課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「公正、信用を重視し社会を利するという「住友の事業精神」に基づき、人と地球環境にやさしい「木」を活かし、人々の生活に関するあらゆるサービスを通じて、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」ことを経営理念に掲げ、この理念のもと、企業価値の最大化をめざすことを経営の基本方針としております。

この実現のため、当社グループは、お客様の感動を生む高品質の商品・サービスを提供する、新たな視点で次代の幸福に繋がる仕事を創造する、多様性を尊重し自由闊達な企業風土をつくる、日々研鑽を積み自ら高い目標に挑戦する、正々堂々と行動し社会に信頼される仕事をする、の5つを行動指針として、経営の効率化及び収益性の向上を重視した事業展開を行っております。

また、情報開示を積極化し経営の透明性を高めることで、経営品質の向上を図っております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、「売上高」及び「経常利益」をグループ全体の成長を示す経営指標と位置づけております。また、経営の効率性を測る指標として「自己資本利益率(ROE)」、財務の安定性を測る指標として「自己資本比率」を重視しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

世界経済は、新型コロナウイルス感染症が再拡大しているものの、ワクチン接種の進展等により景気回復は緩やかに続くものと考えられます。しかしながら、米国における好調な個人消費や原材料価格の高騰等を背景としたインフレ加速の懸念や金融引き締め政策に加えて、不動産市場の成長が転換期を迎えた中国経済の減速等により、景気の先行き不透明感が続くものと考えられます。また、ウイルス変異株をはじめとする感染状況の動向についても引き続き注視する必要があります。わが国経済につきましても、景気の持ち直しは継続するものと考えられますが、年初から感染が再拡大していることによる社会経済活動への影響や、供給面での制約等による景気の下振れリスクに十分注意する必要があります。

 

(「中期経営計画2021」の総括)

当社グループは、「中期経営計画2021」において、「更なる成長に向けた未来志向の事業戦略の推進」、「持続的な成長に向けた経営基盤の強化」、「木を活かす研究開発・技術革新の加速」、「事業とESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みの一体化推進」という4つの基本方針に基づいて、変化する時代の中で社会課題の解決に取り組み、経営基盤の強化と未来に向けた事業の更なる推進を図ってまいりました。
数値目標につきましては、目標に掲げた全ての項目について計画を上回ることができました。

 

 

「中期経営計画2021」の計画期間

 

2022年3月期

(第82期)目標

2020年3月期

(第80期)実績

2020年12月期

(第81期)実績

2021年12月期

(第82期)実績

 

 

目標差

 

売上高

1兆1,041億円

8,399億円

1兆3,859億円

+1,259億円

 

1兆2,600億円

経常利益

614億円

465億円

1,345億円

+495億円

 

850億円

親会社株主に帰属する当期純利益

279億円

304億円

872億円

+392億円

 

480億円

自己資本利益率

(ROE)

8.8%

8.8%

20.2%

達成

 

10%以上

 

 

(注) 1  経常利益は退職給付会計に係る数理計算上の差異を除きます。

2  当社は、2020年12月期(第81期)より事業年度の末日を3月31日から12月31日に変更しました。また、連結子会社においても、一部を除き、同様の変更を行いました。これに伴い、決算期変更の経過期間である2020年12月期(第81期)の実績は、2020年4月1日から2020年12月31日までの9ヶ月間の数値を記載しております。

3  「中期経営計画2021」の数値目標は計画策定時点における2022年3月期の計画値です。

 

具体的な経営戦略につきましては、米国及び豪州において、戸建住宅事業の進出エリアを着実に広げたほか、米国における不動産開発事業を推進することにより、事業規模の拡大と多角化を進めました。また、当社が参画する木質バイオマス発電事業所の増設や、大型のサービス付き高齢者向け住宅の新設等を行い、次代の柱となり得る事業の開拓に取り組みました。さらに、持続的な企業価値の向上に必要な経営基盤の強化を目的として、公募増資及び第三者割当増資を実施し、財務体質の改善を行いました。

 

(長期ビジョン及び中期経営計画の推進

当社は、このほど、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」及び中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 1」を策定しました。

 

<長期ビジョン>

 

Mission TREEING 2030

~地球を、快適な住まいとして受け継いでいくために~

 

私たちは、地球環境、人々の暮らしや社会、市場や経済活動に価値を提供することで、将来世代を含むあらゆる人々やすべての生き物に、地球が快適な住まいとして受け継がれていくことを目指します。これまでも強みとしてきた「森」と「木」の価値を活かし、深め、新たな未来の力へと変えていきます。

 

 

当社グループは長期ビジョンを達成するために、重要課題を「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、「市場経済への価値」に紐づけた上で、いずれの価値も損なうことなく、また、それぞれの価値を高めることにより、3つの価値を同時に満たす事業活動を推進してまいります。

 

<中期経営計画>

当社は、3年後の第85期末(2024年12月期末)に売上高1兆7,700億円、経常利益1,730億円(退職給付会計に係る数理計算上の差異を除く)、親会社株主に帰属する当期純利益1,160億円、ROE15%以上、自己資本比率40%以上を目指すこととしました。また、本中期経営計画の基本方針として、「木材資源の活用による脱炭素化への挑戦」、「収益基盤の強靭化の推進」、「グローバル展開の加速」、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」、「事業とESGの更なる一体化」の5つのテーマを掲げ、目標達成に向けて取り組んでまいります。

 

 ①木材資源の活用による脱炭素化への挑戦

・森林のCO2吸収源としての価値を訴求した新たな事業の展開

森林資源のCO2吸収/固定量の精度の高い計測技術を確立するとともに、森林ファンドの組成やCO2クレジット化を通じて、CO2吸収源としての価値を提供する事業を展開します。

 

・国産材の競争力強化に向けた施策の推進

国産材の競争力強化のための施業の効率化及び生産性を向上するほか、国産材のカスケード利用*を前提とした大規模製造事業の事業化を進めます。

 

・中大規模木造建築事業の拡大

国内外においてエンボディード・カーボン**及びオペレーショナル・カーボン***を低減する中大規模木造建築事業を拡大します。

 

* カスケード利用とは、間伐材や林地残材等の森林資源及び廃材・端材を余すことなく効率的に利用することを意味します。

** エンボディード・カーボンとは、例えば建物を建築する過程(建材の原材料の調達・製造、建築、解体等)で排出されるCO2を意味します。

*** オペレーショナル・カーボンとは、建築物の使用時において排出されるCO2を意味します。

 

②収益基盤の強靭化の推進

・住宅・建築事業及び木材建材事業の収益力の回復、並びに将来の市場変化を見据えた変革の推進

住宅・建築事業は、コロナ後の需要を的確に捉えるとともに、中長期的な新設住宅着工戸数の減少を見据え、合理化及び生産性向上により収益力の回復を図ります。

木材建材事業は、海外製造事業の立て直しとともに、木材コンビナートを柱とした循環型の資材供給システムの確立、脱炭素関連事業、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進等により、新たな収益機会を創出します。

 

・資産効率の向上

低収益事業や非効率資産については保有の意義を精査した上で、資産効率向上及び資金捻出の観点から、効率改善に取り組みます。また、ROICを指標として資本効率を高める取り組みや、事業別のリスクを反映した投資判断基準等の整備を進めます。

 

③グローバル展開の加速

米国及び豪州における戸建住宅事業は、当社グループの収益の柱として、更なる事業拡大を図ります。資材の共同購買拡充、パネル事業等によるグループシナジー創出の取り組みと将来の人件費高騰に備えた合理化を推進します。また、不動産開発事業では他人資本を活用する事業モデルにより資金効率を高めます。

アジア事業は、戸建住宅事業の推進等により安定的な収益基盤を整備します。

 

④持続的成長に向けた経営基盤の強化

・デジタル化の推進

顧客関係のデジタル化、次世代設計・生産システムの開発、社内のITリテラシー向上等の「攻め」の取り組みにより全社的にデジタル化を推進します。

 

・人財の確保及び育成の強化、社員のエンゲージメントの向上

事業の拡大に対応した人財の確保及び育成の強化、社員のエンゲージメントの向上、働きかた改革の推進、ダイバーシティへの取り組み等を進めます。

 

・リスクマネジメントの強化

リスクの多様化・グローバル化に対応するために、内部監査機能の充実を図ります。

大規模自然災害、サイバーテロ、ウイルス感染症等の不測の事態に対応したBCM体制を構築します。

 

⑤事業とESGの更なる一体化

・RE100及びSBT(Science Based Targets)の達成に向けた施策の着実な実行

自社の事業活動に伴う環境目標であるRE100及びSBT SCOPE1*・2**についての取り組みを着実に進めます。SBT SCOPE3***については、積極的提案により脱炭素化を促進するほか、お客様に選択肢を提供できるよう、省エネルギー性能の向上、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の開発を推進します。

 
* SCOPE1とは、自社での燃料使用等による温室効果ガスの直接排出量を意味します。(例:社有車のガソリン使用に伴うCO2排出量)

** SCOPE2とは、購入した電力・熱による温室効果ガスの間接排出量を意味します。(例:オフィスの電力使用に伴うCO2排出量)

*** SCOPE3とは、サプライチェーンの温室効果ガス排出量を意味します。(例:販売した製品の使用時のCO2排出量)

 

当社グループは、以上の取り組みとともに、社会の変化を見据え、株主の皆様をはじめとするステークホルダーの声に耳を傾けながら、コーポレート・ガバナンスを充実させ、環境共生、お客様満足の向上、人権・多様性尊重、リスク管理・法令遵守に関する取り組みを引き続き強化し、企業価値の更なる向上に取り組んでまいります。

また、中期経営計画の基本方針の一つである「事業とESGの更なる一体化」を含め、SDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献する目標に積極的に取り組むなど、企業に求められる社会的責任を果たしてまいります。

 

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