有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境について
①建設市場の動向
国内外の景気後退や国及び地方公共団体の公共投資予算の削減等により、建設市場が著しく縮小した場合や今後競合他社との競争が激化し、民間工事における受注価格が下落する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、不動産開発事業・再生可能エネルギー事業を主とする関連事業による収益源の多様化に取り組んだ結果、一定の安定収益基盤を確立するとともに、市況に応じた資産売却による収益確保の体制も整いつつあります。関連事業では、積極的に開発投資を実施し、市場の変動に耐えうる収益基盤を拡大させるとともに、土木事業による独自の機械力の提案と、建築事業による設計施工案件など高付加価値提案により、建設事業では特命受注の獲得増大を図っております。また、土木・建築・関連の3事業連携とグループ企業活用による提案力の強化、ICT施工やDX戦略による省力化技術の確立により、市場の縮小にも柔軟に対応できる事業体質の構築に取り組んでおります。
②震災復興関連工事について
当社グループは、東日本大震災発生当初より、被災地域での除染作業やがれきの廃棄物処理及び収集運搬、減容化処理施設の建設・解体等の震災復興関連工事を数多く手掛けており、連結売上総利益に占める割合は高い状況が続いておりましたが、縮減傾向にあった当該事業は、一定の収束を迎えました。
これに対応するため当社グループは、受注体制の見直しを図ってきており、土木事業では、太陽光発電事業に関する造成工事を中心に、独自の機械力を武器にした民間受注の獲得とグループ活用による受注幅の拡大、建築事業では生産物流施設をはじめとした設計施工案件の割合を増加させることで、利益率の改善を図っております。また、関連事業では、再生可能エネルギー事業の展開による安定収益基盤の確立と、不動産開発事業による効果的な資産の売却により、利益の確保を図っております。
③人材確保に係るリスク
建設業界においては、建設技術者・技能労働者の高齢化が進み、計画的な人員確保の重要性が高まってきております。当社グループでは、計画的な人員確保に向けて採用の強化に努めておりますが、需給関係の急激な逼迫により人員確保が困難となった場合には、受注機会の喪失や納期遅延等の問題が発生する恐れがあり、業績に影響を与える可能性があります。
このリスクに対応するため、特に技能労働者の地位向上への取り組みとしてキャリアアップシステムの推進、優良職長認定制度、褒章につながる国土交通省の建設マスターへの推薦を行っております。また、DX化や独自の機械力を活用したICT施工による省人化、省力化施工によって施工効率の向上に挑戦してまいります。さらに、成果に見合った報酬が得られる人事制度の構築や、労働環境の改善等、働き方改革を推進しており、優秀な人財の確保を採用市場でアピールしてまいります。
当社グループでは、ダイバーシティ&インクルージョンの活動として、経営トップ自らが健康管理最高責任者(CHO)となり、2018年9月に「健康経営宣言」を制定しております。この活動推進に対して、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として、経済産業省と日本健康会議が共同で進める「健康経営優良法人~ホワイト500~」に3年連続で選定(2020年、2021年には健康経営銘柄にも選定)されております。今後もさらに従業員の健康増進に向けた活動を推進してまいります。
④労務単価及び資材価格の高騰
建設工事の施工は長期間に及ぶものが多いことから、契約期間中に想定外に労務単価や工事用資材の価格が高騰する可能性があります。単価の高騰分について請負金額に反映できない場合には、業績に影響を与える可能性があります。
このリスクに対応するため、労務状況の常時確認や主要資材の市場価格調査を行い、資材・労務価格等の急激な変動に対しては先行調達や代替工法の提案等により対応しております。特に大きな影響が及ぶ可能性のある建築事業では、設計施工案件の割合を増加しており、フロントローリングの実行に繋げる体制が整いつつあります。
(2) 取引先の信用リスクについて
景気の減速や建設市場の縮小などにより、発注者、協力会社、共同施工会社の信用不安などが顕在化した場合、資金の回収不能や施工遅延を引き起こし、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、案件採択にあたっては、施主の信用調査を実施後、その内容について審査委員会で審議を行い、経営会議(大口のものについては取締役会)への結果報告を経て承認する手続きとしており、与信判定に応じた工事代金の受領・支払などの取引条件の確保に取組んでおります。
(3) 施工物の瑕疵について
継続的な施工教育の実施や、ISOなどの品質管理手法を活用した施工管理の徹底により、品質管理には万全を期しておりますが、万一施工物に関する重大な瑕疵があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、本社に品質管理担当部署をおき、品質管理基準に基づき全案件を同一目線で統括管理を行っております。また、現場巡回パトロールにおいて、品質管理項目を強化しているほか、施工上の難易度が高い現場は重点管理現場として、品質に関する監査を追加して実施しております。
(4) 建設活動に伴う事故について
建設事業は、作業環境や作業方法の特性から危険を伴うことも多く、他の産業に比べ事故発生率が高くなっております。人身や施工物などに関わる重大な事故が発生した場合、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、工事着手にあたり施工計画を策定し、安全な作業環境を整え施工しております。また、徹底した安全教育の実施、危険予知活動や安全パトロールなどの災害を撲滅するための活動を実施しております。事業部門とは独立した安全品質環境本部が各現場へ安全パトロールを実施すると共に、過去事例や他社事例に基づき教育を行うなど、指導・監督の下、安全管理には十分に配慮された体制で施工を行っております。また、すべての工事において、建設工事保険、賠償責任保険等の付保によるリスクヘッジも行っております。
(5) 資産保有リスクについて
営業活動の必要性から、投資有価証券・事業用不動産等の資産を保有しておりますが、時価が著しく低下した場合、評価損や減損損失の計上等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、事業用資産については、案件毎に定期的に減損リスク等を把握し、投資有価証券については、個別銘柄ごとに、株式保有に伴うコストやリスク、営業上の便益等の経済合理性を総合的に勘案のうえ、保有意義を見直し、取締役会にて保有の適否を検証しております。
(6) 関連事業に係るリスクについて
①不動産開発
当社グループは関連事業として主力事業である土木事業及び建築事業とは求められるノウハウが異なる不動産開発事業を展開しております。当該事業に係るプロジェクトは事業期間が長期間にわたることから、事業環境に著しい変化が生じた場合や開発が想定通りに進捗しない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、不動産開発事業は、関係部署による事前協議を行った上で、決裁基準に応じて経営会議・取締役会で厳格に判断を下しており、計画段階から着手後にかけて、常に事業リスクや環境変化の兆候を把握することに努め、適時適切に事業計画の点検と見直しを実施しております。
②太陽光発電
太陽光パネルの発電効率低下のリスクについては、適切なメンテナンス、モニタリングを実施する対策を取っておりますが、自然災害や事故等の原因で、発電所修復のための休業中に発電量が予定より大幅に減少した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、自然災害や事故等の原因による施設等の被害に関しては、各種保険に加入することでリスクの軽減を図っております。
(7) 海外事業に伴うリスクについて
海外工事について、予期しない法律、規制、政策の変更、テロ紛争、伝染病等が発生した場合や、経済情勢の変化に伴う工事の縮小、延期等が行われた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建ての資産・負債を有しているため、為替レートの変動により為替差損が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、進出国の的確な情勢把握に努めており、テロ紛争・伝染病等の対応については、「海外緊急事態対応マニュアル」に基づき、役職員及び家族の安全を第一に捉え、進出国のリスク状況に応じては本邦への緊急搬送サービスや現地での適切な医療体制の確保の充実を図るなど危機管理体制の一層の強化に努めております。また、為替変動リスクに対応するため、予測しがたい急激な為替の変動に備え、必要に応じ為替予約などを通じ外貨建資産に対しヘッジを実施するなど、可能な限りリスクの回避をしております。
(8) 法的規制について
建設事業の遂行は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法等により多数の法的規制を受けております。当社グループの各社では、特定建設業許可、一級建築士事務所登録、宅地建物取引業の許認可等を受けております。現時点において、当該許認可等の取消となる事由に抵触する事象は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により、当該許認可等が取消され又はそれらの更新が認められない場合、もしくはこれらの法律等の改廃又は新たな法的規制の新設、適用基準の変更によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、常に建設業法をはじめとした各種関連法令の制定改廃動向を予め把握するとともに、役職員及び専門工事業者に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況のモニタリングを実施しております。
(9) 大規模災害に関するリスクについて
地震等の天災、人災等が発生したことにより、事業継続に深刻な支障をきたした場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、ゼネコンとしての社会的使命を果たすため、「事業継続計画」を策定しております。R&D拠点であるつくば未来センターと社員寮を、本社機能の代替拠点に設定し、臨機応変に対応できる体制を整えております。また、基幹システムはクラウドサービスを利用しております。サーバー群は停電、耐震性に優れたデータセンターに設置されており、データ保全もサービス内で実施されております。
なお、震災時の社員安否の確認には、「事業継続計画」に基づき「安否確認サービス」を利用し、状況を的確に把握した上で、災害時に迅速な事業活動が行えるよう準備をしております。今後更に災害時の情報共有を簡便且つ的確にできる仕組み、サービスを導入すべく取り組んでまいります。
(10) 情報セキュリティリスクについて
サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入等による情報流出、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、当社グループでは、「情報セキュリティ基本方針」の定めに従い、「情報セキュリティ基本規程」を基に情報セキュリティ全般に関して、適切な情報管理を徹底するよう努めております。また、各要領・マニュアルに基づいた「社員教育」を徹底し、全社の推進レベルの向上を図ることで、浸透したテレワーク体制にも対応を図っております。
(11) 訴訟等に関するリスクについて
国内外の事業等に関連しての訴訟、紛争、その他法的手続きにおいて、当社グループの主張や予測と相違する結果となった場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、訴訟等につきましては、顧問弁護士等外部の専門家と緊密に連携し対応できる体制を構築しております。
(12) 工事における一定の期間にわたり収益を認識する方法について
当社グループは、一定の期間にわたり収益を認識する方法を適用しております。工事進捗度の見積りは、見積総原価に対する発生原価の割合をもって行い、工事請負総額に工事進捗度を乗じて完成工事高を算出しております。
工事案件ごとに継続的に見積総原価や予定工事期間の見直しを実施する等適切な原価管理に取り組んでおりますが、それらの見直しが必要になった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため、現場の予算を基に、徹底した原価管理を行い、適宜決算に反映するようにしております。
(13) 新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて、感染症の収束には時間を要すると思われ、国内外の景気に不透明さが拡がるなか、建設事業においては、不動産市況・設備投資動向などの外部環境の変化により受注高の減少が懸念されるなど、当社を取り巻く経営環境に影響を及ぼす可能性があります。
このリスクに対応するため当社グループは、2020年に社長を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、全社を挙げてのテレワークや時差出勤の推進、感染状況に応じた出張自粛などの対策を継続しております。建設現場では、基本的な感染拡大防止策に加えて、感染者が出た場合でも早期に関係先に情報共有し対策を講じることで事業を継続できる体制を整備しています。
コロナ禍による先行き不透明な状況が続く中、受注高減少のリスクはあるものの、リモート化/デジタル化の進展に伴うデータセンターの建設やECの普及に伴う物流倉庫建設の需要が高まっており、このような需要に対し取り組みを強化しております。
また関連事業では、キャンプ&ワーケーション施設を開業しており、ニューノーマルに対応した取組みも推進しております。
(14) 気候変動リスクについて
気候変動により自然災害が激甚化傾向にあり、気候変動に伴う物理的リスクとして、施行中工事への被害や施工遅延、自社所有物件への被害等により、事業の継続性に影響を及ぼす可能性があります。
また、脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税の導入や、工事施工に係る各種法規制の強化に伴う大幅な建設コストの増加により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、このような気候変動に伴う事業への影響を重要な経営課題の一つと捉え、2021年10月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しており、2022年7月に公表した中期経営計画2024において、2030年度までのCO2排出削減目標(Scope1,2:42%削減、Scope3:25%削減※いずれも2020年度比)を設定しました。
なお、当該CO2排出削減目標については、現在SBT認定を取得するため申請中でございます。
※SBT(Science Based Targets):パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した5年~15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標
脱炭素社会への移行リスクの対応として、再生可能エネルギーの需要拡大が見込まれており、80メガワット超の太陽光発電事業を手掛ける当社グループは、そのノウハウを活用することで機会を創出致します。
また、気候変動に伴う物理的リスクの対応として、災害復旧・事前防災の需要拡大が見込まれており、ガレキ混じり土砂の分別・改良と現地発生土のリサイクルを可能とする、当社の独自開発技術である回転式破砕混合工法(通称:ツイスター工法)は、この物理的リスクに対応するとともにCO2削減にも寄与致します。当社グループは、事業の継続性に影響を及ぼすこの社会課題の解決に貢献して参ります。
今後は、TCFDが示す推奨に基づき、ガバナンス体制の構築、シナリオ分析等を実施し、適切な情報開示を進めて参ります。
お知らせ