業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、「新基準」といいます)等を適用しております。前連結会計年度以前につきましては、新基準等適用前の数値を使用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

① 当連結会計年度の事業環境に対する経営陣の認識

当連結会計年度における当社グループの属する情報サービス産業は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」といいます)拡大の影響により、引き続き厳しい状況が続いているものの、本格的なDX時代の到来を迎え、グループ経営下での新たな事業ポートフォリオへの転換、企業経営のデジタル化を加速させる動きやニューノーマル時代を見据えた投資が行われてきました。

 

② 当連結会計年度の取り組み

このような状況下、当社グループは、安全・安心な社会の創生をコンセプトとする「2023中期経営計画」の初年度となる当期は、その土台構築と位置付けて、2021年4月より新たにDX事業を強力に推進するための専任組織を新設し、既存事業部門の人員の大幅シフトを実施、マーケティング活動、研究開発、人材育成に積極的に取り組みました。さらに、業務資本提携先である株式会社三菱総合研究所グループ他、お客様のDXニーズに資するソリューションを有する企業との協業を推進いたしました。

当社の主要事業である自治体ビジネス分野におきまして、総務省策定の「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」に基づき、2025年度予定の自治体業務システムの標準化仕様が2021年8月に明らかになりました。これら自治体システムの標準化は、当社基幹商品の「WebRings」の開発、販売戦略の大幅な見直しを強いられましたが、既存の行政手続き・行政事務、さらには周辺業務のデジタル化に向けた大きなDXビジネスチャンスと捉え、自治体のDX化を支援する有力なソリューションとして、自治体との各種実証実験や、先進的な技術を要する機能の開発、複数企業とのアライアンスを通じたソリューションの組込み等、新たな施策を推進しました。

また、ニューノーマル時代を見据えた取り組みとしては、新型コロナの拡大防止に努めつつ、社員の積極的なテレワークや時差出勤の推進、会議のオンライン化、サテライトオフィスの整備などを進め、全社ベースでの生産性向上を図るとともに、中長期的に持続可能な経営の実現に向けた「働き方改革」を継続しました。

資本政策においては、「2023中期経営計画」におけるROE7%の達成と株主還元強化を目的に2021年8月から2022年3月までに総額46億円の自己株式取得を実施しました。また、株式会社東京証券取引所の市場区分再編に伴い、当社は2022年4月をもって新市場区分である「プライム市場」に移行しました。

 

③ 経営成績及び財政状態の状況

当連結会計年度の売上高は400億33百万円と、主に金融分野やグループ会社での減収を主因として前期比3.7%減となりました。業種別には、公共分野につきましては、新型コロナワクチン接種、各種福祉関連給付金に関わる制度・施策案件などがあり、166億68百万円(前期比2.5%減)と、前期並みの水準の売上高を計上しました。金融分野につきましては、新型コロナの影響を最も受けた前々期以降、金融機関を中心にデジタル化に向けたシステム投資が回復基調にありますが、当期は前期比、減収の114億19百万円(同4.8%減)となりました。産業分野につきましては、小売業などのIT投資需要の回復に伴い、69億42百万円(同2.5%増)と増収となりました。その他グループ会社において前期に売上増加に寄与したBPO入札案件が、当期には案件規模が縮小したことにより50億3百万円(同12.3%減)と減収となりました。

商品・サービス別では、公共分野における新型コロナ対策案件等の拡大により運用が増加しました。

当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、以下、業種別及び商品・サービス別の売上高を示しております。

[業種別連結売上高]

(単位:百万円)

 

区分\期別

前連結会計年度

当連結会計年度

対前年
増減率

自 2020年4月1日
至 2021年3月31日

自 2021年4月1日
至 2022年3月31日

金額

構成比

金額

構成比

公     共

17,095

41.1%

16,668

41.6%

△2.5%

金     融

11,999

28.9%

11,419

28.6%

△4.8%

産     業

6,772

16.3%

6,942

17.3%

2.5%

そ  の  他

5,706

13.7%

5,003

12.5%

△12.3%

合     計

41,573

100.0%

40,033

100.0%

△3.7%

 

[商品・サービス別連結売上高]

(単位:百万円)

 

 

区分\期別

前連結会計年度

自 2020年4月1日

至 2021年3月31日

当連結会計年度

自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

対前年

増減率

金額

構成比

金額

構成比

システム開発

16,489

39.7%

15,560

38.9%

△5.6%

運用

12,642

30.4%

14,029

35.0%

11.0%

システム保守

5,084

12.2%

5,030

12.6%

△1.0%

情報機器販売

2,237

5.4%

1,126

2.8%

△49.7%

その他

5,119

12.3%

4,285

10.7%

△16.3%

合     計

41,573

100.0%

40,033

100.0%

△3.7%

 

損益面においては、国による自治体システム標準化の動きに備えたソフトウェア投資戦略の大幅な見直し、ニューノーマル対応のための各種インフラ整備などの一過性のコスト増、自治体DXに対応するための研究開発費増、グループ会社等の減収影響などがあり、営業利益は19億63百万円(前期比29.5%減)、経常利益は20億60百万円(同29.6%減)と大幅な減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益では、13億円(同9.2%減)となりました。

当連結会計年度末における財政状態は、総資産は468億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億33百万円減少しました。

流動資産は、主に自己株式の取得等に伴う支出により28億99百万円減少し、223億23百万円となりました。固定資産は、ソフトウエアの償却等により15億33百万円減少し、245億4百万円となりました。

流動負債は、主に未払法人税等の増加により2億33百万円増加し、61億17百万円となりました。固定負債は、4億90百万円減少し、60億89百万円となりました。

純資産は、自己株式の取得等により41億75百万円減少し、346億20百万円となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます)は前連結会計年度末に比べ6億36百万円減少し、97億31百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、64億27百万円(前期比235.2%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上19億26百万円、売上債権の減少14億82百万円等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は14億22百万円(同87.7%減)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出8億96百万円、有形固定資産の取得による支出7億40百万円等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は56億41百万円(同480.8%増)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出45億69百万円、配当金の支払額10億53百万円等によるものです。

 

⑤ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における商品・サービス別の生産実績を示しております。

商品・サービスの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

前年同期比(%)

システム開発(百万円)

15,081

94.2

運用(百万円)

14,036

111.0

システム保守(百万円)

5,055

101.0

情報機器販売(百万円)

845

34.6

その他(百万円)

4,261

83.1

合計(百万円)

39,280

95.3

 (注)金額は売価換算によっております。

 

b.受注実績

 当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における当社グループ全体の受注実績を示しております。

受注高(百万円)

前年同期比(%)

43,298

104.9

 

 

c.販売実績

 当社グループの事業は、情報サービス事業の単一セグメントのため、当連結会計年度における商品・サービス別の販売実績を示しております。

商品・サービスの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

前年同期比(%)

システム開発(百万円)

15,560

94.4

運用(百万円)

14,029

111.0

システム保守(百万円)

5,030

99.0

情報機器販売(百万円)

1,126

50.3

その他(百万円)

4,285

83.7

合計(百万円)

40,033

96.3

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載については、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ 経営成績及び財政状態の状況」に記載しております。

(財政状態について)

 中期経営計画におけるROE7%の達成と株主還元強化を目的に2021年8月から2022年3月までに総額46億円の自己株式取得を実施しました。なお、2022年3月末のROEは、(1) 経営成績等の状況の概要に記載のとおり、一過性のコスト増により、分子である親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったため3.5%でした。

 

(経営成績について)

 当社の過去10年の連結業績推移は図1のとおりであります。

0102010_001.png

 

 

当連結会計年度においては、公共分野では新型コロナワクチン接種、各種福祉関連の給付金などに関わるBPO案件などにより運用ビジネスが拡大しましたが、2025年度に予定される国による自治体システム標準化(以下、「国標準化」といいます)を前に新規のシステム投資を手控える動きなどシステム開発が減少したことや、一部売上の期ずれの発生などもあり、売上高は引き続き高い水準ながらも前期比では△2.5%の微減となりました。損益面は、「国標準化」に備え、自治体向け総合行政情報システムWebRingsの開発・販売戦略の見直しを実施、臨時的な評価損計上したことが同分野の損益面で大きなマイナス要因となりました。

金融分野では、新型コロナの影響を受けた前々年度からは、顧客の投資姿勢に回復傾向が見られますが、前期に見られた大口の情報機器販売が当期にはなかったことから、売上高は前期比△4.8%となりました。損益面では、コロナによる開発プロジェクトの遅延などの影響も薄れ、改善傾向にあります。

産業分野では、小売業などで投資の回復傾向が持続、売上高は前期比2.5%の増収へと転じ、損益面でも金融分野同様に回復基調にあります。

その他分野では、子会社において前期に売上増加に寄与した大型入札案件が、当期には案件規模が縮小したことから、前期比△12.3%の減収となりました。

以上の結果、図3のとおり基礎的収益力を示す売上高営業利益率は連結全体で4.9%に低下しましたが、主に公共分野での「国標準化」に備えた一過性のコスト増によるものが主因であり、当該コストを除けば、実質的には7%の売上高営業利益率を達成できております。

0102010_002.png

注)図2につきましては、2019年度に顧客業種別を一部変更しており、2018年度につきましても、当該変更後の区分による数値を用いています。

 

(経営成績に重要な影響を与える要因について)

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

なお、新型コロナの感染再拡大による経済環境の悪化、ロシアによるウクライナ侵攻による政治・経済・軍事情勢の急激な悪化の影響などにより、システム開発プロジェクトの進行遅延など、引き続き翌年度の当社業績は少なからずマイナス影響を受ける可能性があります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローについて)

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況等は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ④ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

資本の財源につきましては、財務の健全性や資本の効率性など当社グループにとって最適な資本構成を追求しながら、将来の成長のための内部留保の充実と株主の皆様への利益還元との最適なバランスを考え、安定した財源を維持することを基本としております。

また、当社グループは短期の運転資金につきましては原則自己資金で賄うこととし、設備投資や長期の運転資金につきましては自己資金または金融機関からの長期借入で賄うこととしており、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本としております。なお、当連結会計年度末における金融機関からの借入金残高はありません。

なお、新型コロナの感染拡大や、ウクライナ情勢による経済環境の悪化は、営業活動の停滞やシステム開発プロジェクトの進捗遅れなどを通じて今後の当社業績へも少なからずマイナス影響を及ぼす可能性がありますが、現状の純資産額の水準ならびに資金状況から事業運営上、支障はありません。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナの影響は、確実性に乏しく、見積りに反映させることが難しい要素もありますが、入手可能な情報を基に見積りを行っております。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。

(受注制作のソフトウェアに係る収益及び費用の計上基準)

受注制作のソフトウェア開発について、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合に、その進捗を発生したコストに基づくインプット法(原価比例法)により見積って収益を認識しております。なお、収益総額、見積原価総額及び決算日における進捗率について、当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。

(受注損失引当金)

受注制作のソフトウェア開発のうち、原価総額が収益総額を超過する可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合、損失見込額を受注損失引当金として計上しています。ただし、受注制作のソフトウェア開発は契約ごとの個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、契約時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況及び採算性等によって損失額が大きく変動する可能性があります。

(市場販売目的のソフトウェア)

市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法につき、見込販売本数に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額のいずれか大きい額を減価償却費として計上しております。なお見積有効期間は3年以内であります。販売期間の経過に伴い、減価償却を実施した後の未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、当該超過額を一時の費用として計上しております。したがって、これらの金額は将来の当該ソフトウェアの販売見込により影響を受ける可能性があります。

(退職給付に係る負債)

退職給付債務及び年金資産は、割引率、年金資産の長期期待運用収益率等の将来に関する一定の見積数値に基づいて算定されています。退職給付債務の計算に用いる割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しています。また、年金資産の長期期待運用収益率は、将来の収益に対する予測や過去の運用実績を考慮して決定しています。見積数値と実績数値との差異や、見積数値の変更は、将来の退職給付債務及び退職給付費用に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(繰延税金資産)

繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合は繰延税金資産の計上額が大きく変動する可能性があります。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得