研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、将来の技術開発を支える基盤的技術として、三次元化技術やIOT技術そして地盤情報データベースの開発を行うとともに、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、AI等のDX技術を積極的に活用して、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するための技術および製品の研究開発を進めております。

今期も新型コロナウィルスの感染が全世界で猛威を振るい、さらにこれに起因するサプライチェーンの混乱による影響を製品製造部門は受けております。各国の経済対策に加え、原油等の資源価格も回復したことにより炭素エネルギーを始めとした地下資源産業に多くを依存してきた海外に拠点をもつ当社グループ各社にとっては部分的に追風となった側面はあるものの、周囲をとりまく経営環境は依然不透明です。一方、地球温暖化にともなう気候変動による洪水や地すべり等の土砂災害は激甚化し、地震災害なども含む自然災害の脅威はますます増大しています。

企業活動に対しては、脱炭素の流れが加速し、SDGsやESGに配慮した経営への関心が高まっており、このような世界の情勢に対応した技術を創出していくことが求められています。地球科学に関わる事業を担っている当社グループにとっても、最新の地球科学にもとづく研究開発をさらに加速して推進していくことが求められます。

BIM(Building Information Modeling)は、インフラストラクチャの計画、調査、設計、施工、維持管理までの全てのステージの情報を連携させ、事業者や施工者のみならず地域住民も含む全てのステークホルダー間で共有し、管理するライフサイクルマネジメントの取り組みです。海外では、欧州やシンガポールなどで、建設事業における三次元情報の相互連携を可能にするBIMが公共事業のみならず民間プロジェクトでも普及しつつあります。BIMは建築構造物を対象として発展してきたため、地盤の構造や地中埋設物のモデル化と、それをBIMに組み込むまでのプロセスの標準化が遅れています。当社グループは、世界に先駆けてBIMにおける地盤モデルの開発と標準化に取り組んでおります。当社は2018年にBIMの国際標準化機関であるbSI(building SMART International、本部:英国)に加入し、地盤モデルの規格案を策定するコモンスキーマプロジェクトとトンネルプロジェクトに運営メンバーとして参画し、地盤のモデル化と標準化に向けた提言を積極的に発信するとともに、関連する研究開発を行っております。また、地盤モデルの作成、解析、情報連携に必要なソフトウェア群をGeoToolsとして開発し、販売しております。

研究開発は、当社の技術本部研究開発センターが中心となり、IOT技術やAI技術を利用してDXを推進する情報企画本部や8事業部(計測システム事業部、情報システム事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、地震防災事業部、地球環境事業部、流域・水資源事業部、エネルギー事業部)そして当社グループ会社が連携して実施しております。

研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることにも積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、国内外の大学への寄付講座の設定、研究員の派遣、コンソーシアムへの参加を行っております。また、オープンイノベーションを実現するため、業種の異なる企業との技術開発や製品開発を積極的に行っております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は1,454百万円でありました。

 

(1) インフラ・メンテナンス事業

インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、道路、トンネル、堤防、建築基礎などのインフラストラクチャの建設と維持管理に関するソリューション開発を行っております。

今期は、当社の有する地中レーダ探査装置やノウハウと株式会社日立製作所の有するAIや画像解析技術を組み合わせて地中のガス管や水道管といった埋設物に関する位置や寸法などを高精度に可視化・一元管理し、地下掘削工事などで必要となる埋設物情報を提供する「地中可視化サービス」を開発し、サービス提供を開始しました。

また、老朽化する道路構造物の維持管理分野では、トンネルやカルバートの三次元形状や表面の状況を自動計測し、AIを用いて診断するシステムや道路のり面の安全確保のために設置されたグランドアンカーの状況を効率的に検査する方法を開発し、市場投入を開始しました。

海外グループ会社のGEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、インフラ・メンテナンス用途向けの地中レーダの次世代機の開発、および、それに付随するサービス提供に関わる開発を行っています。

現在、コンクリート構造物点検用として多くのユーザにお使いいただいている Structure Scan シリーズの地中レーダなどの後継機種の検討を行っています。今後の開発においては、設計・製造方法を一新して他のシリーズの製品と共通化を図ることで、顧客ニーズに応じた多品種機種の開発、製造、修理対応が効率的に、かつ、迅速に応えることができる体制に転換することを目指しています。

当連結会計年度における研究開発費の金額は659百万円であります。

 

(2) 防災・減災事業

 防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。

今期は、激甚化する降雨災害や降雨に伴う斜面災害に対応するため広域災害監視ソリューションの構築を目指したクラウドベース監視システムの機能強化を図るとともに、災害を早期に検知するネットワーク対応の監視センサとして、クリノポール(斜面傾斜計)の品揃えの強化や簡易雨量計の開発を行い、センサーラインナップを強化しました。

政府が主導するSIPプロジェクトでは、災害危険個所を自動抽出する技術や大規模災害時に飲料水を確保する技術の開発に参画しております。また、自治体や地域住民へ避難情報を迅速に提供するため、センサーネットワークで観測された災害関連データに加え公的に利用可能な情報を一元管理して提供するシステムの社会実装にも取り組んでおります。

海外グループ会社のKINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして地震防災に必要な地震計の製品開発、および、ソリューション提供を行っています。しかしCOVID-19によって発生した全世界的な物流の停滞への対応、老朽化した使用部品の代替のための製品の再設計が発生するなどで開発作業への影響があるものの、昨年に引き続いて低価格タイプの新しい地震データ収録機の開発に取り組んでいます。

また、橋梁、ダム、プラントなどの構造物の維持管理などの新たな市場開拓に向けて、それに対応できる地震観測システムの構築も行っています。

 当連結会計年度における研究開発費の金額は353百万円であります。

 

(3) 環境事業

環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。

2020年から開始した建設工事で発生する有害重金属を含んだ廃土を安全かつ経済的に処理する技術の開発では、今期は実証事件を実施するとともに、実用化に向けて公的研究機関や総合建設会社とコンソーシアムを設立しました。

地方自治体のSDGsやESGに係わる目標設定やその達成を支援するため、地域の地盤特性や自然環境の特性を活かした開発可能性を評価するポジティブゾーニングの技術開発を行い、自治体向けの提案活動を開始しました。

また、発展途上国のグリーンインフラ整備を通じて国際的な事業展開を図るために実施しているウズベキスタンの荒廃地の緑化プロジェクトでは、緑化に用いる植物の選定や保育苗の育成技術の実証実験で効果が確認されました。2022年以降は、得られた知見や開発した技術を用いて緑化プロジェクトの事業化を開始する予定です。

当連結会計年度における研究開発費の金額は43百万円であります。

 

(4) 資源・エネルギー事業

資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、再生エネルギー事業開発、ならびにエネルギー関連施設の維持管理に必要な技術開発を行っております。

今期は、洋上風力発電所の立地に関わる地盤調査業務が大きく進展し、海底地盤の形状や強度を探査する海底微動アレイ探査の業務が急増しました。海底浅部地盤の状況を正確に知りたいという要望に応えるため、海底微動アレイ探査の浅部分解能を向上させ、かつROV(海中ロボット)で設置するだけで測定が可能な一体型の極小探査システムを開発し、サービスを開始しました。

海外グループ会社のGEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、鉱物資源探査や土木地質調査向けの製品の開発を行っております。

既にリリースしているドローンに吊り下げて使用する小型の磁気探査装置のMagArrowについては鉱物資源探査だけではなく、土木地質調査用途への発展の期待が大きいものとして、搭載しているGPSの精度向上、顧客の使用時の操作性向上のためのソフトウェアの改良を行っています。

また、MagArrowで使用されている超小型磁気センサ技術を活用して、陸域で使用する既存の磁気探査装置の小型化、軽量化を図ることにも取り組んでいます。

海外グループ会社のROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っています。最近は鉱物資源探査分野以外の洋上風力発電所の立地調査やインフラ整備にともなう土木地質調査用途にも多くの検層機器が使われていますので、鉱物資源探査、土木地質調査の両方の用途に使えるような製品ラインナップの拡充を目指しています。

既に孔内観察用のボアホールカメラはリリースが開始されました。また、解析ソフトウェア( GeoCad )のうち超音波で孔内状況を画像化するモジュールが完成し、次には音波検層の解析ができるモジュールの開発へと順次作業を行っています。

当連結会計年度における研究開発費の金額は397百万円であります。

 

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