上したことによるものであります。

特別損失は、ほぼ前期並みの183億円となりました。

 

⑦  親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、米国の連結子会社において、法人税等調整額(益)を計上したことなどにより、前期に比べて473億円増(+58.6%)の1,282億円となりました。1株当たり当期純利益は、前期の194.48円に対し、当期は308.48円となりました。

 

⑧  収益性、成長性に関する経営指標

当社グループは、2021年3月に策定した中期経営計画2023「Creating Value for a Sustainable Future」における2023年度計画として、ROIC(投下資本利益率)5.0%程度を収益性、成長性の経営指標として掲げております。

当期は、収益性、成長性の経営指標として、連結ROE(自己資本当期純利益率)6.6%、連結ROIC(投下資本利益率)4.4%、連結EBITDA(※)2,000億円を計画として掲げ、連結ROE(自己資本当期純利益率)11.0%、連結ROIC(投下資本利益率)7.0%、連結EBITDA(※)2,166億円の実績となりました。

上記の経営指標の推移を踏まえながら、当社グループは引き続き収益性、成長性の向上に努めます。

※営業利益+減価償却費+のれん償却額+持分法投資損益

(注) 1  上記のセグメント別売上高、セグメント損益には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでおります。

2  本報告書では、ガス量はすべて1m3当たり45MJ(メガジュール)で表示しております。

 

 

(2) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①  キャッシュ・フロー

当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、前期に比べて744億円収入減1,453億円の収入となりました。これは、棚卸資産の増加による支出が前期に比べて738億円増加したことなどによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて461億円支出減1,521億円の支出となりました。これは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入が前期に比べて90億円減少した一方で、関係会社株式の売却による収入が前期に比べて521億円増加したことなどによるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べて288億円支出増の304億円の支出となりました。これは、社債の償還による支出が前期に比べて200億円減少した一方で、社債の発行による収入が前期に比べて350億円減少したこと、長期借入金の返済が前期に比べて158億円増加したことなどによるものであります。

以上の活動の結果、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べて359億円減の1,307億円となりました。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、社債、借入金及び自己資金を財源としながら、ガス事業の基盤である本支供給管等の品質向上投資や、国内エネルギー、海外エネルギー、ライフ&ビジネス ソリューションへの成長投資を行っていきます。

 

②  資産・負債及び純資産

当期末の総資産は2兆5,698億円となり、前期末に比べて2,564億円増加しました。これは、投資の進捗等により有形固定資産が前期末に比べて856億円増加したこと、原料価格の上昇等により棚卸資産が前期末に比べて512億円増加したことなどによるものであります。

当期末の負債は1兆2,856億円となり、前期末に比べて869億円増加しました。これは、原料価格の上昇等により支払手形及び買掛金が前期末に比べて444億円増加したことなどによるものであります。

当期末の純資産は1兆2,841億円となり、前期末に比べて1,695億円増加しました。これは、株主資本が利益剰余金の増加等により前期末に比べて1,035億円増加したこと、その他の包括利益累計額が為替換算調整勘定の増加等により前期末に比べて742億円増加したことなどによるものであります。

以上の結果、当期末の自己資本比率は49.0%となり、前期末に比べて2.3ポイント増加しました。

 

③  財務政策

当社グループは、2017年3月に策定した長期経営ビジョン2030「Going Forward Beyond Borders」・2021年3月に策定した中期経営計画2023「Creating Value for a Sustainable Future」において経営指標を定めました。財務健全性指標としては、連結D/E比率(有利子負債/自己資本)(※)0.7程度、連結自己資本比率(※)50%程度を中長期的に維持していくことを掲げております。

※利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の資本性50%を調整

当社グループはこれまで、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)及びGCMS(グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム)の導入によるグループ全体の資金効率向上策、フリーキャッシュフローを活用した有利子負債の削減や自己株式取得等の投下資本効率向上策やグローバル財務ガバナンスの向上策の実施のほか、事業遂行上の様々なリスクに起因する収益変動をヘッジするための財務リスクマネジメント等の取組みを通じて、財務健全性の維持・向上を図ってきました。なお、当該GCMSにおいては、預入金及び借入金の相殺表示を行っており、当連結会計年度末の相殺金額は648億円であります。

当期においては、有利子負債が前期末に比べて296億円増加したものの、連結D/E比率は0.65(劣後特約付社債考慮後(※):0.54)、連結自己資本比率は49.0%(劣後特約付社債考慮後(※):52.4%)となっており、財務健全性を維持しております。

今後も長期経営ビジョン2030・中期経営計画2023の実現に向け、資金効率・資本効率のさらなる向上や財務リスクマネジメント等に積極的に取り組んでいきます。

※利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)1,750億円の資本性50%を調整

 

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項  (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(生産、受注及び販売の状況)

当社グループにおいては、国内エネルギーセグメントにおいて当社及び名張近鉄ガス㈱等が営むガス事業が生産活動の中心となっており、販売活動では、ガス事業に加えて、当社等が営む電力事業の比重も高まりつつあります。また、当該セグメント以外のセグメントが生産・販売する製品やサービスは広範囲かつ多様であり、受注形態をとらないものも多くあります。

このため、以下は、国内エネルギーセグメントにおけるガス事業の生産実績及び販売実績、並びに電力事業の販売実績について記載しております。

(1) 生産実績

(ガス)

当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

製品

生産量(百万m3)

前期比(%)

ガス

7,258

△0.7

 

 

(2) 受注状況

(ガス)

ガス販売については、その性質上受注生産は行いません。

 

(3) 販売実績

(ガス)

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

 

家庭用

1,854

百万m3

(△2.6)

ガス販売量

業務用等

5,242

百万m3

(△0.2)

 

7,096

百万m3

(△0.9)

ガス供給件数

5,026

千件

(△2.3)

 

(注) (  )内数値は前期比(%)であります。

 

(電力)

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

電力販売量

小売

6,189

百万kWh

(+8.2)

卸等

10,571

百万kWh

(+1.5)

16,760

百万kWh

(+3.9)

低圧電気供給件数

1,613

千件

(+6.8)

 

(注) (  )内数値は前期比(%)であります。

電力販売量は、電力販売に係る収益を「収益認識に関する会計基準の適用指針」第103-2項に基づき見積り計上していることから、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた使用量の見積りを反映させたものを記載しております。前期比は、前年同期の毎月の検針による使用量の計量に基づいた電力販売量と比較しております。

 

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