<要約損益計算書> (単位:百万円)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が続いたものの、ワクチン接種の進展等により社会経済活動が正常化に向かったことで、景気は持ち直しました。しかしながら、世界的なサプライチェーンの混乱や原材料価格の高騰が景気回復の下押し要因となりました。わが国経済におきましても、期初から断続的に緊急事態宣言が発出されたこと等から、厳しい状況が続きました。緊急事態宣言が解除された昨年10月以降は、ワクチン接種の進展等を背景に、個人消費を中心に経済活動が正常化に向かったことから、景気に持ち直しの動きがみられました。
住宅市場に関しましては、国内では、コロナ禍における戸建住宅需要の高まりや住宅ローン減税の特例措置に係る駆け込み需要もあり、堅調に推移しました。米国では、建設コストの増加や住宅需給のひっ迫により住宅価格が高騰したものの、雇用環境の改善や歴史的な低水準で推移した住宅ローン金利等を背景に、市場は好調に推移しました。豪州では、住宅価格の上昇やロックダウン(都市封鎖)の影響がありましたが、堅調な雇用環境や過去最低水準の住宅ローン金利の効果もあり、市場は堅調に推移しました。
このような事業環境のもと、当社グループは、当期を最終年度とする「中期経営計画2021」の実現に向け、国内では、福岡県苅田町の木質バイオマス発電事業所の営業運転開始や三重県多気町のホテルヴィソンの開業など積極的に取り組みました。米国では、戸建住宅事業の新規エリア進出のほか、新たに戸建賃貸開発事業に参入するなど事業領域を更に拡大し、当社グループのより一層の成長に向けた事業の推進に注力しました。また、堅固な財務基盤の確立及び将来の投資余力の確保を目的として、公募増資及び第三者割当増資を実施し、持続的な企業価値の向上に必要な経営基盤の強化を図りました。
その結果、売上高は 1兆3,859億30百万円 (2020年3月期比 25.5%増 )、営業利益は 1,136億51百万円 (同121.2%増)、経常利益は 1,377億51百万円 (同134.2%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は871億75百万円(同213.0%増)となりました。なお、退職給付会計に係る数理計算上の差異はプラス32億60百万円となり、数理計算上の差異を除いた経常利益は1,344億91百万円となりました。
自己資本利益率(ROE)につきましては 20.2 %となり、目標に掲げていた10%以上を達成しております。
(事業セグメント別の経営成績)
事業セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、各事業セグメントの売上高には、事業セグメント間の内部売上高を含めております。
<木材建材事業>
流通事業におきましては、世界的に木材需給がひっ迫する中、当社グループの国内外での調達力を活かし、取引先に対する安定供給体制の維持に注力しました。また、収益源の多様化を目的として、バイオマス発電用の木質燃料の取り扱い拡大や国産材活用への取り組みを強化したほか、持続可能な植林木を使用した合板や建材の拡販に注力しました。その結果、業績は好調に推移しました。
製造事業におきましては、国内において、製造コストが上昇したことから業績は伸び悩みました。海外においては、インドネシアの合板や建材事業がコロナ禍の影響もあり業績は伸び悩みましたが、ニュージーランドではロックダウン(都市封鎖)の影響があったものの、MDF(中密度繊維板)やLVL(単板積層材)の販売数量が増加したことから業績は堅調に推移しました。
以上の結果、木材建材事業の売上高は2,168億58百万円(2020年3月期比3.0%減)、経常利益は99億84百万円(同63.8%増)となりました。
戸建注文住宅事業におきましては、コロナ禍における営業力強化策の一環としてWEBマーケティングの取り組みを一層強化したほか、当社の設計力を活かしてライフスタイルの変化に対応したプランの提案に注力しました。また、お客様の環境意識の高まりに対応して、エネルギー消費量が正味ゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様の受注拡大に努めるなど、受注は好調に推移しました。施工面では、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱が生じたものの、着工の平準化を推進しました。これらの結果、売上高は増加しましたが、木材を中心とした世界的な建設資材のコスト上昇による利益率の低下から、業績は伸び悩みました。
賃貸住宅事業におきましては、当社が建設した賃貸住宅のオーナー様から借り上げた物件をモデルルームとして体感していただく、「タウンスクエア」による受注活動を推進したほか、間取りの変化や自由な空間設計が可能となる「WF構法(ウォールフレーム構法)」を採用した賃貸住宅の受注拡大に取り組みましたが、戸建注文住宅事業と同様に建設資材コストの影響を受け業績は伸び悩みました。
分譲住宅事業におきましては、優良な土地の仕入れが奏功したことに加え、旺盛な購買意欲に支えられ業績は堅調に推移しました。
リフォーム事業におきましては、当社オリジナルの耐震・制震工法等の高い技術力を活かした耐震リフォームの受注拡大に注力したほか、「住友林業の家」のオーナー様に対する営業活動を強化しました。
また、昨年1月にコーナン建設株式会社をグループに迎え入れ、非住宅分野における中大規模建築事業や木造化・木質化に着手しました。
以上の結果、住宅・建築事業の売上高は5,109億39百万円(2020年3月期比7.8%増)、経常利益は196億41百万円(同13.0%減)となりました。
米国での戸建住宅事業におきましては、当社グループが事業活動を展開しているワシントン州、ユタ州、テキサス州及びメリーランド州等の地域において、過去最低水準の住宅ローン金利や都市部から郊外への住み替え需要の高まりを背景に、業績は好調に推移しました。また、昨年2月に米国コロラド州デンバー地区で分譲住宅事業を行うCDL homes, Inc.の事業を譲り受けたことにより、米国における戸建住宅事業エリアは14州になり、事業エリアを更に拡大しました。不動産開発事業におきましては、コロナ禍により売却を延期していた物件を含め計画どおり物件売却を進めたほか、旺盛な需要を受け一部の物件売却を早めたことから業績は好調に推移しました。
豪州での戸建住宅事業におきましては、ビクトリア州、ニューサウスウェールズ州及び西オーストラリア州等の地域において、ロックダウン(都市封鎖)の影響を受けたものの、歴史的な低水準の住宅ローン金利等を背景として業績は堅調に推移しました。なお、当社は、脱炭素社会の実現に向け、昨年10月にNTT都市開発株式会社及びHines社(米国テキサス州)と、メルボルン市における木造オフィス開発事業に参画することを決定し、ネットゼロカーボンビル*の実現を目指す取り組みを開始しました。
東南アジアにおいては、ベトナム、インドネシア、タイにおいて、取り組み中の戸建住宅及び分譲マンションプロジェクトがコロナ禍により工事や販売計画に遅れが生じました。
* ネットゼロカーボンビルとは、建物を省エネルギーや創エネルギー仕様にし、再生可能エネルギー利用と炭素クレジットによるオフセットも組み合わせ、建築物の使用時に排出されるCO2を実質ゼロにするものです。
以上の結果、海外住宅・不動産事業の売上高は6,445億73百万円(2020年3月期比61.4%増)、経常利益は1,043億34百万円(同202.1%増)となりました。
<資源環境事業>
バイオマス発電事業におきましては、昨年6月に営業運転を開始した苅田バイオマスエナジー株式会社のほか全国4か所に所在する木質バイオマス発電事業所が安定的に稼働しましたが、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)における政府の激変緩和措置が終了したことに伴う売電先との契約見直しの影響により、業績は伸び悩みました。
森林経営におきましては、ニュージーランド南島ネルソン地区で展開している森林事業において、同国内向けの販売数量の増加により、業績は堅調に推移しました。
なお、昨年6月に株式会社IHIと、熱帯泥炭地を適切に管理するコンサルティング事業の実現や、森林や土壌における炭素蓄積量など自然資本の価値を適切に評価することによる質の高い炭素クレジットの創出と販売に向けて、業務提携契約を締結しました。本提携を通じて、当社グループが国内外で培ってきた森林の管理技術や、インドネシアにおける熱帯泥炭地の管理技術等の強みを活かし、脱炭素社会への実現に貢献してまいります。
以上の結果、資源環境事業の売上高は222億99百万円(2020年3月期比15.8%増)、経常利益は39億31百万円(同10.7%増)となりました。
<その他事業>
当社グループは、上記事業のほか、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営事業、住宅顧客等を対象とする保険代理店業等の各種サービス事業等を行っております。また、株式会社熊谷組に係る持分法による投資利益も含まれます。
その他事業の売上高は239億44百万円(2020年3月期比2.2%増)、経常利益は30億12百万円(同102.9%増)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループの展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため記載しておりません。
当連結会計年度における住宅・建築事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 1 住宅・建築事業のうち、提出会社における注文住宅及び賃貸住宅、並びにその他請負の該当金額を記載しております。
2 受注高には、当連結会計年度の新規受注に加えて、期中の追加工事によるものが含まれております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
2 調整額には、特定のセグメントに区分できない管理部門等における売上高を含み、セグメント間の内部売上高を消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4 海外住宅・不動産事業セグメントの販売実績に著しい変動がありました。その内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載しております。
当連結会計年度末における総資産は、米国住宅事業を中心としたたな卸資産の増加や、公募及び第三者割当による新株式の発行等に伴う現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末より2,230億73百万円増加し、1兆3,142億26百万円となりました。負債は、木材建材事業における支払手形及び買掛金の増加等により、前連結会計年度末より824億40百万円増加し、7,741億36百万円となりました。また、公募及び第三者割当による新株式の発行等により、純資産は5,400億89百万円、自己資本比率は37.7%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
<木材建材事業>
当連結会計年度末における木材建材事業の資産は、国内流通事業におけるたな卸資産や売上債権が増加したこと等により、前連結会計年度末より326億16百万円増加し、 2,199億48百万円 となりました。
<住宅・建築事業>
当連結会計年度末における住宅・建築事業の資産は、分譲住宅事業におけるたな卸資産が減少した一方、新たに連結の範囲に含めた子会社が保有する有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末より166億36百万円増加し、 1,987億47百万円 となりました。
<海外住宅・不動産事業>
当連結会計年度末における海外住宅・不動産事業の資産は、分譲住宅事業及び不動産開発事業の拡大に伴い、たな卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末より1,618億65百万円増加し、 5,406億36百万円 となりました。
<資源環境事業>
当連結会計年度末における資源環境事業の資産は、業務提携目的で保有する上場株式の時価下落に伴い、投資有価証券が減少したこと等により、前連結会計年度末より97億27百万円減少し、 897億8百万円 となりました。
<その他事業>
当連結会計年度末におけるその他事業の資産は、持分法投資利益の発生に伴い、投資有価証券が増加した一方、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営事業に係る減損損失の計上に伴い、のれんが減少したこと等により、前連結会計年度末より22億39百万円減少し、 787億22百万円 となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より 478億15百万円 増加して 1,700億35百万円 となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
なお、決算期変更の経過期間である前連結会計年度は2020年4月1日から2020年12月31日までの9ヶ月間の変則的な決算であるため、前年同期の数値については記載しておりません。
営業活動により資金は915億76百万円増加しました。これは、米国住宅事業を中心としたたな卸資産の増加等により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益1,339億32百万円の計上等により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は 402億54百万円 減少しました。これは、米国での集合住宅及び商業複合施設の開発等に資金を使用したこと等によるものであります。
財務活動により資金は 70億29百万円 減少しました。これは、公募及び第三者割当による新株式の発行等により資金が増加した一方で、配当金の支払等により資金が減少したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、長短の資金使途に応じて最適な資金調達手法を機動的に利用し、資金返済時期の分散や調達コストの低減を実現することを基本方針としております。また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散、複数の金融機関とのコミットメントライン(特定融資枠)の設定など、資金調達リスクを軽減するため様々な対応策をとっております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,027億63百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社は特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。固定資産の減損につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」にも記載しております。
①販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価
販売用不動産及び仕掛販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、たな卸資産の簿価切下げに伴う評価損を計上しております。正味売却価額の見積りにあたっては、近隣地域における市場価格や直近の販売状況等を踏まえた販売計画に基づいて、当連結会計年度末現在における販売見込額を算定しております。経済情勢や不動産市況の悪化等により、正味売却価額が見込以上に下落した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
②投資有価証券の評価
その他有価証券のうち、時価のある有価証券については時価法を、時価のない有価証券については移動平均法による原価法を採用しております。時価のない有価証券について、その実質価額が取得原価に比べ著しく下落した場合、回復の見込が確実と認められなければ、減損処理しております。時価のない有価証券の実質価額の見積りにあたっては、投資先の直近の業績や事業計画等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
③貸倒引当金
売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の見積りにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。取引先の財政状態及び業況が見込以上に悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④固定資産の減損
減損の兆候がある資産又は資産グループについて、そこから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が減損損失判定時点の帳簿価額の合計を下回る場合、減損損失判定時点の帳簿価額の合計と回収可能価額との差額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、並びに減損損失の認識及び測定にあたっては、直近の取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画に基づいて、将来キャッシュ・フローを算定しております。これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。繰延税金資産の回収可能性の見積りにあたっては、直近の取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画のほか、将来減算一時差異のスケジューリングを考慮しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額を収益又は費用として計上する可能性があります。
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