<事業環境>
当連結会計年度におけるわが国経済は、前年度から続く新型コロナウイルス感染症のまん延により、緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が繰り返し発出され、社会・経済活動への甚大な影響が継続しました。また足元では、新型コロナウイルスの新たな変異株の発生・拡大や、地政学リスクの急速な高まり、さらには急激な円安進行や各種物価の上昇など、依然として先行き不透明な状況にあります。
このような環境の中で主力の国内教育事業では、2021年度からは中学校、2022年度からは高等学校において新学習指導要領が実施されることや、2021年度からの大学入学共通テストの開始、「GIGAスクール構想」を背景に、コロナ禍において導入が促進された学校でのタブレット活用やオンライン学習の取り組みなど、学習内容だけでなく、学習環境や学びのあり方に劇的な変化が生じています。これにより、新たな教育事業の機会は拡大していますが、新規参入の企業も加わり、競争が一段と激化しており、マーケティング手法や商品戦略等の変革が急務となっています。
Kids & Family事業では、中国における年間出生数の急激な減少や、新規参入企業による競争激化、義務教育段階における学生の「宿題負担減」と「学外教育負担の軽減」を目的とした双減政策等により事業環境が大きく変化していること、また国内においては、少子化の進行やデジタル学習の普及に伴う顧客の志向・ニーズの多様化等を背景に、新規参入企業による競争も激化しており、国内教育事業同様、マーケティング手法や商品戦略等の変革が必要となってきています。
ベルリッツ事業では、新型コロナウイルス感染症拡大により、ランゲージセンターや米国の大学キャンパスの閉鎖が生じる等、厳しい事業環境が継続しました。またICT等を活用した商品・サービスの普及により語学サービスの多様化が進み、語学教育事業の機会が拡大する一方で、競争がさらに激化したこと等により、グループの事業ポートフォリオの中での位置づけを議論し、2022年2月14日公表の「連結子会社に対する債権放棄及び連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ」のとおり、当社が保有するBerlitz Corporationの全株式を譲渡しました。これに伴い、同社の業績は第3四半期連結累計期間の末日までを計上しています。
<当期の業績>
当期の当社グループの連結業績は、前期比増収、営業利益、経常利益は増益となりました。一方で親会社株主に帰属する当期純利益は、Berlitz Corporationの株式譲渡による関係会社株式売却損の計上があったこと等により減益となりました。
増収の主な要因は、Berlitz Corporationの業績が第3四半期連結累計期間の末日までの計上となったこと等による減収があったものの、国内教育事業において、塾・教室事業の顧客数増、学校向け教育事業の受注増等、新型コロナウイルス感染症の影響からの順調な回復があったこと、介護・保育事業において、2021年6月1日付で㈱ハートメディカルケアを連結子会社にしたことです。
営業利益及び経常利益の増益の主な要因は、増収によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益の減益の主な要因は、Berlitz Corporationの株式譲渡による関係会社株式売却損の計上があったことです。
なお、2022年4月の国内通信教育講座「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」の会員数は249万人と、前年同月比23万人の減少となりました。
また、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しております。このため、前期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細については、「第一部 第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)」に記載しております。
当連結会計年度から、新中期経営計画達成を目指すための組織体制に変更したことに伴い、報告セグメントの区分を変更しております。前期との比較については、前期の数値を変更後の区分方法に基づき作成した数値で比較しております。詳細は、「第一部 第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
<セグメントの業績>
(注) 上記に記載している売上高は、「セグメント間の内部売上高又は振替高」を含んだ金額を記載しております。
(注) 上記に記載している調整額には、セグメント間取引消去、各報告セグメントには配分していない全社費用が含まれております。
[国内教育事業]
増収の主な要因は、「進研ゼミ」において延べ在籍数減少による減収等があったものの、塾・教室事業の顧客数増、学校向け教育事業の受注増等、新型コロナウイルス感染症の影響からの順調な回復があったことです。
増益の主な要因は、増収によるものです。
なお、2022年4月の国内通信教育講座「進研ゼミ」の会員数は174万人と、前年同月比17万人の減少となりました。
減収の主な要因は、国内の「こどもちゃれんじ」における価格改定、及び中国の為替換算時のプラス影響による増収に加えて、前期は新型コロナウイルス感染症の影響により中止等が発生した国内のコンサートの回復による増収があったものの、収益認識会計基準等の適用による通信販売事業の減収、国内及び中国の「こどもちゃれんじ」において延べ在籍数減少による減収があったことです。
減益の主な要因は、中国及び国内において、商品・サービス開発のための費用増等があったことです。
なお、2022年4月の国内及び海外における通信教育講座「こどもちゃれんじ」の会員数は179万人と、前年同月比23万人の減少となりました。(ライセンス契約に基づく韓国での幼児向け通信教育講座の会員数は含みません。)
増収の主な要因は、入居介護事業においてコロナ禍における新規契約の減少等による入居率の低下があったものの、2021年6月1日付で㈱ハートメディカルケアを連結子会社にしたこと、入居介護事業において高齢者向けホーム及び住宅数を前期比4ホーム、保育事業において保育園・学童クラブを前期比5拠点拡大したことによる新規拠点の顧客増があったこと、及び収益認識会計基準等の適用による増収があったことです。
減益の主な要因は、増収による増益があったものの、拠点数拡大に伴う労務費の増加や、営業施策の強化に伴う販促費及び原油価格等の高騰による水道光熱費等の増加があったことです。
減収の主な要因は、Berlitz Corporationの全株式を譲渡したことに伴い、同社の業績が第3四半期連結累計期間の末日までの計上となったことです。
営業損失の減少の主な要因は、前期の構造改革に伴うコスト削減効果があったことです。
[その他]
減収の主な要因は、㈱ベネッセインフォシェルにおける収益認識会計基準等の適用による減収によるものです。
(販売実績)
(注) 1.「セグメント間の内部売上高又は振替高」は含んでおりません。
2.当連結会計年度から、組織体制を変更したことに伴い、報告セグメントの区分方法を変更しております。詳細は「第一部 第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
なお、前連結会計年度の販売実績については、変更後の区分方法により作成しております。
3.当連結会計年度から、収益認識会計基準等を適用しており、当連結会計年度の販売実績については、適用後の方法により作成しております。
4.当連結会計年度において、「国内教育事業」セグメントの「中学講座事業」と「その他」の集計方法を変更しております。この変更に伴い、前連結会計年度についても修正を行っております。
5.ベルリッツ事業を構成していた連結子会社Berlitz Corporationについて、当社の保有する全株式を2022年2月14日付で譲渡したことに伴い、当連結会計年度の同社の販売実績は、第3四半期連結累計期間の末日までを計上しております。
(国内教育事業における進研ゼミ事業の概要)
進研ゼミは、小学生から高校生を対象とした通信教育講座であり、通信添削を中心として毎月継続的に行う家庭学習システムであります。各講座の延べ在籍数は次のとおりであります。
(Kids & Family事業の概要)
こどもちゃれんじは、日本、中国、台湾、インドネシアにおける、主に幼児を対象とした通信教育講座であります。各講座の延べ在籍数は次のとおりであります。
2.中国において通信教育事業等を行っている倍楽生商貿(中国)有限公司等2社、及びインドネシアにおいて通信教育事業等を行っているPT. Benesse Indonesiaの決算日は12月末日のため、上記の連結会計年度の延べ在籍数は、1月から12月における延べ在籍数となっております。
(介護・保育事業における高齢者向けホーム及び住宅数)
(ベルリッツ事業における語学レッスン数)
(注)1.語学レッスン数は、直営センターにおける数値を示しております。
2.ベルリッツ事業を構成していた連結子会社Berlitz Corporationについて、当社の保有する全株式を2022年2月14日付で譲渡したことに伴い、当期においては、1月から9月における語学レッスン数となっております。
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、5,405億9千8百万円と、前期比0.3%、13億8千3百万円減少しました。
流動資産は、2,746億5千8百万円と、前期比3.9%、110億3千5百万円減少しました。この減少は、有価証券の増加があったものの、現金及び預金が減少したこと等によるものです。
有形固定資産は、1,568億7百万円と、前期比0.1%、2億8百万円減少しました。
無形固定資産は、395億8千2百万円と、前期比3.6%、13億9千1百万円増加しました。この増加は、主にのれんの増加によるものです。
投資その他の資産は、695億5千万円と、前期比13.9%、84億6千9百万円増加しました。この増加は、主に繰延税金資産、投資有価証券の増加によるものです。
セグメントごとの資産を示すと、次のとおりであります。
[国内教育事業]
国内教育事業の資産は、2,029億4千6百万円と、前期比2.8%、54億7千5百万円増加しました。この増加は、主に預け金等による流動資産のその他の増加によるものです。
Kids & Family事業の資産は、666億1千7百万円と、前期比12.7%、75億2千8百万円増加しました。この増加は、主に商品及び製品、預け金等による流動資産のその他、並びにソフトウエアの増加によるものです。
介護・保育事業の資産は、1,998億5千8百万円と、前期比4.1%、77億9千5百万円増加しました。この増加は、主に繰延税金資産、のれんの増加によるものです。
ベルリッツ事業の資産の減少は、連結子会社Berlitz Corporationについて、当社の保有する全株式を2022年2月14日付で譲渡したことによるものです。
その他の資産は、101億9百万円と前期比2.7%、2億7千9百万円減少しました。この減少は、主に現金及び預金の減少によるものです。
(負債)
当連結会計年度末の総負債は、3,844億3千5百万円と、前期比4.8%、174億9千1百万円増加しました。
流動負債は、1,801億7千7百万円と、前期比2.4%、42億9千8百万円増加しました。この増加は、主に1年内返済予定の長期借入金が増加したこと等によるものです。
固定負債は、2,042億5千7百万円と、前期比6.9%、131億9千2百万円増加しました。この増加は、長期借入金の減少があったものの、収益認識会計基準等の適用により、従来の受入入居保証金について、新たな方法により算定した契約負債を受入入居金として計上したこと等によるものです。なお、当該収益認識会計基準等の適用による影響等で、固定負債は前期比で202億5千7百万円増加しております。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、1,561億6千3百万円と、前期比188億7千4百万円減少しました。この減少は、主に収益認識会計基準等の適用により利益剰余金が減少したこと等によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、298億円減少し、1,142億3千5百万円(前期比20.7%減)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、 244億6千5百万円 の資金の獲得となりました。これは、利息の支払額63億4千4百万円等があったものの、非資金費用である減価償却費189億4千4百万円、並びに関係会社株式売却損の計上95億7千万円、及び税金等調整前当期純利益57億2千1百万円があったこと等によるものです。
また、前連結会計年度と比較して資金の獲得が13億7千8百万円減少(前期比5.3%収入減)しておりますが、主に当連結会計年度において、関係会社株式売却損の計上95億7千万円、未収入金の増減額が79億1千1百万円の収入増となったものの、未払消費税の増減額の減少等によるその他の資産・負債の増減額が112億3千7百万円の収入減、前受金の増減額が89億2千4百万円の収入減となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは473億5千9百万円の資金の支出となりました。これは、有価証券の取得・売却による収支140億6千7百万円の支出、ソフトウエアの取得による支出96億1千2百万円、Berlitz Corporation株式の譲渡価額が支配喪失時のBerlitz Corporationが保有する現金及び現金同等物残高を下回ったことによる、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出78億1千8百万円、投資有価証券の取得・売却による収支74億3百万円の支出となったこと等によるものです。
また、前連結会計年度と比較して資金の支出が、276億6千1百万円増加(前期比140.4%支出増)しておりますが、主に、 有価証券の取得・売却による収支が149億7千万円の支出増、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出78億1千8百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは91億2千7百万円の資金の支出となりました。これは、配当金の支払額48億2千万円、リース債務の返済による支出34億1千万円があったこと等によるものです。
また、前連結会計年度と比較して資金の支出が43億8千2百万円 増加(前期比92.4%支出増) しておりますが、主に、長期借入れによる収入と返済による支出の収支が57億5千4百万円の支出減となったものの、社債の発行による収入が100億円の収入減となったことによるものです。
当社グループは、主として個人を対象とした業務を行っておりますので、生産能力として表示すべき適当な指標はありません。これに代えて、売上高及びグループ規模と比較的関連性が強いと認められる国内教育事業における進研ゼミ会員の延べ在籍数、Kids & Family事業におけるこどもちゃれんじの延べ在籍数、介護・保育事業における高齢者向けホーム及び住宅数、並びにベルリッツ事業における語学レッスン数を「(1)経営成績」に販売実績と合わせて記載しております。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度末のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(3)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
なお、当連結会計年度において新型コロナウイルス感染症の資金状況への影響は若干あるものの、十分な資金を保持しており、状況の変化には注意を払いながらも、今後の中長期的な成長に向けて、M&AやDXのさらなる推進、研究開発、事業基盤強化のための投資等を行っていきたいと考えております。なおM&Aは、当社グループの強みが生かせる分野で、投資対象を厳選したうえで、積極的に実施したいと考えております。
これらの資金需要につきましては、自己資金のほか、金融機関からの借入等外部資金の活用も含め、最適な方法による資金調達にて対応する予定です。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表及び当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表及び財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表及び財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第一部 第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第一部 第5 経理の状況 2(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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