業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度における当社を取り巻く経営環境といたしましては、まず新型コロナウイルスに関しては、営業・学会活動が制限されている一方で、経費削減による収益の改善も生じております。

 また、エネルギー費の上昇、当第4四半期に顕在化した大動物等の試験資材の高騰に関しては、以下記載のとおり、目下は旺盛な新薬開発需要により、特に収益を圧迫するような状況には至っておりません。

 近年の医薬品市場においては、抗体医薬品、核酸医薬品、再生医療、遺伝子療法といったバイオ医薬品(バイオテクノロジーを用いて製造されるタンパク質を有効成分とした高分子の医薬品)の技術が広がりつつあり、創薬モダリティ(医薬品の創薬基盤技術の方法・手段の分類)が多様化しております。

 国内においては、医療費圧縮政策により、大手製薬各社はがん、中枢薬、希少疾患等の高額な薬価が見込まれるターゲット領域への集中化や、非臨床試験を含む研究関連業務の外注化による経営資源の集中化を更に進めるとともに、積極的にグローバル市場に進出しております。

 併せて経産省による創薬ベンチャー支援が決定し、国内の創薬ベンチャー企業の動きも活性化しつつあります。

 また、アジア圏においては、各国の創薬力育成強化政策を受け、医薬品開発の需要は総じて拡大しております。

 このような中、当社はバイオ医薬品試験対応のための高度分析機器や試験施設への投資を積極的に実施するとともに、海外営業を強化し、バイオ医薬品市場及びアジア圏からの受託を順調に拡大しております。

 また、SEND(米国食品医薬局(FDA)への新薬申請時に義務化されている非臨床試験データ標準フォーマット:Standard for Exchange of NonclinicalData)の変換対応サービスについては、国内CROのトップランナーとして、国内外での顧客数を着実に増やしております。

 また、国立研究開発法人日本医療開発機構(AMED)の支援のもと、国立大学法人信州大学が推進する「遺伝子・細胞治療研究開発基盤事業(遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)の医薬品化に向けた研究基盤整備)」の研究拠点として当社内に設けられた施設は、2022年3月に遺伝子治療用ウイルスベクターや腫瘍溶解性ウイルスの非臨床安全性試験に対応できるようリニューアルされ、遺伝子治療法開発のノウハウ蓄積が加速度的に進むことが期待されています。

 これらの結果、当事業年度における受託試験事業につきましては、過去最高の受注を獲得した前事業年度をさらに上回る受注を獲得いたしました。

 また、環境事業においては、コロナ禍により営業活動が制限された影響により、新規の国立大学等の動物関連施設更新工事の受注で苦戦を強いられ、メンテナンスや物販の売上となりました。

 なお、当社の近年の業績動向及び将来の課税所得の発生見込等の状況を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、回収可能性のある部分について繰延税金資産を計上することとし、これに伴い法人税等

調整額△63,109千円(△は益)を計上しております。

 以上の結果、当事業年度末の財政状態及び当事業年度の経営成績は、以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(流動資産)

 当事業年度末における流動資産の残高は3,168,194千円となり、前事業年度末に比べ777,535千円増加しました。主な内訳は、現金及び預金315,693千円の増加、仕掛品166,124千円の増加、前渡金142,541千円の増加であります。

(固定資産)

 当事業年度末における固定資産の残高は1,693,154千円となり、前事業年度末に比べ48,953千円増加しました。主な内訳は、繰延税金資産63,109千円の増加であります。

(流動負債)

 当事業年度末における流動負債の残高は2,678,409千円となり、前事業年度末に比べ640,290千円増加しました。主な内訳は、支払手形165,423千円の増加、買掛金79,863千円の減少、短期借入金の減少100,000千円の減少、契約負債537,524千円の増加であります。

(固定負債)

 当事業年度末における固定負債の残高は819,176千円となり、前事業年度末に比べ146,269千円減少しました。主な内訳は、長期借入金120,040千円の減少、リース債務22,997千円の減少であります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産の残高は、1,363,762千円となり、前事業年度末に比べ332,467千円増加しました。内訳は、欠損填補による資本剰余金254,585千円の減少、当期純利益の計上及び欠損填補等による利益剰余金587,052千円の増加であります。

 

 この結果、自己資本比率は前事業年度末の25.6%から28.1%となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

 当事業年度の売上高は、3,204,538千円となり、前事業年度に比べ275,261千円増加しました。

(売上原価)

 当事業年度の売上原価は、2,161,575千円となり、前事業年度に比べ140,608千円増加しました。

 この結果、当事業年度の売上総利益は1,042,962千円となり、前事業年度に比べ134,652千円増加しました。

(販売費及び一般管理費)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、691,189千円となり、前事業年度に比べ11,816千円減少しました。

 この結果、当事業年度の営業利益は351,773千円となり、前事業年度に比べ146,469千円増加しました。

(営業外損益)

 当事業年度の営業外収益は16,934千円となり、前事業年度に比べ10,171千円増加しました。営業外費用は29,191千円で前事業年度に比べ5,774千円減少しました。

 この結果、当事業年度の経常利益は339,516千円となり、前事業年度に比べ162,415千円増加しました。

(特別損益)

 当事業年度においては、該当事項はありません。

 

 以上の結果、税引前当期純利益は339,516千円となり、前事業年度に比べ153,559千円増加しました。また、当社の近年の業績動向及び将来の課税所得の発生見込等の状況を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性について慎重に検討した結果、回収可能性のある部分について繰延税金資産を計上することとし、これに伴い法人税等調整額△63,109千円(△は益)を計上しております。この結果、当期純利益は334,832千円となり、前事業年度に比べ102,076千円増加しました。

 

 セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。

 

(受託試験)

 当事業部門におきましては、バイオ医薬品試験対応のための投資を積極的に実施するとともに、海外営業を強化し、バイオ医薬品市場及びアジア圏からの受託を順調に拡大いたしました。

 その結果、常に安定して高い稼働率を維持できたことによる原価の低減、コロナ禍による営業・学会活動が制限されたことによる経費削減もあり、収益が改善いたしました。売上高は3,056,491千円(前期比12.7%増)、営業利益は344,680千円(前期比92.3%増)となりました。

 

(環境)

 当事業部門におきましては、コロナ禍により営業活動が制限された影響により、新規の国立大学等の動物関連施設更新工事の受注が獲得できず、メンテナンスや物販の売上のみとなったことから、売上高は148,046千円(前期比31.9%減)、営業利益は7,092千円(前期比72.9%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 現金及び現金同等物(以下「資金」と言います。)は、前事業年度と比較して315,693千円増加し971,683千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、資金は690,384千円の増加(前期は438,552千円の増加)となりました。主な内訳は税引前当期純利益339,516千円、減価償却費158,524千円、売上債権の増加額119,818千円、棚卸資産の増加額216,106千円、前渡金の増加額143,263千円、契約負債の増加額539,898千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、資金は82,398千円の減少(前期は167,640千円の減少)となりました。主な内訳は有形固定資産の取得による支出60,797千円、長期前払費用の取得による支出18,043千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、資金は292,292千円の減少(前期は78,673千円の減少)となりました。内訳は短期借入金の減少額100,000千円、長期借入金の返済による支出120,040千円、リース債務の返済による支出72,252千円であります。

 

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

23.0

25.6

28.1

時価ベースの自己資本比率(%)

49.0

55.7

37.4

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

4.5

2.7

1.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

9.6

15.1

26.5

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率: 有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)株式時価総額は発行済株式数をベースに計算しています。なお、当社には自己株式はありませ
ん。

(注2)キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。

(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

受託試験(千円)

3,267,601

14.0

環境(千円)

113,131

△54.8

合計(千円)

3,380,733

8.5

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

前年同期比(%)

受注残高

前年同期比(%)

受託試験(千円)

4,368,241

14.3

4,301,835

43.9

環境(千円)

117,458

△9.5

22,500

△57.6

合計(千円)

4,485,700

13.5

4,324,335

42.1

(注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

受託試験(千円)

3,056,491

12.7

環境(千円)

148,046

△31.9

合計(千円)

3,204,538

9.4

(注)主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、いずれの販売先についても当該割合が10%未満のため記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態及び経営成績の分析

 当事業年度の財政状態及び経営成績の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

b.当社の経営成績に重要な影響を与える要因

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるリスク、受託試験事業固有のリスク、知的財産権、情報セキュリティ管理体制等、さまざまなリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 

c.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社は、経常利益を重要な経営指標とし、適正な利益確保に努めております。

 当事業年度の経常利益は339,516千円となり、計画を大幅に上回りました。引き続き重要な経営指標の進捗状況に注意を払い、今後も適正な利益確保に努めてまいります。

 

当事業年度計画

(千円)

当事業年度実績

(千円)

差異

(千円)

経常利益

124,000

339,516

215,516

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。

 当社の運転資金需要のうち主なものは、受託試験・環境事業に関する資材の仕入、試験研究センターの運営費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

 投資を目的とした資金需要は、試験研究センターの試験機器等の取得・施設の改修等によるものであります。

 これらの資金の財源につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー並びに金融機関からの借入及びリースによる資金調達にて対応していくこととしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。その作成には、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発債務の開示、並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積り及び仮定が必要となりますが、この判断及び見積りには決算日までに入手可能なすべての情報と過去の実績を勘案して、合理的な根拠に基づいて、継続的に評価しております。

 このため、財務諸表作成時点で実施した見積り及び将来の予測には、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、見積りと異なる場合があります。なお、当社の財務諸表で採用する重要な見積りは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

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