(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「『人』を軸として、赤ちゃんからお年寄りまで、お客さま一人ひとりに寄り添い、地域に根差し、お客さまの『よく生きる』を一生を通じて支援する」 という企業理念のもと、「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを事業化する」「赤ちゃんからお年寄りまで生涯にわたって、一人ひとりの課題解決や向上意欲を応援する」「年をとればとるほど、生きる意味を深く味わい幸せになるサービスを提供する」ことを通じて、企業価値の向上と、株主の皆様をはじめとする、すべてのステークホルダーへの貢献を追求しています。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
現在、日本は変革期を迎えています。人口動態や国民の年齢構成が大きく変化し、少子高齢化が加速しています。教育事業を行うベネッセにとって、少子化は、持続的な成長を考えるうえでの重要課題です。そして、グローバル化や高度なデジタル化が進行する社会は、答えのない未来であり、思考力、判断力、表現力を備えた子どもたちを育てることが極めて重要であり、子どもたちが未来を生きるために必要な力を育む教育サービスを提供することが、大きなテーマであることは引き続き変わりません。また、高齢者人口が急速に増加するなかで、医療、福祉、健康等への対応が社会の喫緊の課題となっています。
加えて、新型コロナウイルス感染症の流行により、特に2020年度において大きな業績への影響が生じました。流行が長期化するなかで、お客さまの行動変容や、政府主導による学校情報化(いわゆる「GIGAスクール構想」)の急速な整備等、事業を取り巻く環境も大きく変化してきています。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた業績を速やかに回復し、環境変化を踏まえた事業の進化を図ることが急務であることから、2021年度を初年度とする5ヵ年の中期経営計画「コア事業の進化と新領域への挑戦」を推進しています。
この中期経営計画においては、2021年度から2022年度をフェーズ1として、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた既存事業の速やかな回復を目指し、2023年度から2025年度をフェーズ2として、コア事業の進化と教育・介護領域等においてベネッセの強みを生かした新領域への挑戦により、さらなる成長を図っていきます。
また、それと同時に、事業の選択と集中にも継続的に取り組み、ベルリッツ事業について、グループの事業ポートフォリオの中での位置づけを議論し、2022年2月にBerlitz Corporationに関して当社の保有する全株式の第三者への譲渡を行いました。これに伴う特別損失の計上等により2021年度の業績は一時的に悪化したものの、今後数年間にわたって税金削減効果が見込まれることにより、中期経営計画で目標とする経営指標の一つであるROE(自己資本当期純利益率)については2022年度以降大幅に改善する見通しです。
この中期経営計画は、2030年の社会環境を念頭に、少子化、高齢化、労働力不足といった深刻化する日本の社会構造問題に対して、日本における教育・介護のリーディングカンパニーとして当社グループの果たすべき社会的責任は一層大きなものとなるという認識に立っています。
その認識のもと、当社グループは、教育分野においては、一人ひとりが成長し人生を豊かにする学びを提供することで、介護分野においては、高齢者の「自分らしく生きる」を支えることで、すべての人が向上意欲を持ち、自分らしく挑戦し続けられる人生を支援し、社会課題の解決に貢献していきます。
これらの目標を達成するため、既存事業領域における業績回復とオーガニックな成長を図るとともに、新たなチャレンジで中長期的な成長の実現を図っていきます。
1.国内教育事業
進研ゼミ
・[オーガニック成長]残存率向上とマーケティング変革による収益力向上
・[新たなチャレンジ]多様な学びニーズに対応したプラットフォーム事業の展開
学習塾
・[オーガニック成長]教室数増加と各塾のユニーク性の進化
・[新たなチャレンジ]M&A等によるさらなる拡大
学校向け教育
・[オーガニック成長]「GIGAスクール構想」に対応する学校支援の次世代化
・[新たなチャレンジ]進路多様校向け新サービスモデルの開発
2.Kids & Family事業
・[オーガニック成長]残存率向上とマーケティング変革による収益力向上
・[新たなチャレンジ]商品・サービスの複層化によるビジネスモデル変革
3.介護・保育事業
・[オーガニック成長]入居率の回復と、既存ドミナント展開エリア以外の新エリアへの進出(福岡等)
・[新たなチャレンジ]人材紹介事業等の周辺事業での非連続な成長
4.新領域への挑戦
・大学・社会人領域での一生涯の学びと多様な働き方支援
・国内で培った当社グループの強みを生かした海外展開(インドにおける学校向けアセスメント事業等)
当社グループは、資本政策を経営の重要課題と位置付けています。配当については「配当性向35%以上」を目途としています。2021年度の実績は1株当たり年間配当額50円です。また、自己株式については、2022年3月末時点で6,160千株、213億6千3百万円の自己株式を保有しており、今後も必要に応じて取得する考えです。なお、自己株式は、発行済株式総数の5%程度を目安に保有し、それを超過する部分は原則として毎期消却する方針です。
また、キャッシュ・フローを重視した経営を行い、財務体質の健全性の維持に努めると同時に、今後の中長期的な成長に向けて、M&AやDXのさらなる推進、研究開発、事業基盤強化のための投資等を行っていきます。なお、M&Aは、当社グループの強みが生かせる分野で、投資対象を厳選したうえで、積極的に実施します。
(4) 目標とする経営指標
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、2022年度までに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた既存事業の速やかな回復により2019年度を超える売上高、営業利益を目指します。
そして2025年度に向けて、コア事業の進化による2022年度を起点とした売上高の年平均成長率3%以上の持続的成長と、教育・介護等でのベネッセの強みを生かした新領域への挑戦によるさらなる成長を図り、最終年度である2025年度において、営業利益率8%以上、ROE10%以上を目指します。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日である2022年6月27日時点において判断したものであり、予測し得ない経済状況の変化等様々な要因があるため、その結果について、当社グループが保証するものではありません。
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